アルキメス王国に勇者再び
ロルッオを発って2日ひたすら北西を目指し飛行し、途中4回ほど野盗に襲われていた荷馬車を助け謝礼を受け取り、王都に続く関所で一旦降り歩いて通る。
ギルドカードを見せたら何故か敬礼されたが多分カルディの影響だろう。
そこからは人目も多いので道の端を歩くことにする、王都の一番高い建物の塔がここからでも見える。
数十分歩いた時さっき野盗に襲われていた馬車の主人が横を通りかかり、南門まで乗せてもらうことになった。カルディは何故かごねた。
「あざっしたー」
「いや~私の方こそ助かったよ、護衛の冒険者は前金持ってとんずらしゃがったもんでね。今日納品だったもんで強行突破しようしたんだけれども、運が悪かったっと諦め取ったんですが、いや~貴方達のおかげで本当に・・・おっと昼前に納品しなきゃいけないだった。んじゃお二人さんいい所ですからごゆっくり~」
南門で馬車の主人と別れ関所で渡された手形と通行料を払い、久しいと感じ街道に入った。
「そういえば南門の方は来たこと無かったな」
「ユウタ様一旦今日のところは宿に泊まりませんか?この頃お風呂に入っていないので・・・」
「分かった、そこらの安宿にでも・・・」
「え、温かいお湯です!安宿じゃ水じゃないですか!!私いいとこ知ってますのでそこにしましょう!」
やたら風呂に拘るので裏通りからその宿まで付いていく事にした。
昼時で人の出入りが激しい表通り抜けレンガ作りの飲食店風の前で立ち止まり
「ここです!さぁ入りましょう!ここのご主人さん上級調理士なんです!ご飯も絶品です!」
「・・別にいいが代金はお前持ちな」
「さぁさぁ入りましょう行きま・・・え?こんな美少女にお金払わせるんですか?」
「誰が美少女だ・・外見は良くても中身でマイナスだろ、お前が選んだのならお前が払うのは当然だろ?いやなら安宿に行くぞ」
「いやですーここがいいんです!分かりましたよ、そこらで体売って稼いで来ればいいんでしょ?」
「いや・・別にそこまでしろとは・・・」
やけにはしゃぐカルディが代金をこちらに押し付けようとしたので冷たくあしらうと、マントに手を掛け街中のそれも昼間に脱ごうとして慌てて止めるが俺達の背後から下衆な声がした。
「ゲヘヘ、嬢ちゃんいい体しているな、そんなヒョロヒョロ男なんざ放っといてオラとイイことしようなぁ?金ならいくらでも払ってやるよ?」
「え・・・いやちょっとその」
「当代・・あっしらにも残しておいてくだせぇ」
昼間からお子様の教育上悪そうな+頭も悪そうな巨漢が子分らしき男どもを連れカルディに詰め寄る、当のカルディは流石に無いな~って顔を背け俺の後ろに隠れると、子分がガン付け汚い顔面を寄せ。
「なんだテメェ当代の邪魔するってのかぁ!!」
「こいつは俺の連れだ、女ならそこらのゴミでも抱いていろ」
「あぁん!?このお方はなぁ王家御用達ゴメックリアの現当主ウエン・ソシナール様だ!貴様の様な平民が口を挟んでいいお方ではないのだ!そこを退けウエン様はその女をご所望だ、その女もウエン様に感謝の・・・」
「申し訳ありませんけど貴方は生理的に受け付けません、他を当たって下さい」
王家御用達?それがどうした、どうせあいつら高い品=品質の良い物とでも思ってやがるのだろう、じゃなきゃこんな脳足りんのデブから物を仕入れるなんざしないだろう。
カルディにもお断りを入れられたデブの従者が口をパクパクさせ、顔が引き攣り
「貴様等!当代に関わる事なら騎士団も動くのだ!そうなれば貴様等なんぞ即死刑!命乞いなぞ・・・」
「分かったから、はいはい凄いですね。怪我したくなければ俺らの前からとっとと失せろや、殺すぞ」
