表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/99

抵抗戦2

要塞に逃げ込もうと向かっていたマリーにある魔物が襲い掛かる所に光弾がその魔物を貫き動かなくなったところから。



数分前まで餌として見られていた私達を魔物が恐怖の目で見るようになった、違う私達じゃなく目の前に立っ塞がっている”ユウ”をの方が正しい。

ここに来るまでにたくさんの人が食べられた、”次は私なんじゃないか”って必死に走った、だけど目の前を走っていた誰かに突き飛ばされ転ばされ他のみんなが遠くなっていく中死んじゃうことが一番怖かった。

目の前に丸のみ出来そうな怪物が口が大きく開けられ故郷の両親に「ごめんね」と呟きその時を待ったがその声が聞こえた。


「おい、早く上に来い」


その声は良く知っている仲間の声だった。目の前にユウが無数の光弾を魔物に向かって放っている所でその顔には余裕が感じられなかった、いつもどこか余裕そうな顔をしていたユウかその表情になっていたことに安心していたマリーだったが、さっきの激怒や叱咤でいつもとは違う危険な雰囲気を出していた。


「グズグズするな!早く俺より上にあがれ!」


腰が抜けて立ち上がれない私を見て苦い顔をし左手で腰をフワッと持ち上げられる。

一瞬宙に浮く感覚に見舞われたが、私のせいで何体かの魔物がその群れから抜けて近くまで来るが長剣を持った兵士に喉を掻っ切られ絶命する、ユウはじりじりと後退しながら魔物との距離を離していくが左右後方から悲鳴が上がる。



トケカガミは主要な大通りが3本ありそのどれもがここ要塞に繋がっている、私達が駆け上がってきたこの坂道がもっとも広く外郭に沿う様に2本作られている、そこからの悲鳴だった。

要塞前の広場に上がった時はもう地獄絵図だった、逃げ惑う者と追い駆け喰うモノ・立ち向かう者に鎧ごと引き裂きそれを喰らうモノ、中央通りの魔物をユウが全部倒し額には大粒の汗が浮かんでいた。


「ユウ・・大丈夫?」

私は大丈夫じゃないことが分かっていながらそう聞いてしまった。

「かな・・り・キツ・・・イ」

息も絶え絶えの返答が返ってきたが空から何か落ちて来た。


1人は豪華な鎧をもう1人は黒いマントを纏った男性だった、鎧もマントもズタボロに引き裂かれ防具の意味を成してない、周囲に居た女性が何か喚いていたが何を言ってるかまでは聞き取れなく、そこに空から高い声が掛かった。


「全くつまらない拍子抜けだよ、これならイラン1人でも事足りたよ。たく、満足出来たら帰ろうと思ったのに、これじゃ皆殺しだね!」


子供だった、10ほどの小さい子供が宙に浮いていた。正門で聞こえた声と同じだ!アランと名乗っていたはず・・・この子達がこの2人をこんな目に・・・。杖を構え得意魔法を唱えようとした時



「でも、面白そうな魔法使う術者居たようだね?僕の部下をゴミ屑にした奴が・・・出て来てよ、勇者の様に壊してやるからさぁ!!」


邪悪な魔素を放出しながら高らかに宣言した


心臓が誰かに掴まれたように締め付けられ息が苦しくなり手足が冷たくなる、

落ちて来たものを再度見て、この2人が勇者様!?でもこの方々で歯が立たなかったのにユウが勝てる訳・・・、そう思いユウの顔を見ると諦めたような表情で笑い


「マリー向こうに行ってくれ」


小さく耳元で囁かれ前に進んで行こうとする服を掴み「ダメ!死んじゃうユウが死んじゃう」と縋りつく様に抱き着くが強い力で小道に投げ出され、つぎ瞬間私の立っていたところから後ろの人が建物にめり込み何か連続で破裂した音が聞こえ顔に何か掛かった、それはどす黒い誰かの血だった。


