エリルドリ皇国
今俺は馬車に乗っている、豪華な奴じゃなく普通の木肌の目立たない馬車前後に兵士は配備されているがそれだけだ幾らでも逃げることが出来るが皇帝に会える機会などそうはないだろうし、あのままだと何か嫌だったし、俺が傷つくのは別にいいんだが罪のない者が傷つくのはなあ・・・罪悪感があるんだよな、結局これが一番いいんだろ。
もうあの村に行く気も無いし荷物を全部持ち運び部屋の先に取った予約も全部取り消し出て来た主人に「いってらっしゃい」と言われたが無言でここまで来た。
馬車で何日かかるのだろうか?ここから西に行ったとこだと記憶しているが正確な距離までは知らない窓は空いている・・・ガラスが入ってないだけだがガタガタ揺れる。
居心地は悪い、一応客だろあっちの馬車は何が乗ってるんだ?
ほかに同乗者が居ないことをいいことに今までの愚痴を永遠と呟き日が暮れて行った。
夜は適当な場所に止まりそこで食事を取り寝るのだが・・・誰も食い物をくれない、何だ自分で調達しなければいけないのか・・?馬車から降りたが従者の一人が馬を操縦する場所?で寝息を立て寝ている、他の馬車も同じ感じだった。
夜ご飯は無しだが朝ご飯から何も食ってない俺にしては空腹で寝れないんだが、仕方ないと思い鞄から米と干し肉と塩胡椒と鍋を出し火を起こし硬めにご飯を炊くそしてそれに肉を入れ炒める、野菜が無いのでそこらの食べられる野草をちぎり入れる味付けは塩胡椒で濃い目に作り少し醤油を垂らす。
卵も鶏ガラの素も無いが一応焼き飯の出来上がり、皿が無いのでそのままスプーンでかき込む熱い自分が猫舌だったことを忘れていた。
ご飯を食べているとき背後で物音がして振り返るとさっき寝ていた従者がこっちを凝視している、首を傾げ「何だ?」と聞くが答えないままジーっと見ているだけ返答はない、剣を抜き脇に置いて置く従者が怖いからではなく獣のうめき声が聞こえたからだ、それから5分程で全部食べ終え布で汚れをふき鞄に入れ馬車に入る、お腹が膨れたとこでそのまま眠りにつくことが出来た
翌朝いつの間にか動き出していた馬車の中で目が覚めた、まだ日が出て間もないのだろうかそれなりに肌寒い、毛布も何もない
特にすることもないので瞑想でもすることにした、まあ座ったまま寝ているようなものだがな。
昼になり馬車が止まり外から「出ろ!」と声が聞こえ扉が開かれる、荷物を全部持ったまま外に出て大鍋に何人もの料理人?が交代でスープをかき回していた、傍にはパンと干し肉を持った兵士が立っておりそれぞれに配っていたがそこに兵士と一緒に着いた時には肉は配り終えパンもカビたのしか残ってなかった。
まさかと思い兵士の方を見るが顎でそれを指し「お前のはそれだ」と見下した態度でそういい去って行くそれにムカついた俺は少し離れた場所に立ち周りを見るが昨夜と違い木が無く枝も落ちてなかった。
あの大鍋は火魔法かなんかで熱を加えているんだろうと思い真下を見てから右手に力を込め2度50センチほど離したとこに拳を振り落とし地響きと共に穴が出来た。
何人かの兵士が俺の方に何か言ってきたが無視し、力を制御しつつ2つの気弾を作り穴に入れその上に鍋とフライパンを置き、鍋には米と気水を入れ炊きフライパンでは昨日夜に捕まえた獣の肉を分厚く切ってそれを熱された鉄板の上に置き焼く、これもコントロールがかなり必要になり気弾の威力が強すぎると鉄をも溶かし食材を炭にしてしまうからこれを習得するときはかなりむずかった。
20分位でご飯は炊きあがり肉にもしっかり火を通す、食用なら半生でもいいのだが野生の動物だからな・・・しっかり焼かないと。
