円卓会議
アルキメス王国アルキメス城内
隊長・団長が8人広いが小ざっぱりした部屋で大理石の丸いテーブルを囲み、椅子に腰かけ口論を繰り広げ正面奥に無駄に豪華な服装・装飾品を身に着けた小太りな男と、その右隣に目の前で行われている会議を直立不動で眺めている黒一色の衣服を纏っている男がおり、左には月白の衣を羽織った女性が佇んでいた。
会議の趣旨は、4番隊長ガラダリが遭遇した魔物の大軍をたった2回の攻撃で壊滅にまで追い込んだ男の危険性を議論し、国に害を及ぼすと判断された場合暗殺に特化した部隊を結成し処理する。
現在2番隊団長及び6番隊長~9番隊長が4番隊長の意見に賛同し、それを3番団長のアルインが猛反論10番隊長はどっち付かずで魘されている。
「この国に害を及ぼす可能性がある危険分子は至急処理し、陛下や国民の安全を最優先に考えるならばこれ以外ありえないでしょう!」
「お前は何も分かってない!彼が陰でどれだけ我が国に貢献してしてきたか!!それを異質な力を持っているから危険だから殺すだと!!我々がこんなところで話し合いなど、ましてや彼の処遇を決めるなどあってはならんのだ!この言葉の意味が分からんのか馬鹿め等が!!」
「まぁそんなに熱くなるなアルイン殿、貴方はその男に何らかの恩義があり恩を仇で返したくないと思い擁護しているのでしょう?ですが個人の感情を捨て国のために動くのであればガラダリ様が仰っておられるように・・・」
「貴様もかフルッツ!オレンラ・メダイハン・クライン・・お前達は何も分かってない!俺達が彼にどれだけ・・」
「アルイン様もうそれくらいにされてもよいのではありませんか?貴方が情に厚くこの会議を開く度に反対していると聞きましたが今回は・・・今回だけは引いていただけませんか?」
「幾ら聖女様のお言葉でも引く訳には参りません」
アルインがどれだけ声を荒げようと他の番隊長の意見は変わらず、6~9番隊長の名前を叫んでも顔を背けられだけで、終いには衣を羽織った女性に宥められるように手を差しだされるが強い眼光でそれを退け、全員を見回した。
「アルイン殿1つお聞きしてもよろしいかな?」
「なんでございましょうか、ドロイ殿」
「先日其方が預かったという手紙だがこれは本当に彼が書いた物なのか?いやそれ以上にこの内容が異様過ぎて後で細工した物である可能性が高いのだが、そこの所はどう思いますかな?」
「ご質問の意味が分からないのですがつまりどういうことですか?」
「これは失敬、つまりはですね。その男がエレキレル殿を殺害しそれによく似た筆跡で手紙を書き・・・」
「お話の途中で申し訳ありませんが、あの手紙をお読みになられたのでしたら本物かどうかなど疑う余地などありはしないのですが!」
黒ずくめの男の前に座っていた白髭の老人が挙手しロルッオで起きた出来事が記されている手紙を持ち、このその物が偽物である可能性があると言い放ち果てには、エレキレルを殺して内容を偽造したとまで言われ強い口調でそれを否定する。
「こんな話をしておっても退屈なだけじゃ、早うその男を始末せよ。余からの命令じゃ」
「陛下!それはいくら何でも無責任過ぎます、これは陛下の責任でもあるのですぞ!!」
「口を慎みなさいアルイン、次陛下にそのような無礼な発言を・・・」
「慎みなせぬ!我々は彼に報いらねばならんのだ!!これはバルニッシュ様から口止めされていたが、こうなれば仕方がない。よく聞け皆の衆!特にガラダリ・・貴様が危険分子だと申し立てた彼は、たった一人で5体の魔王軍番隊長に立ち向かいそれを打倒した、そして我々が勇者だと称えているユウマ様とリュウヤ様と同じ”勇者様”だ」
「は?」「なっ!?」「何を!」「バカな!」「え?」
