友&愛~『俺とお前』~第4話
運良く次なる就職先が見つかったのはいいものの、“何か変!何か怪しい!どう見てもどう解釈しても何か犯罪めいた匂いがする”と言った正に偏見と妄想に振り回され、自分が如何にも事件に巻き込まれ兼ねない予感のする俺、30歳!さて今回とうと見込まれて目出度く舎弟の1人になるのか?それとも隙を見て逃げ出す勇気があるのか、目が泳ぎ焦点定まらず情緒不安定な私の冒険記をとくと、ご覧『あれぇ~お代官様お止めになってぇ、そんなご無体な!』(意味不明なんで無視して読みましょう!)
第4話『怪しいボウ(?)警備会社訪問(後編)』
「あ、そうそう!さっきうちの若い衆が出て行ったと思うんだけど、見かけなかった?そう、3、4人連れの若い男女…?」
『そう言えば確かにさっきドアの所で擦れ違ったような…って?う、うそだろ?あれが社員?マジかよ?あの怖そうな目つきの…?俺…ど、どうしょう?マズイなぁ!これ以上ここに居ちゃ一体どんな目に遭わされるか分かったもんじゃないぞ!』
「ところで兄ちゃん、結婚は?あ、そう、まだなんだ!羨ましい限りだねぇ、へえ~独身貴族かぁ!いいよなぁ、自由気ままで何をやろうと誰からもお咎めをうけるわけじゃないしね!自分勝手にあんなことやこんなことまでやれるんだから…チキショーいいよなぁ!この俺なんてさ、始終女房の尻に敷かれてるもんだから、小遣いなんざ毎月3000円ぽっちだよ!今時小学生でも少な過ぎるっていうのに…可哀そうな身の上話だとは思わねぇかい?世知辛いこの時世に“夏目漱石”3枚で一体何ができるのよ?ってね!ま、何だ!“結婚は人生の墓場”って言うぐらいだから兄ちゃん、ヤケ起こさずにいいお相手探しなよ!とにかくこれからが勝負時だから頑張ってね!うんうん!兄ちゃんみたいな色男なら掃いて捨てるほどの美女が寄って来るよ、絶対!この俺が保証するって!心配要らないからどーんと、この俺に全て任せなさ~い!悪いようにはしないから…!ね!何ならうちの受付嬢に紹介してあげてもいいよ!彼女若いからさ、まだ彼氏は居ないと思うんだよね!きっと、うまくいくって…結婚したら仲人してあげるから大船に乗ったつもりで…!よーし、それじゃ明日から入社決定!彼女きっと大喜びするぜぇ!このぉ、ニクイ、ニクイぞ、色男!うひゃー!ドラマチック!」
人間って不思議だ!一人で話を飛躍させて一人で盛り上がれることができるなんて…多分こういう人の方が小説家向きなんだろうなぁ!俺には到底無理な話だけど…!
「おっといけねぇ!大事なこと言うの忘れてた!ただし、うちの取引先の女性には絶対手を出しちゃだめだよ!どんなに可愛くてもそればっかしは、ご法度だからね!前回の話で弾かれた奴ね、それやっちゃってクビになったから!実は相手の女の子ね、お偉いさんのコレだったのよ!コレ!分かるよね?」
そう言うと社長は俺の目の前で小指一本を突き立てて、マジ眉間にしわ寄せ顔面凶器で迫って来るもんだから俺、もう悶絶!ていうか半分死んでいるんだけど…とにかく極度の緊張と真面に相手を正視できない俺は、何を勘違いしたか、社長の最後の仕草を全く別の解釈しちゃってもう大変!『もし入社断ったりでもしたらコレ(小指)が飛ぶからな!』ってな具合でサーって血の気が引いてしまった。
「あ、そうだ!そうだ!“入社に関する雇用契約書”いま準備するから待っててね!」
「あ…う…そ、そのぉ、え、え―と、あ、あの…ト、トイレ、トイレに…行か…へてくらはい!」
そういうが早いか、俺は腰が引けて…それどころじゃないんだけど、やっとの思いで立ち上がると全速力で社長室を抜け出し、玄関入口まで猛ダッシュ!多分50m走の8、9秒台は出てかも…?(大袈裟ですが…)そして秘書が居た受付窓口まで来たとき、その彼女が「あ、今からお茶をお持ちしますから…!」の言葉も聞かず、半分転びそうになり乍らそれでも一目散に1階まで駆け下りて行き、即車に飛び乗り急発進!その場からかなり離れた所で車を止め、缶ジュース片手にやっとの思いで何とか平静を取り戻すことに…。
「ハア―危ねぇ、危ねぇ!幾ら世の中不況とは言え、何でもかんでも飛びつくもんじゃねぇなぁ!もうちょっとで危うく殺されかけるところだったぜ!」
それから夕方近くになって今日面接して頂いた警備会社社長の奥さんから俺宛に電話があって俺はビビり捲りながらも恐る恐るに出てみると…?“十中八九、本当99%怒鳴られるんだろうな!”と思いきや、奥さんは全く冷静そのもので明るく穏やかな口調で話し始めた。と言うのも実は彼女はこの俺が面接会場から突然居なくなったもんだから心配してお電話を下さったのだ。従って会話の中でもこの俺を責め立てるような言葉は何一つも見当たらず、それどころか奥さんとしても大体察しがついていたらしくて笑いながらこうおっしゃって下さった!
