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サプライズ計画進行中②

「いらっしゃーい。ささ、こっちこっち!」


 ……テンション高いなぁ。久々に皆と会えるか舞い上がってるのかな? いや、久々って言ってもせいぜい三日ぶりくらいのものだけど、それでもクリス的には十分久々に入るみたいだ。


「……晃センパイ。その……準備どうしましょうか」

「ああ、それなんだけどさ」


 クリスがイネスさんと喋ってる間に、気づかれないよう手短に昨日の夜にあったことを八橋さんに話すことにした。あとでイネスさんにも言っておかないとな。


 *


 昨日の夜。間宮さんと二人で広間の掃除の最中。


「……その、昼間はすみませんでした」


 昼間に少しサボってしまったことの謝罪をする。


「ああ、まあ大丈夫ですよ。旦那様もいらっしゃいませんし、仕事も多くはないですしね。そもそも、お嬢様のお相手をするのも従者の立派な仕事ですし」

「あ、ありがとうございます……」


 良かった、怒られることはなさそうかな?


「――ただ」

「は、はいっ」


 いや、これ怒られる流れか……?


「せめて事前に一声かけてからにしてください。こちらも都合がありますから」

「はい……。以後気を付けます」

「ふふ、まあそんなに落ち込まなくて大丈夫ですよ。次から気を付けてくれればそれで」


 ……思ったほどは怒られなかった。良かったけど、次はないのは確かだろう。気を付けないとな。


「……話は変わりますが、お嬢様のパーティーの準備はどうですか?」


 今回のクリスの誕生日パーティーのことはもちろん間宮さんにも話をしてる。でも、会場として今ちょうど掃除してるこの広間を使わせてもらう約束をしただけで、準備は一切手伝ってもらってない。ただでさえ俺の何倍も忙しい間宮さんにこのうえ手伝ってもらうなんて流石にできない。


「まあ、とりあえず今のところは順調ですよ。そもそも料理とプレゼント以外はほぼ用意するものないですしね。……ただ、準備のせいでお嬢様がちょっと拗ねちゃってて」

「……ああ、それは確かにあり得ますね。お嬢様、ああ見えてかなりの寂しがりですから」


 クリスのそういう性格、間宮さんにまで見抜かれてるのか……。まあ、クリスは気を許した相手に遠慮する性格じゃないし、案外分かりやすいのかもしれない。


「なので明日は予定変更して、皆でいつも通り遊ぼうって話になってます」

「まあ、準備をしてたらお嬢様が泣いてしまった、では本末転倒ですからね。……でもそれだと、準備が少々大変ではないですか?」

「そうですね……元々余裕を持って考えてたから、なんとかなるとは思いますけど……」


 自信を持って「間に合います!」と言えないのがもどかしい。実際ギリギリにはなるだろうし。


「なら、私も手伝いましょう。当日の料理、半分は受け持ちますよ。メニューも食材も用意しておきます」

「えっ、いいんですか!?」

「さっきも言いましたが、別にそこまで忙しい訳じゃありませんから。……それに、私もお嬢様のお誕生日をお祝いしたいですし」


 願ってもない申し出だ。間宮さんが手伝ってくれるなら、準備は多分余裕で終わる。これならなんとかなるだろう。


「それじゃあ、その……お願いしてもいいですか?」

「ええ、分かりました。腕によりをかけて用意しますね」


 *


「マジですかそれ」

「もちろん。だからまあ、準備は大丈夫だと思うよ」


 他にもやることはあるけど、まあなんとかなるだろう。


「そういえば、センパイどうするんです? その……プレなんとか」

「あー、うん。買い物にも行けないしどうしようかな……」


 クリスが近くにいるからか濁した言い方だったけど、確かにプレゼントはどうするか考えないといけない。クリスに悟られないように買い物に行くなんて、従者をしていたらとてもじゃないけどできないし。


「まあ、そうですよねー。……でも、別に形があるものじゃなくても良いとは思いますよ」

「……ああ、そっか」


 なんで気づかなかったのか。そっか、別に無理に物をプレゼントしなくてもいいんだ。もちろんクリスが喜んでくれるものじゃないとダメだけど、でもそれさえクリアしてれば形にこだわる必要はないはずだ。


「ふふっ、アドバイスになったみたいですね」

「うん。ありがとう八橋さん」


 まだなにがいいかは思いついてないけれど、とりあえず方向性は決まったかな?


「おーい、二人ともなに内緒話してるの?」


 イネスさんとなにやら話し込んでいたクリスがふとこっちを振り向いて、唐突にそんなことを言った。


「な、なんでもないですよ? ねぇセンパイ?」

「う、うん、別に大した話はしてないよ?」


 まさか突っ込まれると思ってなかったので、俺も八橋さんも変な声がでてしまった。


「お二人とも、それは余計怪しいですわよ」

「……ねえイネス、ひょっとしてこの二人って――」


 あれ、なんかあらぬことを疑われてる?


「――案外似た者同士?」

「……まあ、割とそうだと思いますわよ」


 まったく思って無かった指摘で、思わずずっこけかける。ちょっと拍子抜けしたけど、疑われてなくて良かった……。


「もうセンパイ、びっくりしましたよ……。浮気でも疑われてるのかと思いましたよ」

「へ? いやいや、あっくんが浮気する訳ないじゃん」

「おぉ……。さらっととんでもない惚気ですね……」

「ふふ、ここまで言われる程信頼されているなんて、アキラは幸せ者ですわね。……おや? アキラ、どうしました?」

「……」

「フリーズしてますね。嬉しすぎて固まってるんですかね? おーい、センパーイ? あ、聞こえてませんねこれ」

「……薄々分かってましたけど、とんでもないバカップルですわね、この二人」


 ――結局、俺が正常な思考回路を取り戻したのはこれから三十分後のことだった。


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