小太りの国王が一向に結論が出ない会議に呆れ手短に結論を示すと、アルインが喰って掛かり穏やかな表情だった聖女が怒りに満ちた顔で抑制しようとするが、それをも跳ね除け捲し立てるように声を張り上げ隠されてきた真実を露見し、多方面から全幅の信頼を寄せられていたアルインの言葉に他の番隊長は動揺を隠せず慌て、一番表情の落差が激しかったガラダリに至っては余裕ぶった表情は完全に消え、酸欠の魚の様に口をパクパクさせるだけの女になった。
「何を言っておられるのですかアルイン様!勇者様はユウマ様・リョウヤ様のお2人だけです!これ以上この場を混乱させるような発言をするのであれば・・・」
「混乱させる?私はただ事実を言ったまでですが?ユウタ殿が3人目の勇者としてこの世界に・・陛下及びそれに従った魔導士等により勇者召喚の儀の際にこの国に降り立ったのは記録にも残されており、陛下於きましては民は疎か我々にも塗り固められた嘘を信じ込ませ、挙句の果てに・・・」
聖女が他の騎士隊長達を落ち着かせようとアルイン責めるが、しれっと受け流し王を睨み付けた。
「アルインよ余の命が聞けぬと言うのか?」
「こんな身勝手な命令など聞けるかァ!!私は彼に命を救われた、ここに居る者同様一度は陛下に身も心も捧げたが!」
「それならばもうよい・・ショウクンよ、反逆者を始末せよ」
「なっ!?それが王のやる事か!!」
「恨むなら、その勇者を恨むんだな」
ブチ切れたアルインは小太り国王の命令を蹴り、テーブルに拳を振り下ろし蜘蛛の巣状のヒビを入れ埋まる。ため息を吐く様に控えさせていた黒一色の名を呼びそいつが腰の剣を抜き一歩前に出る。
「・・・アルイン様に手出しはさせない!」
「ランタン!やめろ!お前の敵う相手じゃない!!」
「ふん、邪魔だ」
これまでの沈黙を破り末席の隊長が椅子を倒して立ち上がり、アルインの制しも聞かず守るように立ちはだかり剣を鞘から抜き構えた。
だがショウクンはランタンが震える両手で力一杯掴んでいたはずの長剣をいとも容易く打ち上げ、がら空きになった腹部を蹴り飛ばしそのまま壁に激突し動かなくなる。
「ランタン!!おのれ・・・ショウクン貴様ぁ!!」
「所詮は人間・・僕の相手にはならない、次はお前か」
「くっ・・・ファイヤーキャノン!!ロックウォール!ライトボール!」
ピクリともしなくなった部下の名を叫び射殺すような眼差しをショウクンに向け、剣を抜き放つが飄々とした態度で向き直りフードの下から若い男の声が漏れ、それと同時に今まで感じた事のない殺気を感じ思わず弱気な声を零すが、闘志を燃え上がらせ炎の大玉をショウクンに放ちそれが剣で打ち消された瞬間床に手を当て自身を囲む様に3つの岩壁を形成するが、それをも難なく破壊され突き出される剣を緊急回避し苦し紛れに光玉を投げ飛ばし距離を取る。
「無駄だ、聖魔法も僕には効かない。さぁ陛下のお言葉のまま・・あの世に逝くがいい!!」
「妻よ子よ・・次の休みは帰れそうにない、フルオーバー!!」
光玉によってフードが取れショウクンのまだ幼さが残っている顔が覗かせた、魔族の特徴的な青色の皮膚・額から2本の角が生え金色の瞳孔が目の位置を際立たせていたが、それ以外は人間そっくりの男がショウクンの正体だった。
無駄口を叩ける余裕のあるショウクンとは対照的に、極度の緊張で滝の様に冷や汗を流し呼吸も浅くだが大きく肩を上下させているアルインは、一息に自身を落ち着かせ故郷の妻子に思いを馳せ個人で扱える最大効果の身体強化魔法を唱え特攻を仕掛けた。
「無駄だってことが分からないのか」
「・・・馬鹿な・・・そんな・・この俺が・・歯が立たないだと!?・・・殺せ」
「言われなくとも死ね・・・・?」
