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治療士

ボロの小屋でポーションを作り続けているが、中々上級以上を安定して生産することが出来ない。

技術も器具も揃っているし材料も村の雑貨屋から仕入れているので下手な物は使ってないだろうと思っているのだが、今日のポーション生産結果


最下級×10・下級×36・中級×25・上級×1   以上



ため息が漏れる、本のやり方に沿って作り続けたが下級と中級が多く、下手に失敗すれば最下級などというただの青汁と変わらない物すら出来てしまった。

下級と中級を別の箱に入れ月1で雑貨屋に卸している、格安で質の良いポーションが手に入ると噂かなんかで広まり遠方からの客も多いみたいだが1度に作れる本数は50~60本なので、まとめ買いとかされるとすぐに売り切れになる。

一体幾らで売ってるのだろうか?商売の方は多分才が無いので良く分からない


何か月か前に雑貨屋の主人に増産を要求されたが「趣味の範囲を超える労働は金貰わないとな?」と言ったら、何も言わずに引き返して行った。

月1じゃなく週1になれば安定した収入になり懐も温かくなるだろうけど、そんなポーション作りに何日に掛けてられない、それなら剣術でも磨いた方がよっぽど為になる


まあそんなこんなで木箱2つを持って村の入り口に近い一軒家に着く、扉を開け中に入ろうとしたが、壁を隔てて物音といくつもの怒声が聞こえた。

木箱を一旦端っこに置き壁に耳を付け何を言ってるのか聞こうとしたが耳を当てた直後誰かがその壁に激突し女性の声がした・・・のは良いけど激突した時に周りに合った割れ物が落ち、高い音を鳴らしたので澄ましていた右耳がキーンとする



手すりに寄りかかり右耳を抑える、不用意に盗み聞きしようとしたのも悪いが誰だ?強盗か?と耳鳴りが治まってきた時乱暴に扉が開かれ「次来た時に金用意してなかったら体売って払って貰うからな!!」と

捨て台詞?を吐き5人の割と体格の良いおっさんが出て来て先頭の奴が俺の方を不審者を見るように一瞥し唾を吐き捨て「・・・帰るぞ」と呟き無言で残りの4人は付いていき建物の陰に馬が止めてありそれに乗ってどこかに走り去って行った。


外から店内を覗き見る・・・この世界でガラスが貴重な分類に入るのかどうか知らないが、散らばった欠片を大事そうにかき集めている1人の姿があった。

木箱を持ち無言で店に入り店主の後ろに立つ店内は明りが付いて無い代わりに天窓が付いており、晴れた日はそこから光を取り入れているので光源は要らないのだが、今日は曇り太陽は出ているが曇りだから薄暗い俺が入ってきたことにより影が出来る。

それにビックリして店主の女は振り向くが木箱を持っている人物に心当たりがあったので悲鳴は上がらずに済んだ、力無き声で「いらっしゃい」と聞こえカウンターに木箱を置き蓋を開け中身を確認してもらう、出来は色でわかる

下級は水色、中級は黄緑


「卸価格は銀貨25枚下級の方はマケとく2、3日後に受け取りに来る」

「待ってよ・・・聞いてたんでしょ?何で助けてくれないの?ねぇ!」


月1のやり取りを終え宿屋にボロ屋に帰ろうとしたが服を引かれ左手に抱きつかれる、悲痛な叫びが店内に響くが、乱暴に振り払い出て行く”俺には関係ない”そう無理やりにでも思い込まなければ感情に呑まれる。


速足でボロ屋まで戻り扉を開けようと手を伸ばすそうして初めて気が付いた、何も考えずここまで歩いて来たから分からなかったのだが、さっき抱きつかれた服と左手の肘から先が血塗れで小さなガラスの破片が血糊でいくつもこびり付いているのが目に入る。

さっきまで逃げることに精一杯だった頭が冷めそのまま来た道を急いで走り抜ける、1つの家の前で人だかりが出来ていた。

砂煙を上げて走って来る人物を見てそれが通れるほどの幅を開けスピードを落とさず店内に滑り込んだ、中にも人が居て手当てしている者・ただ物色している者・野次馬・なんか俺の姿を見て叫んでるやつ、が居たのだが手当てをしている・・・というか適当に包帯を巻いている男を退かし包帯を破って振り返り


