2年後・・・ 魔族襲来
トケカガミを拠点とし2年の歳月が過ぎた頃ギルドにある知らせが入った。
それは俺達は何の討伐依頼を受けるか決めかねている所だった。
「皆さん!よく聞いてください、今、王都アルキメス本部よりからの伝達でここ数年息をひそめていた魔王軍がここ”トケカガミに進軍してきている可能性がある”という情報がありました。これより本トケカガミ支部ギルドは第二防衛体制に移行します。皆様にはこの近辺の警戒と偵察の義務が発生します、なお、現時刻から指名依頼以外の通常受注は受け付けませんのでご容赦ください」
受付カウンターから澄んだ声の女性職員が発言し終わり一瞬静かになったが、すぐにいつもの雰囲気にもどり話し合う声やら喧嘩腰の会話などが聞こえて来た。
にしても依頼が受けれないのはまだいいとして魔王軍か、嫌な予感しかしない。
依頼板に貼られている紙が全部剥がされ代わりに高級洋紙に書かれた依頼書がずらりと並ぶ。
ほとんどが偵察依頼だが数枚だけ”魔族の討伐依頼”というものが混じっていた。
本気で洒落にならんぞ、100歩譲って緊急クエスト位なら起こっても不思議はないが、・・・今になって行動し始めやがって、やっとPTとしての冒険者家業が軌道に乗り出してきたところなのに”勇者”は何してやがる!!
唇を噛みしめ血が滴る、それを無視し無い頭で考えるがどうでもいいことばかり浮かんでくる。
ガッツ達が何か相談しているようだが会話が頭に入ってこない。
俺達はこの2年結構早いスピードでランクCに昇格してきた、普通1つ上に昇格するためには2~4年かかると言われている勿論PTでの話だ、俺がこのPTに入って半年でDに昇格してその1年3か月後に2度目でCランクに合格した。
ギルドでは顔も売れて来たと思っているがよりによっての時期に来やがって・・・。
俺の認識だとCランクはベテラン寄りの一人前だったはずだ、つまり周りにうるさく物を言われなくなり有頂天になりやすい時期だと俺は思っている、うっかりで失敗してケガした人間も少なくないはずだ。
何よりこの頃もし仮に誰かに自分の意見を否定されるようなことがあり、そいつの言っていることが真実で自分が間違っていても意固地になりそのまま突きみ痛い目を見る、日本なら入院位で済むかもしれないがこっちだとヘマしてそのままあの世逝きだってことも珍しくないだろう・・・。
俺個人が言いたいことは、”他人は何人何十人と死んでもいい仲間さえ生きていれば、いなければ困る”。
「どうしたのユウ?怖い顔して・・・あ!血が・・」
「大丈夫だ、すまない」
隣で座っているマリー心配かけたようでハンカチを出されたが手の甲で拭き一言返し瞼を閉じる。
とても自己中であることは分かっているが今の俺にはこいつらしか居ない。
ガッツ達は今後の依頼について話している最中だった、途中から聞いても話が分からないのでそのまま瞼は閉じたままにした。
1週間トケガガミは第2防衛体制が引かれた、がある情報が入ることによって最終防衛体制まで引き上げられた。
昼頃宿屋で寝ている時だった、中央に位置するギルドからの緊急放送が鳴り響く
「緊急!緊急!トケカガミに滞在中のBランク以上の冒険者又は傭兵職の方今すぐ正門に武装して集まって下さい!繰り返しますBランク以・・・・」
なにやら変なのが来たようだ。巨大な気が2つその周りに小さいが、探っていて気分が悪くなってくるほどの大軍を引き連れて。
だがこっちにも同じ位の気を持っていた2つ・・・誰だ?
