友&愛~『俺とお前』~第9話
前回不意の来客にイヤな思いした分、今回は、ほんのちょっとだけ楽しめる内容なったんじゃないか?と思います!タイトルの❞YOU&I俺とお前❞っていうお前は1人とは限らず、その都度、その都度登場する人物を指しています!そいで以て、この物語のキーパーソンは誰か?って言うとズバリ…言わない!ゆあない!YOU&I!すいません、確実に滑ってますのでハイ、終了!イヤ失礼!ハイ、START!
第9話『偏屈社長と憎めない同僚』の巻
それから1週間が経ち、俺はいつも通り休憩室でジュース片手に本を読んでいると、そこにネクタイ、Yシャツ姿のご年配のご老人が1人ズケズケ入って来て俺はすっかり呆気に取られて一体彼が誰なのか?また何をしにここへやって来たのかを確かめるため彼の一挙手一投足に注目してみた。すると、どうだろう?奴さんは生意気にもどっしりと、この俺の目の前に座るではないか!そして面と向かって何やらこう話しかけて来た!
「君、名前は?そう!最近入社したの?へぇ~!ところで一体何の本読んでるの?ほう!ドジャース野茂英雄の『僕のトルネード日記』か?ふ~ん!」
俺は、この時直感で相手がどんな立場の人間か、すぐに分かって慌てて椅子を座り直し不必要にも読みかけの本をさっさと終い、ものの見事に固まってしまった!この人確か…ま、間違いない!『フラワーファーマシー株式会社』社長の花輪京之介その人だった。ヤバイ!続けて社長は、この俺を見てゆっくりそして半ば苦笑し乍更にこう話を続ける。
「君ねぇ!休憩時間って言うのは一体何の為に有ると思う?ただこうやってのんびりと身体を休めるためだけにあるんじゃないんだよ!例え休憩時間であろうとも常に会社の役に立つために周りに置いてある資料を読んだり、或いは本社から送られて来たFAXに目を通すなどやらなくちゃ駄目じゃないか!君さぁ『家庭の医学』って本持ってないの?じゃあ早速本屋で買って来て次から此処に座って読みなさい!」
『ハ?何言ってんの、このおっさん!呆れたぁ!この世の中にまだこんなバカ野郎な人間が居たなんて…信じられねぇや!この人社長だろ?休憩時間を誰がどう使おうとアンタの知ったことじゃない!俺の勝手じゃないか!とやかく言われる筋合いは無いだろ!仮にアンタの言うことが正しいとしても一介の社員に対して強制は出来ない筈だぜ!「本を買って読みなさい!」じゃなくて「本買って読む努力をしない!」ぐらいで放っといてくれよ!それと仮にそう言われて従わない社員が居たとしてもアンタは何も注意は出来ないんだぜ!なぜってそんな指示に従う言われも根拠も無い筈だからさ!休憩時間っていうのは全ての労働者に与えられた法的根拠に基づく正当かつ有効な権利手段であって例え雇い主もアンタでもそれに対し一切賃金を払ってない以上何も口出ししちゃいけないんだって!そんなことも知らないで、ただただ上司風吹かせて或いは不当な圧力掛けて立場の弱い社員イジメするなんてどういう了見してんだい、このくそジジイ!』とまぁ短気な俺としては今すぐにでも怒鳴りたいとこだが、解雇されちゃ叶わないんで一応反論することもせず、黙ってヤツの言い分を聞き流すことに…。お陰で俺は社長相手に緊張感やプレッシャーなど一切無くなり、それとは対照的にこの会社に対する不信感が一層強まった。社長退出後に俺は渋々かつ嫌々乍傍に置いてあったFAX等に目を通すも目を引く記事など一切見当たらず、ただただ捲るだけで即捺印、そして元のところへポイって返すだけ!
『新商品のご案内!』『今月の各店舗主力商品売り上げ上位3店発表!』『今月の出勤日程表』『研修及び勉強会のお知らせ』などなど、つまんねぇもんばっかし!ホント嫌になる!
