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夏の風

季節の変わり目、皆さん何を感じますか?

夏から始まる新しい恋。季節の変化とともに心情も変化していくものです。

   

 季節の変わり目。それは、人によって違うものだと俺は思っている。実際、「今季節が変わったよ」

なんて、言う人はおらず大体何かの目印によって季節が変わったと認識する。

 今の季節としては、昨日梅雨明けしたのできっと夏なんだろう。

 だが俺は、まだ夏と春の合間。感覚としてはそんな中途半端な気持ちで、その「目印」を見つけられないでいた。


 「あつい。暑すぎる」


 そうなことを思いながらも、もちろん気温差は感じるので自分が置かれているこの「気温」に文句を言いながら、まぶしい太陽を浴び、学校に備え付けられたプールのプールサイドにて人を待っていた。

 時刻は13時手前といったところだ。

 しばらくこの暑さに干されるのを覚悟したが、プールの入り口から大きな声がした。


 「おまたせ~!!!水野(みずの)君」

 

 そういいながら入ってきたのは、女の子にすれば高めの身長で、おそらく170手前くらいの身長の一人の少女だった。下は学校指定のハーフパンツで、上は制服のワイシャツを着ており、髪型はきれいに整えられたポニーテール、体格は運動部の女子としては理想のスタイルをしており、はじける笑顔がよく似合うクラスのムードメーカ。そんな、はじけるオレンジのような女の子、結沢 晴香(ゆいさわ はるか)が言葉通り弾ける勢いでプールサイドに入ってきた。


 「ご!ごめん!まった?」

 「い、いや!俺も今来たところだよ!、、、なんて、言おうとも思ったが残念ながらこの炎天下にさらされていたからな、、、」


 怒られると思ったのか、ゴクリ、と彼女の喉が鳴ったのが分かった。


 「まあ、でも時間ぎりセーフだからOK!」

 「よ、よかったー」


 そういうとべったりと地面に崩れた。そんなに俺って怖いの?

 

 「よし!それじゃあ気を取り直してパッパッと掃除して水野君の家にいこー!」

 「その、俺の家に行こう!っていうのやめて!勘違いしかされないから!せめて、満腹ハウス(俺の家)にして!」


 「ええー長いじゃん」


 そう、今出てきた満腹ハウスとは、俺の家が経営している飲食店だ。近所の評判も良く、わりと学校から近く多くの人が入ってくれる。

 その中でも、結沢は常連だ。彼女自体がバドミントンを、部活動ではなく社会人としてクラブ活動しているため、練習が遅めに終わってからうちに寄って行くのが多いためである。満腹を掲げていることもあって、なかなか学生にもありがたい値段と量である。


 そんな、俺たち(俺は家の手伝いのため)部活動をやっていない組がせっかく午前中で終わった学校の後、先生のくじ運が悪いためにプール掃除なんてものをやらされているわけだ。

 

 「あーー、なんか、水野君の家の話していたらおなか空いてきた!早くやっちゃおう!」

 「おう、それもそうだな」


 そういって、各自用意されていた道具を持った。プールの広さ的にはそんなに広くはない。長さは25mで、レーンも6レーンと普通の大きさだ。

 幸運にも、前回掃除してあったため俺たちは二回目、最後の仕上げ的な掃除だったために、二人で端からやっていき真ん中で落ち合う形にした。ほとんどきれいだったために二人とも流し程度で地面をこすっていく。


 「あれれ?水野君遅くないかな?」

 「いやいや、結沢のほうが遅くね?」

 

 それを聞いてか結沢が全力で前を掃除して


 「はい、私のリード」

 「いや、それだけやん」


 そんなこんなで掃除は進んでいき、案外早くに真ん中についた。


 「ふふふ、私の勝ちだね」


 Vサインを出してながらくるぶし上まで張っている水でぶしゃぶしゃ遊んでいる。


 「はいはい、おめでとさん」

 「よし、何か今度おごりね」

 「え、なにそれ初耳なんですが?」


 そういいながら二人で笑っていたら入り口の方から声がした。


 「おおーーい!遊んでないで掃除しろ、、ってもう終わっているのかよ」


 そういいながら、何か袋を下げた今回の元凶でもある40半ばのおっさんであり、俺らの担任である坂本先生が入っていた。


 「アイス買ってきたから二人で食べていいぞー。俺は水に入りたくないからここに置いとくなー。あとカギは後で持ってきてくれ。ついでに水も張っといてくれ」


 そういって、袋を地面に置いて去っていった。いや、注文多いな。そしてこのくらいこっち持ってきてくれてもよくないか?


