・・・食事
暗い森の中で目を覚ました。
たき火を囲んで女が横になっている、それぞれそれなりに酷い目に遭いこの場に居る。
誰もが心身に傷を負っている、誰が一番酷いとか分からない位に。
仲間・家族を殺された者・オークに強姦された者・人間に輪姦された者・・・住む場所を奪われこんな男と居なければならない者達。
「不幸か・・・」
「お目覚めになられましたか、ユウタ様」
「・・・名乗った覚えはないぞ」
「貴方様に会うために旅をしていました」
自虐し独り呟いた後それに反応した者が居たそして名前を呼ばれた。
輪姦された魔導士の女が俺の顔を覗き込んでいた、ほぼ健康体にまで持ち直したようだ。
「こんな奴に何の用だ?殺した誰かのかたき討ちか?悪いが今は・・」
「私は貴方を研究するために・・・」
「俺はモルモットか・・殺すぞ」
「危害は一切加えません、貴方の属性についてぜひとも解明したく・・・」
「助けない方がよかったか」
さらっととんでもないことを言ったぞ此奴
「いえ、お助けいただき感謝いたします。でもそれとこれとは別です」
「・・・・犯すぞ」
「こんな体で良ければご自由に、それで研究させて頂けるのでしたら」
「珍しいのか?」
「はい、数百年に一人の珍材です」
脅しも利かず少し頬を赤らめる
「ただの一般人だぞ」
「異世界人で勇者で魔族を倒し古代気法を扱える一般人なんていませんよ」
「そんなことのためにこんなとこまで来て輪姦されていたのか?馬鹿だな」
「でも貴方に会えました、今はそれで充分です」
恋する乙女の様な顔面しゃがって、いや絶好の獲物を見つけた獣の様な顔か。
そして出た言葉が
「なんだお前・・・」
「よく言われます」
(・・・なんだこいつ何がそんなに珍しい?勇者ならもう2人いるだろう。後もう)
「お前はもう少し体を大事にしろ、何十回とされたんだろ」
「ふふ・・もっと残酷な人かと思いましたが案外優しいんですね。もう賞味期限切れでしたし・・もしかして処女の方が好みでした?うーん・・中古になりますがこの身で実験させてください」
「・・・フェイ・サッカルこいつを抑えて監視しておけ」
話の通じない魔導士に迫られ助けを呼ぶそして連れていかれる。
あの口調でなければタイプなのだが・・・このまましたら後で死にたくなる。
「いやー女性ばかりで旅をしてるんですね、これ全部奴隷にしたんですか」
「おい、どこから沸いて来た。それとこいつらはただの道連れだ、そんなんじゃない」
「転移魔法忘れたんです?行ったことのある場所であれば瞬時に・・・」
「おいもう一回来てくれ」
「すいませんあの人消えちゃったんですが・・・あれなんでここに・・?」
「お前もここに居ろ、こいつの話し相手でもなっていろ」
「え、はい」
「従順だねー、やった?犯された?要求されたでしょ?」
「俺はまだそんなことするまで落ちぶれてない」
「レイプする?」
「次言ったら殺すぞ」
2人に連れていかれたはずだが一息つく前に横から声が聞こえ、さっきと同じ態勢で座っていた。
この魔導士は性行為に対する感覚が安い、フェイが申し訳なさそうに俯いて歩いてくる、で真横に居るのを見て「え?」っと零した。
(奴隷だとか犯すとかレイプとか・・・女なのになぜそんなことを言える?しかもつい昨日までそれをおこなうためだけに生かされてた道具だったのに、怖くないのか・・・わからない)
「いやー勇者様はからかいがいがあって楽しいですね!ピュアですね、私にもそんな時期があったなー」
「お前は・・・」
「では、これからよろしくお願いしますね。あ、使いたかったらいつでも呼んでください」
「あれぇ・・・どこにいくんです、え?また消えた・・・」
「転移あるなら王都にでも行けるだろう、距離の制限が無ければの話だが。フェイもうひと眠りするからお前も休め」
「はい、わかりました」
クスクスと魔導士は笑い夜空を見上げ真顔の戻り頭を下げた。
その後またそういうことを言い姿を消した、それを見てフェイが戸惑っているが寝っ転がり目を瞑り寝るように促す。
朝日が昇りそれが顔を照らし目を覚ました、女どもはもう起きていつでも発てるように固まってじっとしている。子供が泣いているが誰もあやそうとせずそのままジッとしている、それを見てサッカルが槍を持ったまま近づき子供を抱き持ち上げこちらも持ってくる。
