休日だが・・・
トケカガミに来て最初の初仕事・・・なんかくどいな。
ゴブリンの討伐指定数無しを受け町の外、森の方に向かう。
鬱葱と茂る獣道を歩きゴブリンの姿を探す、1匹ずつの方が確実に仕留められるんだが集団の方が効率は良いんだよね。
うちのPT・・・回復専門居ないからな。
昼前に狩り場に付き昼食の準備をする、すると匂いに釣られたゴブリンが6体出て来た。
別に匂いで釣るつもりは無かったのだが来てしまったのでちゃちゃと終わらせる、ガッツが2体・カクが1体・マリーとダルで3体、俺は料理中だったので参戦しなかったが楽勝だったな。
スープを流し込み本格的に狩り始める、1時間で小型15匹中型2匹大型0匹、途中オークが1体と出会ったのだがついでに倒しその後3時間休憩取りながら狩りを続け日帰りでそこそこの成果があった。
ギルドで証拠部位を提出し報酬を貰う、今日はなんだかいつもより騒がしいな酒飲みが多いようが気がする。まだ酔ってないおっさんに何かあったのか聞くと
「今日この街に滞在しているPTがAランクに成ったんだ、AランクPTなんてここ数年昇格してないからいつもより盛大に祝ってやるんだ、お前も飲めよ?」
聞き終わるか終わらないかのとこで飲みかけの酒樽を出されたので苦笑いしてガッツに代わる。
騒がしいのも悪くないのだが、まだあんまり慣れないな。
その日は深夜までどんちゃん騒ぎだった様だ。
2・3日お祭り騒ぎだったので依頼は休み調合をしばらくしていなかったので必要分だけ作っておいた。
それから毎日のように依頼を受けて行きお金と経験を積んでいった。
時には遠征でレイドを組みオークキングやエルダートレントなどの討伐にも関わらさせてもらった報酬も良かったしね。
危ない時も、もちろんあった。
功績に焦ったカクやガッツがオークキングの大斧に吹っ飛ばされて出血死仕掛けたことも、レイドで魔法使いがマリーだけだった時、エルダートレントがマリーを優先して狙ってきているのを防ぐの時は冷や汗が止まらなかった。
それでもこうして5人とも命がある状態で生活している今はそれを感謝している。
そして今日は久しぶりの休みだ、3か月ぶりの自由行動ガッツとカクは市場で食い歩きでもしてくると言ってた気がする、あの二人は体格は正反対だ性格もガッツははっきり言うタイプでカクは気に食わないことは反論するがそれ以外は黙って実行する出来る男だ。ダルとマリーは朝一緒にどこかに行ったカクもガッツも場所は知らないらしいが、あの2人は付き合っているらしいガッツが
「お前はあの村のでじゃないから知らねぇだろうけどダルの親父はあの村の自警団長だ、そんでもって国の騎士団にも知り合いが居る。ギルマスとも関係厚い」
「コクリ」それに頷くカク
確かに俺は・・・この世界の出身でもないしそんな関わりがあるなんて知らないが、2人を見ていてそんなに楽しそうにしている所を見た記憶は無い。
あぁもちろんみんなで酒盛りやささやかなパーティーをするときは別だが。
昼間宿屋の屋根の上で寝っ転がって朝食の時の会話を思い出す。
俺も今日は暇だ、何もする気が無い、そのため朝食食べた後もベットに潜り寝ようと思ったがいい生活習慣が付いてしまったので逆に頭が冴えてしまった。
山でも走って疲れさすか?それともガッツたちの様に食べ歩きでも行こうか?どうせなら2つともするか。
そうと決まれば最低限の銀貨を持ちドアに鍵をかけそれを受付に置き山の方に走る。最初はランニング体を慣らしで迷惑にならない程度で15分、町の外に出てしばらく風を確めるように走る、石畳みではあまり疲労しないので草原の方を走る。大体それで20分経過すると俺が来た方から猛スピードで走り抜ける馬車があった。丁度いいので半分の速度で追いつこうとするが、「あの馬車早すぎねぇか?」
そう独り言を吐き全力で足を強化し飛ばない様に進んで行く。
猛スピードで街道を走り抜ける馬車とそれに追いつき並走する俺、どっちが異常なのか誰か見ていたら俺の方に1票入れるだろうな。
馬車を引いているのは何だ?トカゲか?空気抵抗で目の水分が結構奪われるな、気を纏えは早いんだろうけどこれ以上早くすると浮く気が無くて飛んでしまうし山に行って帰って来る分の体力を使い果たす訳にはいかないのでスピードを落として3割くらいで山に向かう。
いつもなら1時間半かけて魔物を狩りに来る場所だが途中すっ飛ばしたから40分掛からずに付いた。
川で水を飲み汗を流す、水面に映る自分の上半身を見て傷が増えたな、大きな傷は無いが掠り傷の様な細かい筋が腹部や腰のあたりに多く残っていた。
大きな傷はすぐに治すようにしているし大丈夫の様だが小さいのは見過ごして又は自分で無視してしまうことが多かった気がする。
水浴びは終わらせ山を下りる、帰りは髪を乾かすために飛んで戻ることにした。
空が茜色と濃い夜になる前の青で夕日が山に隠れ半分見えている状態だ。
「夕焼けに誓う、か・・・どういう意味なんだろうな」
ふと頭にPT名が浮かぶ、俺は何か誓ったつもりはないのだがな。
門の近くで地上に降りそこから歩きで町に入る。
今日は全員別行動なので宿の夕ご飯代は払っておらずどこかで食べるしかないのだがあんまり高いのは無理だな、ポッケに入れた銀貨の感覚を確め市場に入る。
夕時なので人は多いしどこもかしこも店の調理場から良い匂いを漂わせているので空腹ゲージがあったら目に見えて減っているだろう。だけど何故か大通りの方が少し騒がしい野次馬も集まっているようだ、横目で脇を通り過ぎるようとしたが一瞬知り合いと目が合った、気がした。
「オラァこのアマぁ!人様にぶつかっておいて謝罪も無しとはどういう了見だぁ!」
「オラの足が!痛てぇよ親分!痛てぇよぉ?」
「テメェ慰謝料と治療代耳揃えて払って貰うしかねぇよな?」
ゴロツキの子分が足ぶつけられて痛がっている・・・フリか、そして何で最後疑問詞になった?