「脅迫罪です!殺人予告です!この男は危険です!ご通行中の冒険者の皆さんここに殺人鬼が居ます!そ奴をぶち殺してくださった方に報酬として5金差し上げます!さささ早い者勝ちですよ!」
騎士団が動くなんぞほら吹き、その上公衆の面前で殺人鬼扱いし高い報奨金付け冒険者に呼びかける、そしてその声に足を止めて何やら相談しているグループが2~3あったが
「その申し出は悪くないがよぉ、どう見てもアンタ等の方が悪いだろう?」
「デブよりはその男の方がマシじゃない」
「あの女の子チョー可愛くね!?」
どれも協力してくれそうにはなく従者は地団駄を立てるデブを宥め
「これだから貴方達冒険者は!信用ならないのですよ!もういいです、騎士団を呼び寄せ・・・」
お付きが最後まで言い切る前に城の方から馬の嘶きと蹄の音が聞こえ、人混みが左右に押し分けられ戻っていく。
「ほら見たことですか!ウエン様程のお力を有していれば、こちらが呼ばずとも危機を察知して駆け付けるのです!もう貴様等は終わりです!精々己の行いを悔やみ楽に逝けることを願・・・」
「無礼者!そこを退け」
「ちょ!?今私に言いましたか?違いますよね?こいつにですよね?にしても少し行き過ぎでしょう!目が付いてるのでしょう!騎士団にまで能無しが・・・」
「貴様我等を愚弄するつもりか!普段なら斬って捨てるところだが今は急いでいるのでそれどころではない、首が繋がっているのをありがたいと思え」
高らかに声を挙げ明らかに往来の邪魔になっている従者に御者騎士が罵声を挙げ、びっくりした風に端に飛び逃げたが今の言葉が自分に向けられたものではない筈だと思い直し説教しようとしたが、それよりも大きな声でかき消された。
そしてその御者騎士は馬車を進めチラっとこちらを向いて驚いた後に、馬車を急停止させ前後の騎乗した騎士に制止の号令を出し、御者台から騎士が鎧を鳴らしながら降りて鉄兜を外し
「おお!もう街まで入っおりましたか!関所の兵士の報告を受け急ぎ支度したのですが、出迎えが遅くなり申し訳ない。ささ長旅でお疲れでしよう馬車をご用意させていただきましたのでどうぞお乗りください」
目の前で起こっている出来事に納得がいかない従者が騎士に食って掛かる。
「ちょっと待て!貴様等はウエン様をお守りするために馳せ参じたのだろう!それなのにこの殺人鬼に馬車を勧めるとはなにご・・・」
「誰がいつ貴様等なんぞのために任務を行った?これ以上おかしなことを抜かす様なら牢獄にぶちっ込まれる覚悟をしておけ」
騎士が従者に向かって威圧するような態度で腰の剣を抜き首に当て、忠告し終わると真顔で鞘に戻しこちらに向き直った。そしてどこかで見たことのある騎士だと思い記憶を辿る
「ああ、誰かと思えばアルインの部下の吹っ飛ばされた奴か・・・体は大丈夫なのか?」
「貴方様のおかげでもう殆ど全快しました、お気遣い感謝します。カルデディア様もお変わり無い様なので安心いたしました」
「ええ、私達ここで宿を取ろうとしていたのだけれど?」
「そんな!御二人をこんな場所に御宿泊させる訳には参りません!どうぞ城の客室をお使い下さるようお願い申し上げます。何はともあれ馬車にお乗りください」
カルディはともかく俺は泊まれればどこでも良いんだが、城か・・・。
ちゃっかりもう乗っているカルディをよそに1人悩んでいた、それを不安そうに見つめる騎士だが
「こんなの何かの間違いです!!あの様な平民が・・・・」
「おい、誰かこいつを縛って牢に放り込んでおけ、アルイン様もお待ちかねでございます」
「分かった、乗るからそんなに急かすな」
懲りずに従者がまた口挟もうとした際、騎士が後ろに命令を飛ばし馬に乗っていた騎士2人がかりで取り押さえられ連れていかれた。