塩胡椒で味付けをしナイフで1口大に切り中まで火が通っていることを確認しご飯に乗せて食べる、普通に美味い出来れば焼き肉のたれとかあれば一番いいんだが贅沢は言えないか。
後ろで質素なパンとスープを飲んでいる兵士たちを横目で見ながら食べ終える、途中「分けてくれ」と言って来た奴が居たが「何故お前にやらなければならない?」と聞きゴタゴタ抜かすので地面を殴り陥没させたとこを見せ腰抜けている兵士を見降ろし「貧弱な・・よくそんなんで俺にもの言えたな?」とだけ言い引き返していく足音を耳で聞きながら食事に戻りすぐに食べ終え馬車に戻り昼寝をした。
午後は舗装された道を走っていたようであまり揺れなかった。
夕方日が暮れる前に城門らしきとこにたどり着き城下町に入る、さすが軍事国家なだけあって物々しい顔をした兵士が見える範囲だけで何人も配置されており、心なしか住民の表情も暗いが奇病が流行っているという風には見えない、どっちかというと葬儀をした次の日みたいな雰囲気だ。
石畳の街路を走り前に走っていた馬車が分かれ道で右に逸れ城とは反対の方向に走り去って行くのが見えた、がそれは馬車だけでそれを護衛していた兵士達はこの馬車を囲むように歩き大門の方に進んでいった。
まあ、大門で降ろされそこから歩きだったのだが少し位いいかと思い気分転換に寒空の下巨大な城を眺めながら近づいていき、正面扉に着いたとき囲んでいた兵士は正面にある扉ではなく左右の扉に入っていき100人以上いた兵士の姿がなくなり代わりに前の石造りの扉が開かれ、今度は槍を持った衛兵?が十数人が左右に並んでおりそれが階段のとこまで続いていた。
それを上り案内役であろうメイドが1人居て特に何も言われず歩き出し黙ってそれについていく、長い廊下を歩き何回か角を曲がった奥に巨大な扉が現れその前まで来た後メイドは一礼して来た道を戻って行く、1人残されてしまったのだがどうすれいいのだろうか?
目の前に立ちはだかる壁のような扉を見上げながら、皇帝って言う位だから多分この扉の向こうにいるのだろうけどどうやったら開くのだろうか?と、腕組みしながら考えているが10分程立ち尽くしていたのだが一向に開かれない扉を見上げ
「呼び出しといてなぜこんなとこで待たせる?馬鹿にしてるのか?」
と呟き扉の左側に立ち両手を付け足に力を籠め押すが開かない、片方だけ押してもダメなのか?と思い今度は両方の扉に手を付け力を籠めるがビクともしない・・・廊下の幅から見て引きじゃないと思うんだけれどな、取っ手無いし。
あまりにも重い扉なのでちょっと本気で開ける「界王拳モドキ」小声で呟き扉を押す、ゆっくりとではあるが開き始めるそのまま人が通れる位まで開けスルリと中に入ると後ろでドンと扉が閉まる、これ1人で開けれるものじゃないだろうに天井まで続いている家一軒分程の扉を見納め前を向く
さて・・・広いな、高校の体育館なんかとは比較にもならんここ片側40人並んで短距離走出来るだろって位幅広く長いが不思議なことに誰も居ない、いや視線を感じるから居ないことはないだろうがこんだけ広い空間にポツンと立ってるのも不思議な気分だな。
前に歩き目を凝らすアルキメスの王宮と違って質素な感じだ無駄にキラキラしてない、まあその代わり壁画や装飾は良いもの飾ってあるみたいだ素人でもわかる
しばらく歩くと前に玉座が見え誰かが座ってる、それとその横に立っている人が1人、たぶんこの部屋に俺を含めて3人の人間しか居ないんだろうな。
顔が見える位置まで来てから立ち止まる、目の前にいる2人はかなり若いことが分かった。
俺と同じ位か2,3上くらい、座ってる方は王冠と質の高いマントを着て目をつむり肘掛けに肘をつき顎を掌に載せていてそこそこ顔立ちは良い、横にいる奴も王冠はないが似たような服を着ていて本を脇に持っている、たぶん俺があの扉を開けてからずっと感じていた視線はこいつのだろう。