「最終防衛体制が発令されました!一般住民の皆さんは至急中央の要塞トケカガミの方に避難してください!Cランク以下の冒険者方々は住民の誘導とそれが終わり次第要塞の方に避難してください」
ある意味の戦力外通告だが戦わずに居れることはありがたい。
鞄と自分の打った剣を持って外に出る、道は人が我先に進もうとしてとんでもなく混雑している、冒険者が要塞への道に誘導しようとしてなぎ倒されているのも見えた。
この町ってこんなに人いたんだな。
俺は誘導の手伝いは無視し要塞の方に向かっていた、宿屋の部屋にあいつらの姿が見えなかったのだ、気を探ろうとしたがこの騒ぎのおかげで全く掴めない。
俺が要塞に着いた時にはその前の広場に人が溢れかえっていた。
要塞の収容の方はどうなっている?まだ千近い住民がこの場に群がっている。
要塞の入り口は3つあったその内2つが閉じられ、残りの1か所に人が押しかけているのでこんな混雑しているのだ。
あの中にマリー達が入っていればいいのだが・・。
「冒険者の皆さま!いらっしゃいましたらこちらの方に集まって下さい!」
端の方から呼ぶ声が聞こえ、そこに向かって何人かが人の河を横切って行くのでそれに続いて数十人が集まっている、さっき住民を誘導していた冒険者の顔もあった。
「皆さん落ち着いて聞いてください、実はこの防衛要塞の収容人数は限界に近いんです、住民の避難を優先させていただきますと皆様のスペースが確保できないのです。ですから皆様には正門の方に援軍に向かっていただきたいのですが・・・。」
一呼吸置いてそのギルド職員かなにかが事情を説明するが
「ふざけんじゃねぇぞテメェ!俺らに死にに行けっていうのか!?」
なんだそれは?と言おうとしたら先に誰かがここに居る全員が思ったであろう思いをぶちまけてくれた。
「いやそういう訳では無く手です・・・もしかしたらここよりも正門あっちの方が安全かもしれないんです」
嘘くさいな・・・目は泳がせ挙動不審なギルド職員だったが次に言った言葉でそこに居た冒険者の半数がは正門の方へ走って行った
「本当のこと言うとギルマスに怒られるのですが、アルキメスの方から”勇者様がご参戦なさる”という通知が昨晩ギルドに届きまして、勇者様は正門の方に待機してもらっているのですよ?ですからもしかしたらここに居るよりも一緒に戦っていた方が安全かもしれないです」
・・・勇者が?正門に?・・・さっきの大きな2つの気はそれか。
その言葉を聞き走っていく半数とその言葉が真かを見極めようとしたものが半分残ったが、要塞最後の入り口の扉が閉じられ仕方なく走り出したのだった。
俺も走りだそうとしたが1つ気になっていることを職員に聞いた
「なぁ、この要塞に”夕焼けに誓う”の仲間たちが入ったがどうか分からないか?」
ほとんどの冒険者が走っていくのを見て、これ以上追及されないとため息をついた職員に話しかけると、まだ居たのか?って感じの目線を向けられ
「夕焼けに誓うですか・・・多分この要塞には入っていないと思いますよ?Dランク以上はまず入れないようにしてあるので・・・正門の方に居るかどこかの建物に居るかですね?」
そう言い終わってから早く正門に行けと顎で指され、本当に仕方なく駆けることになる。
正門に着くと同時位に魔物と最前線の冒険者との戦いが始まっており、上空からも魔法が降って来るような状況だった。
俺は早く仲間を見つけるために全身に力を籠め前線に走る。
見つけた・・・前線から一歩引いた前線組が取りこぼした魔物を1体相手にしている所だった。
その個体はオークよりさらに一回り大きいオーガーだった、手に持った棍棒でダルの盾ごと吹き飛ばし、ガッツの体当たりに怯むこともなくもう片方の腕で別方向に転がせ、首元に引っ付き短剣を突き立てたカクを両手で引き剥がしマリーの方に投げ、2人まとめて肉塊にしようと棍棒を振り上げている、間に合わないと判断し立ち止まり気砲を左手で打ち出し棍棒を持っている手を焼き切り、オーガーがその状況を読み込むまでに剣を抜き前に立ちはだかる、オーガーは俺が自分の腕を焼き切った者だと理解しもう一本の腕で叩き潰そうとするが、剣で肘から先を斬り飛ばし赤黒い血が噴き出し首を刎ね飛ばす。
一連の動作を見ていたマリー達はボーっとしていたが、そんなこと構わず
「なぜこんな前線に居る!?もっと下がれお前らではまだ無理だ!」
助けに来た人が自分らに向かって叱咤している、そのことにマリー達は分からなかった。
「ユウ助けてくれてありがとう・・・だけど何でそんなに怒ってるの?」
