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イネスの誕生日②

「イネスー? いるー?」

「はい、居ますわよ? 入っても大丈夫ですわよ?」


 イネスさんの誕生日の夜。昼間は皆でパリ郊外に観光しに行っていたので、ようやく誕生日プレゼントを渡すタイミングがやってきたという訳で、皆でイネスさんの部屋に突撃しに来たのだ。


「やっほー、イネス。寝る前にごめんね?」

「別に構いませんわよ。来るのは分かっていましたし」

「……ま、そうですよねー。昨日しっかりバレてる訳ですし」


 八橋さんの言う通り、俺たちがイネスへの誕生日プレゼントを買っていることは昨日のうちにバレている。なので、こうしてイネスさんの部屋に俺たちが来ると予想されてるのも当然と言えば当然だ。


「ほら、そんな入り口でぼーっとしてないで奥に来なさいな。……ワタクシだって、皆さんからのプレゼントを楽しみにしていたんですからね?」

「イネス……。うんっ、じゃあお邪魔するねっ」


 ……良かった。イネスさんに楽しみにして貰えてた。当たり前のことなのかもしれないけど、やっぱり嬉しいものは嬉しい。


 *


「じゃ、まずは私からのプレゼントを渡そうかな? ……いいかな?」

「いいですよ、クリスセンパイ。一番手は譲ってあげます」

「俺もいいよ。クリスが早く渡したいのは知ってるし」


 という訳で、まずはクリスからプレゼントを渡すことに。


「私からはコレね。この前私の誕生日の時に貰ったやつがすごい良かったから、今度は私のオススメをあげるねっ」


 そう言って渡したのは、色んな化粧品やコスメグッズが入った袋。そういえばクリスの誕生日の時、イネスさんはなにやら小さな箱をプレゼントとして渡していたけど、あれはどうやら化粧品の類だったようだ。


「ありがとうございます、クリス。しかし、ワタクシがプレゼントしたよりも随分たくさん入っていますわね……。よいのですか?」

「もちろんっ。私がプレゼントしたいってだけなんだから数とか気にしないでいいのっ」

「そういうことなら遠慮なく。ふふっ、使うのが楽しみですわ」


 どうやらクリスのプレゼントは気に入ってくれているようだ。まあ、二人は長年の友人な訳だし、好みに合うプレゼントを選ぶのも慣れているんだろうな。


「じゃあ、次は俺から渡そうかな。……えっと、気に入ってくれるといいけど……」


 正直あんまり自信はないけど、ないなりに精一杯考えて選んだつもりだ。


「これは……、アルバムですか?」

「そう。……まだ写真はなんにも入ってないけどね。イネスさん、留学が終わった後にも思い出になるものがいい、って言ってたからさ。思い出になるような写真を一杯撮って、これに飾って欲しいなって思って」


 なんかクリスへの誕生日プレゼントとネタが被っちゃったけど、イネスさんの希望を叶えられるプレゼントを考えたらこれしか思いつかなかった。


「あら、アキラらしい素敵なプレゼントですわね。ありがとうございます、アキラ。これからは部活でもプライベートでも沢山写真を撮らないとですわね」


 良かった、喜んでくれたみたいだ。渡すまでは結構不安だったけど、どうやらその不安は杞憂だったみたいだ。


 *


「じゃ、じゃあアタシが最後ですね。……えっと、これです。なんか晃センパイとネタ被っちゃいましたけど」


 普段あんまり見ない、緊張した面持ちの八橋さん。普段から特にイネスさんとは仲良くしてることもあって、もっと気軽に渡すのかと思ってたんだけど。


「そんなに緊張しなくてもいいのですよ? ワタクシは、ホタルからのプレゼントならなんだって嬉しいのですから」

「いや、そう言ってくれるのは嬉しいですけど……。でも緊張するものは緊張するんですよー」


 そう言いながらもイネスさんに紙袋を渡す八橋さん。そういえば八橋さんがなにをプレゼントするか聞いてないけど、いったいなにをプレゼントしたんだろう? なんか俺とネタが被っちゃったとか言ってたけど……。


「写真立て、ですか?」

「は、はい。パリのアンティークショップを色々回ってよさげなデザインのを探してみたんですけど……、どうですかね?」


 紙袋から出てきたのは、綺麗な装飾の施された写真立てだ。俺のアルバムと同じく、まだ写真は飾られていない。


「ふふっ、これもとても素敵ですわよ。どんな写真を飾るか、今から楽しみですわね……」

「あ、それなんですけど……。これに飾る写真、今から撮りませんか?」

「……今から、ですか?」


 八橋さんの提案にイネスさんが疑問の声を挙げる。


「はい。皆で集合写真撮って、それを飾ったらいいんじゃないかなって思って。……どうですかね?」

「――それは素敵なアイデアですわねっ。是非撮りたいですわ」

「今日の主役のイネスがそう言うんなら、撮らない理由はないよねっ。私も皆との写真撮りたいし」


 イネスさんとクリスは賛成のようだ。もちろん、俺も賛成だ。皆との思い出になる写真は多い方がいいし。


「じゃあ、撮りますわよーっ。ほら、皆さんもっと近づいてくださいなっ」


 八橋さんのカメラをタイマー設定にして、皆で集まる。女の子三人が普段以上に密着してきてちょっと緊張するけど、その女の子三人は気にしている様子はなさそうなので自分も気にしないようにしないと。……正直難しいけど。


「ってかもうタイマー終わっちゃいますよ。はいチーズっ」


 ――とまあ、終始ワチャワチャしながらではあったけど、無事集合写真を撮ることができたのだった。

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