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始めての共同作業?

 合宿5日目。今日は予定では皆で写真撮影の為に散策に出かけよう、ってことになってたんだけど……。


「ものすごい雨ですわね……」

「これじゃ、とてもじゃないけど出かけるのは無理だねー」

「ですね。もうっ、色々行きたい所あったのに」


 天気予報を完全に裏切っての大雨。一応夕方には止むらしいけど、出かけるのは無理そうだ。


「どうしよっか、皆?」

「とりあえず、昼食を取ってから考えましょうか。アキラ、料理をお願いしてもよろしいでしょうか」

「もちろん。……買い物には行けそうにないから、あり合わせのものになると思うけど」

「それは誰がやっても同じですししょうがないですよ。それに、センパイの料理ならなんでも美味しいでしょうし」


 そう言う八橋さんの様子はいつも通り、のように見える。昨日別れ際に色々あったし、引きずってるんじゃないかって思ったけど、どうやらその心配は必要ないみたいだ。……もちろん心の内ではまだまだ引きずってるんだろうけど。でも、当の本人が気丈に振る舞ってるんだから、俺もいつも通りに接してあげないといけない、んだけど……なかなか難しいなぁ。改めて、やっぱり八橋さんは凄い人だ。


「じゃ、なにか作ってみるよ。ちょっと待ってて」

「ねね、あっくんあっくん」

「クリス? どうした?」


 キッチンに向かおうとした俺をクリスが呼び止める。ちょっと躊躇った後、言葉を続ける。


「私に……手伝わせて欲しいの。その……料理を」

「手伝い?」

「う、うん。ほら私、一日目に酷いの作っちゃったじゃん?」

「……あー、うん、そうだったね……」


 あれからあまりに色々ありすぎて忘れてたけど。確かにカレーの材料を暗黒物質に変換してたね……。


「だからさ、あっくんの料理を間近で見てみてお勉強しようかなって思って。……ダメ、かな?」


 上目遣いで、少し申し訳なさそうに聞いてくるクリス。まったくもって無自覚なんだろうけど、その目つきは卑怯だよ……。恋人にそんな目つきで頼み事をされて断れる男は多分地球上には存在しないだろう。


「……分かった。じゃあ、お願いしよう、かな?」

「いいのっ!? やった、ありがとあっくん!」


 という訳で二人でキッチンへ向かう。心なしか、後ろからの視線がきつかった気がする……。


「あれは、あざといですわね」

「ですね。クリスセンパイ、いつのまにあんな高等テクを……」


 そんな小さな呟きは、俺とクリスに届くことはなかった。


 *


「あっくん、今日はなにを作るの?」

「せっかくだしカレーでも作ろうかな。イネスさんも食べてみたいって前に言ってたし」


 元々はなにか他ののメニューにするつもりだったけど、クリスの勉強ということを考えて変更。手先も器用で、物覚えに至っては俺より確実に優秀なクリスのことだ、一回作って見せればもうあんな失敗はしないだろう。


「りょーかいっ。じゃあ先生、私はなにをしたらいいでしょうか?」

「先生って……。まあいいや、とりあえずお米を研いでもらおっかな。……出来るよね?」

「失敬な。前に教わったしそれは大丈夫……だと思う」


 大丈夫かな……。まあ、一応前に家で教えた時にはちゃんとできたし、大丈夫だろう。


「じゃ、俺は適当にやりますかね」


 とりあえず野菜を切っていく。……人参、玉ねぎ、ジャガイモと定番の具材を食べやすい形にカット。クリスも流石にこの工程で苦戦するほどではないので、ここは自分のペースでサクサク終わらせる。じっくり教えるのは火を入れてからでいいだろう……多分、きっと、おそらく。


「そっちは大丈夫?」

「うん、大丈夫だよっ。……もーっ、その顔は信じてないなー? 大丈夫だって、今回は洗剤使ったリしてないからさ」

「いや、そこまでの心配はしてないけど……」


 ……まあ、確かに初めて教えたときには入れようとしてたけどさ。あの時はマジで人生でも一二を争うレベルで焦った。あともう少し止めるのが遅かったら、あの最高級コシヒカリを廃棄せざるを得なくなってたと思うと、今でも寒気が走る。


「どれどれ……。まあ、合格ではあるかな、確かに」


 若干荒い気がしなくはないけど、まあこれくらいなら見逃して大丈夫だろう。味に大きな差が出る程じゃなさそうだし。


「むーっ、その言い方だとまだ満点じゃないってこと?」

「まあ、ね。まだもう少し研いだほうがいいかな。好みの範囲だから気にするほどでもないけど」

「なるほどなるほど……」


 うんうん頷きながら手早くスマホにメモするクリス。毎回ちゃんとメモしてるし、すぐに料理も上達すると思うんだけどな。それこそ、ぼやぼやしてると追い抜かれてもおかしくないくらいだろう。


「……なんかさ」


 不意に、クリスが声を上げた。……なにやら少し顔を赤くしながら。


「どうした?」

「いや、なんていうか、恋人っぽいな……って思って。ほら、共同作業、って感じで……、ごめん今のナシ。うぅ、言ってて恥ずかしくなってきた……」


 自分の発言で自爆して、挙句に真っ赤な顔で言葉にならない声を上げながら悶えている。……控えめに言って、とても可愛い。


「……うー、なにか言ってよ……」

「いや、その、えっと……、可愛いよ、うん」

「かっ、かわっ……!!? いやっ、そうじゃなくってっ!! フォローとかしてよって意味なんだけどっ!?」


 しまった、つい反射的に言葉に出してしまった。でも、フォローって言ってもなぁ……。


「フォローもなにも。だって、俺も……同じこと思ってたし」

「ふぇっ!? ……あぅ、その返しは反則だよ……」

「そう……?」

「そ、う、な、のっ!! ほらっ、料理の続き続きっ!」


 ここで半ば強制的に話題は料理へとシフトチェンジ。ただお互いそう簡単には忘れられず、揃って顔を真っ赤にしたまま料理をする羽目になったのだった。

いつもありがとうございます。ちょっと釈明が必要な気がしたのであとがきに失礼します。


前回の感想返信で、「クリスへのプレゼントの中身は次回のお楽しみです!」って言ったんですが……今回出て来てないです、すみません。その場面も大体書けてはいるんですが、そこまで入れるとちょっと字数が多くなっちゃったので、次回に回させていただきます……。ただその分、いつもより少し早めにお届けできるようにしたいと思います! (具体的には明日にでも……)


それでは、これからもどうぞよろしくお願いいたします!

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