全魔力と引き換えに通常の倍近い戦闘力で一気に接近しフェイントを掛け背後を取り、全身全霊の一撃を背中に浴びせようと長剣を振り上げ下ろすが、そのひと太刀を振り返りもしないで避け背を向けた状態で次々と繰り出されるアルインの連撃を背中に目でも付いているかのごとく避け続け、埒が明かないと見たアルインは体に炎の力を纏わせ正面に周り込み回転斬りを細身肢体にすべり込ませるように放ったが、剣も団長である己の誇りと自信も共に崩れ去り、膝を着き頭を下げた。
「何をしておる!貴様まで余の命令に背くのか!?」
「強い力を持った者がここに近づいている?」
ショウクンが無慈悲な言葉を掛け剣を振り上げアルインが瞳を閉じる、だが痛みはいつまでも訪れることは無く目を開け顔を挙げると剣を振り上げたまま扉の方を凝視しているショウクンの姿があった。
小太り陛下の言葉に反応するように疑問形で返し剣を下ろし、鎧が擦れる音が徐々に大きくなり扉の前で止まり、誰かの手によってその扉が開かれ3人の人間が現れた。
「マケルンここで合っているのか?結構奥まで来たが」
「・・開けてしまってから聞かないでください、でもここで合っています」
「ここって円卓会議室じゃ・・・」
3人三様の反応を見せ扉を開けたであろう大柄な男が室内に入り見回すと、膝を着いているアルインを見て驚いた顔をしてショウクンに視線を移し眉を顰める。
「アルイン様!おのれぇ!!この悪魔が!アルイン様を騎士3番団長と知ったうえでの狼藉か!」
「見かけは魔族に似ていますが、アレは王国1番隊団長のショウクン総騎士団長です」
「ああ、あれがこの国最強の騎士か・・・」
「なんじゃお主ら!侵入者じゃ!構わんショウクンそ奴らを斬り捨てい!!他の者も早くあの者を始末せよ!!」
「お前は・・陛下!この者が魔族と思しき力を持った人間です!皆陛下の命に続け!!」
膝を着いているアルインを見て大きく叫び声を上げ、腰の剣を抜き矛先を向けるマケルンだったがカルディに止められ、その言葉を聞いた俺がマジマジとその姿を観察するが、王が突如侵入してきた部外者に声を挙げそれに便乗するようにガラダリが他の隊長達に声を掛け自らも剣を抜く。
「さて、お前がショウクンか?」
「なるほど、お前が勇者の名を騙っている当人か・・・そこそこの力は持っているようだが、陛下の御命令だ処分する」
「勇者か?そうだな・・どうもそうらしい、信じたくないのは俺も同じだよ」
「ほざけ!!」
後ろの王を囲みように守っている隊長共は無視し向かい合っている魔族に声を掛け、先ほど感じた殺気を上回るそれを直に感じ身構えたが、勇者がどうのこうのと聞いてくるので口元を引き上げ肯定する。
国家の救世主となる勇者がこんな何の特徴もない男であるはずが無い!とショウクンの頭の中では思っており嘲るように肯定した目の前の男に怒り一直線に突っ込んできた。
「まずっ、3倍!」
「死に晒せェー!!?何!抑えられただと!?」
ショウクンが突撃してきたが今まで感じで大したこと無い慢心しと高を括っていたせいで、動きが捉えられなり慌ててモドキを使った時には目の前で剣を振り上げている所だった。振り下ろされる剣の手元を両腕で押さえ力が均衡すると、今度はショウクンが驚きの声を挙げ前後上下に力を加え振りほどこうとするがビクともしない。
「あの屑王に仕えてるからって油断したが、こっちとらお前の様な魔族何体も相手にしてんだ!!そんな体で俺の腕力を振り切れる訳ねぇだろうがぁ!!」
「化け物かお前!?」
「ああ!?化け物?そういやそこの女騎士にも言われたな、化け物でも何でもいいがこれで化け物なら魔王は何になる?俺より遥かに強いであろう人類の宿敵はよぉ?!!・・・お前ら馬鹿だろあの勇者で魔王が倒せる訳ねぇだろうが」