「ユウタ様・・子供が腹を空かせております、今日はここで少し狩りをしていきたいと思うのですが、ご許可願えませんか?」
「・・・分かった、お前らは火の準備をしていろ」
「いえ、私どもの方がこの地域に詳しいのでお手を煩わせるわけには・・」
「黙れ、男が外で女は内だ。俺はその精神でやっている、口を挟むな。それとあの魔導士を呼んでおけ」
「・・・分かりました」
人の名前を様付けし食料がないから狩りに行きたいと申し出があったが、それを断り待機させ立ち上がり空に上がる。いくら地の利があるとはいえ大した力もない女に任せることに不安を覚えたのも確かで、昭和じみた考え方が邪魔しているのも事実。
女など家で家事をしていればいいのだ、男が不甲斐無い場合はあれだが。
15分程で野生動物を10前後仕留め血抜きをする、後は適当に薬草を摘み一度戻る。
空から肉を落とし薬草だけ降りて手渡しする、そして水が無いことに気付き川を探すために再び飛ぶが入れ物が無いな・・・まあ後で考えるか。
川を探し10分全力で飛行し小川を見つけ降りる、50人分が汲める道具が何か作れないかと思い水筒(木をくり貫いて作った物)を制作し、満タンにして零れない様に気で包み込んであまりスピードを上げずに戻りそっと地面に下ろす。
女どもは唖然としまだ火さえ起こせていなことに俺はため息を吐いた。
「ユウタ様この木は何ですか?」
「水が入っているが、蛇口は無いから傾けるか上から汲むしかない」
「こんなに大きな物を持って・・私たちのために・・・」
「こんなもんはどうでもいい、さっさと火を起こせ。後あいつはどこに居る」
「カルディーさんはユウタ様に名前を呼んでいただけないと来ないと伝え損ねまして・・すみません」
「カルディ来い」
「はいはい!カルディーでぇす!ご用は何でしょう?っは!まさか公衆の面前で私をレイ・・・」
「火を起こせ」
「そんなことでいいんですか?私は全然構わないんっですが、ファイヤーボール」
フェイは持ってきた水筒に感激し何か祈っておりコルックの女どもが岩の上で肉の処理を始め、サッカルの方はまだ石をカチカチと擦り合わせ作業をしているが遅すぎる。
そこで魔導士のカルディーを火起こしに呼びつけ一瞬で薪に火が上がりサッカル達は呆然となっていた。
ついでに蛇口の様な物を作れないか?と聞いたが
「私の専門は魔法術です。工業の方は少々疎くてジャグチという物の作り方は分かりません」
と言われた。
呼び名が違うのかそんなもんがないのか知らないが、土魔法かなんかで器を作ってもらいそれを全員に分配した。作りは雑だが少なくても水が漏れることは無い様だ。
「肉の選別が遅い・・・」
「え・・そうですか?まぁまぁあんなもんだと思いますが?」
「ここに1日居るつもりじゃないだろうな?」
「いやいやユウタ様、半日は掛かる作業ですよ?血抜きは完璧に出来ていますが、あの数は多いですね」
「お前は料理が出来るのか?」
「へっへん!これでも中級調理士ですよ?並みの料理人以上の実力はあると自負しています」
「そういえは王宮の主任は・・・」
「あんな化け物と比べてもらっちゃ肩無しです、所詮並みですから」
フェイたちの肉捌きを見ていると何とドンクサイやり方をしているとイラつき、横居るカルディーに聞こえるように独り言を言ったがあんなもんだと言われ、カルディーに料理は出来るのかと聞いたところなんと中級を持っていると聞かされた。
料理という単語であの王宮料理長の女の顔が一瞬で浮かびそれを聞こうとすると、肩をシュンとさせ意気消沈した。
カリン・・・確かそういう名前だった、あれから数年経った。今なら特級に成っていてもおかしくないか。
「俺がやる、お前も手伝え」
「え?ユウタ様は料理できるのですか!?」
「お前よりは上手いはずだ」
あまりにも遅く感じカルディーにも声を掛けフェイ達の元に行く
「フェイ替われ遅すぎる、カルディー一匹何分で出来る?」
「そうだね・・・30分あればできると思うよ?」
「ふぇ・・・ユウタ様遅すぎるとは酷いです。カルディさんまで」
数人掛かりで一匹を捌いていたフェイ達は項垂れ持っている刃物を落としかけた。
カルディーからの返答を聞いた俺は眉を顰めため息を吐く。
「カルディお前も退いて居ろ邪魔だ、向こうで水でも飲んでいろ」
「え?酷くないですか!?私の最速ですっよ?」
「ならそこで見ていろ」
