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イネスの誕生日①

「ただいま、イネス。……すまない、遅くなってしまった」

「おかえりなさいませ、レオン様。……ふふっ、構いませんよ。どうせ、お母様とお父様に付き合わされてただけでしょう?」


 レオン様とナタリアがワタクシの実家に赴いた翌日の朝。その二人がやっと帰ってきた。二人とも若干疲れた表情をしている辺り、昨夜は相当ワタクシの両親から質問攻めにあったようだ。


「申し訳ありません、お嬢様。……まさかレオン様まで付いてこられるとは思っておらず、寂しい思いをさせてしまいました」

「大丈夫ですわよ。……寂しくなかったと言えば嘘になりますけど、ワタクシにはクリスたちがいますから」


 ナタリアは本当に申し訳なさそうな表情をワタクシに向けている。……レオン様がナタリアについていったのはレオン様の独断だと聞いているし、ナタリアがそんな表情をする必要はないのに。まあ、ナタリアのそういう所がワタクシは好きなのだけど。


「それならば良かったです。……そうでした、奥様から伝言を預かっていたのでした」

「お母様から?」


 お母様とは頻繫に電話で連絡していることもあって少し驚いた。わざわざナタリアに伝言を任せるということは……、よっぽど重要な内容なのか、それともナタリアやレオン様にも伝えたかったかのどちらかだろう。


「ええ。この冬休みの間に実家に戻ってきて欲しいとのことでした。……きっと、久々にお嬢様のお顔を見たいのでしょうね」

「……なるほど。元々そのつもりでしたし、ワタクシとしては全然構いませんわ」


 おそらく、実家に帰るとなればナタリアの都合も考慮しないといけなくなるから伝言にしたのだろう。……または突発的な思いつきか。


「良かったです。……レオン様も、よろしいですか?」

「ああ。といっても僕は明日から実家に戻らないといけないから来年になるだろうけれどね」

「……えっと、レオン様も来られるのですか?」

「ええ。お二人の仲睦まじい姿を見てみたい、と。……まあ、いつもの奥様ですね」

 この話をナタリアやレオン様に伝えた意味がやっと分かった。……まあ、仲の良い姿を見せておくのは後々必ずやってくる結婚の話にも役立つし構わないけれど、それでも少し恥ずかしい。


「はあ……。まあいいですわ。お母様にはワタクシから返答しておきます。では、朝食に致しましょうか。今日は久々にアキラが作ってくれたのですよ」

「……それは興味深いな。ちょうど彼の従者としての働きも見てみたいと思っていたし」


 ……レオン様はどうやらアキラのことがかなり気に入ったようだ。まあ、ワタクシも前から気が合いそうな二人だとは思っていたけれど。


 *


「ふう、とても美味しい朝食だったな。彼の料理の腕は相当だな」

「ふふっ、流石アキラですわね。レオン様の胃袋すら掴んでしまうなんて」


 朝食を食べ終え、レオン様と二人でワタクシの部屋に戻ってきた。アキラの手料理は相変わらずの美味しさで、まだ朝食なのにも関わらずつい多めに食べてしまった。……まあ、ナタリアや間宮さんの料理も同じくらい美味しいのだけど。


「さて、早速イネスに誕生日プレゼントを渡そうかな」

「……あら、もう頂けるのですか?」


 てっきり、他の皆からのプレゼントと同じタイミングで渡すのかと思っていたのだけど。


「ああ。……他の皆の前では、やっぱり少し恥ずかしいからね」


 そう言いながら取り出したのは、クリスマスプレゼントの時とは打って変わって大きな袋……というか、ケース。


「……これは?」

「色々考えた結果、これが一番イネスに似合うと思ってね。……少し重かったかもしれないけど」


 そう言ってケースから取り出したのは、綺麗な黄色が美しいドレス衣装だった。


「こんなもの、頂いてしまってよいのですか?」

「ああ。あまり気乗りはしないだろうけど、今後は僕と一緒に他の貴族のパーティーに参加することもあるだろうからね。……その時は、これを着てくれると嬉しい」


 そう言うレオン様は顔は、珍しく真っ赤に染まっている。そんなになってまでワタクシにこのドレスをプレゼントしたかったのだと思うと、少しレオン様が可愛く思えてしまう。……もちろんレオン様本人には言わないけど。


「もちろんですわ。ありがとうございます、レオン様。……そうだっ、今ここで着てみてもよろしいですか?」

「ああ、構わないよ。……僕も、このドレスを身に纏ったイネスを見てみたい」


 ――と、言う訳で。


「ふふっ、どうですかレオン様っ。綺麗ですか? 似合っていますか?」

「ああ、もちろんだよ。……ははっ、イネスもそうとう気に入ってくれたみたいで良かったよ」

「気に入らない訳ないじゃないですか。こんなにも素敵なドレスなんですものっ、ずっとこれを着ていたいくらいですわ」


 レオン様からのドレスはサイズもピッタリで、色合いも装飾もワタクシの好みにピッタリだ。まるでワタクシが自分でオーダーしたかのようなピッタリ具合、流石はレオン様だ。


「レオン様、本当に嬉しいですわっ」


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