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抵抗戦

正門が崩壊し勇者が敗れ冒険者が蹂躙される撤退戦


抗戦組は逃げていた、後ろから迫る圧倒的な魔物数に恐れ戦き、ただ仕留められるだけの餌とかして。


誰かが転んだ助けを求める喰われる。

転んだ誰かが助ける喰われる

戦う殺され喰われる

男女老い若き関係なく喰われていく。

終いに誰かを蹴落とし自分だけ助かろうとするものが出てくる。

すぐに敗走者の数が減り餌を食べ終わった魔物のも次の餌を求め追いかける。



この者達が向かうのは中央にある要塞で数千の住民が避難している建物だ。



こういう状況になった人の心は自分だけ助かればいいと考えるのが一番多いだろう、中には弱きを助けようと立ち向かう者も居るが多勢に無勢。

助けてやった者に蹴落とされ命を落とす者も居る。



頼みの綱だった勇者は自分らを見捨て魔族と戦っている。

要塞に近づくとその周囲を守っていた兵士に止められ引き返すように言われるが、そんなこと聞いてられるほど理性は残ってない強行突破を仕掛ける。

兵士は仕方なく丸腰の冒険者を刺し殺す、悲鳴が上がり「人殺し!」などの声が上がるが兵士はそこを退こうとしない。

だんだんと距離を詰める魔物たち、だがある位置でその行進は止まった。



1人の男が両手から眩い光弾を魔物に食らわせそれらを葬っていた。

まあそれは俺なのだが。


後ろから喝采が上がるが撃ち漏らしが出ると悲鳴が上がり罵声が聞こえる。

その撃ち漏らした魔物は兵士がとどめを刺し討ち取っていく


「現金な奴らだ・・・」


だが要塞に続く大通りはこのほかに後2本ある、左右の道から悲鳴が上がる。


出来るだけ撃ちながら後退して広場を見ると、甲冑を着ていた兵士が手足を引き裂かれ喰われていた。

要塞の入り口に居る兵士の同じ様に死んでいた。

4方塞がりで上から何かが落ちて来た、2人の人間だった。

落ちた時軽くうめき声を挙げるが身を捩じらせ立ち上がることは出来ない。

昨日勇者の取り巻きにいた女が逃げ惑う人混みの中で


「愚民ども勇者様をお助けするのです!何をボサッとしてるのですか!?」


落ちて来た物体が勇者だったと言われても、誰も助けようとしないし出来ない。

そう・・勇者をこの状態にした者が上に居るのだから。


「全くつまらない拍子抜けだよ、これならイラン1人でも事足りたよ。たく、満足出来たら帰ろうと思ったのに、これじゃ皆殺しだね!」


最初からそのつもりだっただろうに勿体ぶった言い方したな。


「でも、面白そうな魔法使う術者居たようだね?僕の部下をゴミ屑にした奴が・・・出て来てよ、勇者の様に壊してやるからさぁ!!」


そこに居た者達は俺の方に視線を向けた反対側に居た仲間たちも兵士も。

その視線を追って魔族のアランがにやけ、地上に降りる。


「君か・・・うーん強そうに見えないな、まぁいいか楽しめれば、フハハハハ!」


俺の方に向かって手のひらを向け見えない衝撃に襲われる、周りに居た冒険者は建物に叩き付けられ、血を吸った蚊を潰したみたいになった。

つまりこっち側は俺しか立っていないことになる。


「フムフム・・・勇者より出来る様だな、よし!行くよ」


そう言い終わるかどうかで目の前にガキが立っており、鳩尾に肘鉄が入っていた。


「ぐぅぅは!!」

強い衝撃を受け間抜けな声を挙げ正門まで飛ばされる、そこで呻くガンドさん達を踏みつけている少女が居た。


「弱ーい・・・つまんない、あれ何これ?」