話変わってどこの会社でも必ず1人は居るっていうちょっと…イヤかなりいい加減な仕事をしている割に持ち前の明るさといい、悪気の無い無神経さといい、、加えて笑顔のあどけなさが売りの憎めないタイプ。そう、この店で唯一『詐欺師?』イヤ失礼!つい本音が…!もといこの店で唯一『先生』と呼ばれている、薬種商資格保持者の有働狸左衛門之上資貞公こと、有働貢先生、40歳!
全くあの初出勤時の制服事件と言い、先生と来たらホント笑わせてくれる!ま、本人自体は故意にボケかましている訳でも無く、居たってごくごく自然体なんだが、そこがこれまた妙に面白い!先日、これは小田ちゃんから聞いた話だが、その有働先生!レジ打ちの際に店員自らお客さん一人一人に向かって会員カード入会の勧誘を推進させられるわけだが、彼の場合、とあることでお客さんから突然質問を受け即答したセリフがこちら!
武勇伝その1
「あの…先程からアナタ、『会員カードをお作りなさい!』っておっしゃいますけど、作ると何か特典でもございますの?」ってご婦人から言われ、狸先生曰く…。しかも即答でズバリ!
「無いですよ!ええ、特典なんて…ホント!…ですから作っても余り意味無いんですよね!アハハ…!」ってオイオイ…そこまで言う?ってか、それ言っちゃマズいでしょ!流石に…。その上笑って誤魔化すなんて…サイテー、狸先生!…って俺は思うんだけど…しかもサ、ちゃ―んと新聞の折り込みチラシにデカデカと『只今会員セール実施中!』って派手な見出しで謳ってあるからにして嘘でもそう言わなきゃマズいって言うか、商売にならないんじゃないの、先生!もしもし?先生、人の話聞いてます?そっくりだけに狸寝入り決め込まれても…ホントはこの男、狸の置物が服着て仕事してんじゃないの、実は?更に彼の武勇伝は続く!
それは勿論忘れもしない、まだこの俺がこのお店に就職して間もない頃の話!レジ打ちも接客もままならず、一人店内で品出しに精を出していると、ある一人の中年男性が胃腸薬のことでこの俺に尋ねて来た!…で、当の俺は質問の内容は理解できたものの、返答に窮してしまい、急いで有働先生を呼び止め、バトンタッチしたまでは良いが、肝心な対処法の答えがこれまた…何がどうしてこうなるのか、再現VTRをどうぞ!
「あっ先生!実はこちらのお客様が胃腸薬の件でいろいろとお知りになりたいそうなので、分かり易くご説明して頂けますか?えぇ…じゃあ、宜しくお願いしますね、先生!」
「了解しました‼大船に乗った気分で私に任せなさ―い!」と言うと即その方の方へ直行する有働狸先生!イヤイヤ有働貢先生!軽快な返事と小気味よいテンポで行動に移す姿は、先輩社員としてぜひとも見習べきところではあるんですけど・・・?
そんなこんなで先程胃腸薬をお買い求めなさろうとしたお客様は、当然同じ質問を狸センパイに投げかけることに…!では続きをどうぞお楽しみに…!
武勇伝その2
「あの~もう一度お尋ねしますが、“昭和胃腸薬”と平成製薬の“どうでもEENJA9(いいじゃあないん)”とは成分がどう違うんですか?」ってマジ真剣な顔でお尋ねになる、お客様に対して彼が下したアドバイスがコレ!
「ウ~ン!そうですね、ま、強いて言えば…そう!唯一の違いは…?」
「フムフム…唯一の違いと申しますと…?何です、先生?」と興味津々のお客様!
