1.始まりの宣告
初めの方、ようこそ。
前の作品を知っている方はいつもありがとうございます。
本作はここ1か月間仕事の合間に頭の中に流れ続けていた妄想を文章にしたものです。
なのでかなーり内容が飛んでると思います。読みにくかったらごめんなさい。
【スキルの始まりとは原初の女神の詩であったと謂われている。
女神の詩は世界を形作り、物事に意味を持たせ、あらゆる法則を作り出した。
それら全てがスキルであり、故にスキルとは……】
女神歴1721年4月2日。
パルミシア王国王都、神殿にて。
この日はこの国の第3王子の5歳の誕生日であり、ギフトを確認する日であった。
ギフトとは女神様からこの地に生きる全ての者に贈られるもので、誰でも生まれながらに1つギフトを持っている。
そしてそのギフトの内容次第でその人の人生の方向性が決まると言っても過言ではない。
なぜ5歳になってから確認するかと言えば、それまでは肉体と精神が安定していないため正確な判定が行えないからだ。
「おぉ、クリストファー様がいらしたぞ」
「いつ見ても可愛らしい」
「いやいや凛々しいお姿と呼ぶべきだろう」
「どちらにしろどんなすごいギフトが贈られているのか楽しみだな」
「ああ」
一般の子供であれば近所の神殿でひっそりと行われるが、王子ともなれば1大国家行事だ。
多くの貴族たちが品定めの意味も含めて神殿へと詰めかけている。
そして上の2人の王子のギフトが最上級のものであったし、第3王子クリストファーは小さいながらも聡明で何をやっても卒なく熟していたから、多くの人が期待の眼差しを向けていた。
「クリストファー・パルミシア。こちらへ」
「はい!」
神官長の言葉に元気に返事をしたクリス王子が祭壇前に進み出る。
「これより貴方のギフトを確認する。目を瞑り全身の力を抜いておきなさい」
「はい」
「では……」
王子の額に右手をかざした神官長が何かしらの呪文を唱える。
全身が光に包まれる王子。その光はほんの数秒で消えた。
「ふむ、確認できました。しかし、これは……」
「気にせず教えてください。私は例え役に立たないギフトだとしても受け入れる覚悟は出来ています」
「なんとご立派な。分かりました。
王子。貴方のギフトは【最上級 器用貧乏】です」
「そうですか……器用貧乏、ですか」
ギフト【器用貧乏】。
それは数多あるギフトの中でも『ハズレ』としてメジャーなものだ。
このギフトの効果はあらゆるスキルのレベル1習得が容易になるといもので、その代わりどのスキルもレベル2にするのに他の人の数倍、レベル3以上なら数十倍掛かると言われている。
スキルの説明をすれば、レベル1は使えはするが1人前とは言い難い、見習いと言った習熟度だ。
レベル3で熟練者。レベル5で達人。レベル7はその道を極めたほんの一握りの武神とか大賢者と呼ばれるような人だ。
もちろん同じレベルでもピンキリではあるが2つ以上レベルが離れると全く太刀打ちできないというのがこの世界の共通認識だ。
そして如何なるスキルであってもレベル3に達していない人は所謂『半人前』と見なされる。
つまりギフト【器用貧乏】とは何をやっても半人前を抜け出すことが困難だと言える。
それを聞いたその場にいた貴族たちから落胆のため息が聞こえてくる。
誰も彼もが期待していた分、失望も大きかったようだ。
「そうか。何でも器用に出来ていたのはギフトのお陰だったんだな」
「そうみたいだな。3歳で神童、大人になったらただの人とは良くいったものだ」
そんな声がどこかからともなく聞こえてくる。
実際この場で落胆していないのはクリス王子とその家族、つまり王家だけだったかもしれない。
家族が落胆していないのは、なにがあっても自分たちの家族であることに変わりはないと考えていたからだ。王家でありながら家族仲は良好であった。
「それでその、最上級とはどういう意味でしょう?」
王妃のその問に神官長が答えた。
「はい。ありとあらゆるスキルの習得が可能であるそうです。
しかし、その代償にどんなに努力してもレベル2に至る事が出来ないというもののようです」
「そうですか。それは良かったですわ」
「は?良かった、ですか?しかし……」
予想だにしなかった良かった発言に困惑する神官長。
しかしそんなことはお構いなしに王妃は続けた。
「だってこれでようやくこの子の教育方針が決められるのですもの。
これまで剣も魔法も学問も卒なく熟すでしょう?
だから何を中心に伸ばせば良いのか分からなかったのよ。
でもこれで全部を満遍なくやれば良いことが分かってスッキリしたわ」
「しかし結局レベル1では役に立たないのでは?」
「それは後で考えるわ。
さあクリス。帰って猛勉強よ。これからは学ぶことが倍、いえ3倍になったと思いなさい」
「はい、お母さま」
「さ、さんばい……」
「おいおい、クリスの奴死んじまうんじゃないか?」
母親である王妃の宣言に戦慄する上の兄弟2人。
それをよそにクリスと王妃はその場を後にし、国王がその場の解散を宣言する。
「これにてクリストファーのギフト式典を終了する。
……。
ああ、そうそう。そなたらがギフトのみでその者の価値を判断するというのであれば、この場に居る何人を無価値と見做さねばならんのだろうな」
最後に付け加えた一言に神殿内の空気が明らかに気まずいものへと変わる。
思い当たる者たちは青い顔をしながらその場を去っていった。
第1章分(8話)は描き終えているので、1日1話公開して行く予定です。
それと2章は当分待ってください。
本来描き続けている作品がまだまだ終わっていないのでそちらに集中する予定です。
それが終わってから2章に進む予定です。
今連載中の作品はこちら
【竜宮農場へようこそ!!】
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