異端者
気が切れて倒れた後建物の修復工事が入った。
その修復音で目が覚めた。
2度目の殺風景な部屋、何本か亀裂を修繕した後があるがそれ以外は同じだ。
あ、花瓶の色は変わってるな青に。
起き上がり左手に何か変な感覚があり毛布を退けると白マントの女性が手を握っていて寝息を立てていた。
ふと枕より上に剣が置いてあった、俺のだ・・鞘を落とし柄を掴んで目の前に立て見る、刃こぼれはしているがまだ使える。
左手に込められていた力が強くなる、横目でキリっとした目を見る。
「剣を持ってどうするつもりです?」
なんだ起きていたのか・・・なんか質問されたが
「何って・・・こうするんだ!」
俺を見ていた女性に振りかぶり振り下ろす。
額に掠り切れて血が鼻で分かれ2筋作られる。
目の前に剣があるのにずっと俺の方を見ている女性。
「何故避けようとしない・・・当たったら死んでいたんだ」
ジッと見てくるのを逸らし剣を横に放る
「何故って一度助けてもらいましたから貴方に、それを今散らされても別に気にしません」
・・・当たり前でそんなこと何でもないことの様に返す、神経が図太いな・・・義理堅いのか?
「はぁー、済まなかった脅す様な真似して」
今なぜこんなことしたのか説明できない、何かを殺すこと・命が失なわれた痛みは良く分かってるはずなのに。
「貴方は私に嫌われるように今みたいなことをしたんですね?少し怖かったですが」
袖で額を拭きまた真剣に俺を見る
・・・そんな目で見るな・・・俺が居たのにこの俺が居たのに!助けられなった。
俺が俺が俺が俺が・・・あいつらを死に追いやった、俺が
「自分を責めないでください、貴方は最善を尽くし結果を残しました。ありがとう」
それだけ言って部屋を出て行った。少し鼻声だった気もする。
それから何人かが面談に訪れた。
ガルドさん・リーゼント頭の人・上半身裸の筋骨隆々のおっさん・何とか商団のリーダー・カップル
たわいもない会話をしていき最後は全員自分の病室へ戻って行った。
それから3日そこで過ごし体を万全にし白マントの女性に
「・・・記憶は戻りましたか?」
「ええ・・・できればずっと忘れていたかったですけどね」
話していたとき気付いたのだが額に剣の傷が残っていたのが見え「ちょっと失礼」左手でその部分を数秒抑え手を放すと治っていた。まあそうでないと困るのだが。
キョトンとした顔で俺を見た後
「今何をしました?」
「傷を治しただけです」
「そうですか・・・別にしなくてもよかったのに・・・」
貴方は良くても俺が良くないんです・・・とは言わずに出て行く。
出て行くとは言ってもその辺に散歩に行くだけだ。
剣を背負い村の外側を歩く、何度か挨拶されそれを返す。
体に違和感はない全身を壊して戦ったのに1週間程で治ってしまうとは・・・。
村の雑貨屋で背負い鞄を買う、剣も武器屋で買う後砥石と。
服はローブの様なものを着ているのであまり心配ない。
夕方まで歩いたが全く疲れない流石にこれではリハビリにならんな。
宿屋を取ろうとしたが店主に
「あ・アンタ施設のだろ?ならここの部屋は貸せないな、あそこと比べれば埃っぽくて寝ることも出来なさそうだし何か合ったら責任とれないしな、ささ帰った帰った」
と追い出された。仕方なく施設に帰る、こういう言い方すると・・・いやいい。
建物に近づくと入り口に人影が見える
「おかえりなさい、宿屋は無理だったでしょ?」
・・・なんか嬉しそうにそう聞いて来たが答えずに中に入る。
それからまた5日程そこで過ごした。でも
その日朝起きて柔軟体操をしていた時だった。
白マント・・・アンが大急ぎで部屋に入って来て紙を目の前に差し出した。
それを受け取り読む・・。
アンが前で泣きそうな顔をしていた。
紙に書いてあった内容は
”勇者の代わりに出しゃばって魔族を倒した者をアルキメスで処罰する”といった感じの内容だった
アンは先に読んだようだ王か大臣からの出頭状だからだろう、だけど内容がこれだからな・・。
