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力勝負

東の方に街道沿いを歩き2日目、結構歩き振り返ってもエリルドリ皇国の城の屋根もさっき越えた丘で見えなくなった。

この道にはなんもない、木もなければ背の高い草も川も岩も、ただ猫じゃらしみたいな草が見渡す限り生えているだけ、行きは馬車だったからあんまり気にしなかったが、「遠いなおい」周りに誰も居ないので独り言を愚痴っても自分の耳にだけ入って来る。



風が結構涼しい、ほとんど汗もかかない一応七分袖の服を着ているのだがこれで良かったと思う。



街道沿いを歩き4日目、ようやく疎らに木々が復活してきた、あの猫じゃらしみたいな草も見えなくなってきた。

人との往来もあった、その人に聞いたのだがここら辺に町・・・いや村があるようだ、水が名産だとも聞いた。

普通水が名産ならば山間部の方が有名だろうと思うのだが?大体どこから水が出るのだろう、この地帯はどっかと言えば乾燥地帯で川を見た覚えもないし。


まあいいか4日間歩きっぱなしだったから少し足も疲れた村なら宿屋位あるだろう、金なら持っているしと考えながら夕方に田舎の村に入った。


空はまだ明るいのだが村人の姿は見えないし家に明りが灯っている訳でも無い、だが1つだけレンガ造りの一回り大きい家には明かりがついて人の声もする、近づいて一言「酒場かよ・・」、この世界に来る前から酒が嫌いだった、なんであんなもの大人は美味そうに飲めるのだろうか?まあいいここで宿屋の場所を聞こうか入り口についている両開きのなんだこの小さい扉の名前は・・を押し中には居る、思ったより酒く臭くない。


特に音を立てず入ったつもりだったのだが中で何か会議でもしていたのだろうか、俺が入った時大きなテーブルを囲んでいた人達が一斉に睨み付けられ一秒経たずで元の位置に顔を戻し話し合いを続けた。


何かよくわからなかったが人が一番居ないカウンター席に座り水を一杯頼む、店主に宿屋の場所を聞き少しさっきの反応が気になったので聞き耳を立ててみるが「帰りが遅い」だとか「魔物に襲われたんじゃ」だとか誰かの心配をしているようだ。

そんなに心配なら捜索隊でも編成すればいいと思ったがこんな辺境の村ではそんなことも出来ないか。


水を飲み終わり銅貨を一枚置き宿屋に向かう、簡素な木のベッドだったが野宿よりはマシだろう。



翌朝井戸で水を汲み布きれで体を拭き水筒に新しい水を入れその村を出てまた歩く、昨日までとは違い林の中を歩くことになったので少し進むスピードは落ちたが大した問題にはならなかった。


「おかしいな」平原なら見晴らしがよく魔物もあまり襲うこともなく旅人も特に用心しなくても歩けるのだが、ここは林だ魔物にとって食料も寝床も用意しやすい環境なはずだもちろん集団で、でもさっきから気を張り巡らせているが全く引っかからない、まあ俺の範囲索敵もまだ不完全だから見逃しとかはあるだろうけど、魔物が繁殖していないに越したことは無いのだが・・・。


日が暮れないうちに林2つ森1つを越え開けた道に・・・あれ今歩いて来た道って裏道?整備はされてなかったが通れないことがなかったので歩いて来てみたがショートカット出来たようだ、あとはこの道を道なりに真っ直ぐ歩けばアルキメス国第二都市トケカガミに付くと地図には書かれている、距離は知らないがな。

第二都市ってことは第三第四都市とかもあるのだろうか?この地図には載ってないようだが・・・。



道を歩き二手に分かれた岐路に差し掛かる右に行けばトケカガミ・左に行けばアルキメス、まあ行く方向は決まっているようなものなどだがな。

迷わず右に曲がりまた道なりに進む日が傾き山に隠れ掛けているとき範囲索敵に反応があったのと鉄と鉄が叩きつけられる音と悲鳴が聞こえ様子を見に道も何もない森の中を進んで行く。


森を奥に進むによって金属音と血の臭いが強くなり範囲索敵の反応も強くなってきた、そしてその場面に出くわした。


大きな熊だ、4つ足を地につけているのにオーガーと比べてもまだデカイがそれよりその前に立っている2人の冒険者?の方が重要だ、薄暗いからよく分からないが一人は盾を持って熊の爪や突進を交わしながら交戦していたがその後ろの杖を持った魔法使い?治療士?が何か魔法を盾の前衛に掛けているが回復魔法には見えない。


助けに入りたいがどの状態で入ればいいのか分からない、そうこうしている中に魔法使いが片膝を着きそれに気を取られてしまった盾が薙ぎ払いを受けて木に激突し地面に叩きつけられた。

・・・熊が残りの一人に立ちはだかり両手を振り上げて目の前の獲物を引き裂こうとしている、振り下ろされた腕に俺の剣が食い込む、あれだ、カッコよく登場しようとした俺が馬鹿だった、後一秒遅れていたら後ろの奴は血肉塊になっていたのだから。



突然出て来た人間に自分の腕を防がれた熊は激昂し再び腕を振り上げ振り下ろすが、ブスリ、力任せに斬り上げられた剣によりその両腕は宙を舞い、ボト、地面に転がる、熊が自らの腕を斬り飛ばされたと認識する前にその心臓を貫き力無きうめき声を上げ、ドン、と地響きを立て倒れた。



