星葉ちゃん、ヤる☆
3月28日。
午前11時。
東野圭吾の推理小説を借りていたくろたんが、その本を読み終えて家に持ってきた。読むの速っ!
「でも、午後から来れば良かったじゃん」
「よ、よみ、読み終えて直ぐじゃないと、忘れちゃうから」
「あはは、まあ中に入れよ」
「う、うん」
なんだろうか。くろたんがオドオドしていると、妙に面白い。
*
「ぉお? くろたん今日は早いね〜」
コタツから首だけを出している琴は、こっちに全力で「ぎょろん」と振り向いた。ホラーかよ。
「琴お前……暇人だなぁ」
「だってすること無いもん」
無いもん無いもんと、そうつぶやきながら首を左右に振ったり首(本体も)を回転させたりする。細身を上手く使った芸である。
琴がやるから可愛いけど、他がやったら相当気持ち悪くなりそうな芸だ。
「じゃあ久しぶりにどっか行くかぁ」
俺は頭を掻きながら言った。
「まじで!?」
琴はガバッとコタツから起き上がろうとしたが、深く入りすぎていたからか、肩が机の部分に当たり、結局もとの通り首だけの状態で話を聞いていた。
「今日どっか行きたいの?」と俺が言うと「毎日新聞!」毎日行きたいと返ってきたので、「却下」。
「はい、今日行きたいのです。行きたいとです。琴です」
余程退屈していたのか、だいぶテンションがおかしなことになっている。
まあ毎日家に籠もりっぱなしなんだから、仕方ないといえば、仕方がないのかもしれない。
「じゃあラウンドワンにでも行く?」
「行く!」
俺は、立ち上がろうとする琴のおでこを抑えた。ぐぐぐぐぐっ。
「行けないぃ〜。行きたいのにぃ」
抑えたまま、棒立ちくろたんにも訊く。
「あ、うん、行く……あ、でもお金が、あんまり……」
「俺が払うから気にすんな」
「……ありがと」
「貸しだけどね」
「え?」
さて。残りメンバーも誘っとこう。
「その前に離してぇ〜!」
じたばた。
集合。
「ラウンドワン、行くの久しぶりっすよ」
リンがくろたんを「ぅあー」しながら言う。
「俺もー。てかさ、お金ホントに良いの?」
志太が俺の方に向かって言う。
「ああ、小学生組のカネは払うよ。くろたんには貸し、リンは自腹な」
そう言うと、志太はかぶっていたハットを取り、お辞儀をした。微笑み紳士、相変わらず小学生の次元ではない。
「わーい。さすがはmyお兄ちゃん!」
琴が抱きついてくる。俺は頭を撫でた。
「ケチー!」「ぅあー!」
リンがくろたんを抓りながら言う。ケチーで結構。
「ケチー☆」
いや、お前は払ってやるって。
「なーんだ☆ さすがはmyボス☆☆」☆
星葉がウインクして、☆が飛んできたぎぁあああああああああああ!
(注:星葉はウインクの時に発生する☆を刃物にして、飛ばすことができるのだ☆)
全員を車に乗せて、俺は車を出した。俺の右目には☆が刺さっている。
はい、到着。
「速っ! お兄ちゃん着くの早いね! 一行でついたよ!?」
助手席の琴がビックリしている。
「それはあれだよ、ほら俺、テレポーテーション使えるから」
そして俺たちは、ラウンドワンの中に入った。
「じゃあなにしようか?」
「ボーリングしよ?」にこり。
「ボーリングな。じゃあ行くか」
受け付けに行く。
受付嬢が俺の右目を露骨に見ながら、空いている席の番号を教えてくれた。
六人では出来ないため、俺と琴がペアになり、志太と星葉がペアになった。なんか志太のペア、オーラが見えるんだが。
オーダーの順番は、1・俺と琴、2・リン、3・くろたん、4・志太と星葉だ。
俺と琴は1レーン毎に交代する。星葉たちは一球ごとに交代するらしい。
1レーン目。琴の投球。
ガーター。ガーター。
「壁立てる?」俺が言うと「勘弁して下さい」と、泣かれた。まあさすがに恥ずかしいか。
仕方ないので、俺たちも一球交代にした。
リンは、普通にスペアを取った。
「あはは、ウチをナメたらあかんぜよ!」
さすがは元祖・普通。きっと、最後は普通にそこそこの点数を取っているだろう。
くろたんもガーター。まあなんとなく予想はついたよ、うん。
「久しぶりにやると、難しいな……」
で、志太の番。なんか手袋はめてるよワーイ♪
『がこーん』
「あはは」キラリ。
ストライクだよ、ワーイ!