「行かないで、こんなの間違ってる!何で逃げ帰った者のために戦った人が罰を受けるの?おかしいよ!?」
俺もそうだがアンはもっと若い16か17だろう、国はメンツを保つために勇者のメンツを保つために必死なんだろう、そんなこと知らないし知ったところで「意味わからない」って言うだろう
その場で泣き崩れその声で周りの部屋から人が集まって来る。
そこに村の子供が通りかかり中に入って来る
「男の人がアンちゃんを泣かせたー!」
そういって走って出て行った。これでまた衛兵やら武器・雑貨の店主とかも来た。
面談に来たガンドさんがその場を収め「どういうことだ?」と小声で聞いてくる。その声は少し怒っていた。
出頭状を見せそれを読むにしたがって眉間に皺が増え歯を噛み締め目は充血していき
「ふざけるな!!」
出頭状を床に叩きつけた。
暗黒騎士あのときと同じ・・いや少し弱いか位でブチ切れた。
「ユータ、こんなものに従うことは無い!君は私達の命の恩人だ・・・この村に居る皆のな」
微妙に理解できてない頭に「行かなくていい」と言われ
「それ王宮からですよね?俺が行かないと向こうは何かするんじゃないですか?」
確かに出来れば行きたくない、魔族を倒して処罰されるなど割に合わない。
その言葉に返す言葉が出ないガンドさん
「その気になれば我々が王宮に抗議しに行くAランクの冒険者達でだ、王も無下には出来まい」
あー・・・結局迷惑掛かるのか、決めた
「すいませんが俺は行きます、勇者アイツラにも言いたいことがあるので」
出まかせでも言おうと口から出た言葉を思い返し「・・・俺を3度も見捨てやっがて・・屑共が」
2人には聞こえない声でつぶやく。
「ダメです、往かせません!中級治療士の私がダメだって言ってるんです。どこにも行かせません」
駄々をこねる子供の様に職権乱用しだしたぞ、でも中級か一般的に優秀な分類に入るんだろうな。
「そうだぞユータ、君が行く必要はないんだ、勇者が来てからというもの王も貴族もそれを振りかざし何かに言っては”勇者様のため”と言って課税を増やし、汚い言い方だが女を集め遊んでいる」
心底イラついているという風に鬼の形相になっていたガンドさん
「前王の時はそんなこともなく・・少し抜けているお方だったが国民のことを第一に考えておられた、今の王は特別何かに秀でている訳では無いし汚いやり方でも平気でやる奴だある意味馬鹿だ。駆け出しが強い武器を持ってそれを見せびらかしているに過ぎんのだ、その内国内外から苦情が入ってくるようになるだろう。それを被るのは私達冒険者になるのだがまったく迷惑な」
昔のことを思い出すように壁を見つめ愚痴るガンドさん・・・
この2人を説得するためにはカードか・・・再発行出来たっけ?
「ガンドさんこの村にギルドカードを再発行できる施設はありますか?」
急に話が変わり「あぁ・・」少し悩み
「この村はまず村じゃなく私達生き残りが資材を持ち出して作った拠点だ、でギルドに代わる施設は無い・・・いや村はずれの方に仮設で建てていたか?あぁそうか、アルキメスから代理のギルマスが来ているはずだそこで出来る筈だ。発行しに行くなら私も付いて行こう見届け人兼保証人だすぐ終わるだろう」
その後準備してくると言って自分の病室に戻って行った・・・忘れてたけどガンドさんも重病人だったよな?良いんだろうか出歩いて。
それと・・・結局村なんだな、ここ・・・。
「それなら私も付いていきます、途中で逃げ出す可能性のありますから・・・ね?」
・・・腕に引っ付くな、振り払いたくなっただろうが。
そんなことしたら壁にぶつかって怪我することになるからやめたが。
「よし準備出来た、行こうか」
さっき着ていたローブからいつもの?黒と緑の迷彩服のような格好になり剣を腰に下げていた。
「行きましょうか」
今だに引っ付いているのと一緒に施設外に出る、外の村人がこっちを見ている気がする・・。いや見てるな。
「とうとうアンちゃんにも春がーー」