10メートルほど離れたところで立ち止まり腕を組み玉座に座っている男に向かって
「で、あんたが俺を呼びつけたエリンダルとかいう王か?」
「エルダ!よい、如何にも我がエリンダル・キ・エリルドリである」
と聞く横の・・・秘書?みたいな野郎が脇差のような短い剣に手を伸ばそうとしたがそれを制すように目を開き玉座から立ち上がり、俺をジッと値踏みしているような視線が感じられる
「其方がアウキ村の奇病を治療した調合士か・・・そのような風には見えないのだがな。エルダどう思う?」
「陛下・・・報告書によりますと人相体格などの特徴からこの者で間違いないと思われますがいかがなさいましょう?」
一通り値踏みが終わったあとやっぱそういう風には見えないよな・・・と予想が当たり意見を横のやつに聞いていた。
男にしては声が高いなこいつ・・・とそいつが話しているときその恰好を見ていたが長い髪であること以外違和感はなかった。
2人はなんか話しているが王のほうは俺が思いのほか若いので困惑しているのだろうか?何でもいいのだがさっさと話し進めてくれ。
「容姿は今は重要ではありませんね、この者が本当に母上を治せるかどうかですかね。噂が本当であれば特別なポーションを飲ませていたと聞きいていますが・・・」
ジロっと俺のほうを睨む御付きだが遠回しなんだよ用件だけ言えや
「遠まわしなんだよ、さっさと用件だけ言えやボケ!」
ここに来るまでの待遇がものすごく悪かったのを思い出し帝王?権力者?舐めやがって俺はそういうハッタリ野郎は嫌いなんだ、大した力もないのに偉そうな態度しゃがって・・・。10メートル離れていたとこから近づき階段を上がり生意気な2人の目の前に仁王立ちし身下すように視線を下げた、別に俺のほうが背が高い訳ではなかったどっちかといえば俺のほうが低いくらいだった、んなことはいいか・・・。
とにかくその状態で反応を待ったんだがやっぱ横のやつが脇差で首筋にギリギリ触れてる状態で
「陛下に何という無礼を!許してはおけません!死んでください!!」
そのまま剣先を押し付けたまま下に押し斬りろうとしたんだろうけどさぁそんな鈍で斬れると思ってるの?精々赤く筋ができる程度だぞ?そんなこともわからないのか。
呆れながら何度も振り斬ってくる脇差を左手で掴み握り折る、中ほどから折られ破片が散らばるのを呆然と見るだけの秘書そいつを退かして皇帝の胸倉つかみ立ち上がらせ
「なあ・・・お前自分が王族だからって平民を見下してんじゃねぇぞ?1人じゃ何も出来ない野郎のくせによ、軍事国?お前が指揮してんじゃねぇだろ、そういうのが長けた部下がやってるだけだろ?大体人にものを頼むときに頭の一つも下げないってどいうことだ?自分たちは偉いからただの一般人を顎で使おうと思ってる訳じゃねぇだろう?誠意を見せろ誠意を!」
半分自分でも何言ってるかわからないが王族・貴族ってのはなぜか気に食わん、そこそこ良いやつも居るんだろうが大半の悪いイメージで塗り固められている。
だからなんだって話にもなるが王族も貴族も信用ならんってだけだ気にすんな
胸倉つかんだ手を放し「もういいや、話が進まないからこっちの要求言う?」
・1つ報酬は白金貨10枚(1人分じゃない)
・2つギルマスを3人ほど推薦しろ(もう1つのギルドカードのために)
・3つしばらく滞在するから1日3食おやつ付きの宿屋を用意しろ
こんな感じだな・・・・あ?以外に気が優しい?ああそうだろうなその代わり報酬はたんまり貰うつもりだがな
こうしてまあ勝手に話を進ませ3か月ほど滞在することになった。