はあ……。なんだ、このボーリング。どこのベッタベタコメディだよ。テニスの王子様かよ。
「そんなベタベタを☆ 洗い流してあげうー☆☆」
そう言って、星葉は先端が☆なステッキ(折りたたみ式)を、バッグから取り出したイタタタタ。
「ぅうおらああぁ☆」☆
それを振った。ウインクもした。しかし、何も起こらない。どくどく。
「お兄ちゃん、左目にまでスターが!」
「いえーい☆ ボスのダラダラお目々に星の光を灯したよ☆☆」
無視して、俺はボールを投げた。
『がこーん』
「うわ! 先輩もスゴいっすね」
ストライクが出た。運が良い。どくどく。
リンが投げた。
『がこーん』
「うお!」
ストライクだ。2連チャンかよ。
くろたん。
『がこーん』
「……ぉ、ぉお」
ストライク……だと?
星葉の投球。
『がこーん』
「ぁはん☆」
ストラィィイイク。バッター、アウトー。どくどくぷしゅー!
「うわー! お兄ちゃんの目が! 目がぁ!!」
肩をガシッと掴み、「星葉」。
「ナンですかmyボス☆」
「なんだコノ、スーパーストライクゾーンは。なにした?」
「イタズラ☆」きゃぴーん☆☆
『どかーん』
「ふんぎゃあ☆」
頭を抑える星葉。頭の周りで星が舞っている。
「なにをする☆」
「殴った。目が痛くて痛くてね」
「イタズラに怒ってるんじゃないんだね☆」
「それもある。さっさと直せ。そして俺の目も治せ」
「ぃやん☆ 怖い☆☆」
「つーか、イタズラで済ませるレベルのワザっすか。コレ?」
リンの言うことも最もだが、もはや人の域を超えたコイツに其処まで突っ込んでもムダだろう。
とりあえず、解かせる。
「星葉待ったああぁ! その前に、ワザ解く前に、」
琴があたふたしている。あぁ、なるほど。
「最後にストライク取りたいんだね☆」
「イエス!」
琴がこちらを見る。まあ琴は、なあ……。
そう思い、俺は首を縦に振った。
顔がギラギラに輝く琴、まるで太陽。
「うぉおうぅらぁああぁああああ」
それは正にストライカーの雄叫び。
ボーリングの球が、ピンまで飛んでいく。ん? 飛んでるぅ!? いいのかコレ!?
『ぱしゃぁああああん』
「ストライクゥゥゥゥウウッ!?」
何てことだ。ピンに触れた瞬間、球が粉々になってしまった。どうゆう理屈だ、星葉。
「大いなる力の前では破滅のみ☆」
「うるさいわ」ぱしっ。
「ぃやん☆」
しかし、どうするか。ボーリングの球壊したことなんて、そうそう容易く見逃してくれないだろう。
琴はあたふたしている。
「ボーリングの粉って美味しいかな☆」
アホ言うな。
「ごはんに振りかけて、食べてみれば?」にこり。
微笑みながら毒味を促してやがる。
仕方ないな。あれを使おう。
家に着いた。
「楽しかったな」
「そうだね、お兄ちゃん♪」
そして俺達は家に入った。
オールオッケー!
「ああああああああ先輩まで超能力をぅあああああああ!」
「まあまあ、落ち着こうよリンさん。キャラ崩れてるよ。ほら、みひろクンの頬でも触って落ち着こうよ」にこり。
「ぇ、ぇええ!?」