「そう!メーカーが違うって事でしょうな!」
「ハ?」
「ま、どちらにしてもそう大して差は無いと思いますよ!試しにどちらかお好きな方を選んで、もし効き目が無かったら、すぐにお近くの胃腸科へ行って専門のお医者さんに診て貰って下さい!きっと良くなると思いますよ!アッハッハッハ!」
お客様、言わずもがな…「.....?」
「有働先生!先生は大先輩ですし、先輩に意見するなんて、まだまだ100年は早いとは思いますが、一言だけツッコミをば入れ申しても良かですか?」(←「なにゆえ九州弁?」)
「それじゃ最初っから市販薬なんて要らねぇじゃね―か、コノヤロー!先生、ホントに商売する、お気持ちは御座いますか?お給料一体どこから頂いているか知ってます?会社じゃありませんよ、お客様からですからね!マジで!笑っちゃいけないけど、どっからそういう発想につながるんでしょうねぇ?有働先生、“薬種商”の資格って一体…?俺、人間不信どころか資格不審に陥りそうですよ!ホント!加えてもう1つ悲しいお知らせが…?結局そのお客様、何も買わずに帰って行かれたそうですけど、ご存じですか?」
他にもまだ話題性豊かな彼なのだが、「…ったくもう、しょうがねぇなぁ!」と思う以外、殊の外非難したり軽蔑したりってことは俺自身一度も無い!また周囲の反応にしても同様で笑われることはあっても決して嫌われることの無い正に稀有な存在の有働貢先生!彼の不思議な魅力とは一体…それは敢えて言うまでも無く、その人柄即ち人間性に有ると言っても過言ではないだろう!有働先生は、努めて、とにかく他人の悪口を言ったりとか相手が気分を害するような発言は一切しないところだ!その上“薬種商”という特別な資格を持っているからと言ってそのことを自慢の種にしたり、また威張ったりしない先生は、本当にご立派な性格だと俺は思う!これは得てして本来人間が身に付けるべき大切な素養ではないだろうか?
会社ではマイナス評価の人間でも同僚からは常に好かれるタイプ、そう、かの有名な映画『釣りバカ日誌』の主人公の浜ちゃんこと、浜崎伝助氏然り!彼のような人間はギスギスした現代社会の潤滑油として当然求められて良い存在で彼が居るからこそ、常に職場では笑いが絶えないだろうし、彼のお陰で周りの人間もリラックスして仕事に専念できるじゃないかな?ゆえに先生は正に、この職場に絶対欠かせない貴重な存在なのかも知れない!有働先生、聞いてますか?え?今控室で❝○ん兵衛❞食べてるって?狸なのに…?
…とは言え、敢えて難を言わせて貰えば、これは絶対的正論とは言えず、あくまでも私見の範囲内で許されることであり、皆彼のようだと商売自体成り立たず、また会社も潰れ兼ねない危険性を孕んでいることも否めない!要は『人間、四角四面よりも和やかな気持ちで何事も笑い飛ばし、長い人生、気楽に行こうぜ、なぁ兄弟!で良いんじゃないですか?』って話だ!
おっと、それともう1つ!読者の皆さんにぜひとも勘違いして欲しくないのは、この話は彼個人の性格に纏わる、ほのぼのとした笑い話の1つであり、“薬種商”の資格を持つ人間が皆そうだという勘違いや偏見は一切しないで頂きたい!誰でも簡単に取れる資格では無いし、それを馬鹿にしている訳では決して無いということも併せてて宜しくお願い申し上げます!以上 つづく
愈々4月になりますね!しかも1日が月曜だから何かキリの良いSTARTになりそうな気がします!私、のがみにしても同様に過去を捨て、或いは過去を振り返らずにここから新しい自分探しの本気モードへ入る所存です!大好きな大谷翔平選手を見習い二刀流を目指すに当たって絶対に共倒れだけは避けねばと…老体に鞭打って生活していきたいとガチで思ってます!毎月1曲、新曲作成と毎週小説2投稿ですな!気合い入れる像~!パオ~ン!←いつも同じギャグですみません!