正門の壁を貫通して地面に叩きつけられ、グワングワンする頭を振り意識を保とうとしているとき声が聞こえ、唖然とした。


「ま、まさか・・・」


A・BランクPTが全滅した・・・?そんなことあるのか?いや勇者でさえ歯が立たなかった相手だ、おかしくは無いが・・・最悪だ、高ランクPT勇者共に魔族に敗北した。


「ああ・・・良かった生きてるね!手加減し損ねて壊れたかと焦ったよ」


まったく焦ってないな、あぁ俺オモチャの心配か・・・人権なんか無いんだろうな。


「お兄様・・次はコレで遊ぶ?」


同じく赤髪の魔族、角は生えてない、その凶暴そうな目が無ければ人間に見える少女が無邪気な笑みを浮かべ玩具オレを蹴り上げ宙に舞い髪を何かに掴まれる。

そこには少年の魔族が居たが手を放され地面に落とされた。


「少しは手加減してよー楽しめないじゃないかー僕が」

「えーお兄様だけズルい、楽しませてよ私を」


・・・・・・見た目を含まなければ子供の喧嘩なのだが全く可愛らしくない。

頭がフラフラする、片膝で下がろうとして


「ホラホラ逃げないの・・お兄様の角のせいで逃げ出しようになったわー」

「君の瞳でそうなったんだよ?イラン。」


・・・こんな奴らに俺達負けたのか?・・・・そう考えるとものすごく腹が立ってきた。

全身に力を籠め気合を入れる。


「はぁぁぁぁ!!!」

ふらつく体で強化を3にし構える。


「やっぱり僕の目に狂いは無かった!フハハハハ!」

「・・・もう~・・・タノシミ」


飢えた肉食獣が餌を目の前にした・・・そんな表情だった。

その上2対1の絶望的な戦闘が始まる



棒立ちの距離が近かった兄の方を回し蹴りを入れ吹っ飛ばし、その後妹に向きを変え鳩尾に拳をめり込ませ空に打ち上げる、それを追いかけるように飛び上がり足を掴んで急下降し、鞭を振るう様に地面に振り下ろし頭から土にめり込ませる。

つぎ・・回し蹴りを打ち吹き飛んだ兄の方の顔面を掴み、後頭部を何度も地面に叩きつけ腹を蹴り上げ、同じ様に飛び上がり背の方に両手で固めた両拳を振り下げ、そのままの勢いで地面に衝突する。


肩を上下させゆっくり降下しながら様子を窺う、

「少しは喰らったか・・・?」

だが期待に反し服の土を落としている2体の化け物を見た後引き攣った。

「いやー今のは効いたよー勇者よりよっぽどね?」

「うんうん!楽しいなぁキャキャ」

全く喰らってなさそうだ・・・それどころか久々に構ってもらった子供の様な反応をする。


「・ふ・・ふざけやがってェェ!」


再び力を溜め殴り掛かるが空振りする、何度も何度も手足で攻撃を繰り出すがすべて躱される、小さいから当たらないとかそういうレベルじゃない。

一旦距離を取り気弾を乱射するが、それすらすべて避け目の前に現れる。

そして兄の方に小さな片手で頭を掴まれ持ち上げられ軋む、その手を外そうと両手で顔面や足で横腹を攻撃するが擽ったそうにしているだけだった。

殴る手をやめ眼前で気弾を作り撃ち出す。


それでやっと頭から手を放し気弾を弾き距離をとる。


「うーんやっぱその球だけは危険だね」

「わーー!お兄様だけズルい!今度は私ね!」


ピョンピョンジャンプしてから妹の方が掛かって来る、顔面に大振りで勢いを付けた右手を殴りつけようとしたが、その腕を少女の形をした化け物に片腕1本で掴まれ動かなくなる、押しても引いても動かず次第に絞める力が強くなりこれは危ないと思い、左手でその顔面を殴り外そうとするが、全く効いていない様で左手をそいつの顔面に貼り付けそのまま気砲を撃ち、黒煙が上がり締め付けから解放される。



