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情緒不安定


フェイ達に合流しサイディラは破壊されたと告げそこで野宿した。

その夜に珍しくどこにも行かなかったカルディが俺の横に座った、ほのかに甘い匂いがするそいつを薄っすら見上げた時、冷や汗が流れ固まった。


月明かりのせいで全体が陰になっていたが目元以外ははっきり笑っていた。

寒気がした人の顔を見ながら笑う人間はあんまり良い印象は覚えない、それが脳裏にしつこく焼きついた。


瞳だけ生気が無くそれ以外が満面の笑み、絵に描いてみれば分かるが不気味だ。



結局カルディはずっと横に座ったままで俺は全く寝れなかった、恐怖で。




翌朝まだ薄暗い中俺は体を起こしぐっしょり濡れた服を木に掛け火を焚いた、そして後ろに気配が出たので振り向きざまに右ストレートを喰らわせてやろうとしたが、そこに居たのは薄着のカルディだった。


「おはようございますユウタ様、よくお眠りになられましたか?クマが出来ているようですが・・」

「昨晩お前は何しに俺の横に居た?」

「あ、気付いていらっしゃまいたか。いつでも抱けるように待機していましたが?」



毎回のことなんだ毎回の・・・でもそろそろ限界なんだ、なんでこいつは自分を大事にしない?そんなこと平気で言える?本気で好きなのか?いいやそんなこと絶対ない。


何故かって?そりゃあ明るいところだと気づかなかったがこいつの目は死んでいた、今見ている笑顔も何もかも気持なんか入っていない形だけの物、そんなもののために惑わされ恐怖を抱いていたのか・・・。


目の前の女に近づき両手で細い首を掴み力を籠める。

こんなもの圧し折ることくらい容易いはずなのだが、やけに冷たい肌を強くいや弱く支えて持ち上げる。



「・・・今ここで殺してやろうか。マジでウザいんだよ。いつもいつも変なこと言って俺に付きまといやがって・・消えろよ!」

「死姦がお好みなのですか?それとも絞殺姦ですか?達磨でもいいで・・」



喉を潰しているんだ、で口を開けばまたそんなこと・・・性癖がどうのこうのってレベルじゃねぇし何より気分が悪い、そんな風にしか見えないのか?


俺は普通に見えないのか?いや普通に人間なはずだ・・・人は殺した大量に、少女に手を掛けようとしただがそれは悔い改め・・・・たか?ずーっと前の話で記憶から消し去っていたが俺はあの子に謝ったか?

子供を殺して犯そうとした自分が居たそして謝罪したどうか覚えていない。そんな状態で俺は仲間を作り特に悪びれもなく”普通”に過ごそうとしていただが、今更どうしろと?





首から手を放し座り込むそいつを睨む




「そういうのがウゼェって言ってんだよ!!気持ち悪いんだよ、女がそんな残酷なこと言うのが!心覗かれているようで怖えんだよ!!・・・本気で消えてくれよ、死んでくれよ!」


こいつと居るといつかその通りの行動をしてしまいそうで怖い。








殴って犯して凌辱して殺してバラして死姦して喰って・・・こいつの体を見ているだけで手が出てしまいそうで、それが病みつきになりそうで怖い。


殺すって言っている時点で危ないんだがまだ壊れていないはずだ。



「いいえ、私で気持ちよくなって貰うまでどちらも致しません、殺していただけるならそうしてください。出来るとは思いませんが」


「実験体って言ったよな?俺のことなんかどうでもいいんだろ、何が欲しんだよ?血か?肉か?力か?」

「しいて言えば貴方の心ですね」





思考が停止する、目の前の人間が何を言ったかを理解するのに数秒掛かった。そして言葉は理解したが自身がそれを全否定して良くない物・・・ストレスとも違うもっと重い黒い物が心の奥から湧き上がってきた。






(ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえないありえない、ありえない、ありえない、ありえないありえない、おかしいありえない、おかしいありえない、おかしいありえない、おかしいありえない、むりありえない、むりありえない、むりありえない、むりありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえない)








「ありえない、ありえない、ありえない、そんなことありえない!!誰が信じるものか!!」




脳内で出た結果を言葉にして叫んでいた。

精神の奥深くから湧き出る悪しきものを抑え付けるように、これが外に出るものなら俺は人間じゃなくなる。

その時じゃないんだ!悪い物を全力で抑え込むように全開で気を放出させながら地面に蹲る、黒の波動と赤黄の波動が左右に分かれ溢れ出てくる。



「・・・・・ふふ、子供みたいに喚くんですね」

「誰が子供だぁぁ!!」

「ほら、そうやって大声出して暴力振るって力で威圧して思い通りにならないと・・・」

「うるさいうるさいうるさい!お前なんか殺してやる!」

「その後使ってくださいね?」



「ああああああああがあ!!!」


憎悪嫌悪恨み妬み憧れ欲望絶望失望・・・それが黒い波動を更に強力にさせる、そして最後の一声で完全に黒側が上回りその悪魔カルディを殺すために黒い気が腕に集中し最大出力で放出した。