剣の血を払いしまう、そして後ろに居る腰を抜かした魔法使いに「おい、大丈夫か」話しかけるがガタガタと震えるだけで答えは返ってこない、仕方ないので水筒の水をその顔面に掛ける、すると鼻に入ったのか咽び声を上げた。

もう一度「おい、大丈夫か」聞いたところ僅かながら頷き顔を覗かせる。


・・・女か、泥で汚れていたがよく見ると髪も長く胸もある様だった、そのほかの倒れている奴は野郎か、鞄を下ろし中を探り緑を3本青を1本取り出し魔法使いに渡すが立てないようだったので青だけ残し倒れている奴等に振り掛ける、青いポーションを大事そうに持っている魔法使いにそれを飲む様に言うが蓋が取れないようだ、コルクを抜き試験管を女の口に入れ無理やり飲ませる、苦しそうにするが飲めば楽になる。


倒れている3人は前衛職だろうから体力回復だけで良い筈だが、後衛の魔法使いは魔力消費でもぶっ倒れる、言ってみれば酸欠みたいなもんだろうと思っていたので魔力微回復付きの方を無理やり飲ましたのだが

・・・何だこいつはアイツ(我儘女)みたいな反応しやがる。



とにかく森の中だとまた魔物に襲われる可能性があるので最低でも見晴らしの利く街道にこいつ等を持って行くことにした、盾と甲冑姿の2人と軽装備の1人を肩に乗せ歩くが結構重いな、街道から数十メートルしか離れてなかったと思っていたが野郎3人で武具付きだと流石に足が遅くなる、一番軽そうな奴を魔法使いに持たせようとしたが杖付いてやっと歩いてるのを見てため息が漏れた。



幸い魔物にも野生動物にも襲われることなく街道の雑草の上に横にし目が覚めるのを待ったがその前に夜になった。

そこらで拾って来た枝を積み魔法使いに火を頼むが首を横に振られた、火系統の魔法は使えないか・・・。火打ち石何か持ってないしな・・・と思い右手に気を集中させようとした時、範囲索敵に2つ反応があった、森の方からだ。


さっき言った範囲索敵の弱点だが・・・敵があんまり弱すぎると反応しない、だからゴブリンやスライム・スケルトンなどゲームでも雑魚に分類される敵にはこのスキル?は反応しない。

で、大体これに引っかかったという事はオーク位の戦闘力以上・・・まあ100以上から感知する、よって今感知した2つの反応は最低でもオーククラスってことで判断が出来る。


余計な話は終わらせ何が出てくるのか分からないのでその出てくるであろう場所を凝視する、20秒ほど待ったその時「ギャアゥー!!」なんか叫び上げ木をなぎ倒し姿を現したのは2体の大熊だった、さっきよりまだ少し大きい・・・一回り位。


「ブラックベアー・・ぁ」


後ろの魔法使いは何か呟いたが固まって焦点が定まってない、野郎3人はまだ目覚めていない、今日何度目かのため息を吐いた。

背中に背負っている剣を下ろし鞘から抜き、魔法使いの目の前に差す、そして両肩を回しながら歩く、目の前の2体も少し警戒しているのか低い唸り声を上げ姿勢を低くして構えている。



そんなに警戒することないのにな・・・

「おい、デカイの丁度退屈していたところだ、ちょっと力比べしようぜ?」


熊に向かって問いかけるように話しかけたが小さい方・・・いや小さい方もデカイんだが、が唸り声を上げ突進してきた、それを確認し腰を落とししっかり構え顔の前で腕を交差させ防御する、目は前方を見ていたので衝突する寸前でさらに全身に力を籠めその後とてつもない衝撃が全身を襲う、踏ん張りが利かず5メートルほど押し戻されようやく均衡がとれる、突進してきた熊の眼孔が見開き牙を露出させ力を込めているようだがビクともしないようだ。



お互いに汗をかきはじめ息も荒くなっていくが最初に態勢を崩したのは熊野方だった、足が限界だったようだ踏ん張ろうとした途端膝がカクンとなり一気に押し出し5メートル進んだ辺りで腕掴んだまま雑木林に投げ込み沈んだ。


そしてデカイ方を見て息を整える、デカイ熊は小さい方を気にする様子無くゆっくり近づいてくる、俺の目の前に立ちふさがり両手を振り上げるその高さは周囲の木々と同じ位7~8メートル位はあるだろう。

大きく振り上げた両腕を勢いよく振り下ろす、それに合わせ手を頭上に伸ばし構え2つの手が組み合わさった衝撃で地面が陥没しとてつもない力と重量に圧倒さ思わず片膝が付いてしまう、だがそれが面白い強者を弱者がねじ伏せる、強化を2倍に上げ少しずつ押し上げていく両足を伸ばし熊が逆立ちするように宙に浮き

小さい熊同様に林の方に投げる、ドッシーン、結構な重量だったのだろう地響きを起こし熊は気絶した。




振り返ると魔法使いは白目向いて仰向けに倒れており、何をそんなにビックリしたのか知らないが起こすのも面倒なので剣を仕舞って寝た。



翌朝偶然通りかかった冒険者に手伝ってもらい、昨日訪れた村に逆戻りすることになった。

熊は朝起きたら居なくなっていた。





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