デブと子分はすっかり委縮してしまい壁際に固まっていた。
俺達は騎士たちの鎧と同じ白く装飾が施された馬車に乗り込み、掛け声と共に城の方に揺られていく。
太陽が真上に上がった時に城門潜り兵士や使用人が忙しなく往来する庭園に到着する。
騎士が扉を開けカルディが先に出て後に続く、最後に訪れたのはガンドさん達と謁見に呼ばれた時か・・・思い出すだけで怒りが込み上げ今すぐ何もかも破壊したくなる衝動に駆られるがグッと抑える。
「整列!王宮魔導士筆頭カルデディア様!及び英雄ユウタ様!ご登城!皆の者敬礼!」
「ようこそ、御出で頂き、恐悦至極にございます」
馬車を降りたところから正面大扉まで使用人・兵士・騎士が左右に整列し道が出来それを歩き、正面の大扉に同じく白銀の鎧を身に纏った騎士が仁王立ちしており、その前まで詰めるとおもむろに兜を外し顔を見せ
「お待ちしておりました、カルデディア様ユウタ様覚えてらっしゃるでしょうか?アルインです、2人に助けていただいた王国騎士団3番隊副団長の・・今は繰り上がり団長ですが」
「はいはい、その濃い髭面はよく覚えているよ」
「ハッハッハッハ!そうでありましたか!それなら結構!マケルンの奴を出迎えに行かせたのですが馬車の乗り心地は如何でしたでしょうか?」
「よかったよ。うん」
この暑苦しい団長の話に適当に相槌をして城内に入り、2階の客室に通されその部屋に待機していた女中にカルディは引き釣り込まれていった。
「また後でそっちの部屋に行きますからねーー!」
「・・くんな」
亡者のようなうめき声でそう叫びに断りを入れるが、俺の部屋2つ隣じゃねぇか。
「本日はごゆるりと旅の疲れを癒していただいて明日、大臣殿との面談を予定している」
「大臣?王じゃないのか?」
「私もそのつもりだったのだが色々と多忙なお方なのだ、今はここから南西の草原で勇者殿等と戦場の視察に向かわれておられるはずだ、もう一週間近く帰っておらんのだがそんなに苦戦しておるのだろうか」
アルインは申し訳なさそうに頭を下げ、王じゃない方が都合良いと黙って、構わんと言った。
「勇者・・・か」
「そうだ!トケカガミで魔族を打倒した勇者様だと聞いている、だが20にも達してない若者に国の存亡を託すのはいささか心細い、せめて君の様な・・・いやそれは言わないでおこう」
アルインは顎髭を撫でながら歯切れの悪いことを抜かし、俺は何か忘れていることが無いかと考えていたところ
「あ、そうだ手紙を預かっているのだが、それらしき人物が見当たらないのでどうしたものかと」
「それなら私が預かろう・・・うぬ・・ドロイ殿宛か差し出し人は、エレキレル殿かロルッオの街に向かってから音沙汰無いが、元気にしていただろうか?」
手紙の件を思い出しポケットから取り出してアルインに渡すと、2度驚きの声を挙げた。
「多分その手紙に書かれているだろうが、エレキレルという騎士は死んだ」
「・・・ご冗談を、奴とて伊達に5番隊を任されては居ない筈だ。」
アルインが真顔でそんなことを言うのでロルッオで起きた出来事の終始を話すと、後ろを向き少し鼻声で
「そうか・・・気の合う奴であったのだがな、まだ若くこれからが楽しみであったのに先に逝ってしまったか」
「ああ、嫌な奴では無かった」
「だろうな・・・・息子に縁談でもと思っていた」
「あ?あいつが女だって知ってたのか?」
「エレキレルは私が直々に鍛えた訓練兵の1人だった、それくらい知っていたさ・・・・後で女中が食事を運んでくるだろう、ゆっくりして行ってくれ」
「分かった」
廊下で長話をしてしまい一々メイドが食器を持ってアルインに礼をしているのが気になり、彼もそれに気づき俺に一礼して長い廊下歩いて行った。