「今日は本当にごめんなさいね!びっくりしたでしょ?主人ああいう感じの人間だからしょっちゅう間違えられるのよね!そう、怖そうな団体さんの親分じゃないかって?しかも口調とか言葉遣いが如何にもソレっぽいから余計に変な妄想してしまうわよね!当然と言えば当然!その上根っからの時代劇フアンだからつい真似して『客人』だの、『若い衆』だの訳分かんないこと言っちゃって…何て言うのかな、すぐ影響を受け易いタイプって言うのかしらね?まぁでも元々前職がマル暴取締役の刑事だったからそう思われても仕方無いわね!『せめて面接する時は薄色のサングラスだけは外しなさいよ!』って言ったんだけど、歳だから本人すっかり忘れちゃって…本当そそっかしいお父さんでしょ?困っちゃうわ!」
『あ~ぁ何て事だい!この俺としたことが何てバカな見当違いしたんだろ?バカ、バカ、バカ…!こんなに優しい方々だったのに外見や雰囲気だけで自分勝手に相手を判断して…その場を逃げ出すとは…俺って超サイテーな、くそ野郎だよな!早とちり、早合点そして相手を見る目の無さにはほとほと呆れてしまう。』こんな自分に内心凄く腹が立った。
結局相手方の奥さんには心から深く深くお詫びを申し上げた上で改めて入社する意思の無いことを伝え、静かに受話器を置くと暫くはボーっとしたまま大の字になって天井を見つめていた。
「俺っていつもこんな感じでほんのちょっとの擦れ違いから大事なチャンスやタイミングを逃す運命にあるんだよなぁ!あ―ぁ、つくづく嫌に………。」
気が付くと俺は翌朝畳の上で布団も敷かずそのまま電気を点けっ放しで一晩過ごしていたらしい。ノー天気と言うか、幸せな奴と申しましょうか、本当処置無しな俺!恐らくと言うか多分俺って本当は血液型がAじゃ無いような気がする!もしかして間違ってんじゃないのかな、俺の血液型!そういや二十歳の献血よくやってたからあの時呑気なお隣さんと入れ替わったのかも?(…なわけ無いか!)
さて幾ら自分の不甲斐なさを嘆いたところでどうにもならないと悟った俺はそう思うが早いか翌朝早く職安に乗り込んで張り紙を上から下までくまなく見回し職探しに専念することに!
“『柿坂郵便局』 仕分け作業アルバイト 時給700円より”
の募集広告に目が留まり思わず歓喜の雄叫びを(大袈裟な!)心の中で連呼しながら即メモ帳に連絡先等を記入!
『ひゃー天下の郵便局で仕事できるなんて何てツイているんだ、この俺は!こりゃもしかして、もしかすると働き次第によっては正社員登用!ってなことになっちゃうかもよ!そうなるとあれだな?窓口業務でお目当てのカワイ子ちゃんとの運命的出会いの場が広がって…ムフフフ!『今度僕と夜明けの年賀状配達でもしませんか?ってね!そして『簡保の宿でカッポ酒でも飲みませんか、お嬢さん!キャー恥ずかしい!青竹でポカンと一発派手に“調子コイてんじゃねーぞ!ってな具合で彼女から後頭部殴られたりして…!アハハハ…鼻血が止まんねー!みたいな…!(妄想は自由です!)とにかくハッピー、ラッキー、ウシシのシ!』
俺は早速電話で予約を取り、即面接を受けることに…言わずもがな、採用決定!(アルバイトですから当たり前!)で“明日から早速出勤せよ!”との指令を受け、俺は有頂天で現場へ余裕の30分前到着。バリバリの軽装に身をまとい、弾けるような笑顔(大袈裟にも程がある)&猛ファイトで一生懸命働いた。本当わざとらしいくらいイイ子ぶって真面目に労働者の鑑みたく、せっせと朝から夕方まで単純作業なんだけど仕分けオンリー!…で、初出勤から3日後の朝、同僚のオバちゃんたちから“過去アルバイト生がそのまま正社員として登用されたケースは日本全国未だかつて何処を探してもそういった事例は存在しないわよ!”って聞かされ、4日めからは地道にギリギリ出社が多くなったことは言うまでもない。
そうそう話は変わるけどその昔学校の先生や親たちから“他人を外見や見かけで判断してはいけません!”と教わったにも関わらず、前回の警備会社面接と言い、今回もやっぱりその悪い癖が治っていない俺!どうしたもんかなぁ―???
「面接官の郵便局長の顔はどう見たって“8・9・3”顔だぁ―ッ!」(つづく)
ま、そうですね!実際警備会社で面接を受けた際、そのような体験は架空のもので事実無根ではあるんですが、部屋の内装と金髪さんたちにビビッて話半分聞いてお断りの電話を入れたことは事実です!どうも私って生き物は変に妄想が先走りするって言うか、いろいろ想像してあることないこと自分自身に吹き込んでしまうタイプなんで!早い話がTVの見過ぎズバリですね!影響され易い変なおじさんです!それじゃ今週も防疫と感染対策に留意して楽しい1週間を送って下さいね!金曜、土曜、日曜3連休が待ってますよ―!お家で美味しいもの一杯食べて家族団欒を楽しんで下さいね!