両手を押さえた状態でショウクンの体を蹴り飛ばしもう一段階モドキを上げ、四肢で連続猛攻撃を繰り出して奴がそれを剣で防ぐという戦況に代わり、ついに受けきれなくなったそいつは剣を手放し回避に徹することなる。
だがそれを良く思わない人間がそこにた。
「何をグズグズしている!お主らもショウクンに加勢しろ!!」
「っは!私に続け!」
屑王が隊長達に加勢するように仕向け、ガラダリが先陣切って攻防戦を繰り広げている2人のもとへ乱入していく。
国10人しかいない精鋭中の精鋭である騎士隊長をも5人同時に相手にするのは流石に困難で、徐々に形勢が逆転していく。
「邪魔だお前ら退け!!」
「このまま手数で押し切れば、我々に勝利の女神さまは微笑むはず!」
「MAXパワーだ・・・・死ぬなよ?」
隊長5人で連帯を取りショウクンの動きまで制限するようになり、隙が多く生まれることになる。
そしてすべての剣技が標的の体を捕らえ避けることが出来ない状態で全ての剣撃を防ぎ、パワー重視に成り一人の男を持ち上げ壁に投げつけ戦闘不能にする。
そして一人ずつ隊長格を潰していき最後にガラダリが残る。
「よくも部下を!!」
「安心しろ殺してはいない、雑魚がしゃしゃり出て来なければもう少し楽しめたんだが・・・そうだろ、ショウクン?」
「チッ!お前この国を敵に回してタダで済むと思っているのか!!?」
「じゃ聞くが、貴様等俺を敵に回してタダで済むと思っているのか?俺がその気になればこんな国ぶっ壊すことくらい出来るんだぞ?」
「放せ・・はな・・アガ・・グィ・・ギァマ・・・・ア・・ガ」
「ユウタ様おやめください!!」
現段階の最大強化を使っているせいで普段より気が強く、冗談でも言わないことを口先から並べ、敵意を丸出しにしているガラダリの首を両手で絞め持ち上げた。
自分でもわかった・・口元が緩んでいるのが、片目の女騎士がもがき苦しむの姿がとても面白く気分が高揚し快感だった。
次第に抵抗しなくなり泡を吹いて事切れそうになる時、カルディの声がスッと耳に入り頭に響き無意識に手から力が抜け女騎士が床に落ち、喉押さえ必死に空気を吸い込もうとしている様を見て・・・またやってしまった・・と頭で理解した。
「ショウクンよ、俺を殺すのは諦めてくれ・・そしてもう関わらないでくれ、命令だろうが何だろうが」
「何勝手な・・・おい、お前!逃がすと思うのか!!僕を舐めるのもいい加減に・・体が・・」
「カルディ済まない、やはり俺はもう壊れているようだ。・・・お前が居ないと殺してた」
「・・・私なら大丈夫ですよ?貴方を受け入れます」
「アルイン・・他の隊長を痛めつけて済まん、しばらく動くことも出来ないだろう」
「助けられて文句言える立場でない事くらい分かっている、潮時だったんだ」
「屑王よ、ゴミ勇者達に伝えろ。俺に魔王を先に討伐されたくなかったら、今すぐにでも心を入れ替えて戦えと」
「冒険者風情が!ワシに何という無礼を!ショウクンさっさとそいつ等を始末しろ!!誰か!アリス!!お主も何か攻撃しろ!!」
争う気も失せ強化も解き近くに居た奴から言葉を掛け次の奴に・・その次の奴にと声を上げていき最後に屑王に用件を伝え扉から出ようとした時
「冒険者さん!動かないでください、撃ちます!これは脅しではありません、そこから1歩でも動けば・・」
「聖女様・・・一応言っておくが俺に聖魔法の類は効かんよ、怪我したくなければ・・・ホントに撃ってきゃがった」
衣を着た女が聖攻撃魔法を容赦なく放ち、狙いよく後頭部に直撃した。
振り返り軽く気弾を作りそれを押し出す、聖女にはそれが見えていたようで両腕をクロスさせ防御したが体に溶け込む様に消えていったが、衝撃だけは消えず部屋の壁に背中を叩きつけ崩れた。
「死んではいないはずだ、運が良ければ・・・」
そう言い残し5人はその部屋を後にした。