ゴロツキ3人+1で通行人にイチャモンを付け金をせびろうとする輩だ、どこの世界にもいるチンピラだ。
野次馬は見ているだけで仲裁に入ろうともせずただ結末を見守っている、そしてぶつかった女性の連れであろう男が
「ぶつかって来たのはアンタらの方だろ!彼女や私は端の方を歩いていました、その進行方向を塞ぐように迫ってきたのはお前らじゃボケ!」
やっぱ聞いたことのある声だなこんな荒い声を挙げるやつじゃなかったと思うのだが、足を止め野次馬の中央に目をやると100キロ以上ありそうな巨漢とガッシリした男が組み合っていたがそこに残りの2人ゴロツキが加戦し
ボッコボコにやられていた。
それでも誰かを守ろうとする意志の目は消えてなかった。
野次馬を分け怪我しているであろう女性の方に近づく、その顔を見て「そうか」見た目も格好も女の子らしくなっていたので一見分からなかったがこの男女はダルとマリーだった。
ダルの方はなんとなく分かったのだが男ならどうにかするだろうと思っていたが話が変わった。
マリーの頭と傷に手を翳し淡い光が照らされる治癒力を増幅させ足の腫れは引いたようだ、魔法使い=打撃に弱いみたいな方式でもあるのか?この世界は・・・。
これから少し鍛えてやらないと。
立ち上がりダルを無視しゴロツキと対峙する、身長では俺の方がダルより高く横幅は俺の方が細い、なので
「ああん?テメェそいつらの仲間か?」
「隠れていれば痛めつけられずに済んだだろうに、これだから虫けらの”仲間だから”とか言う偽善に虫唾が走る!」
足の痛みを訴えていた奴以外このような態度になる、まあ俺が細いから悪いんだが。
別に仲間どうこうで出て来た訳じゃない、ただ少しムカついた。
巨体らしからぬ身のこなしで目の前に立ち塞がり片手を振り上げ俺の顔面を打ち抜く、それに続き常人だと1発貰ったら病院送りになる連撃が襲いその場でサンドバック状態になる。
短い悲鳴が周囲から挙がる。
20数発打ちおわったところで息を荒くする巨漢、上体を仰け反らせていたのを直立に戻し
「パワーはそこそこだな」
首を鳴らしオークの攻撃にビクともしない体だが結構効いたことに驚きを隠せないが、巨漢の方が目を丸くして首を左右に振る。
「テメェ・・強化系の治療士か!?」
治療士ではあるが強化系とはどういう意味だ?俺の称号はハンターじゃないぞ?
まぁ多分支援系の治療士で身体能力上昇系の魔法を使える者指すんだろうが、・・・いやまず俺は魔法が使えねんだけどよ!?
反応に困り黙ったのを肯定と受け取ったのか苦虫を噛みしめた顔をした、まあ自身を強化しながら回復が使え格闘も少し齧ってるとなるとゴロツキじゃ分が悪いよな?
と思っていた時が俺にもありました。
「治療士だからって関係ねぇ!回復が追い付かねぇほどボコればいいだけだ!!」
脳筋なのか?ただ馬鹿なだけか?余程パワーには自信があるのか?どれか知らないがいくらやっても・・・・「剛腕!」・・・え?今なんつった?
