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閑話――冬の予定

「こんにちはー! ごめんねイネス、遅くなっちゃって。ちょっと家でお客さんと話さないといけなくってさ。……撮影はどうだった?」


 とりあえずイネスさんが納得するまで写真を撮りまくり、リビングで一休みしていた時、ようやくクリスがやってきた。遅れたことのお詫びなのか、ケーキが入ってると思われる紙箱を持っている。


「……まあ、及第点といった具合ですわね。また後日一人で撮り直してみるつもりですわ」

「イネスの言う及第点って凄い高いからなー。これは期待できそうかな?」


 流石に長年イネスさんの親友をやってるだけあって、イネスさんのストイックぶりもお見通しなようだ。実際、一つの構図に対してかなりの回数リテイクしていたし、凄い出来の写真になっているのは間違いないだろう。


「さて、クリスも来ましたし、撮影もひと段落着きましたから、ティータイムにしましょうか。……ついでに、ワタクシからの相談を聞いてくださるとありがたいのですが、良いですか?」

「いやいや、いいかも何もそのために来たんだし。にしても、イネスから相談って珍しいね。……その、なにかあった?」


 心配そうな表情で椅子に座るクリス。確かにイネスさんはあまり人に頼ったりしないタイプだし、その気持ちは分かる。特に最近は、悩みの種だった許嫁の方との関係も良くなったらしく、前みたいな愚痴もほとんど言わなくなっていただけに尚更だ。


「いえ、別に悩みがあるとか、心配事があるとかではありません。まだ先の話ではありますが、冬休みのことについての相談ですわ。……でも、ありがとう、クリス」

「なーんだ、そっか。ま、困ってるとかじゃなくてよかったよかった。……でも、もう冬休みの話? まだ3ヶ月くらい先だよ?」


 冬休みが始まるのは大体クリスマスの少し前。なにかイネスさんが計画してることがあるにせよ、確かにちょっと気が早すぎる気はするかもしれない。


「まあ、普通ならそうなのですが。その……冬休みには、皆さんをフランスに招待しようと考えているのです」

「……フランスに?」


 思わずオウム返ししてしまった。……フランス。イネスさんの故郷であり、日本から遠くはなれたヨーロッパの地にある国。当然、時間的にも金銭的にも(まあ金銭面はクリスには関係ないか)そうそういける場所ではない。


「ええ。最初はマリニャーヌの実家に……と思ってましたが、せっかくですしパリの別宅を使わせてもらうことにしましたわ。家の承諾は得ていますから、後は皆次第ですわ」


 さらっととんでもないことを言ってのけるイネスさん。パリといえばもちろんフランスの首都であり、花の都という別名で知られるほど華やかな街だ。……当然だが、俺は行ったことなどない。……そもそもまだパスポートすら持ったことないよ。


「あー、それは確かに早めに準備しないとダメだね。私もあっくんもパスポート持ってないし」

「え、クリスも持ってないの?」


 てっきり持ってるものだと思ってた。なにせ家が家だし。


「まあ、特に外国に行く用事なんてなかったしね。休みの時とかも、お母さんたちは仕事だったから旅行とかも行ってないし」

「なんか意外だ……」

「そうかな? お母さんたちの忙しさはあっくんもよく知ってるでしょ?」


 確かに奥様と旦那様の多忙ぶりを考えると、国外旅行をする時間なんてとても取れないか。


「パスポートは取るのに意外と時間がかかりますから、早めにお話しようと思った次第ですわ。それに、そうでなくとも準備は必要ですしね」

「だね。必要なものも色々あるし、流石にちょっとはフランス語も覚えておきたいし」


 え……フランス語の勉強もするんです? その……学校での英語の授業でもかなりいっぱいいっぱいなんですが……。


「ははっ、あっくんてば顔真っ青じゃん。 おおかたフランス語の勉強とかムリ―、ってなってるんだろうけど」

「まあ、ワタクシがしっかり教えますし大丈夫ですよ。それに、フランスでも基本はワタクシが一緒にいるはずですし」


 まあ、それならなんとか……なる、のかなぁ?


「では、二人とも問題ないということでよろしいですか?」

「うん、大丈夫だよ。一応お父さんたちに聞いてみるけど、まあダメとは言わないだろうしね。あっくんもいいよね? ……いやまあ、ダメって言っても連れてくけど。なんだかんだ言っても従者な訳だし」

「うん、そう言うと思ってたよ……」


 まあ端から断る気なんてなかったけど。せっかくの友人からの誘いを断るなんてする訳がない。ちょっと大変かもしれないけど、楽しい旅行になるのは間違いないし。


「そーいえば、ほたるちゃんにはもう言ったの?」


 そういえば今日は八橋さんは来ていない。最初は来る予定だったらしいけど、なにやら用事ができたとかなんとか。確かに、八橋さんが来るのかは気になるところだ。せっかくの機会なんだから、皆で行けるのが一番いいし。


「ええ、昨日の夜に電話で話していますわ。来れると言っていましたから、これで部員全員で行けますわね」


 ……よかった。やっぱり皆揃ってた方が楽しいし。


 ……そういえば、ふと気になったけど、予算とか大丈夫なんだろうか? クリスは大丈夫だろうし、俺も多分おこぼれに預かれると思うけど、八橋さんは大変なんじゃ……。滞在費がかからないとしても、往復の飛行機代だけでも相当な金額になるはずだし。


「あの、イネスさん……。その、予算とかって……」


 控えめに聞いてみる。するとイネスさんはなにやらいたずらっぽい笑顔を浮かべて、


「それについての心配はいりませんわ。……楽しみにしておいてくださいな、ふふっ」


 と言うのだった。えっとその……なにが待ってるんですかね?


 まあ、なにはともあれこれで冬休みの予定が決まった訳だ。――さて、気持ちよく冬休みを迎える為にも、まずは目の前の文化祭に向けて頑張らないと。


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