間宮さんの秘密/パーティー開始!
「ただいまー!」
「ただいま戻りました、皆さま」
――奥様と間宮さんが帰ってきた。沢山の買い物袋を抱えて。どうやら、俺達が準備をしている間にも、この二人はかなり楽しんでいたようだ。実際、この二人はかなり昔からの仲らしいので、きっとこの屋敷の中でのような主従関係ではなく、普通の友人同士のようなやりとりをしていたのだろう。……そう思わずにはいられない程、二人とも楽しそうな表情をしていたのだ。
「じゃ、パーティー会場に案内してもらおうかな」
「……えっと、ひょっとしてもう間宮さんも……」
「ええ。……すみません、聞くつもりはなかったのですが……」
……どうやら、間宮さんは前々から今回の一連のあれこれを把握していたみたいだ。どうやらやはり、この屋敷の中で間宮さんに隠し事は通用しないみたいだ。
「ふふっ、気にしなくて大丈夫よ晃くん。パーティーのこと知ってから、間宮ってばずっとテンション上がりっぱなしだったみたいだしね?」
「それはまあ、否定はしませんが……。その、あまりそういう話は他の皆さんにはしないで欲しいのですが、せんぱ……、奥様」
「あらあら、照れちゃった。ホント、昔っから褒められたり感謝されるの苦手なんだから」
……今の間宮さんの言い間違いから察するに、奥様と間宮さんはどうやら先輩後輩の関係だったみたいだ。間宮さんと奥様の学生時代……、かなり気になる。
「あの、南雲さん。できれば、私と奥様の昔の関係のことは、他の皆さまには内緒にしていただけますでしょうか」
「それは、もちろん構いませんよ。……でも、なんで秘密にしているんですか?」
どうやら今日の間宮さんは、いつもと違ってオフモードなようなので、思い切って質問をしてみた。……普段なら遠慮して聞けないんだけど、今日の間宮さんになら聞けそうな気がしたのだ。
「別に、大した理由ではないんですが……。まあ、一言で言ってしまえば、“恥ずかしいから”ですかね……。いやまあ、なんで恥ずかしいのか、と聞かれると正直答えられないんですけどね」
間宮さんにしては珍しい苦笑まじりの表情で、そう歯切れ悪く答えた。……なんとも普段の間宮さんとは似ても似つかない様子で、正直ちょっと面白い。まあ、それを直接言う勇気は流石にないけれど。
*
「それじゃ、パーティー開始ぃー!」
もはやこういう会での恒例となったクリスからの掛け声をきっかけに、間宮さんへの感謝のパーティーが始めまった。……実際の所は、いつもの皆でワイワイやるパーティーでしかないんだけど。まあ、間宮さんも楽しそうにしてくれているし、結果オーライだろうけど。
「にしても、私服の間宮さんって新鮮ですねー。……結構攻めてますね」
「攻めて……、ますかね?」
八橋さんに言われて改めて気づいたけど、今日の間宮さんは珍しくメイド服ではない。まあ、今日はメイドとしての仕事は休んでもらっているわけだから当たり前といえば当たり前なんだけど、やっぱり珍しい格好なことには変わりない。文化祭に来ていた時も私服ではあったけど、今日の服装はあの時のそれとは大分異なる。
「皆は知らないと思うけど、間宮は昔からこういう服装が好みなのよ? 普段の性格からは考えられないけどね、ふふっ。でもまあ、その年でそれだけボディライン出しても違和感ないのはやっぱり流石よねぇ……。羨ましいというかなんというか」
「いえその……。奥様がそれを言ってしまわれるのですね……」
……実際、奥様も間宮さんもスタイルは抜群だ。二人とも確実に30代ではあるはずなのに、全くそうは見えない。自分たちと並んで“学校の先輩です”って言っても通用してしまうんじゃないか……、とか考えてしまうくらいには。
「しかし、八橋様やイネス様まで手伝ってくださっていたのですね」
「当たり前じゃないですかっ。アタシ、間宮さんには散々お世話になってますから。前にここに泊めてもらった時も、色々助けてくれましたし」
もう結構前の話にはなるけど、八橋さんは一週間くらいこの星之宮家に泊まっていたことがあった。……その最後の日の夜に告白されたこともあって、俺としては中々忘れられない出来事だ。そして確かに、思い出してみると八橋さんと間宮さんは結構よく話してたっけ。どんな話をしていたのかは分からずじまいだったけど……、今の八橋さんの発言からすると、どうやら色々と八橋さんの為になるようなことを話していたみたいだ。
「ワタクシもですわ。ワタクシもナタリアも日本には不慣れでしたから、色々教えていただきましたもの」
ナタリアさんというのは、イネスさんと一緒に日本に来たメイドさんで、今はイネスさんの家で働いている方だ。……確かに、二人共日本に来るのは初めてだと言っていた記憶があったし、最初の頃はきっと間宮さんに助けてもらうことも多かったのだろう。
「そんなに言われる程特別なことをしたつもりはありませんが……。いえ、ここで感謝を受け取らないのは却って失礼ですね。――ありがとうございます、皆さん」
そう言って深々と頭を上げる間宮さん。そして数秒後、顔を上げた間宮さんの目元には、うっすらとではあるが光るものがあった……、気がする。まあ、それが俺の見間違いだとしても、今回のパーティーは成功と言って間違いないだろう。なぜなら――
――未だかつて見たことがない程の、晴れやかな笑顔を浮かべてくれたのだから。