人間より遥かに丈夫な体を持つ魔族をも炭化させる、それをただの人間が受けようものなら粒子さえ残さずこの世から消え去ってしまうだろう、そしてカルディは目を瞑り両手を広げそれを受け入れようとしている。


その時ふとなんて愚かな人間なのだろうかと、また女性を殺してしまうと今度は完全に自分の手で・・・居なくてもいい人間は自分の方なのに。


罪人に戻るのは嫌だ・嫌だ・嫌だ。

腕が終わろうが半身が消えようがその波動を無理やりずらしカルディの耳の横をスレスレで通り過ぎ、大地を抉り遠くにある山の半分を崩壊させた。



轟音が響き足音がぞろぞろと迫ってくるのが分かった。






「ユウタ様カルディーさん!敵襲です!遠距離砲弾です、敵は強力な遠距離魔法を・・」

「・・・フェイ、騒ぐな。俺の技だ」

「ふぇい・・・え・・・山が半壊しましたよ!?地面揺れましたよ!?爆音凄かったですよ!?」

「ユウタ様の全力ですよ、山の1つや2つ」


「・・・マジですか?」

「うん、だから戻れ」

「・・・はい」





武道の心得も武器も持っていないのにこっちに来て何するつもりだったのだろうか?

もしあの威力の砲撃が飛んできた場合自分でも無傷で居られるとは思えない、ましてやただの人間が何をしようと来たのだろう?耳も感覚も索敵も数段優れているのに。


フェイ達はあんまり納得がいってないようだが数名連れて戻って行った。



「殺してくれても良かったんですよ?私なんか生きててもしょうがないですし・・肉便・・・」

「黙れ・・・俺は人殺しに戻りたくなかっただけだ」


「フフ、変なところで優しいんですね。・・・・少し私の話聞いてもらえませんか?」

「・・話?」

「はい、貴方がこの世界に来る前・・生まれる前・・その両親が生まれる前・・・大体70年ほど遡っての昔話です。私が貴方を探し求めていた理由の発端でもあります」


「おい・・・お前パッと見て30手前位だろ?70年も遡ったら・・・」

「70年前若い頃の私は夢である不老不死の研究をしていました、だから外見だけはあの頃のままなんです」

「・・・聞いてやるそれがお前の人生だったんだろ」

「それではちょっと隣に失礼しますね」




フェイ等が戻って行った後その場にしゃがみ黒い波動を放出した腕をさすり治療する、カルディは対面したまま一歩ずつ近づいて冷たい体を押し付けながら横に座った。


朝日が山から完全に顔を出しそこらを照らし2人の体を包んだ。






「あれは70年程前、私は魔導士としてではなく魔導研究医士として山奥で師匠と暮らしておりました」

「とある季節に遠い軍事国の高官というご身分の方が訪ねて来られ大量の金貨と共にこう言いました」


”我が王は不死なる秘薬をお望みだそれを資金に秘薬の研究を行え、そしてその成果を1年後我が受け取りに来る”


「今思うとそれがきっかけだったのです。その高官は何国を周り実力のある薬剤士・調合士・研究者に同じ願いをしていたようです」


「私と師匠はその短い1年という歳月に資金をすべて使い果たしましたが、不老不死の不の字にも至りませんでした」


「結局何の成果も得られず兵士に師匠が取り押さえられ連れていかれ、その時の怒りで私は山を下り独自に秘薬に必要であろう材料を集めました」



少し間を置きながら話し出したカルディー体温を感じられない掌が俺の左の甲を覆う





「力のある魔導士の血・若い少女達の肉・最高級の霊薬・10年に1度しか咲かない花の蜜・ドラゴンの逆鱗・生命樹の葉、それ以外にありましたが大変だったのは逆鱗と蜜でしたかね」


「そしてそれらを隠れ家に持って帰り絶妙な配合の結果、不老不死の秘薬の・・・不完全品を作り出しました」

「それを持ってその高官の渡してきた金貨の袋の紋と同じ国に向かいました・・今はもうありませんが」



朝日が昇ってきた方向を少し見て俯く



「その国の広場には師匠と同じく捕らえられしまった人間が晒されて死んでいました」


「私は国王に会いその秘薬を差し出しましたが飲んでもらえませんでした、それどころか取り押さえられその塊を自分の口に入れられました」



口を開けこっちに顔を向ける・・何の変哲もない口だ。



「その後牢屋に入れられ処刑されましたが・・・何をされても死にませんでした」


「四肢をもぎ取られても生え変わり、首を折られても勝手に戻り、火あぶりにされてもすぐ再生され・・・心臓を刳り貫かれてもまだ生きていました」



包み込まれた片手を持ち上げられ心臓のあるであろう左胸の衣服の中に入れられた。

膨らみがあるそれに触れるが自分の体温よりその肌は冷たく・・なにより鼓動をしてなかった。




「頭を壊されれば生命活動を停止出来たでしょうが彼らはそれをしませんでした」



ヒッヒッヒ、としゃっくりを挙げる様な笑いを上げ無表情で泣いていた。


「その時点で不死は証明されました。されましたがそれはもうどうでも良くなり、この手でその国の民を皆殺しにしました。何千もの命を奪いました・・フフ、とても楽しかった」



