存在と時間・第八話
・一時的解放と属性解放の違い
前者は神格武器がないとできず、英霊の本来の力を発揮させるものなのに対し、後者は属性本来の力、つまり、リミッターをかけられている自分の秘めた力を解放するもの。前者は、聖句を必要とし、精霊との連携が必須となってくるが、後者にその必要性はない。
一時的解放の解放時間に関しては、個人差なのでこれといった傾向は見られないが、属性解放は認められた技マスターのみ使える。
AS―1024と木村捷達は、五十メートル離れた位置につき戦闘を始めようとしていた。
「あの、 今更何ですけど・・・・・・」
「何だ?」
川相希望の言葉にASが反応する。
「山滉穎スタイルで戦うんですよね?」
「そのつもりだが?」
当たり前の事を言う希望の言葉に、ASは首を傾げる。
「良いんですか? 山の戦い方を教えてもらったと言っても、その、多分不慣れですよね。いつもの戦い方じゃなくて良いのかなって」
「何だ、そんな事か。問題ない。それに、私の本気を解放すると教皇猊下とでも数十分戦えてしまうぞ。言っただろう、2000年近く学びを深めた、と。一人のエレメンターの戦闘スタイルを模倣するなど、造作もない事よ」
ASの言葉に納得した希望達は、気合を入れ直し、ASに礼をする。それぞれに頭を下げ、己の得物を取り始める。翔祐は鞘から隕鉄刀を抜き、鞘を魔力化する。
「六花! 墨竹!」
冬輝は両手に双剣を構え、全員の用意が整った。ASが審判用のゴーレム(非精霊、AIが組み込まれている)を召喚する。審判がルールを言い始める。
「ルールは五神祭式を採用する。それぞれが使用する神格武器は一つ。相手を気絶、または戦闘不能にするのが勝利条件である。魔法・魔術の使用制限はないが、暴走を予期した場合、即刻中断となる。
開始五秒前・・・・・・四・・・・・・三・・・・・・二・・・・・・一・・・・・・零」
試合開始の合図を受けて、六人は動き出す。
翔祐は正面から、冬輝は右側からASに向かって走り、対してASもそれに応える様に正面突破を目論む。長刀を構えて。
(まあ、滉穎のやり方ならそうだよな。ここは予想通りだけど・・・・・・)
捷が脳内でそう考えていると、翔祐とASは既に戦闘に突入しようとしていた。希望もそれを確認してアクションを起こす。
「《摩擦操作》」
そう唱えた瞬間、走っていたASは氷の上の様に滑った。《摩擦操作》によって、ASと地面の摩擦を0にしたのだ。
しかし、
「おっと、危ない」
滉穎の姿をしたASは、空中で《反重力》によって静止していた。そこに翔祐が滑りを利用して、突きを繰り出す。
既に態勢を整えていたASは長刀でそれを左に流す。
翔祐は連続性を持った剣技によって対応しようとするが、ASはそのまま《重力操作》によって浮遊し、避けていく。
「ず、ずるい。空を飛ぶなんて」
「敵に戦い方を求めても仕方ないぞ。それに飛ぶではなく、浮く、だ」
「翔祐!」
「よし」
冬輝の掛け声に応じて翔祐はその場から撤退する。冬輝は六花を右手にし、地面に突き立てる。
「《紅蓮地獄》!!」
聖句を唱え、六花を一時的解放した冬輝の周辺は、六花を中心に冷気に満たされ、特にASの周りは既に零度を下回っていた。そして、白い霧でASは覆われた。
滉穎はアルティメットアクション、長期戦は不利である。そのために早くから切り札を使い、決着を付けようとしたのだ。そして、《紅蓮地獄》は周辺を冷気で満たし、相手の体温を奪っていく一時的解放の能力である。その経過で相手の皮膚を切り裂いていき、出血が見られるので《紅蓮地獄》と呼ばれる。
濃霧に覆われた所に、ここぞとばかりに捷と林佑聖は銃弾を撃ち込んでいく。
しかし、赤紫色の光を放ちながら、霧が晴れて現れたのは無傷のASであった。否、手足の皮膚は確かに裂けていたが、小さすぎるのだ。
「なっ!?」
ASは咄嗟に電気を纏い、その熱で《紅蓮地獄》を突破した上に、銃弾を防いでいた。電気を霧散させたASの口は弧を描き、
「《Speed up》. 《Perfect vision》」
・紅蓮地獄-氷
「六花」の一時的解放時の能力で、任意の座標を指定していない場合は周辺の熱運動を減少させていく。外部の温度が下がっていくことで、範囲内の生物は冷気によってダメージを受けていき、特徴として皮膚が裂けていく。大抵の人間は、ヒートショックや凍傷によって死んでいく。出血によって赤く染まり、苦しむ様がまさに地獄だったため、八大地獄より、《紅蓮地獄》と命名された。
属性解放では、上位互換である《青蓮地獄》となり、絶対零度まで下げることができる。