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カルデディア


鍛冶屋で叩き売った2本の剣の代金を握り宿屋に入ると、そんなに待たされず手続きを終えられたが食事の時間が過ぎており仕方なく2人は1部屋に入った。


「お前は上で寝ろ、俺は下で寝る」

「・・・・床は冷たいでしょう、よかったら一緒に寝ませんか?変なことはしないので」

「お前の口から出た言葉は信じられん」


「では、カルデディアの名で誓いましようか?」


荷物を置きマットの上で寝っ転がりカルディにベットを勧めるが、俺を呼ぶようにトントンとベットを叩き首を傾げると真面目な顔に成り仕方なく横に座る。


「いつになく素直ですね、ユウタ様?」

「黙れ、首絞めるぞ?」

「ふふっふどうぞ?お気が済むまで・・・え?」


いつも通り笑顔でからかい笑うカルディと躊躇しそれに従わない俺、ただ今までと大きく違うのは素直に勧めを受け入れたこともだが、振り返る様な動作で体にその跨りひんやりと冷たい首に手を掛け押し倒して見下ろし、驚いた顔で目を丸くしているその顔が見れこれまでの仕返しができ少し手の力が弱まり


「カルディー今どんな気分だ?俺に跨られ見下ろされて絞められて・・つらいか怖いか?」

「いいえ、嬉しいですやっと使って下さるのであれば、私は幸せです。早く犯してください」


「・・・・そんなことで幸福を感じられても困るのだがな、それと勘違いを正しておきたいのだが別にお前を犯すために跨った訳じゃない、俺はお前に何もしない。使ってくれるとか言わないでくれ俺はそういう目でお前を見たくない」


「それではキスしてください、今はそれで諦めますので」


俺はこういう女が嫌いだ・・自分を大切にしない女なんか大嫌いだ。

だが今だけはこいつの望むことをしてやりたいと思った、その代償はキスだったがそこは躊躇わず顔を近づけ


「俺みたいな奴が”勇者”でごめんな」

「いいえ、貴方様でよかったと思います」


強張った顔が彼女の唇に触れ雪解けの様に緊張が解けていく、数秒か数分・・・長いか短いか分からない一瞬が2人の中で過ぎ記憶に刻まれた。

一瞬であったはずだがその心地の良い体温と極度の体力消耗したことが相まってそのまま眠りについた。


「・・・寝ちゃいましたか?いつもならこんな無防備に寝られると襲いたくなっちゃうんですが、この寝顔を見るとその気も失せますね、よいしょっと・・・?これは完全に抱き枕状態ですね・・たまにはこういうのも悪くないかもですね、ゆっくりお休みになって下さいね」


覆い被さった状態で眠りに入ったせいでカルディの体を拘束するように抱きしめ、女の力ではそれを振りほどくことは出来ず結局一晩だけ抱き枕になることを受け入れた。






翌朝

宿屋の主人に「昨晩はお楽しみでしたね、チッ」とか言われ舌打ちされたが、何もした覚えがなくされた様子もなかったので鍵を返してそのまま宿屋を出た。


「どこかでご飯食べましょうか?」

「そうだな、そこらの定食屋にでも・・・あ、あそこは・・」


そこそこの時間に起きたはずだが多くの人々が表通りを往来し露店も脇の店も開店し始めており、その中で木造白塗り壁で木造りの看板が掲げられている年季の入った定食屋に目が留まる。


「どうしたのですか?あの店に何か思い入れが?」

「ああ・・・昔俺がまだ城の訓練兵士だった頃よく仲間と食べに入っていた定食屋だ・・・あいつは元気にしているだろうか」


「でしたらあそこにしましょう!幸い営業はしているようですし」

「ああ・・・」


ふと昔の記憶がよみがえり短い間だったが快く接してくれた奴の顔が浮かび少し懐かしく思った、カルディが手を叩きその店を指さし朝食をとる店が決まり人の往来を縫うようにしてその定食屋に入った。


「いらっしゃいませー2名様ですか?それではこちらのテーブル席へご案内いたします」


店に入ると若い男の店員が気持ちの良い声で挨拶し角のテーブルに通された、そこは俺達がよく使っていた固定席として座っていた所だった。

カルディを窓側に座らせいつものように窓に向かって座る、メニューを渡され腹に溜まる肉料理を注文するとカルディは俺が食べたこと無い料理名を伝え、店員は一礼し奥に消えて行った。