こいつは・・・まさか



「それからは気ままに旅を続けアルキメスにたどり着き研究を再開しましたが、ですがその”不老不死”・・秘薬には大きな欠陥があることに気付いてしまったのです。」



「私は生命活動に必要なエネルギーとは魔力だけだと考え決めつけそれ以外を考慮しませんでした。ですが次第に体に皺が増え醜く老いていき、そしてその時自分の制作した秘薬は不良品だったことに愕然としました。このままでは寿命すら全うできず死ぬのが怖く、またそれが原動となり古代気法という属性を見つけ出しました」


服から手を出し首元に持って行き両手で包む




「でもその当時この世界にその属性を扱える生物は確認されていませんでした、自暴自棄になり自殺しようとしましたが無理でした」


「無気力になり地面に転がっていた私を笑う声がありました、それらは大人数でこの体を弄んで犯しまくりました・・数日間そいつらの性の捌け口と成りその後に変化が起こったのです・・1つは肌の皺が減り元の見た目に戻り活力も湧き、もう1つ最後にそいつらを皆殺しにして血肉を喰らうことで若さを取り戻せることを発見しました」



人肉を・・喰ったのか・・生で・・人の肉は酸っぱくて食えないと聞いたことがあるが・・・



「それからずっと私はそれらを繰り返し生きてきました。この体を犯した人数と喰らった人はほぼ同じです」


両手で掴んで手を口の前に持って行き指を咥えしばらくして口から出した、その中は生温かかった



「そして数年前探し求めていた属性の貴方が召喚されました。その時はもう喜んで頭がおかしくなりそうでしたこれでやっと人に戻れる・・と」


目を細めニタッと笑い朝日を眺めるでもすぐに丸く戻り手を放す



「でも貴方は消息不明になり希望は絶望に変わりこの国も滅ぼしてやろうと思いましたが、主席魔導士を降り旅に出ました。そして見つけました」


「そこで見た貴方には仲間が居ました・・・いつでも襲えました、その仲間を殺してでも手に入れたかった。街が魔族に襲われ住人は助かりましたが戦いに出た者はほとんどが死亡・重症の傷を負いました。そこでまた見失いました、死体でも良かったのですがそれすら見つかりませんでした。でも高エネルギーを残したままの魔族を喰らい魔力を奪いまた放浪しました」



トケカガミのことか・・。



「ギョクロでは不覚を取りましたがあの男共にはイイ供給源になって貰いました。おっと・・・貴方はこういうのは嫌いなんでしたね、私はこれから生き延びるためにしても死ぬにしても貴方の存在が不可欠です」


「どうです?伴侶になって下さいませんか?あぁ子供は作れませんよ」



さて一瞬こいつは同類なのかと思って話を聞いたが幾分マシじゃねぇか、期待して損した。





「断る。お前なんかと一緒に暮らしたくない」

「大丈夫です、夫婦という関係上ですが、別に他の女性を孕ませても構いませんよ」

「ファ!?」

「さっきは心なんて言ってしまいましたが・・体が目的ですので何番目でもいいですよ」



少なくても今は女にそういうことをしたいなんて無いし・・・どっちかと言えば犯すより殺したい。

・・・ホント何で生きてんだか。



「ああ、直せばいいんだな・・・その体を、そうすれば手を汚さずにお前をお払い箱にできると」

「無理ですよ?最高級ポーションですら効果がありませんでしたし、いくら貴方でも不可能なんですよ」


「一生付き纏われるくらいなら少しくらい無理してやるよ・・はあああああぁ!2・・・4倍だ」



前向きな提案をニッコリ否定し立ち上がり少し歩いて振り返る。

後を追う様に立ち上がり右手を胸の前に持っていき、拳を握りしめ段階的に気を高揚させ開放する。



「まさか・・これほどとは・・・魔族をも上回る高エネルギー・・ジュルリ・・」

「うわ・・・キメェ・・」

「食べてもいいんですよね?ですよね?いただきます!」

「おい!?タンマ!食べるってそっちかよ!!!?ギャァァァ!!」



舌を舐め回し涎を垂らすソレを見てポロっと本音が零れ、肉食獣の顔に気圧されへたり込みそのまま下半身に覆い被さられ吸われた。







あれだ・・結末変わらないなら自分からやっていればよかった・・・。



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