「幸せにするんだぞ兄ちゃん!泣かせたら俺達がーー」
「ありゃ英雄様じゃないかね?」
・・・・・・・・・・。
すっげー見てるわ、気まずいガンドさんも少しニヤケているし・・・。
5分も歩かずに端まで来たが精神を結構持っていかれたな。
ガンドさんが言っていたであろう仮設のと言っても木で作られたそこその家だった。
中には居ると酒場だな、酒は置いてないようだが瓶はたくさん置いてある。ガンドさんが先頭俺が2番少し後ろにアンが居る。
「いらっしゃいませ!本日はどのようなご用事でしょうか?」
受付の青年がハキハキと話しかけてくる、客は俺達くらいでテーブルに付いているのが2人ほどどちらも突っ伏している。
「ギルドカードの再発行を頼みたい」
「再発行ですね承りました、ではそのご希望とされる依頼主様は・・・」
「彼だ」
「そちらの方ですね、いまギルマスを呼んで参りますのでしばらくお待ちください」
青年の視線が俺の方に向いたとき一瞬顔が歪んだ気がしたのだが・・・これ(アン)のせいか?見下げ左手を掴んでいる子供を見る。
なんか頬をプーと膨らませている。
青年が戻ってきた、後ろに女性を引き連れて・・・どっかで見たことあるな。
「お待たせいたしましたギルドマスターを呼んで参りましたので・・・後はお任せします」
最後にボッソっと何かギルマスに呟き奥に消えて行った。
「それではこちらの水晶に手を置いて下さい料金は1金です」
やっぱり見たことある・・・アルキメスでカードを登録した時のギルマスだ。
「おい、高すぎるだろ相場は2、3銀だぞ!?」
ガンドさんが抗議した、だとしたらかなりのボッタクリだな。
「ガンドさん・・・申し訳ないですが1金建て替えといてもらえませんか?」
「う、うむ・・・分かった」
気に入らないといった感じでギルマスを睨み財布から金貨1枚をテーブルに置く
睨まれて少し退いたギルマスだが何故か自慢げな顔になり水晶をテーブルに置く
「さぁユータ手を翳してくれ、特別力を籠める必要はない」
そうガンドさんが促し1歩引いた
両手の手のひらを見た後左手を乗せる。
水晶が光り数値が横の洋紙に写し書かれそれを見たギルマスは腰を抜かした。
名前 ユータ
種族 人間 性別 男
称号 竜の加護を持つ者・神の加護を持つ者・復讐勇者
Cランク
戦闘力 660
属性 なし (気)
パーティー名 なし
スキル 筋力UP特・鍛冶士皆伝・調合士特級・調理士特級・治療士特級・剣術士中級
腰を抜かした奴をしり目にガンドさんが洋紙を取り目を見開き石像の様に固まった
「君は一体・・・・」
口だけ動かし冷静沈着なはずのガンドさんが動揺を隠せず頭を抱えている。
「あ・・・ガンドさんだけズルい!私にも見せて下さい」
「ダメだショックで立ち直れなくなるぞ」
「えーそんなに凄いんですか?」
「凄い?そんな言葉で片づけない方がいい・・・彼は天才の中の天才だ」
「やっぱり見たいです」
カードを取ろうとジャンプするアンをガンドさんはその紙を出来るだけ高く上げ届かない様にしていた。
途中天才がどうのこうの聞こえたが気のせいだよな?俺はギリ凡才だぞ悪い方でな、
「カンドさん見せてあげてください俺は気にしません」
「いや君が気にするとかいう問題でなく、「貰った!」あ・こら!立ち直れなくなるぞ!」
大人が子供をいじめているように見えないこともない、が
俺のせいで隙を見せてしまったガンドさんの手から紙が奪われ最後の忠告をしたが遅かった、
「竜と神様の加護?復讐”勇者”・・・特級が3つ皆伝が1つ・・・」ポックリ
「ああ・・・言わんこっちゃない」
口を開け後ろに倒れる体をガンドさんが支えため息を吐く様に呟く、
カードを作りに来たがギルマスが使い物にならない。
「そこの君、彼女の代わりにカードを作成してくれ!こっちは急いでいるんだ!」
別に急いでいないが急かす様に別の職員に正規の判を押させすぐに差し出された。
ぶっ倒れた子供はガンドさんが肩に担ぎ施設に戻った。