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テーマ発表会開始!

「では、各自で考えてきたテーマの発表と行きましょうか」

「おっけー! みんなちゃんと考えてきた?」

「もちろんっすよクリスセンパイ。他のセンパイがたは……大丈夫そうですね」


 週が明けた月曜日、の放課後。約束通り部室に全員集合した俺たち写真部はによる、文化祭のテーマ決めが始まろうとしていた。にしても、皆やけにテンション高いなぁ……。部活が本格的に始動してから約5か月。合宿を経てようやく訪れた実力を発表する機会になる訳だし、気合いが入るのも分かるけど。まあ、かくいう俺だって、顔に出さないようにしてるだけで割と高揚しているんだけれども。


「じゃあ順番に一人ずつ発表していきましょうか。……順番、どのように決めましょうか」

「じゃんけんでいいんじゃない?」

「ですね。ここで悩んでても仕方ないですし」


 という訳で皆でじゃんけん。さて、結果はというと――


「じゃ、私が一番だね」

「で、アタシが2番、と」

「ワタクシが3番目ですわね」


 とこんな感じで、クリス、八橋さん、イネスさんの順番に。そして、こうなると必然的に俺の順番は……、


「最後かぁ……」

「あらアキラ、トリを務めるのは苦手ですか?」

「まあ、割と。やっぱり最後の方が緊張するからね」


 他の皆がどんな意見を出すかは知らないけれど、やっぱり皆本気で考えて来てるはずだし。その本気の案が出そろった後に、それらに見劣りしない案を出せるかというと、ちょっと自信がなかった。……まあ、事前に発表する案は考えてるわけだし、順番がどうであろうと内容は変わらないし変えられないんだけど、それでもやっぱり緊張はする。


「まあ、アキラセンパイの気持ちもわかりますけどねー。でも、決まったことは決まったことですから。――じゃ、まずはクリスセンパイからお願いしまーす」


 という訳で、とうとう発表会の幕が開けたのであった。


 *


 一番手。発表者、星之宮クリス。


「私が考えてきたテーマはズバリ、“月と星”だよ」

「なるほど、季節ものというわけですわね」

「そういうこと。最初は月だけのつもりだったんだけどね。でもそれだと写真の幅が狭くなるかなーって思って。それで星もいれてみたんだ。――どうかな?」


 最初は自信満々な様子だったけど、徐々に尻すぼみになってしまった。……流石のクリスでも、不安自体はやっぱりあるみたいだ。


「アタシはいいと思いますけどね。主に見せる相手がアタシたちと同じ学生な以上、抽象的なテーマよりこっちの方が受けがいい気もしますし」

「確かにホタルの意見も一理ありますわね。……ただその、ワタクシ思ったのですが、いくら月や星といった光輝くものをテーマにしてるとはいえ、撮る写真は基本的に夜景になるのでしょう? そればかりだと写真展を開いている部屋のイメージが、少々暗くなってしまいそうに思えるのですけれど」

「あー、それは……確かに」


 どうやら、クリスの意見にも懸念事項がない訳じゃなさそうだ。


 *


 二番手。発表者、八橋ほたる。


「じゃ、アタシの番ですね。アタシの考えてきたテーマは、“学校”です。……ちょっとシンプルすぎましたかね?」

「そんなことないと思うよ。さっきほたるちゃんが言ってたように、見せる相手に伝わりやすいものを、って見方ならこれ以上なく適任なテーマなはずだし」

「ワタクシも同意見ですわ。……にしても“学校”ですか。なかなか灯台下暗しな案でしたわ。なんで思いつかなかったんでしょう……」


 お、なかなか好印象な模様。実際自分にはない発想だったし、とくにこれといった欠点も見当たらない。……強いて言えば、皆毎日通っている場所を舞台にする都合、少し目新しさに欠けるかも? ってくらいかな。まあそれは、撮り方次第でいくらでも工夫出来る所だろうけど。


 *


 三番手。発表者、イネス・フランソワ・ラ・マリニャーヌ。


「ホタルのあの案の後だと流石に緊張しますわね……。アキラの気持ちが今さら分かりましたわ」


 イネスさんにしては珍しく緊張してる模様。まあ、八橋さんのさっきの案の後じゃ、気圧されても仕方ないけど。


「ま、まあ気を取り直して発表しますわ。ワタクシの提案するテーマは“雨”ですわ」

「おぉ、そうきたか……。イネスらしい案だね」

「……そうなんですか?」


 確かに、「イネスらしい案」というクリスの意見はちょっと意外だ。


「あ、皆知らないんだっけ。イネスって雨が大好きなんだよ、実は」

「それは……意外っすね」


 確かに、そんなイメージはなかったしちょっと意外だ。


「……まあ、最近は外にでる用事が多かったので、雨が降って嬉しいばかりではありませんでしたけれど。でも、雨音を聞きながら部屋の中で静かに過ごすのがワタクシの一番好きな時間なんですの。ですので、今回はその“雨”をテーマの候補にさせていただきましたわ」


 そう言われると確かになんとなくイメージはつくかも。窓の外で雨が降りしきるなか、優雅に雨音を楽しみつつお茶をするイネスさん……確かにしっくりくるな。


「まあ、秋の長雨っていうくらいですし、雨の日の撮影チャンス自体は多そうですね。落ち着いた雰囲気の写真展になりそうですし、いい案じゃないですか?」

「私も悪くないとは思うけど……。雨でも割と暗くなっちゃわない?」

「その意見も分かりますわ。ですが、“雨”にも色々ありますわよ。……例えば、雨上がりの風景でも雨をテーマにした写真でしょう?」

「……なるほどね」


 クリスも納得した模様。雨上がりだったり、虹だったり、雨を連想させつつも明るい写真を撮ることはできそうだ。……まあ、これはクリスのテーマにも言えることだけど。


「さて、次はアキラの番ですわよ」

「……あー、うん」

「もう。まだ緊張してるの?」


 そうは言っても、緊張するものは緊張する。今までの女子三人がかなりいい案だっただけになおさらだ。


 ……まあ、案は決まってるし、後は当たって砕けるだけだ。頑張るしかないな。


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