男の子ですね。
1月30日。
午前1時。電話がきた。
『小太郎』
「おう、湯鷹。なんか困りきった声だな」
あん。あん。あん。あん。
『ああ。お前は変態だから、いざという時の頼りなんだ』
あん。あん。あん。あん。
「へえ。どした」
あーん。あん。あん。
『お前は自分に妹がいたら、好きになるか?』
はあ。はあ。はあ。はあ。
「なるんじゃね? 家族だし」
うっ。くっ。ふうっ。あっ。
『お前、今彼女何人いたっけ?』
はあっ。やべっ、はあっ。やべっえっ。
「いやいや一人しかいねーから」
『へー』
「おおい。いい加減にしなさいよコノやろう」
うぶっ。ひぃ。はっ。はっ。はっ。
『お前、琴好きだったっけ?』
はい。はい。はー。はい、はあ。
「あー。すっげえ可愛いね。撫でてあげたい」
うん、ん。はあ、はあ。
『俺、わけ分かんねーか?』
ひいっ。ひぃっ。ふう。
「んー。病んでるだけだろ?」
ひぃっ。ひぃっ。ふうぅぅぅう。
ぴっ。キュルキュルキュルキュル。
『かもな』
ひぃっ。ひぃっ。ふうぅぅぅう。
「俺がお前と話すのは、癒やされるからだぜ。お前クールだもん、馬鹿みたいに」
ひぃっ。ひぃっ。ふうぅぅぅう。
『外面は、だろ?』
ひぃっ。ひぃっ。ふうぅぅぅう。
「うん。でも俺に対してはマジでクールだから。俺のことマジで好きじゃん、お前。あっ、友達って意味だぜ?」
ひぃっ。ひぃっ。ふうぅぅぅう。
『分かってるよ。冬休みのときのリンの話だってお前にしかしてないのは、俺もお前が好きだからだよ』
ひぃっ。ひぃっ。ふうぅぅぅう。
ぴっ。キュルキュルキュルキュル。
「うわ! きも!」
ひぃっ。ひぃっ。ふうぅぅぅう。
『てめえ』
ひぃっ。ひぃっ。ふうぅぅぅう。
「いやいや、だってお前がそんなに素直なの初めて見たからさあ。そんな昔のこと引っ張り出したり、人を好きだって言ったり。氷割ったお前と話すのなんて、久しぶりすぎたからさあ……」
ひぃっ。ひぃっ。ふうぅぅぅう。
『そうだっけ』
「ああ。だからくろたんも、お前の近くにいるんだぜ? お前が氷ばりのクールだから。だからリンも、お前を諦めたんだぜ? お前を嫌えないから、まだ近くにいるし、友達としててきなバカなことも考えてるけど」
ひぃっ。ひぃっ。ふうぅぅぅう。
『バカじゃねーだろ』
「てめーが中途半端に傍観してるのが、そもそもの原因じゃん。ラダトームの城をようこそ! て言えるくらいの傍観者になれよ。中途半端、優柔不断スパァアアアアンて感じで。今のお前の優しさ、研いでない刃物みたいだぜ?」
『よく分からん例えだな』
「じゃー、研いでない包丁だ。料理しまくってるお前なら分かるでしょうよ」
ひぃっ。ひぃっ。ふうぅぅぅう。
『あ。ああ。あーなるほど』
「分かったな? で? 琴がどうしたんだよ? アホみたいな流し読み思考な会話やめて、本題入れや。おっ」
ああっ。くるっ。くるっ。
『琴が俺のこと好きらしいんだが』
ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅう。
「良かったね」
『…………』
ああああああああああああああああ。
「…………」
『恋愛対象としてらしいんだが』
ああああっ。ああああああああっ。
「じゃー冷たく接しろ。メシ作って風呂沸かしてやるだけ。思春期になってもそんなアホみたいなこと言ってたら相談しな。近親相姦イコール阿呆。おーけい?」
ああああっ。ああああああああっ。
『それが出来ないから、』
ああああああああっ。
おめでとうございます。
「お前も危ない好きに溢れてることは分かってるよ。だから最近、俺を呼ばずに志太だけを呼んでるんだろ?(俺が仕事だからって理由付けてさ。いざって時は、いつも強引なくせしてさ。)バリア張り直すまでの立て札替わりにっつうのと。俺が休み取らなくて怒ってる腹いせってわけでもなく、邪魔なくゆっくり話してもらうためにだろ? 二人にさ」
男の子ですね。
『……ん』
「不器用マンが。どう考えてもムリに決まってんだろ? 俺の弟だって、好きな奴は星印なやつなんだし。それぐらいはお前でも分かってるだろ?」
産むとき、感じたでしょう?
『ああ。ああ』
「ええっ。お前マジか」
ぴっ。
「……あー。まあ、いいや。そっちの話は脇な。で、琴の話だけど、相手はまだ小学生で、しかも妹だから、人が好きっつうかお前が好きっつう気持ちがどういうのか、まだ判別できてないだけだから。だから、お前がいないと死ぬレベルになるくらい触れ合い続けないように心がけな。お前らベタベタしすぎだからさ。さっさとくっつけっていうくらい。中学生になりゃ少しはマトモな奴見つけて交尾するよ。たぶん。まあ、だから気にすんなって。それでも不安なら『好きになるな』って実際に言えば?(我ながらアホみたいなこと言ってんな……)脳内でばっかツッコミ入れてたら、口の筋肉、退化するだけだぜ? 好きなら犯せ。大切ならシカトしな」
『ああ。分かった』
「じゃあな」
俺はケータイの電源を切った。
こいつ、ぜってえ分かってねえな。つーか、俺もダラダラ喋っただけで大したこと、言えてねーし。つーか、俺も大した人間じゃねーっつの。あーあ。
はーあ、アホらし。
あーあ。ビデオの内容、全然入んなかったよ、もっかい見よ。だいたいなんでエロスパイス担当の俺が熱血節介焼き焼きモモンガ百パーセントを演じなきゃあならんのだ、アホか。アホアホアーホ。
「志太、さっさと寝ろよ」
背後でシャカシャカ歯を磨く弟に言った。
そいつは微笑んだ。
*
湯鷹。お前の悪いとこは、綺麗に言えば優しすぎるとこだ。だから勘違いするんだぜ、リンも。
安易に愛情を振りまくな、すげぇ残酷なことだから。
「ああ……これだよ。これを言いたかったんだ。ああ、もお」
話し終えたあと、言葉が沸くの、やめてほしい……。
頭を抱え込んだ。