「結構いい店ですね、長く王都に住んでいましたが食事はいつも北の通りで済ませていたので」

「そっちは貴族用だ、俺達は安く量の多いここでよく飯を食っていた」

「でもユウタ様も貴族の仲間入りですよ?」

「こんなもん、金も力もない見せかけだけの勲章だ、何の意味もない」


開店したすぐに入ったせいか他に客はおらず普通の音量で話をする


「はい、お待ちどうさま・・こっちが飛竜のステーキ・そっちがパスレタですご注文はお揃いですね?それでわ・・ん?あ!お客さん久しぶりだね、元気してたかい?」


「ユウタ様お知合いですか?」

「いや、記憶にない。人違いでは?」


「いやだね?私はまだそんなにもうろくしてないよ?ほら3年前くらいに茶髪の男の子とよく食べに来てくれたじゃないか」


両手に料理を持って運んできたおば・・・お姉さんは俺の顔を覗き込みハッとした様子で久しぶりと話しかけられたが、その女性を見ても全く覚えが無く人違いだろうと返したが、茶髪の男の子という言葉に手に持っていたナイフを皿に落とし


「そんな昔のことなんで覚えているのです?」

「君らからすれば昔かもしれないけど、お姉さんからすれば数年前の出来事も半年前くらいの感覚なんだ。不思議そうな顔をしているけどね、私こう見えてエルフの血を引いてるからね普通の人間より寿命が長いんだ」



「あいつは・・ライガイの奴は元気にしていますかね?」



訓練兵時代の2人を覚えている店員さんに茶髪の男の子、ライガイに付いて聞くが渋い顔をして


「遠征から帰った後ここに1人で来てね、君が死んだと聞かされたよ。それから半月位経った頃辺境の荒野に部隊ごと飛ばされてね、最近は見てないよ」


「そうですか、あいつが生きていると聞けただけで十分だ」


「にしても死んだと聞かされた君が綺麗な彼女連れてこの店に再び来てくれるとは、嬉しい様な悲しい様な・・彼が聞いたら喜ぶだろうけど・・・何か事情があったんだろうけど少し裏切れてた気分だね」


この世界で初めて心を許した・・・全てではないがある程度信頼していた友であった。彼は生きており辺境に飛ばされたそうだ、奴の事だからなんとかやっていっているだろう。

もしかしたら騎士にもなってしまうかもしれない、あいつなら道を外れることは無いだろう。


「事情があったんです、言うことは出来ませんが」

「まぁ何にせよこれで彼の悩みも消えたわけだ、おまけも付いて来たし私も専念できるよ」


「・・・おまけ・・おまけ・・グスンこの女・・・」

「カルディやめろ、飯の途中だ」

「はっはは、活きのイイお嬢さんだ」


何故か目の前の2人の間に火花が散った気がし制止を掛けると、不穏な空気は収まりお姉さんの笑い声だけが響き奥に消えて行った。


「ユウタ様あの女消してもいいですか?」

「いいわけ無いだろ、完全にこっちが悪いだろうが」

「わぁーユウタ様まであの年増BBAの肩を持つんですか!?こうなったらやけ食いです!その肉貰います」


カルディが年増BBAと言った所で奥のカウンターから刃物を持った般若がこちらを見ていた。

俺的にはどっちもどっちだろうと思ったが、その光景を見て口に出すことはしなかった。その後皿の上にあったステーキの半分を齧られ自分の皿の麺と一緒に啜っていた。


「彼がもしまたこの店を訪れたら君の事を教えても構わないかい?」

「ああ、そうだなあいつには伝えておいてもいいかもしれない、俺がその時まで生きていれば・・」

「そんなにひ弱そうには見えないけど?病気持ちかい?」


「いいえ、お金はこれで足りますよね。美味しかったですそれではお元気で」

「君もね・・・・ありゃこりゃ多く貰い過ぎじゃん・・伝言代か」


会計の時ポケットに入っていた硬貨を全部カウンターに置き店を後にする、彼から受け取った硬貨の中に金色に光る一枚を見て女性の店員は勝手にそう解釈した。


表通りに出るとさっきよりも道は混んでおり人々の頭で埋め尽くされ、容姿のいい呼び子やおっさんの声が飛び交い活気に溢れており、腐っているのは一握りの貴族と王族であることを再認識した。


「俺はこれまでこの国のことが大嫌いだった、その要因の8割9割は俺の不遇に対する対応に不満だった。何度も死にかけその度に俺をこんな目に遭わせた人間を恨み殺す事を原動に生きていた頃もあった」