部屋に入り特に何もすることも無くベットに座りそのまま後ろに倒れ込み目を閉じる。
何分経ったかドアをノックされた音で目を覚まし体を起こして返事をすると、若い女がお盆に丼ぶり茶碗と小椀を載せて入ってきた。
「お食事をお持ち致しまし・・・た」
「そこらへんに置いといて」
「畏まりました」
女が部屋の中央付近にあるテーブルに丼ぶりを置き壁際に直立で待機する。
「あんまり腹は減ってないんだが」
「温かい中にお召し上がりください」
昼時にしては空いて無いお腹をさすりイスを引いて座り、蓋を開け湯気が立つ中身を見る。
「カツ丼か・・・」
「ご覧になることは初めてではないご様子で?」
そりゃあ・・俺が教えたんだから初めてじゃねぇわ。
だがそれを忠実に再現するのも相当に腕が良くないとな。
小鉢に入った野草を散らしてスプーンで掬い口に運ぶ
「美味い・・・味噌汁も悪くない、俺が作るよりずっとうまいかもしれん」
素直に料理の出来を褒め完食すると、すぐさま女中がそれを片づけ部屋から出て行った。
「さて、もうひと眠りするか」
今度はしっかり布団も被り本格的な眠りに入る。
再び扉をノックされる音が聞こえ
「・・・・ねみい、どちらさん?」
「食後の紅茶をお持ち致しました」
「・・・いや別に要らんのだが?」
「そう仰らずにこのまま帰ると私が怒られてしまいます」
日の傾きを見るに夕方って感じではないな、3時のおやつ的な感じか?
女の声でそういわれたので仕方なく扉を開けると鼻先を何かが擦った、完全に気を抜いていた訳でもなかったのに何だ今のは?
「今までお嬢様を放りだしてどこほっつき歩いたのですか?終いにはボインの女性まで侍らせて、良い御身分ですね?」
「なんだお前!兵士を呼ぶぞ!」
「貴方の力量であれば私を組み伏せることなど容易いはず、腑抜けましたか?」
メイドは紅茶など持っておらず代わりに刀身が淡く光る長剣を床に擦らない様に構えて、ゆっくりと近づいてくる。
「さっきからなんだ!人の事を知ったかぶりの態度・・・」
「もうお忘れになってしまっていたのですね、そうですわね私達はただの依頼人だっただけ、お嬢様はともかく私の事なんて忘れていますよね?」
このメイドは一体何を言っている?こんな知り合いは居ない、依頼人?いつだ?いつの話をしている?依頼っつたら3年近く前のアレしか・・・。
「おい待て、依頼人?王都で依頼を受けたことなんか・・・」
「ならばこの剣の事も覚えていないのですか?」
「それは俺が鍛えた鉄剣・・・・ということは・・・」
「ようやく思い出しましたね、おとぼけ男さん」
目の前に切っ先が差し出されたその剣を見た瞬間、脳内で記憶が遡る映像が流れていく
マリー達と出会う前・・エリルドリ皇国に向かう前・・変な村の前・・王宮料理人に・・
「お前は、リイか・・・小さいままだな」
「思い出して一言目がそれですか?失礼な御仁ですね、貴方でなければ斬り殺していますよ」
「そうか、リイか・・・お前はまともだったな」
「なんですか?いきなり意味不明な言葉を・・・」
目の前に居たのはメイド服を着こなしたリイだった、カリンのお付きの少女、俺が殺しかけた女の子。
頭のモヤモヤが晴れてベットに座りまだ切っ先をこちらに向けている少女を見る。、
「お前が居るということはカリンもここに居るのか?」
「いいえ、お嬢様は勇者様方と戦場にお出かけになりました」
「お前は行かなくてもいいのか?」
「・・・結局は身分の違いということです、他の人とは違って・・私は勇者が嫌いです」
カリンも勇者も王も多分姫とかも、この国の主要な人物がほぼ戦場に集合して大丈夫なのかこの国は?
