論証の迷宮(5)・第七話
・林佑聖
変化魔法を得意とする元ゲーマー。一方で学習意欲も高く、無機物(金属)を軸に化学を専攻し、化学反応や合金の魔法を習得した。非戦闘系ではあるが、本人の身体能力も悪くないため、工夫次第では戦闘においても成果を残すことが可能。
・川相希望
勉強はそこまで得意ではないが、明るい性格で身体能力が高い。摩擦関連の魔法を得意とし、松尾冬輝と一緒にフランス語を学んだ。持ち前の運動能力と、習いたての武術を活かし、近接戦闘の成績は滉穎、臥龍に続いて良い。元陸上部で、足が速い。
「理由は三つ」
臥龍は、三本指を立て、そう答える。
「一つ目は、最初に山が俺に紙渡した時。
あの時、お前紙に何て書かれてたか確認せずに渡したよな。なのにどうして内容が分かったんだよ」
「あっ、そういえば」
臥龍の指摘に捷が賛同し、滉穎は目を瞑り、静かに聴いている。
「ふむ。あと二つの理由は?」
「山って同じ言葉を繰り返し使わないよな。それなのに、おそらくを二回連続で使ったよな」
腕を組んだ滉穎は、未だに沈黙を破らず、話に耳を傾けている。
「じゃあ臥龍、最後の理由は?」
「直感」
「そうか。・・・・・・小栗臥龍、合格だ」
最後の理由を聴き、間を空けて滉穎、いや偽滉穎は答える。
「ということは、最後の試練も突破か」
「いや、まだだ」
「はっ?」
偽滉穎は、魔法を解除し、本当の姿を現す。まるで兵馬俑の土人形の様な見た目をしていた。当然ながら口はあっても動いていない。魔法で直接空気を振動させている。
「ゴ、ゴーレム?」
「この迷宮の守護者兼管理者のAS―1024だ。多分二千歳を超えている」
「はっ?」
六人は、再び驚きを声にする。
「特化型精霊と言えば分かるか? 汎用型精霊に命じられ、このゴーレムに憑依して迷宮の管理・運営をしている。しかし、暇なんだ。論証の迷宮は立地のせいか来客がかなり少なくてね。一年に二桁いけば良い方なんだ」
「はあ、それで?」(来なくなった理由、あの性格の悪い罠のせいだろ)
捷は溜息を漏らす。
「ようやく来たカモを見逃せる訳ないだろ。だから戦ってくれ、いや戦え。
あっ、臥龍君は合格だから次の部屋に行きなさい」
追い立てる様に臥龍を奥の部屋に入れると、土のゴーレムは光を纏っていく。
「さて、残りの五人は私の暇つぶしに付き合ってもらおうか。せっかく滉穎君に変装して能力も彼から教えてもらったからね、偽滉穎対戦といこうか」
「「マジですか」」「というか山。何協力してんだよ」
再び溜息を漏らした捷達は嫌々ながら戦闘、いや試合の準備を進めていた。
「確か、五神祭がもうすぐだったよな?」
「はい。そうですが?」
AS―1024が中央の宝箱を消去した後、捷に問いかける。
「そうか。なら、この試合のルールもそれに則るか。一対五の対人で、使用する魔法、魔術、武器は何でも良い。神格武器は一つのみ。相手を気絶または殺したら勝ち。ああ、安心しろ。この部屋全体に聖魔法で結界張ったから死ぬことはない」
「あれ? 聖属性って教皇だけが使えるんだよね。何で使えるんだ?」
「管理者には、聖属性の一部を与えられる場合があるからね。ちなみに術者を殺したら結界も解ける様になっているから、私を仕留めたら気を付ける様に」
「じゃあ、あなたは大丈夫なんですか?結界壊れたら、死にますよね? 精霊でも憑依しているものが破壊されたら死んでしまう可能性あるんですよね?」
「そうだね。でも私はもう疲れた。二千、いや前世も合わせると二千二百年を越えるかな? 暇な時間で、様々な研究をしたり、本を読んだりしてこの世界を学んだが、それもほぼ学び尽くしてしまったし、やる事がないんだ。
だから、これが引退試合だ。せいぜい楽しませておくれ」
・AS―1024(守護者、管理者)
約2000年前に作られた兵馬俑隊とも言える特化型精霊軍団の元将軍で、兵隊を使い捨ての駒として扱い、暗黒世界の魔物の大軍を向かいうち、当時の首都を守り切った。その後、用済みの兵馬俑隊を秘密裏に引き連れ、現在の「論証の迷宮」を知恵の神監修の下で自作した。31体いた仲間も迷宮攻略によって死んでいき、残りはAS―1024となった。
AS―1024というのは、administrant series(AS,管理者シリーズ)の1024番目という意味。