「心中お察ししますが、そんなに悪い国ではありませんよ?人に活気があり、物は・・・」


「ああ。だから少し考えを改めることにした、飛ぶぞ城まで」

「はい!」


俺はこの国の悪い所ばかりを見過ぎ全てを嫌いになりかけていた。

だが気付かせてくれた人間もたくさんいたことを・・・他ならぬカルディもその一人だと。

そこそこ膨れたお腹をさすり城に向かうと伝え気を纏うと了解の声が隣から聞こえ飛び立った、空から街を見下ろしそれから一気に城門まで突っ切り上から庭園を見下ろすと、兵士が忙しなく行き来しており城内もなにやら騒がしかった。


「降りるぞ」

「はい」


一声かけ先にカルディを下ろしすぐ後を追い地に足がつくと同時に、兵士が警戒しながら近寄って来る


「お前達どうやって門を超えて・・・あれ?貴方は・・ああ!思い出した、私ですよ!何年か前に負傷した時、不思議な水を作って下さったじゃないですか!あれ以来筋肉の魅力に取りつかれ鍛えるのが楽しくなってしまって、いやぁ感激しました!いやマジで、空から降って来るんですもん」


「ああ・・・・久しぶりだな・・うん」

「その様子ですと覚えていらっしゃらないようですね?」


「それで今日はどのようなご用件で?ああ、でも今は少し忙しく上に言っても取り合ってくれない可能性の方が高いですね、伝言であれば私が伝えておきますが・・・この人は大丈夫だ!私の恩人であり生き方を変えてくれたお方だ!この上腕二頭筋と胸筋が嘘を吐いてる様に見えるか?ッフン」


こちらに見覚えは無くともこの兵士には印象深く残っているようで、鎧の上からでもわかる筋肉を浮き上がらせ手を勝手に握られブンブンと縦に振られた。少し落ち着いてから兵士らしい言葉使いで用件を尋ねられたが、城内のあちこちで声が上げられ筋肉兵士は未だに槍の先を向けている後ろの兵士を宥めた。


「いや見立つように飛んできたから誰か来るはずなのだが」

「・・・ですが今は勇者様が・・」


「ユウタ殿にカルデディア様!!お出迎えが遅くなり申し訳ございません!」

「・・・勇者殿だと!?いや?言い間違えか、でも騎士様が間違えるはずは・・・」

「ほら来た」


わざわざ目立つように飛んできたはずなので知っている奴が見つけていてもおかしくはなのだが?とか考えているときに大声で名前を叫ばれ、大扉から白銀色の鎧を着た騎士が手を振りながら走ってきた。

筋肉兵士が何か勘違いしたようにボソボソと呟いていたが、無視することにした。


「マケルンか・・・お前の名前を聞くと不吉な状況になっていそうで怖いんだが」

「ユウタ殿何か仰いました?」

「いいや、何でもない。城内が慌ただしいが何かあったのか?」


「はい、南西で指揮を執っていた4番隊隊長のガラダリ様が明朝より戦地を引き上げ、開門と同時に城内に部隊ごと入城されまして・・・その大変申し上げにくいことなのですが、ユウタ殿が魔族である可能性があり至急部隊を招集する・・などと意味不明な言動を口にし今それに付いて番隊隊長会議を陛下交えて行っているのですが・・・」


城内が騒がしい理由をマケルンに問うたところあの金髪騎士が余計なことをしてくれたようだ、話をしていく中に表情が暗くなっていき、唇を噛みそれ以上言うのを躊躇っているようでこっちから声を掛ける


「芳しくないのか?」

「私は中に入れないのでよく分からないのですが、そのようです。アルイン様以外はガラダリ様の言葉を信じているようで・・・申し訳ありません」


「お前が謝る必要は・・・」

「我々3番隊は貴方様に命を救われ恩に報いることはするなれど、身内で起こったとはいえ御身を危険に晒させてしまうなど・・騎士として失格です」


「別に背負うことは無いぞ?放置した俺も悪いし、カルディ中に入るぞ・・マケルンお前は付いてくるか?別に強制はしないが」

「お供させていただきます」


アルインのおっさんだけは味方の様だがそれ以外は聞く耳持たずの可能性大だな、頭を垂れてこの状況を本当に申し訳なく思っているようで、あの時しっかり弁解していればここまで大事にはならなかったかもしれないと思い、2人に声を掛け大扉に向かうとしっかり足音が付いて来た。



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