表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/128

私の欲しいもの①

「……まあ、こんなものでしょうか」

「ですね。実際に飾るのは前日にならないと出来ませんし」


 週末。写真展のレイアウトや実際に飾る写真についての話し合いも全て終わり、あとは前日の準備を待つだけとなった。……まあ、まだ一週間くらい余裕あるし、なんだかんだ来週も話し合ってるんだろうけど。


「それにしても、思ってたよりはあっさり決まったね」

「それはまあ、あまりここに時間かけてもしょうがありませんし」

「写真も出そろってますし、使える部屋の広さも決まってますからねー。そんなに色々考えることもないっていうか」


 ちなみに写真展の会場になる部屋はこの部室ではなく、普通の教室だ。といっても他の部活と共同で使うことになってるから、使えるのは半分程度の広さしかないけど。


「じゃ、今日はこれで解散ってことで!」

「ええ。また来週ですわ」

「お疲れ様でーすっ」

「お疲れ、みんな」


 というわけで今日は普段より少し早めに解散することに。まあ、今週はずっと話し合ってばかりで忙しかったし、偶にはこういうのも必要だろう。


「あれ、クリスセンパイと晃センパイは帰らないんです?」

「ああ、うん。正確には帰りたくても帰れないというか……」

「なんか今日は間宮も忙しいみたいでさ。まだ迎えに来られないらしいんだよね」

「あー、それで待ってるしかないってことですか」

「そういうこと」


 歩いて帰れる距離でもないので、迎えが来るまで待っているしかないという訳だ。暇なのは暇だけど、クリスと二人なら退屈するなんてことは有り得ないし、ゆっくり待つことにするつもりだ。


「ふふ、なるほどですわ。……さ、帰りましょう、ホタル。最近我が家の近くで中々良い雰囲気のカフェを見つけたんですの。二人で行ってみませんか?」

「え、いいんですかイネスセンパイ? はいっ、もちろん行きますっ!」

「はしゃぎすぎですわよ、もう。友人どうしでカフェに行くなんて普通のことじゃありませんか。……さ、あとはお二人で仲睦まじくごゆっくりしてくださいな、クリス」


 意味深な視線をクリスに向けて微笑んでいるイネスさん。そしてその視線から逃れながら真っ赤な顔になっているクリス。……どうやら、俺の知らないところで何かあったみたいだ。


「……へ? ……って、そ、そういうのじゃないよっ、もうっ!」

「ふふっ、照れないでもよいではないですか。――まあ、そういうことにしておきましょうか。さ、行きますわよホタル。あまりここにいると甘ったるい空気でカフェにつく前に胸やけしてしまいますわ」

「ですね。ちょっとお裾分けしてもらう分にはいいですけど、あんまり他人が吸い過ぎると毒ですね、この空気は。てなわけでセンパイがた、さようならでーす」


 とまあそんな台詞を残して、やけにニヤニヤしながら八橋さんとイネスさんは帰っていった。にしても……、そんなに甘い雰囲気出てたかな?


「ど、どうする、クリス?」

「えっと、どうするって言っても……その、待ってるしかない、んじゃないかな?」


 お互いに若干上ずった声になってしまった。……最近は家でも二人っきりの時間が増えてきたし、恋人として二人きりなこと自体にはだいぶ慣れてきたけど、それをさっきみたいにからかわれるのはまだ慣れない。まあ、あの二人に悪気がある訳じゃないのは分かってるんだけど。


「じゃあ、お菓子でも食べながら待ってよっか。買ってくるよ」

「……わ、私も行く」


 普段なら俺に任せて部室で待ってるって言うのに。……二人きりなことで、完全に恋人モードになってるみたいだ。


「いいけど……。部屋でたら切り替えてね、一応」

「分かってる分かってる。流石に私もそこまで抜けてないって」


 どうかなぁ……。今俺が言わなかったらうっかりこのままのペースで廊下に出そうな雰囲気だったけど、気のせいだったのだろうか。


「ほら行こっ、あっくん。早くしないと購買も閉まっちゃうよっ」

「分かったっ、分かったから手引っ張んないで……」


 ……やっぱり分かってない気がするんだけど。大丈夫かなぁ……。


 *


「ね、大丈夫だったでしょ?」

「……おみそれしました」


 部室を出る直前まであの調子だったのに、一歩廊下に出た途端すぐに華麗なお嬢様に変身出来るんだからやっぱり凄い。いやまあ、普段だって華麗ではあるんだけど。


「ふふん、私だって何も考えてない訳じゃないんだから。――さ、食べよ食べよっ」


 言いながら買ってきたケーキの箱を開けるクリス。中にはもう見るだけで美味しいのが分かる見事なショートケーキが二切れ入っている。いつ見ても思うけど、やっぱり学校の購買とは思えないクオリティだ。流石はお金持ちばかりが通う学校だ。


「そういえば、さっきイネスさんと話してたのって、なんだったの?」


 ふと思い出したので、雑談気分でさっきのイネスさんとのやり取りについて聞いてみた。イネスさんの発言自体は普通だったけど、それに対するクリスの反応がいくらなんでも露骨すぎた。あれじゃなにか隠してることは丸わかりだ。


「……え? いや、なな、なんでもない、よ?」


 やたらと声を上ずらせながらそっぽを向くクリス。……あやしい、やっぱりなにか隠してる。まあ別に大したことじゃないとは思うけど、気になるのでちょっと追及して見ることに。普段はクリスの方にからかわれっぱなしだし、たまにはこういうのも良いだろう。


 ――とまあ、最初はかなり気楽な気分だったんだけど……、まさかあんなことになるとは。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