歯が立たなかった敵を一人で葬った仲間に躊躇いがちにそんなことを聞いた後、
「怒っている?当然だろ!身の程を弁えられない馬鹿どもが!」
これまでに無い激怒の仕方に唖然とするマリー達だが、
「そんな言い方は無いだろう!?俺達も冒険者だ市民を守るために戦うのが道理だ!」
「そうだ、俺達は悪くねえ!たまに喋ったかと思えば荷物持ちが怒鳴り散らしやがって、ウザッテェ」
「カクカク」
「・・・・・。」
ダル・ガッツ・カク・マリーの順で反応を返し全く反省してない。
現状を理解してないのか?俺が過剰に思ってるか?頬が引き攣るのをやめもせず
「・・・今すぐ正門手前まで下がれ、お前ら程度では命を捨てに行くだけだ・・・身の程を・・・」
「いやーーー!!!タスげて!!」
傍で絶叫が聞こえ空から翼のある魔物が魔法使いを重心的に襲い始めていた。
遠距離をさっさと潰して空から蹂躙するつもりか?さっき声を挙げたモノは生きたまま引き裂かれ魔物に食われた。
次々と振り落ちてくる魔物に地上の魔法使いはカラフルな魔法を放つが、単発で直線的な攻撃でほとんどがその意味を成してなくPTごと襲われ喰い荒らされる。
魔法使いのPTだけでなくその周りの奴等にも襲い掛かる、リーチの短い得物ばかりで対抗手段が無く逃げ惑う者達その後姿を的確に狙い上下左右に裂かれ逝く。
一部で魔法使いが集まり集団で一斉射撃している者も居るが、そこだけだな今のとこ対抗出来ている所は。
喧嘩をしている場合ではなくなった、ここにも魔物が降って来ていた。
「お前ら伏せていろ!」
あの蜘蛛野郎の時の様に張り手の様に気弾を撃ち出し数発で一体を落として行った。
重傷を負った相手なら複数人でメッタ刺しにし殺すことが出来る様だ。
魔法隊と俺の2つで魔物を撃墜していき、その魔物を地上のPTがとどめを刺していくといった戦法に代わるが魔法隊が魔力切れになってきたようで、向こうの方に魔物が集まっている。
ある意味片方に固まったは都合がいい、一度気弾を撃つことをやめ魔法隊の方に体を向け固まっている魔物に狙いを定めてから一気に黄色の気砲を撃ち出す。
それで大半の魔物を消し飛ばし熱風でダメージを負った魔物も落ち空からの攻撃は気にせずともよくなった
はずだ。
その後何人かのけが人が後方に下がると、最前線も魔物の抵抗が激しくそこを防ぎれなくなったのか後退してきていた。
見たことのある顔がいくつか見え向こうを俺の顔を覚えているようだ。
「おお、君か!黄色の弾が空に上がってるのでもしかしてと思ったが、そうか。」
「ヒィ!!」
「はは・・・」
暗黒騎士の時にお世話になったガンドさんと、顔を合わせた瞬間その後ろの男に隠れた女性、隠れ蓑にされ苦笑いした男性。
後半の2人は見覚えがあるが名前が出てこない。どこで会ったのだろう?
「前線はどうですか?きついですか?」
唯一話の出来そうなガンドさんに聞くと難しい顔をして
「そうだなかなりキツイ、だが君が空中の敵を撃ち落としてくれたおかげで、目の前の敵だけに集中できるようになった」
と答えてくれたのだが、1つ気になった
「勇者はどこに居るんです?姿が見えないですが?」
その質問をしたとき3人とも驚いた表情になったがすぐ顔を戻し
「誰に聞いたか分からないが勇者は最後の切り札だ、まだ正門の付近で戦況を見守っているだろう」
ガンドさんが口を開きその言葉に「は?」と声が出てしまった。
「いいか?士気というものが有るか無いかで戦場に大きく変化する、勇者が最前線で戦い魔物を葬る姿を見せればいいと君は思っているようだが、あくまで彼らは切り札だ魔族に対抗できる唯一のな。こんなところで疲労し万が一深手でも負ってしまえば間違いなく我々は負ける、だが最悪勇者だけでも生き残ればまだ希望が残る、私はそう考えている出来るだけ我々で雑魚を葬り魔族は勇者に丸投げだ。」
勇者が希望で最終兵器なのは分かったが、それでも腹が立つ。人より優れた能力を持っているのにそいつらの後ろで傍観しているなど・・・。
「まあこんなとこに居ても仕方ない、正門まで下がるぞ!」
隠れ蓑にされたままの男性が背中の者を引きずりながら正門に向かう。
その後にガンドさんと俺達が続く
日が山に隠れ正門に冒険者が多く集まり、正面の魔物を警戒しながら軽食を取り第2回戦が始まる時まで少し間が空く。
名前 ユウ
種族 人間 性別男
Cランク
戦闘力 20 (600)
属性 なし (気)
パーティー名 夕焼けに誓う
スキル 筋力UP・鍛冶士皆伝・調合士特級・調理士特級