過去との遭遇(3)・第二十一話
・召喚者の過去
魔境に召喚される者のほとんどは死に際または、死の危険が迫っている者達で、彼等をどう選抜しているのかは神のみぞ知る。また、死んでしまった者は転生という形で魂の記憶が漂白される前に送られる。
しかし、1割強、死の危険すらもなく、血縁関係の者がいない人間でもない者が召喚者に選ばれる。今回の山滉穎達の召喚がその例である。神も彼等の境遇を考えて送るため、一方的なことはしない。そのためにこの大召喚は魔境でも初めてで、前例がないことである。
そして、今回の召喚者選抜の要因には彼等の過去が関わっている、と天使ガブリエルから情報が渡された。
稲垣翔祐達は山滉穎が合流し、木村捷の後を追っていた。そこに、後ろから頭目が迫っていることを知らずに。
「このままあいつらを人質にして、あいつに渡せば、俺は一生安泰だ。はははは・・・・・・!!」
「そんなことはさせない」
頭目の高笑いを遮る様にASは風を斬る様な速さで剣を振り下ろすが、頭目は間一髪でそれを躱す。
「ところで、そのあいつとは誰のことかな? いくら君のような人間でも、司法取引は知っているだろ?」
「残念だが、そいつぁ言えねぇなぁ。捕まる前提だろ? それに俺は人間じゃねぇ、エレメンターだ」
頭目は薄っすらと気味の悪い笑みを浮かべ、挑発する口調で言い放った。
ASは頭目の最後の言葉に反応し、
「勘違いしないように。エレメンターの定義を。彼等の正義を」
声に迫力がこもり、それに頭目は気付いた。
「何だ? まさか奴らに正義が有ると、本気でおもっている奴がいたのか? ははっ、笑えるっっっな!!」
頭目は一気にASの元に踏み込むと、湾刀を横に切った。
ASは剣を縦に持ち、さらりと受け流すと、柄で頭目の顎をガンっ! と殴った。
「ぐっ、・・・・・・」
頭目は何とかそれを耐えるが、唇と口内は切れ、血が滲み出ていた。
そして、ASは頭目に立て直す暇も与えず、攻撃を加える。
横の一閃を頭目は縦で受けようとするが、ASの力に勝てず湾刀は頭目の手から離れる。
その一瞬でASはそのまま回転し、その勢いを利用して剣で頭目の腕を切り落とす。
「ぐあああああああああ」
頭目は悲鳴と共に地に伏し、その痛さを堪えながら
「管理者・・・・・・おまえ。オーラを隠していたのか」
「《バインド》」
ASの腕から伸びた金属線は頭目の手足を否応なしに縛り付け、同時に出血も止めた。
「なるほど、君はオーラの感受性が高かったのか。でも残念だったな。弱い人間しか狙えない君達に強者の実力は測れない」
「はっ。そう、かよ。だが、残念なのはお前だ。今頃あいつが奴等を皆殺しにしているはずだ」
「っ!!」
これにはASも危機を感じ、麻酔を頭目に打ち込むと、滉穎達の後を追いかけた。
その頃、滉穎達はその遠隔操作のゴーレムが設置されている場所に着いていた。
「なあ山、捷はここにいるはずなんだよな」
「ああ、しかしおかしいなあ。ゴーレムも起動していないし、姿も見えない。気配さえ感じないなんて」
彼等は捷がこの場所にいないことに疑問を感じ、辺りを探していた。すると、小栗臥龍が、
「もしかしたら、山賊の残党に・・・・・・」
その発言に彼等は緊張を覚え、
「確かに、捷はそこまで一対一の対人戦は得意じゃない。万が一があるかもしれないし、・・・・・・」
滉穎が言いかけたところで、林佑聖が、
「でも、それらしき足音は聞こえないぞ。そこまで遠くに行ってないはずなのに」
「仕方がない。手分けしてこの辺り一帯を捜索だ。まだ山賊の仲間がいるかもしれないから慎重に、《List up》も使ってな」
この十分後、彼は過去の悪夢と遭遇することになる。
・List up
魔力を媒体にして、自身の考えや脳裏に描いた映像を対象に送るオンラインの魔法。仕組みはラジオの周波数とほぼ同じと考えて相違ないが、強い魔力だと相手の意識に強制的に割り込める。
現在は通信用の魔法だが、昔はオンラインが多かった文官専用の魔法で、リストを編集したり送ったりするのに使われたため、この名前になっている。




