面倒な・・
さて・・・どうしたものか?
あ?何がどうしたって?それはまぁ面倒なことが起きたから悩んでるんだが・・・。
それを説明するには2,3日前の出来事から言う必要がある・・・面倒な・・・。
今日から3日前・・・俺が雑貨屋の女を半分奇跡みたいにして生き返らせたその日からだと、2週間程経ったある日の正午。
元気になった雑貨屋の女店主にポーションを届けた後・・・あ?借金取りはどうしたって?・・・ああ1週間位前に来たよ。
人が居る時に扉を蹴り壊して入ってきたので脇に寄り壁によし掛かり話を聞いていたのだが
「おい、今日こそ親の借金全額返済してもらうぞオラァ!!」
「・・・・・・」
黙ったままの女店主を睨みなぜか俺の方にも睨み舌打ちされた、何だ?喧嘩売ってんのか?と獣人式の挨拶をした瞬間目を逸らされそれから一切こっちを見ようとしないがその分店主の方に視線が集まり
「おい!無視すんのも大概にしろよ?期限はとっくに過ぎてんだ、俺達もこんな田舎まで取り立てに来るのはもう飽き飽きしてんだ、金を返せねえって言うんなら・・・おいお前らその女取り押さえろ、後で可愛がってやるからな!!」
パチン最後に男が店主の顔を引っ叩きバランスを崩して倒れたとこに後ろの仲間が縄を持って手足胴猿轡をして担ぎ店から出て行こうとした時1秒ほど店主によく分からない目に見られ、ため息を吐き担いである男どもの前に立ち「その女の借金とやらはいくらだ?」と聞いた。
あっちから見ると20そこそこの若造が正義のヒーローの真似をしようとしている風に見えても可笑しくないが、1人だけ表情が硬い男を除き他が薄っすら笑いを浮かべ、先頭に立っていた顔右に斬り傷がある男に言われた。
「10金だお前みたいなガキが持っている額じゃないんだよ、勇者ごっこもいいけどな自分の年考えてから行動しろよなww」
「10金か・・・案外少ないな?それでも一般人から見れば大金か?」
呟き財布に手を入れ金貨を10枚数え見えるように床に投げ、金属音が鳴りそれを確認しまた腰の隙間に財布を入れる、それを前の男たちは目を追い見ていた
「10金だったな?それやるからその女置いて行け」
床を指さしながらそう言い反応を待つ、後ろのリーダー格の男の表情はさらに硬くなるが手前の4人は得物を定めた野獣の顔のなり1人が金を拾うが女は担がれたままだ
「おい、金は払っただろうそいつをそこに置いてさっさと出て行け!」
「いやすまんな俺の計算間違えだったわw10金じゃ安すぎるこの女の値段は30金だ!」
少し強い口調で催促するが俺が若いからか人数が居るからか余裕な表情をしている。
そしてまた催促しようと口を開きかけるが10金を躊躇なく出したところを見て吹っかけて来たな?
貴族かなんかと思ってるのだろう、そいつにそんな価値は無いだろうに・・・価値じゃなく借金の額か?だとしたらそんな大金こいつの親は何に使ったのだろう?
金を出し渋っている風にも見えただろうか
「早くしねぇとこの女の身ぐるみ剥ぐぞww」
そう言って担がれている店主の胸部の辺りを掴みそのまま服を引き破いた、聞き障りな音が聞こえ顔を顰める、剥がれた本人は体を捩り男の手を躱そうとしているが縛られているので・・・まぁ意味ないわな。
そしてまたため息が漏れ腰から財布を取り出そうとした時前の男が飛び掛かってきたが頭突きをして沈める、一気に不機嫌になりリーダー格の男に尋ねた
「こいつの借金は結局30か10かどっちだ?」
「じゅ・・10金だ」
「ならさっきので十分だよな?早くそいつ下ろせよ」
そいつは震えた声でと答えそう言われたので、その声でそのリーダー格の男がボーっとしている3人を退かし手足の拘束を解き気絶させた奴を引きずりそそくさと出て行った
それから床に座り込んではだけた胸元を隠すように両手で押さえている店主に近づき猿轡を外すとちょっと予想外のことを言われた。
「・・・私を犯すの?」
俺の目を真っ直ぐ見ながら・・・そんな事を言われた、正直思考が止まった、違う見方をすれば俺はこの女を”買った”とも捉えられるがまだ日本の感覚が残っていたのですぐに「そんなつもりはない」と言おうとしたが出来なかった。一瞬ホントに一瞬”2回も助けてやったのだから1回くらいしても許されのでは・・・?”と悪魔の囁きが響き彼女の白い素肌が目に写りそんな考えが浮かんできて手を伸ばそうとしたが・・・冷めた。
「人殺しのくせに何しようとしてんだ?」 「・・・なぁオマエニそんな資格あると思ってんのか?」「無いんだよ」
脳裏に響く誰かの声・・・あ、自分のか、前に伸ばした手がブラリと垂れさがり無気力・無表情で店を出る、その時少しだけ立ち止まり横を見る感じで後ろに声を掛ける。
「人殺しに抱かれるのは嫌だろう?」
