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サプライズ大成功!

 誕生日当日。準備もとりあえず出来たし、早速今回の主賓を会場に連れていくことに。


「あっくん? どうしたのいきなり」

「ま、まあまあ。ちょっと付いてきてよ」


 我ながら怪しさ全開だなこれ……。まあとりあえず、特になにも言わずにクリスを広間に連れていく。クリスは案の定自分の誕生日であることを思い出していないらしく、キョトンといた顔だ。……ちょっとどうかと思うけど、好都合ではある。


「どしたの? まだお昼ご飯にはちょっと早いと思うけど……」

「まあ、そう言わずに。さあ、どうぞお嬢様。お入りください」


 わざと従者口調にして広間への扉を開ける。そして――


「……せーの」

「「「「ハッピーバースデー!」」」」


 八橋さんの掛け声で、部屋の中にいた皆の声が響く。さあ、サプライズパーティーの始まりだ。


「……へ? あっ、その……そっか、私誕生日か……」


 やっぱりクリスは自分の誕生日に今更気づいたらしく、一瞬呆然となっていた。でも、みるみるうちに目元が潤んでいき、そしてすぐに――


「み、みんなぁ……。あり、ありがと……。うっうぅ……」


 泣き出した。……とりあえず、サプライズとしては成功かな?


「ふふっ。もう、そんなに泣いて。ほら、これで拭きなさいな」

「最初の反応を見たときは失敗かな、って思いましたよ……。喜んでくれたみたいで嬉しいです、センパイ」


 女友達二人に囲まれて泣いているクリス。……ちょっとあの場には入りづらいかな?


「なにぼさっとしてるんですか晃センパイ。ほら、彼女さん泣かせっぱなしなんてダメじゃないですか」

「う、うわっ。……八橋さん?」


 突如背後に移動した八橋さんに俺の背中を押される。グイグイと押されるままにクリスのもとに。


「あっくん……。もう、こういうのは事前に教えてよ……。びっくりするじゃん」

「そりゃ、びっくりさせるのが目的だし。……おめでとう、クリス」

「もうっ……。ばか」


 そう言ってぼすっと俺に倒れかかるクリス。


「おっと」


 それを受け止める俺。……必然、まるで抱き合っているような構図になる。


「ちょ、ちょっとクリス……?」


 返答はない。……顔を覗き込んでみると、クリスは静かに泣いていた。……しばらく、そっとしておいてあげるか。


「ふふっ、アキラも大分彼氏らしくなってきましたわね」

「……そうかな?」


 正直、まだまだ不釣り合いな所も多いと思うけど。でも、そう見えてるなら良かった。……やっぱり、クリスにふさわしい彼氏でありたいし。


 *


「さて、気を取り直してパーティーの再開としましょうか」

「って言っても、普通にみんなでお昼ご飯食べるだけですけどね。一応ちゃんとケーキとプレゼントは用意しましたけど」


 まあ、それはしょうがない。あんまり大々的に準備出来るほどの時間がなかったし。


「でも、これすっごい美味しい! これ全然あっくんと間宮で作ったの?」

「まあ大体はね。アイデアは皆でだしたけど。でも、奥様も手伝ってくださったんだ」

「え、お母さんが?」


 びっくりした顔で、クリスが奥様の顔を覗き込む。


「そりゃあ、娘のパーティーの料理くらい作るわよ。間宮にはそういう訳にはいきません、って言われたけどねー。でも、今回は譲らなかったわ。年に一度のクリスの誕生日ですもの。せめて料理くらい作ってあげないとね」

「お母さん……。ありがと、忙しいのにごめんね」


 奥様はいつもは旦那様の秘書みたいなことをしている。だから今日も本当は旦那様の仕事場に行かないといけないんだろうけど……。


「いいのいいの。お父さんも“本当は自分も行くべきだけど、せめて君だけでも行ってあげて”って言ってくれてるから。ほら、変なこと考えてないで楽しみなさいな。今日はクリスが主役なんだからね」


 奥様は本当にクリスのことが大好きなんだろうな。心底幸せそうな笑顔でクリスを見ている奥様を見てそう思う。……奥様の為にも、頑張らないとな。


「間宮もありがとね。間宮だって忙しいのに」

「いえ、お嬢様のためですから。私も、お嬢様にはとても感謝しているのです。だからこれくらい、なんてことありませんよ」

「……そっか。でも、ありがとう、本当に。――よーっし、食べるぞー!」


 ちょっと湿っぽくなってた空気を吹き飛ばすかのように勢いよくクリスが叫んだ。


「まったく。クリスらしいですわね」

「ですねー。さてと、アタシたちも食べますか」


 *


 料理も綺麗に平らげ、ケーキも皆で美味しく食べて、パーティーはいよいよプレゼントを渡す段取りまできた。


「さてと、ワタクシからはこれを。確か、前に欲しがってましたよね? これで合ってればよいのですが……」


 そう言って手渡したのはいかにも高そうな包装に包まれた小箱。流石イネスさん、俺や八橋さんにはできないプレゼントだ。


「ア、アタシからはこれです。……その、大したものじゃないかもですけど……。で、でもセンパイのことを考えて選んだので。喜んでくれると嬉しい、です」


 八橋さんからは可愛らしくラッピングされた大きな袋が一つ。中の物がなにかは知らないけど……あの形は多分ぬいぐるみか何かかな? 前にクリスはそういうのが好きだって教えたことあるし。


「二人とも、ありがとねっ! ……あれ、あっくんからは?」


 まあ、流れ的には俺が渡す番だしなぁ。そう思うのも無理はない。でもね……。


「あー、いや、用意してない訳じゃないんだけど。その……ごめん、あとで渡すから。ちょっと皆がいる場所だと……」

「えー、何渡すつもりなのー? ……あっくんのエッチ」

「なんでそうなるのさ!?」


 そういうものでは断じてない。まあ、からかい半分なのは分かってるけどさ。


 ……でも、渡すのにちょっと勇気のいるプレゼントなのは確かだ。だから、あとで二人きりの時に渡そう。――ちゃんと、クリスに届くといいな。


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