五神祭初日(2)・第四十四話
五神祭におけるストレート勝ちの先例(過去六十年)
・4037年
トイラプス帝国βチーム副キャプテン涼羽=ヴァトリー、一回戦と準決勝
・4081年
フレア帝国αチームキャプテン黄金鈾鉑、一回戦と二回戦、準決勝
・4086年
トイラプス帝国αチームキャプテン玄羽=ヴァトリー、一回戦、決勝戦
トイラプス帝国αチーム副キャプテン滝口守屋、ニ回戦、準決勝
ルクス=カンデラとアスタグレンス=リヴァインの話も一段落ついたところで、いよいよ試合が始まろうとしていた。
初戦は、フレア帝国βチーム対トイラプス帝国βチームである。
例年は娯楽の一つということもあり、会場を埋め尽くす様に人が観戦に来るのだが、今回はもはやそれを超し、座れない者が出る程の賑わいを見せていた。
それには、前例にない召喚者だけのチームによる戦いだから。という理由も有るのだろうが、何より人々の関心を集めたのは、たったの二ヶ月でアルティメットアクションに認められた山滉穎と、神格武器に選ばれるという稀有な事例を見せたイヴァン=J=グランドウォーカー、両者の対立だろう。
人間は圧倒的な勝利も好きだが、白熱したバトルもまた彼らを刺激する。
そこに、二人の犬猿の仲の噂も入れば、立派な見せ物になるということだ。
そして、この試合のルールは五人対五人の勝ち残り。そのため、一人だけで試合に勝つことも可能であるし、もしくは双方とも主将まで出ることになるかもしれない。
ちなみに、六十年前と十年前の五神祭では希少魔法、仙術の使い手であるヴァトリー家の秀才、涼羽=ヴァトリーと玄羽=ヴァトリーがそれぞれストレート勝ちを決めていた。
もちろん、全ての試合において、という訳ではないのだが、それでもそんなことを成し遂げるのは困難を極める。
故に、彼らの名声がそこから高まったのは言うまでもない。
また、そんな偉業を成したエレメンターの弟子が出場する、という情報も大いに人々の興味を駆り立てたことも言わずもがな、というところだろう。
そんな中、くじによって決まったフィールド「森林」に二人のエレメンターが突如召喚された。
傍から見ればその召喚は空間属性なのだが、定義的には聖属性である。これは、空間や時間などのブラックワールドの属性は、エレメンターにとって禁忌のものである故に、名前を変えているのだ。
聖属性というものは、そういう不都合な部分も一緒にまとめたもので、他の属性と比べればあまり体系化されていない。まあ、使い手が教皇などのごく一部の認められた者のみなので、体系化する必要もないのだが。
さて、その二人のエレメンター、トイラプス側は木村捷、フレア側は山滉穎達の知己である石田魁、双方は所定の位置に到着し、後は審判の合図を待つのみであった。
見上げれば雲一つない快晴、所謂日本晴れであった。照りつける太陽、魔境でも恒星の呼び名は太陽である、その強い光が容赦なく、晩夏であるにも関わらず人々に降り注がれており、汗がじんわりと出る程の暑さをもたらしていた。
しかし、そんな中でも一キロ平方メートルはある「森林」フィールドは、樫と思われる木々が所狭しと立ち光が十分に届かない代わりに、風も上乗せされて涼しくなっていた。
ちなみに、樫は英語でオークとも呼ばれる。
また、照葉樹林が樫によって形成されており、二人の視界は開けていなかった。
そのため、捷と魁はお互いを目視することはなく、試合開始の合図である機械音が会場に高く鳴り響いた。
・石田魁
滉穎達とは幼い頃からの付き合いで、普段他人に隙を見せようとしない滉穎が気を許している存在の一人。
吼天氏という神格武器を与えられている。