「へー」
「貴方がカリン様とご結婚なさればもう少し違った結果になったかもしれませんが、当の貴方はどこかに逃亡し今の今まで情報が無かった訳ですから」
「ってことはカリンはもう結婚してるんだな?」
「はい、流石にこれ以上は待てないとお父上が昨年・・・」
「よかったじゃねぇか」
間の抜けた返事をした後ベットに倒れ込み、なんか人のせいにする苦労人リイにカリンにもう男が居るとことを聞いて祝福したつもりだったのだが、耳すれすれの位置に剣が突き立てられ馬乗りで腹部に体重を掛けられ重い。
「本気で言ってます?殺しますよ?」
「なんでそうなる?あーあベットに穴空いたじゃねぇか、これ高いんだろ?」
「ホント能天気な人ですね、そんなものより自分の心配したらどうです?」
「お前が言ったんだぞ、私くらい容易に組み伏せられるってな・・・別にお前みたいな小さい奴に乗られても何も感じねぇよ」
カリンが絡んでくるとこんな顔(笑っているようで無表情)をしていても恐ろしい事を抜かす、3年も経ったのに背丈も見た目もほぼ変わんないって可哀想に・・・。
「口が悪いところは変わっていませんね・・・貴方のくれたこの剣でいくつの命を奪ったと思います?」
「10かそこらだろ」
「たったの10ですか?お嬢様にすり寄って来た醜い男共の人数が?いいえ99人です、そして記念すべき100人目が貴方です、英雄ユウタ様」
関係無い話を長々とするが要は死んで欲しいんだろ俺に、なんでかな・・
「英雄だなんて大げさだなぁ・・・」
「謙遜する必要はありませんよ?何し戻ってきたのかは知りませんが、奥様に・・・いえこの国に仇をなすかもしれない存在は見過ごせません、申し訳ありませんが御命頂戴します!」
英雄とリイの口から出た時恥ずかしくなって剣が刺されていない方の手で髪を搔き、作業をする目で剣を引き抜き喉の上に持ち上げ突き立てられそうになるが、剣先は喉の数ミリ上から微動だにしない。
「甘いな・・・俺が奇妙な術使うの忘れてただろ?」
「死んでください死んでください死んでください死んでください死んでください死んでください、死ね!」
「いや、呪怨の様に呟かれてもな?こっわ」
「ワー!ユウタさん、今から一緒に混浴しに行きま・・・え、修羅場?ロリメイドと浮気?」
「いいところに・・・ちげぇわ変なところに来やがったが、ひとまずこいつを眠らせろ」
リイが涙ぐんで頼む様に剣に力を込めている所に暢気な女がノックもせずに部屋に侵入してきた。
「ボイン女死すべし」
「え?状況が飲み込めないのですが、やっちゃっていいんですか?」
「いいから!死なない程度ならいいから!」
「死なない程度のスリープっと」
「ボイン許すマ・・ジ」
リイは標的をボイン女に変えフラフラと扉の方に歩み寄る、一方頭にタオル巻いて風呂に行く気満々の格好で誘いに来たカルディは戸惑いながらもリイを眠らせることに成功し、床に額をぶつける様な感じでリイは倒れた。最後許したように聞こえんだけど・・
「ユウタ様ユウタ様このロリとはどんな関係なのですか?」
「おい、そんな目で見るな。・・・昔の依頼人の連れだ」
「別にユウタ様がどんな性癖をお持ちでも気にしませんが、ロリは愛でるだけにして下いね?残念だな~私の体に欲情しないと思ったらそっちだったなんて」
「ちょっと待て、変な何癖付けるな!お前もこいつも願い下げだ!」
結構変な音立て倒れたリイの体を確認するようにツンツン指で突いているカルディはジト目で視線を送る、それに言い訳というか弁解すると自らの胸を強調して残念じゃなさそうに抜かすもので、どっちも断わる