思わず声を挙げそうになったが両手で抑える。


「フムフム・・・勇者より出来る様だな、よし!行くよ」


楽し気に笑っている子供と額から滴チを流す苦い顔のまま右肩を抑えているユウ、さっき助けてくれたのはユウだった。

あのままあそこに居たら私も・・・壁にめり込んだ人達みたいに、・・・想像して吐いた。


「ぐぅぅは!」


ユウの声が聞こえ目の前を見たがニンマリ冷ややかな表情を浮かべる悪魔が居るだけだった、その後外で壁が崩れる音がし次前を見た時にはその悪魔は居なかった。

誰も何もできなかった、


「ユウが死んじゃった・・・」


正門の壁が崩落したのはここからも見えた、あんなの人間じゃ原型保てない。


後ろで勇者に人が集まり声援と回復魔法を掛けている、また戦ってもらうために、でも1度完敗しすぐ回復したところで同じ結果になるよね。

分かってるんだよみんな・・・でも誰かに戦ってもらわないと無関係の人まで殺されちゃうんだもん。


私達に残された道は逃げて逃げて逃げるか、戦って惨たらしく殺されるか、くらいしか残ってないんだ。

誰にも聞こえない乾いた声を発する。でも


「おい、正門で誰か戦っているぞ!」


その声で一斉に正門に視線が集まるそして見え口に出す、「ユウ?」

ゴマ粒のように小さく見える人影が3つ。

地面に叩きつけられる音、衝突音、高く響く歓喜の叫び、周りの人は熱くなっているけど・・・でも圧倒的に負けている、私にはそう見える。

ユウが苦しそうに締め上げられる、攻撃が通じていない、無数の光弾が飛び交う、ねじ伏せられる、

一瞬光を放ち爆発音が鳴り魔族が黒煙に包まれるが、それが晴れると何もなかったかのように立ち阻む魔族。


「うっぐここは?」


倒れていた勇者が取り巻きによって看護され目覚めた、


「目覚めましたか!?勇者様!!」

「おお!これで勝てる!」

「早くあの化け物をやっつけて!」


一度に話しかけられ困惑している勇者でも取り巻きの1人に


「勇者様よく聞いてください、貴方様は魔族との戦闘で瀕死状態で一命を取り留められました。今正門で他の冒険者が足止めをしています、もう一度その者と戦っていただけませんか?勇者様!」


現状を思い出したのか顔が青白になり頭を抱え震える


「嫌だ!!あんな化け物とまた戦うなんて無理だ!!僕は逃げる行こうアイリス!」


そこに居た者は口を開けて唖然としアイリスと言われた女性は


「いけません!敵に背を向けて逃げるなど!それにここに収容されている民はどうなさるおつもりですか!?このままでは皆殺しです!どうかお考え直し下さい!」


抱きつき説得するが


「アイリスは僕たちと市民の命どちら大事なの!?勿論僕等だよね!!君も言ってたじゃない、市民なんて雑草同然で少し数が減っても大丈夫だって!みんな死ねば僕らのせいにならないよ行こう、アルキメスに帰るんだ!僕らが死んだらこの世界は終わりなんだ!分かるよね!?」


子供の様に喚き市民などどうでもいいと言った。

自分が助かりたいから逃げようと言った。

絶望したこんなのが勇者?勇敢でもなく果敢でもなく勇気は無く力も無い、そして何より国を愛する民を愛する心が全くない。


私は勇者の前に立ち頬を引っ叩く


「貴方はそれでも勇者なのですか?本物ですか?偽物ですよね?勇者様がそんなこという訳無いですよね?私達を捨てて逃げるなんて!ふざけないでください!ユウは命を捨てて今戦っているんですよ彼が最後に苦笑いしたんですよ!?ほとんど表情を変えなかった彼が!!私に笑いかけてくれたんです、貴方達には分からないでしょう死ぬために戦う人の気持ちが!!!」


泣きながらそう・・・勇者に負けず劣らず喚いた正直私にも分からない、なんで私なんかにあの人が命を懸けるのかを・・・聞いてみたい怖いけど、もしかしたら私じゃなく他の誰かのためかもしれないし特に理由は無いのかもしれない、だけどこれだけは分かる。


「君がその彼に何を言われたか知らないけど僕らでもあいつ等に勝てないんだ、その彼が帰って来ることは無いだろう、どうだい君も僕と一緒に来ないか?」


途中体を触られ迫られたけどそんな気持ち悪い顔で見ないで!