頭と右手から出血し右目の視界が赤くなるが、また強化を掛け直し煙が晴れるのを待つ。


「キャキャキャ!お兄さん?れでぃのお肌に傷を付けちゃダメって教わらなったノ?」


サルが鳴く様に短く高い声を発し焼け爛れた顔面と髪・上半身が晒される。


「ダメじゃないかイラン避けなきゃ、すごく醜いよ?」

「ワタシがミニクイ?アレ?回復しない・・・昼間だけどキャキャキャ!」


兄が顔を顰めることで妹は爛れた自らの顔を触り、回復がどうのこうの言った。


「チッ!化け物共が・・・・」


無意識のうちに舌打ちし奥歯を嚙合わせ歯ぎしりする。

それを聞いていたのか


「化け物?違うよ、僕たちは人間が誕生する古来より繁栄を続けて来たバンパイア一族の末永だ!」

「お兄様ソレハヒミツ・・・だけど良いわ!もう知られても、どうせ殺すし?」


兄の方が俺が化け物と言ったことに対し訂正を入れ翼を広げその中に妹を隠し、再度翼を広げた時綺麗な状態になった妹バンパイアの顔面が現れた、最後に物騒なこと言われた気がするがな。

そしてその顔は少し・・・かなり大人びているように見える。


「さっきの勇者だとこの姿にもならなったからね、あんなのを魔王様は警戒しているなんて・・・あれ?これ聞かれると不味いな・・・君黙っててね?」


なんか独り言を言うバンパイアのアランだが片耳の鼓膜が終わってる俺は、何言ってるのか分からなかった。

翼をはためかせ砂煙を巻き起こし両手で目を覆いながらその姿を追いかけた。


「吸血鬼ね・・・パワーとスピードに秀でる生物か」


スピードはともかくパワーには自信あったんだがな・・・。

前回はダークエルフで今回が吸血鬼・・・人に忌み嫌われた種族か・・・。

やっと本気になったとこ悪いが、もう体が持たねぇ・・・。


「半端者の吸血鬼など一緒にされてもらっては困る、奴等は太陽の光さえも恐れる軟弱者よ!」

「そうです!人間とのハーフである吸血鬼などと一緒にしないで貰いたいですわ!」


口調も変わって背格好も伸びた、そっちが本性か?


どっちでもいいか・・・俺では勝てん。

もうそう持たない体を奮い立たせ目前に迫っている、2体の悪魔をどう捌き切るか?それだけ考えてればいい。


「じゃ遊びはここまで、次からは本気で行くよ?」

「すぐ壊れないでね?」


1言ずつ言い終わり同時に姿が霞む・・・剣を持ってきたのに使ってないな、と思い背中から抜き放ち構える。砂が目に入らないよう自身の周囲にも気を張り視界は確保するが。


「ッガ・・・イッテ・・ブハァ・・・クソッタrイ」


死角からの攻撃に手も足も出ず弄られる体、剣を闇雲に振り回し、カキン・・・運良く何かに当たり剣が鳴るがその後は掠りもせず体力が奪われるだけで、剣を支えにし立って居るのがやっとだった。


俺の死に方は・・・惨殺死か?・・出血死か?・・そんなことを考えるようにもなり、倒れた体はもう俺の意志では動かなかった。頭上から声が聞こえる、


「ありゃ・・・死んだ?もう少し遊びたかったんだけど」

「お兄様・・・やはり人間というのは脆いですわね・・・まだ遊び足りませんの」


今ので遊びかよ・・・冗談キツイぜ・・・


「そうだねまだ遊び足りないから”あっちの人間で遊ぼう”?」

「やったー行きましょお兄様!」



・・・・おい!待てそっちにはマリー達が、目だけを化け物に向け言葉を発しようとするが呼吸するだけで胸に痛みが走り声が出ない。


「ゴフ・・・ゴハ・・・待て・・・待ちやがれ!!」


肋骨だけじゃない全身の骨が逝ってる、喉から何か上がりぶちまける。

胃液かと思ったがそれと血が混ざったものだった・・少し動かすだけで激痛が走り抜ける。

奥歯を噛み締め顔を上向かせ辛うじてマシな右手を支えに、魔族2体に左手を向け声になったか分からない叫びを発し気弾を撃ち出す、だがそれは見当違いの方に飛んでいき掠りもせず正門の壁に衝突したが注意を引くだけなら十分だった。


その球を飛ばした俺の方に視線を向けたアランが冷たい極寒のオーラーを纏い、イランもアランに同意するように手を振り、


「見苦しいもう死んでいいよ・・君には飽きた」

「壊れた玩具には興味無いのバイバイ」


要塞の方に飛んでいく、その後姿を見ていることしか出来ない俺は


「クッソタレガァァ!!」





意識が途絶え、その叫び声だけが響いた。

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