「言われなくても見といてやるです、プン!どうせ大したこ・・・え?」
フェイ達とカルディーを退かし久しぶり・・でもないか肉を目の前にしそこに置いてある短剣を手に取り気を籠める、血抜きと皮は剥いてあるので各部位と骨・頭を分けるだけの簡単な作業のはずだ。
誰かの文句と共に作業を始めその口が途中で止まる、その時には途中になっていた1匹を終わっていたのだから。1匹あたり5分で解体していく牛モドキ・鳥モドキ・狼モドキ・イノシシ大きさは様々だが早くさばくこと自体は難しくもなんともないし、どうしてあんなに遅いのか理解に苦しむ。
「んなアホな・・・」
「す、すごい・・・神業・・・みたいです」
カルディの口調が崩れフェイ・サッカル達は膝を着き祈るような格好で指を組み、ちょっとした宗教の主教にでもなった気分だったがそうこうしている間に9匹を捌き終え短剣を置いた。
「あまり丁寧には出来なかったが食べる分には・・」
「これでですか!?貴方は何なんですか!上級でもここまで上手くは・・・特級?」
「確かに俺は特級調理士だが肉を捌くだけならそんな変わらんだろ」
「料理を極めた一部の天才しか授かることが出来ないと言われている、あの特級調理士!?」
「カルディーさんそんなに凄いんですか?もう訳が分からなくて」
「噂で王都の新料理長が特級になったと聞いた気がしますが、それでもこれに並べるか・・・」
真面目な顔でカルディーとフェイが食い付いて来る、まさかそこまで驚かれるとは思わなかった。
おチャラけた雰囲気とは一変し専門家顔になった奴が顎に手を添えボソボソと呟き考え込む。
「・・捌いたし後は焼くだけだ、お前らに任せよう」
「えーーお預けですか!下衆!レイプ魔!性悪男!」
「・・俺が作ったって材料ねぇんだから味変わらねぇよ!?なんだよレイプ魔ってマジでしてやろうか?」
「あ、お願いします。出来るだけ乱暴にしないでください、ん?それだとレイプじゃなくなりますね」
「・・・前言撤回する、お前なんか抱けるか!?」
「酷い、どこがダメなんですか?こんな美女そうそういませんよ!」
なんだろう自分で言って後悔したので撤回したら余計に食いつかれた。
自分で美女っていう時点でどうかと思うけどな。
「お前はなんでそんなに身を差し出そうとする?非常に癪だがお前の言ってることは正しい。だがそんな願望があるならギャングにでも喧嘩売って滅茶苦茶にされればいいだろ」
「それだと何か足りないんですよね、体は気持ちいいんですが心が空っぽになるんです。」
「うわー・・・」
「あの時の痛みと熱い感じが・・・恋しい位欲しいんです。貫いてグチャグチャにしてもらえませんか?」
「引くわー・・・どMってレベルじゃねぇ」
「好きな殿方そういう気持ちを抱くのは分かりますが、少し行き過ぎてませんか?」
「少しじゃねぇよ!?かなりだ!ってフェイ・・・お前・・・」
「私は無理だな男に身をゆだねるなど・・・」
「やっと普通の人種が」
「だが心がむずがゆいのはなぜだろう」
「普通じゃなかった・・」
4者4様の反応を見せ自分とサッカルは頭を抱え、フェイとカルディは自身を抱き悶えていた。
もう・・・なんかこいつら殺して俺も死のうか・・・。
「あのーお肉焼けましたよ?」
「え?あ、ども」
「おばさん達もどうぞ」
「「おば・・・」」
「いえいえ、これ全然血生臭くなくって小さい骨もないしすっごっく食べやすいです。でもお母さん達はなぜか涙を流しながら食べてるんですよね、半生だったかな?」
「・・・ああ、ガキは気にすることじゃないと思う」
何か鬱に入りかけズボンを引っ張られ下を見ると焼いた肉を乗っけた皿を差し出している子供が居た、変な言い合いをしている中に結構時間が過ぎてしまっていたようだ。
こいつの母親達の方を見ると絶望的な顔をでこちらを見つめており、そんなに気に障ったのだろうか?
おばさんと言われ落ち込んでいる約2名。
「モグモグ・・アルディーさん、捌いただけでこの美味しさって・・モグモグあの人神様かなんかですかです?」
「ムシャムシャ・・私も分からなくなってきました。これを食べるために生を受けたと考えてもおかしくない感じです」
「・・・・美味い・・」
あんまり嬉しくねぇな、その大げさな評価どうにかならんかね?
こんなんで神業だと板前さんとかどうなるんだ?
結局その日はそのまま一日を過ごし寝た。