「貴方なんかより、ユウ君の方が100倍恰好いいもん!!」


場違いなこと言っちゃった・・・。でも後悔しないその通りだもん。


「僕の誘いを断るか、そうかいじゃ・・・・そいつと一緒に死ねばいい。そことそこの兵士!彼を担いで付いて来い!」

ぱっと体から手を放し蔑んだ眼差しで見下し去って行った。



でも

「アンタなんてことしてくれたんだ!」

「そうだよ、せっかくのお誘い・・違う!守って貰えたかもしれないのに」

「お前が責任とれ!!!」


私に避難の目が向けられた、なんで?悪いのはあの偽物勇者だよ、ユウ君が本物だよ?私達騙されてたんだよ!?まだそんなこと言うの?みんなおかしいよ・・・。


「マリー今のはどういう意味だ?」

仲間達が近づいて来て先頭に居たダルが気になることがあったようでそう聞いて来た。


「どういう意味って?」

「その・・・ユウのことだ」

「言った通りだけど?」

「この際だからはっきりさせよう、俺とユウだとどっちが好きだ?」


質問を質問で返しどっちかより好きかと聞いてくる。が、


「今そんなことどうでもいいじゃん」

「どうでも良くなんかない!!」


急にダルは大声を出した


「俺はずっとお前のことが好きだったんだ!子供のころから、気づいたら隣に居て他のみんなとも仲良くなって、最近まで意味が分からなかった。でも君とユウが一緒に居ると殺気立つ自分が居ることに気付いた、確かに今は非常時だが俺にとってはそれこそどうでもいい!答えてくれ、俺とアイツどっちを選ぶ?」


一気に告白されたそして選べと、目が本気だ、少し殺気だってさえいる”ここで自分を選ばなかったら分かっているだろう”って目だ。


「ダル?何か勘違いしているようだから言っとくけど、私はダルもガッツもカクもユウも自分も同じくらい好きだよ。ねぇ覚えている?あの日初めて依頼を受けて森に入ってブラックベアーに襲われた時の事、あの時私達は一度死んだんだよ?ユウが助けてくれたから今こうして生きてるけど本当は私達はあの時バラバラにされて食べられるところだった、意味わかるよね?」


自分でも吐き気が起こるような事を口にするがそれを最後まで言い切るが、

ダルは何を昔のことをという顔になり顔を顰める


「あの時は通りかかった冒険者の人達に助けてもらっただろ!だいたい・・」

「違うの、誰も信じてくれなかったけどあの話は本当。私達の知らないところで彼に何度も命を助けられている、何でそんな力が有るのか知らないけどでも今言えるのはこの助けてもらった命を彼に帰したい、そんなこと望んでないかもそれないけど私の魂モノだもの誰にも文句は言わせない」



私逝くねって顔したマリーに誰も行くなと言えなかった、だけど


「今言ったが・・・俺はお前が好きだ、お前がユウを好きでもこの気持ちは変わらないし、第一ここでお前を逝かせたらあのおやっさんに怒られる・・・俺も逝こう」

「仕方ない・・・お色気沙汰には興味ねぇがリーダーが逝くなら仕方ねぇオレもついていく、あいつに命を拾ってもらっていたとはオレもまだ青かったな」

「カクカク」


満場一致で助けに逝くことに決まったが最後の確認で


「みんな良いの、死んじゃうよ?」

「ああ」

「おう」

「いいぞ!」


了解をえ・・・・


「「「カクが喋った!」」」

「私でも話すことくらいあるさ、最後くらいはな・・」



最後に驚きが待っていたが”夕焼けに誓う”のメンバーは死戦に向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