 「あ、アイス!?やったー!取り入ってくるね!」

 「お、おう」


 全力でかけていった。いやまあ、確かにここでのアイスは正直テンション上がる。

 袋をもってこちらに戻ってくる。


 「あ!これ!二人でわける系のなんだっけ、、、って うわ!!!!」

 「あ、危ない!」


 水面に足を取られて足を滑らせて盛大にこけた。袋の持っていたためうまく受け身も取れないで両腕、お尻、足がきれいに水の中についていた。


 「だ、大丈夫か!?」


 そういいながら近づいて行って彼女を見たとき、思わず目のやり場所に困ってしまい、目をそらした。

 転んだ拍子に水が飛んで、着ていたワイシャツが透けてしまい、普段では見ることがないものが見えてしまったためだ。


 「み、みた??」

 「い、いやー。すこし?」

 「もう、エッチ」

 「いや、そもそもなんで絶対濡れる場所なのにそのカッコなんだよ」


 少し、視線を彼女のほうに向けた。


 「い、いやーそれは・・・」


 そういいながら透けた部分を手で隠し、視線はどこか違うところを見ていた。頬が赤くなっていたのはきっと見られた恥ずかしさからだろう。


 「ま、まあとりあえずそこで待ってて」

 「え、え?」


 それだけ言って俺は、プールサイドに置いてあった俺のカバンのところまで走っていった。カバンからあるものを取り出して結沢のほうへ投げた。それは、今日濡れると思って用意してあった、大きめのバスタオル。丸めてあったために投げたら無事結沢のもとに届いた。キャッチする際に腕をほどいたために、ワイシャツの下に本日二度目の、水色のものが透けて見えたのは秘密である。


 「あ、ありがとう!」


 そう言って、手元に持っていたアイスを投げ返してきた。


 「わ、私着替えてくるね!着替え教室にあるから!」


 「おう!あ、でも着替えたらこっち戻ってこなくてもいいぞー。この後練習だろ?水ためてたら遅くなっちゃうから」

 「で、でも!」

 「大丈夫大丈夫!任されたの俺だから。あ!もし、申し訳ない気持ちがあるならさっきのおごりなしにしてくれてもいいんだぞ?」

 「えーそれはやだ」

 「いや、なんでだよ」


 二人で噴出して笑った。

 しばらく笑っていたが、笑い終わったところで


 「それじゃあ、ごめんよろしくね」

 「おうよ」


 結沢が、俺のいるプールサイド側から登って上がってきてから、大きく手を振り、よろしくといってきた。おいおい、またそんなに大きく振ったら見えるぞ。なんて、内心思いながら手を振り返した。

 そんな彼女を見送ってから、俺も水をためるために歩き出した。


 その時、帰ったはずの結沢が勢いよく走ってきて俺のそばで


 「あ、あのさ、さっきのなんだけどさ・・・あれは、事故って・・・いや、ねらったって・・・

い、いや・・・」


 俺が頭に?マークをだしていると


 「と、とにかく!君にだけだから!!!」


 そういってまた駆け出して行って、今度は振り返って


 「それじゃ!またね!隼人(はやと)君!」


 その時の笑顔は、今までの笑顔とは少し違うような気がして、まるで自分だけに向けられたような、そんな笑顔で、そして。

 いままでで一番はじけるような笑顔だった。

 

 彼女に手を振り返してからどのくらい時間がたったのだろう。手元のアイスが少し溶けてきているのが伝わってきたため、急いで開け一気にのみ干した。いつも来るはずの、キーンとした痛みが来ないのは溶けていたためか、もしくは脳内がそれどころではなかったためだろうか。


 そういえば、水をためなければいけないのを思い出して急いで水の栓を開けた。

 蝉声が鳴り響く青空の下、小さな日陰に身を隠しプールの中に入っていく水面をしばらく眺めていた。



 「もう、夏か」


 それだけ言って俺はプールに鍵をかけた。


第一話「夏の風」読んでいただいてありがとうございます。

実はこの作品は、前短編として書いた内容を少し変えたものなっています。

すみません。

続きを書きたくなったので再投稿、連載という形にしました。

これから春夏秋冬の話を書いていくつもりです。投稿ペースの関係上、季節感がずれていく可能性がありますが、ご了承くださるとありがたいです。

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