巨漢がなにか言ったのを聞いた周囲の野次馬が蟻の子散らすかの如く逃げ建物や物陰に隠れる、いや見る気は有るのか・・・。
「おい!にぃちゃん前を見ろ前を!!」
野次馬のおっさんが何か訴えるように前を見ろと言うが前には巨漢しか・・・あれ?視線を戻し男の両腕がやけに肥大しているのが目についた。
何か魔法かスキルを使ったようだ、さっきの倍くらい太くになって青筋が浮いている。
「へっへへ・・・俺様の剛腕で!その細い体へし折ってやる!!」
指を鳴らし方で息をしている状態で肥大した腕で掴みかかって来る。
身体部分強化スキルか・・・。
掴み掛かって来た腕を組み合いどっかの熊と戦った時の様に力比べをする。
この巨漢、体以上のパワーだ俺が押されている、純粋なパワーだけだとブラックベアーより強いぞ此奴。
剛腕か、いいなぁ。
取っ組み合っている最中にナイフを持ったゴロツキ2が死角から飛び出して左わき腹と左肩にそれを突き刺した。
痛みと回避行動がとれず混乱してしまい押し負け字面に転がり追撃に備えたがそれは来なかった。
見ると巨漢と仲間であるはずのゴロツキ3が言い争っており、その隙に刺さったナイフを抜き止血し治療する。
「チッ、親分今時タイマンがどうとかそんな時代は終わったんですっせ?大体そんな人情プライドなんぞ有ったって食うのに・・・」
立ち上がり止血しているのを見て舌打ちし巨漢に意見するがその上半身から怒気と蒸気が立ち上がる。
「退いて居ろ、次邪魔したらお前らでも容赦はしない!」
会話が終わり再びこちらに歩いてくる。
「アンタ思ったよりそういうのには凝るんだな?」
ゴロツキもチンピラも数で実力を埋めてくる戦法をしてくるもんだと思っていた。
「っけ!久しぶりなんだ、ギルドも兵士も腰抜けばりでぇテメェの様な強者と殺り合うのはな!」
傷は塞がっても出た血は戻らないし傷ついた筋組織の修復もそれなりに時間が掛かる、HPは回復したが耐久は低下したままだ。だが退く意味もない。
「それは光栄ですね、でも俺はまだ駆け出し冒険者です。先輩冒険者の様な貴方を楽しませれる技術は持ち合わせていません」
はっきりそんなことを言ったあと豪快に笑い声が上がる。
「技術?ハッン!そんなもん無くったって生きてはいける、男はパワーだ!!」
なるほどまあそれだけの体格と力が有ればそんなことも言えるか・・・。
軽いボクシングの様なステップをする巨漢、対して肩幅で立ったままの俺、
「そっちが来ねぇなら・・・剛脚!」
また何か叫んだと思ったら足が肥大しもう筋肉ダルマだ。だがその分のスピードは上がっていやがる!
それはもう俺の防御力を打ち破るまでの破壊力、踏ん張り耐え凌ごうとしたが足を掬われ宙に浮き猛攻を受ける羽目になり、フルスイングの打撃を腕を交差させ防御し軽減したがレンガの建物2Fあたりに叩きつけられる。
両手が痺れしばらく感覚が戻らないだろう、1歩1歩距離を詰めてくる巨漢だが限界が近そうだ、息を荒くし汗も結構流しさっきの様な俊敏さは無い。
だがこっちも軽傷ではない、これ以上は面倒だ。
気絶したふりでもしようかと思ったがマリーが巨漢の前に立ち塞がるが。
「邪魔だ!」
肥大した片腕で振り上げ顔を叩き道の脇まで転がった、ピクリともせずに。
ブチ、何かが切れた。
膝から立ち上がり両手はぶら下げる、顔だけ・・・眼だけを正面に向かわせ
「・・・・拳」
自分でも何を言ったかた分からないだけど何か言葉が出た後、そこの空気が凍り真冬になったかと錯覚する
ほど質が変わり一部の野次馬にトラウマを植え付けることになった。
空気感が変わり息が白く見えた者も居た、家に叩きつけられた男・・つまり俺の背後で赤い湯気オーラらしきものが立ち上がりそれがある生き物に見えた。
「お、鬼だ!」「鬼が居るぞ!!」「ば、化け物!」
鬼と言えばこの世界ではオーガーが一般的だ
錯乱状態に陥りに赤い鬼を見たという者が続出した。
そしてそれを喚き立てる物が居る中、何とか正気を保った野次馬が瞬く間に体験したのは風切り音と衝突音が4回と地面にめり込んでいる巨漢の姿に空から舞い降りる鬼男の姿だった。
実際は3倍で巨漢の顔面殴り飛ばし、その方向に先回りし蹴りで空に舞いあげ再び飛行し、それを左手で右手の拳を包み振り上げた状態で待ち構え背中に打ち込み、その体がUの字に曲がり地面に激突しただけなのだが。
感情を鎮めすぐにマリーの方に寄る、野次馬が集まっていたが近寄るとさっと分かれた。
容体は・・・気絶しているだけか、念のため頭部を治療し右肩に担ぐそして放っておいたダルに近づき片手で少し時間はかかるが治療する、盾職だから生命力は人一倍なはずだ。
そして最後に地面にめり込み辛うじて生きている巨漢にも治癒力を増幅させる気を使う、マリーは2人共無事だしこんな人目のあるところで殺人もよろしくない。
誰が呼んだのか知らないが衛兵が数人巨漢を引っ張り上げているところが見え飯を食う気も失せ、いそいそと宿屋に帰り2人を寝かせる。
要注意人物とかになっていなければいいのだがな。
はぁ・・飯食い損ねた、休日くらい戦闘は避けたかった。