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ただいまパーティー準備中②

「……っくしゅんっ」

「どうしたんです、センパイ? 風邪ですか?」

「いや、そうじゃないと思うけど……。うーん、誰か私の噂でもしてたのかなぁ?」


 あっくんとイネスが厨房で食事を作っている頃、私とほたるちゃんは今回のパーティー会場になる大広間の掃除をしていた。


「いやぁ、それにしても……。晃センパイ、こんな広い部屋をいつも一人で掃除してたんですね……。素直に尊敬です」

「そうだね……。自分の部屋を掃除するのとは訳が違うね、これ……」


 この大広間は、名前の通りかなりの広さを持つ。だいたい学校の教室がすっぽり二つ入ってしまうくらいの面積はあるはずだ。私たち二人がかりでもまだ終わりが見えてないのに、あっくんはこれを毎日一人でやってたなんて……。今更ながら、あっくんと間宮の凄さを思い知ってしまった。


「別に汚れてはないんですけどねぇ……。なにせ単純に広いから、中々手が回らないですねぇ……」

「まあ、あっくんも最悪やらなくても大丈夫、って言ってたけど……。頼まれた以上はやらないとね」


 一応そろそろ終わりそうではあるし、このままやり切ってしまおう。……まあ、それが終わったら今度はプレゼントの買い出しに行かないといけないんだけどね。うーん、順番逆の方が良かったかなぁ……。


「さすがクリスセンパイ。じゃあ、アタシも最後までお手伝いしますよっ、と」

「うん、ありがとねほたるちゃん」


 という訳で、それぞれ持ち場について掃除を再開。……ただまあ、作業内容自体はそこまで難しくもないし、慣れてきたこともあって、気づけば自然と雑談を初めていた。


「そーいえば、最近晃センパイとはどうです? ついこの前もデート行ってたみたいですし、そんなに心配はしてないですけど」

「あはは……。まあ、おかげ様で仲良くできてる、かな?」

「なら良かったです。やっぱり、お二人が仲良くしてないとこっちも困りますしねー」

「……困る?」


 ……私たちの仲が理由で困るなんてことないと思うけどなー、と思って聞いてみる。するとほたるちゃんはいやいや、と大仰に手を振り、笑いながらこう返してくれた。


「そりゃ困りますって。だって、お二人が仲悪そうにしてたらこっちも気になりますもん。もしそうなったらやっぱり心配しちゃいますし、なんなら理由を聞いたりするかもしれないくらいです」

「……そっか。なら、皆の為にも仲良くしないとね」


 ……確かに、自分の友達同士が仲悪そうにしてたら色々考えちゃうか。


「ははっ、そうしてください。……せっかく、付き合えたんですから」

「……うん。そうだね」


 ――ほたるちゃんの一言が、不意打ちで私の心に重く響いた。


 ……そう、私は付き合えたんだ。心の底から大好きな男の子と。だからこそ、その裏で同じ男の子に、同じくらい心の底から恋をしている女の子の失恋があったことは、決して忘れちゃいけないんだ。


「……あ、いやその……。そういう意図で言ったわけじゃないですよ?」


 私からの返答の声色に違和感を覚えたようで、ほたるちゃんが弁解をしてきた。


「ああ、うん。分かってるよそれは。……でもまあ、改めて気づかせてくれたのは確かだし、ね」

「あはは……。アタシ的にはそんなに気にしなくって大丈夫なんですけどね……。アタシは、お二人が幸せそうにしてるのを見るの、好きですし」


 そう言うほたるちゃんの表情は、少なくとも嘘を吐いているようには見えなかった。


 ……やっぱりすごいな、ほたるちゃんは。


 もしあっくんの返答が、ちょっとだけ違って、私とほたるちゃんの立場が逆だったとしたら。……私は、ほたるちゃんと同じことを、同じ表情で言えるだろうか。


「……私には、無理かもね」


 ……なぜなら、間違いなく嫉妬してしまうだろうから。


「センパイの考えてること、なんとなーく分かりますけど。……正直、考えてもしょうがないと思いますよ? そもそも、私も別に嫉妬してない訳じゃないですしね?」

「そうなの?」

「はいっ。そりゃもう嫉妬しまくりですよ。なにせ、部室でもイチャコラしまっくてくれますしねー」

「あはは……。うん、ちょっと控えるように頑張ってみるね……」


 確かに、前にイネスにも「少しは場所をわきまえた方がいいですわよ」って言われたことあったし。友達しかいない場だからって、少しはっちゃけ過ぎてたかもしれない。


「ま、アタシは別にどっちでもいいですけどねー」

「……ありがとね、ほたるちゃん」

「どうもどうも。――さてっ、そろそろ掃除に戻りましょ、センパイ。二人して手止まっちゃってますよ?」

「おっと、そうだった。じゃ、気を取り直して頑張ろっか」

「はいっ!」


 ――いつか、またほたるちゃんが恋をしたら。その時は、全身全霊で力になってあげよう。今の私も、ほたるちゃんにいっぱい助けて貰ったのだから。


「センパイ、手ぇ止まってますよー?」

「おっと、ごめんごめんっ」


 ……うーん、あんまり今考えることじゃなかったかも?

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