薄っすら笑いを浮かべそれからは誰とも目を合わさず口も利かず宿屋に帰った、で寝た。
長々と話してしまった。
まあそんなことがあってから1週間経ったある日すっげ豪華な馬車何台と100人以上居るであろう着飾った兵士が村の入り口付近に止まって居り。
そこからちょっと位が高そうな士官が従者を連れ村長?長老?の家に入っていく、村人はそれを不思議そうに見つめていたが、その兵士が持っていた旗がエリルドリ国の国旗と気付いた者が馬車をジロジロ見ていた村人皆を家の中に引っ込ませ、外には誰も出て居ない閑散とした風景が流れた
エリルドリ皇国
アルキメス王国を挟んで西側に位置しており、国土は他の国の中でも一番広いアルキメスと同じく王が政治を治めている。軍事国家でありその軍力はアルキメスの魔法師団に匹敵する師団をいくつも所有し、それに加えエルダー国の軍とまともに相対できるだけの兵力も兼ね備えている。名産は特に無いが銃器の文化がかなり発達しており、しいて言えばそれくらいだろう。
友好国は無く戦争するとき以外は中立を崩さない
まあこんな感じだろ国の紹介は、軍事国かこんな田舎に何しに来たのだろうか?さっきからどこから見てるのかって?そりゃあ宿屋の窓からだが・・?この場所は少し丘の様に盛り上がっていて2階の窓からは村の入り口・・・雑貨屋の辺りが見渡せる。
外にはその国の兵士以外は誰も出ていない、30分ほど前に村長の家に入った士官が出て来て村長が付き添いでこっちにやって来る・・・。
ここ以外に付近には目立った建物は無い、民家はあるがいくつかは空き家だったはずだがあの村長の顔を見ればもう大体今から起こることは分かる、窓から外を眺めていたが部屋の扉がノックされ奥さんの声で
「ユウさん・・御会いしたいと仰っているお客様が・・・軍人様がお見えになっています、逃げてください・・・」
と逃げろと言われるが剣も持たず扉を開け奥さんの顔を見る、少し青ざめているがいつもと変わらずだ、階段を下り受付の主人と目が合うがその視線はすぐ2階の奥さんの方に向かい暗い表情になる。
立ち止まっていると聞き覚えのある聞き障りな声が響く
「貴様!何ボサッとしている軍人様を待たせるなどなんて身の程を弁えない愚か者だ!」
一通り罵声を浴びせた後今度は軍人にペコペコ頭を下げ取り入ろうとでもしている、まあとにかく真ん中のテーブルで腕組みをしている若い・・と言っても30は超えてる士官の前の椅子に座り用件を尋ねる。
「何の用だ?」
「貴方がユウ殿ですかな?これは・・若いとは聞いていましたが、20そこそこの若造が本当に奇病を治療出来たのだろうか?」
するとまた村長が怒鳴り散らそうとしてくるがそれを軍人が手で制し、目の前で身支度を整え会ってそうそう気に障る言葉を吐いてくる軍人だがすぐに態度を改め「済まないなつい本音が出てしまった申し訳ない」両手をテーブルに付き頭を下げた。
それを見て村長が慌てて擁護しているがこんな一般人になぜ頭を下げる?軍人なんて市民のことを奴隷か何かと思ってる奴らのことだろう?
大して力もないくせに威張り散らす、そう思ってる俺の認識が間違っているとは思いたくないのでそのまま注意しながら相手を見ていたが愛想笑いを向けられるだけだった
何か面倒なので「用件が無いのなら帰って下さい」と席を立つが入り口に立っていた兵士が両脇に立ち肩を抑えられ無理やり座らされた。
「いえいえ用件ならちゃんとありますよ皇帝エリンダル様直々の勅命が」
と知らない名前を出されたが村長の顔を見たら固まって石像っぽくなっていた。軍人は懐から紙を取り出しそれを俺の方に向け
「これは皇帝陛下の勅命であり如何なる事情があってもこれを無視・断固することは出来ない!」
と宣言した後2枚目の紙をテーブルに置きそれを見る
エリルドリ皇国で奇病とされる病が発生し拡大している、確たる治療法はまだ発見されておらず民が次々それに掛かり息絶えているところに辺境の村で奇病を完治させた者が居ると噂で聞き軍を動かしその者をどんな手を使ってでも捕らえて来い・・・物騒な内容の紙だった。
だからこの2人の兵士は肩から手を放してくれない訳ねとか思っていると軍人が紙を片づけ立ち上がり村長の方を見て
「その者を本国連れ帰りその力が有ると証明された時に約束は守ろう、捕らえろ!!」
村長はその言葉にひれ伏し号令が掛かり扉から何人もの兵士が雪崩込み八方を塞がれ関係ないであろう2人も取り押さえられ外からまた見覚えるある・・・雑貨屋の店主が拘束された状態で現れ、動こうとしたとき
「動くな!おかしな真似をするなこの者達がどうなってもいいのだな?」
3人を取り押さえられてる兵士が剣を抜きそれぞれの首元に付きつける
面倒な・・・本当に面倒な・・・
人質を取られた状態でそう思った、最近は面倒なことが多すぎる、マジでどうしようか・・・?