「まぁ今は良しとして挙げましょう!寛大な私に感謝しなさい!」
「ウゼェ・・・」
「という訳でお風呂行きますよ」
「何が、という訳だ!お前なんかとは行かんぞ」
「えー、背中洗ってあげますよ?前も洗ってあげますよ?」
「喧しい!風呂位1人で入るわ!」
この女は・・・・本当に恥じらいという部分が消え失せている、俺一人で赤くなってんじゃねぇか。
「あ・・・ロリと今からイイことするんですね?空気読めなっくてごめんなさいね、じゃお楽しみ~」
「ちげーぇよ!おい、こら!ちょっと待たんかい!」
色々と勘違いをしたままカルディは部屋から出て行った。
床で伸びているロリメイド・・・リイに声を掛けると
「このまま動けない私を殺して犯すつもりでしたか?」
「気付いていることくらい分かっていた、まだ根に持って・・・いや忘れるわけないか」
「いいんですよ、あの時の様に欲望をぶつければ・・・それが貴方の本性なのですから」
「・・・あの時の俺とは違う」
「どうでしょうね?男なんか信用できませんからね」
「俺も女は信用しない」
あの時・・・思い出したくもない己の裏の顔、リイはその最初の被害者・・・男なんかと言っているのは俺のせいなんだろうな。
「そろそろ動けるだろ?」
「後ろむいてくれませんか?刺しますので」
「許してく・・れそうにないな、分かったよ後ろむけばいいんだろ。・・3倍」
リイが立ち上がり殺気が発せられ悪寒が走った、同時に強化すると間髪入れずに背中に衝撃が伝わる。
「ズルしないでください、殺せないじゃないですか」
「本当にすまない、俺は魔王をバラスを倒すまで死ねないんだ。今は引いてくれ」
「うるさい!私達を騙してまた逃げる気なんでしょう!貴方を必死に探してたカリン様がどんなに・・!」
何度も剣を背中に叩きつけその度その重さが響き強化が解けそうになるが、心を決め振り向きリイを正面から抱きしめ
「俺みたいな男は誰の夫にもふさわしくない、屑人間だ。もし全部終わって俺が生きていたらお前に殺されに来るよ」
「逃げるな逃げるな逃げるな逃げるな逃げるな・・・にげ・・もう・・私たちの前に現れないで、貴方が死ぬこと、私もカリン様も望んでいない」
さっきからの発言からは想像できない言葉が出たので一瞬ハッとし、ゆっくり突き放し
「そうか、お前は天邪鬼か」
「・・・やっぱ死にます?」
「その剣結構使いやすいだろ?俺が鍛えた数少ない1本だ、あんまり人殺しに使って欲しくなないのだが・・・」
「話をすり替えないでください、何ですか?命乞いですか?デカイこと言って置きながらビビっちゃいましたか?クックク」
おい・・・こいつの笑い方こんなんだったか?それと話ずらしたつもりないんだが。
「お前の様なチビは、ドレスでも着飾って笑ってキラキラしてればいいんだ。大切な人を守るためでもわざわざ暗い処に進む必要はない。・・さて俺も風呂に入ってこようかな、案内してくれよメイドさん?」
「私の人生はカリン様に捧げました、貴方に指図される覚えはないです・・・それでは大浴場にご案内いたしますが、くれぐれも女湯を覗かぬようにお願いしますね?・・・こちらでございますお客様。」
思ったことをそのまま言ったつもりなのだが、案外こうゆうのには弱いのか?先に廊下に出て左右に手を広げ、どっち行けばいい?みたいな感じを出して。
リイが余計な忠告を下から見上げるようにして、さっきアルインが歩いて行った方向を歩き始めた。