「お前ら邪魔だ出てけ」

「俺達が出て行ったら治療するふりしてその人殺すつもりだろ!?犯人は現場に帰って来る・・・お前が犯人だな!」


警告するがさっきから喚いている奴が、手当てしていた男と俺の間に入り声を挙げ指さす、


「それならお前が治療しろ、ただしそこにある木箱の中身は俺が作ったポーションだそれを使わずにな」


少しイラついていたことは認めるが、いきなり殺人者も未遂者扱いされるもとても腹が立つだからそう言って諦めさせ治療をしようとしたのだが


「俺達には出来ないそんな技術は無いからな!だがアンタはある、この村に来て流行り病を治療させ村人の信用を得てから女を貪る、貴様はそれを狙っていたが彼女が抵抗しガラスのケースで殺害しようとしたが殺しきれず一旦逃げたが事が大きくなる前に治療するという名目で殺害しようとしているのだ!こんな犯罪者この村に居座られたら病で全滅しなくても女性が襲われ直に絶えてしまう、今すぐ処刑又は追放をするべきだ!!」

「殺せ!殺せ!!殺せ!!!」


この言葉に今までも俺に不信感を持っていた村人が声を挙げ、だんだん叫びが大きくなっていく事を不審に思い男を見る。

長い根も葉もない推理をしているが何様だ?早く手当てしないと、細かいガラスが血管を流れ脳に達してしまう・・・それでなくても出血多量で・・・死ぬ


どんどん大きくなっていく処刑のコール、もう村全体から聞こえてくるようにも錯覚してしまう恩を仇で返すとはこのことか、今日は感情の起伏が激しいな


「キサマ等が言いたいことは分かった、だから治療も調合も今日この時を持ってお前らに関する依頼は一部を除き一切手出ししないこいつで最後だ」


低い声でコール中でも聞こえたであろう何人かを残しそれが小さくなり止んだ、なんだ困るのか?知らんな少なくともこいつらの顔は覚えた。

また病が流行ろうとも関与しないそれだけを自分の肝に銘じ、そろそろマジでヤバイ女の治療しなければ・・・と下級のポーションが入った木箱を開け中身を全部取り出し蓋を開け容器に移す。

まだ居る野次馬共を無視し服が邪魔なので上の服を破り痛々しい素肌を晒す。

それを見ていた奴らがまた凶悪な犯罪者をどうのこうの言っているが、気が散るので死なない程度に密度の薄い気弾を右手で作り入り口に投げる、威力的には水鉄砲に吹っ飛ばされる蟻位の威力だと思うが死にはしないだろう



さて息が浅い女の体を見る、こんな時に欲情できる程俺の神経は図太くない、出来れば見たくないしたくない。

だがやらなければならない血が乾いてきていたので大きな容器に移した下級ポーションを上半身に掛け破片を取り除くために体全体を気で包む、そして一気にそれを上に振り上げ細かい破片が赤と共に宙を舞う、すかさずそれを咆哮で消し飛ばし残りのポーションを掛け集中する・・・足りない最初に掛け過ぎたもう1つの木箱の中身を出し蓋を開け特に酷い右脇腹・両手・腹に掛け久しぶりに界王拳モドキを発動させこれにより俺の負担は多くなるが放出できる気の上限が上がり速攻で回復させれるはずなのだが、傷口は閉じてもう目を開けても良い筈なのに意識も戻らない・・・・気を分けることが出来ても血は分けることは出来ない、大体血液型とかあるのかこの世界に?分からん・・・なぜ起きないこれ以上気力は上げれない、少しでもぶれたら血肉の塊になる。


気は命の源の様なものだったはずそれを注ぎ込んでいるんだもう十分なはず、だが目覚めない。

何が足りない?何が?・・・・・無い頭を必死に回転させ命を繋いでいる間に、考える考える考える・・・


あ!そこでふと思い出した

”気は生物の源であり命の根源でもある、が魔力も然りである2つが揃わなければ生命として成り立たない”ドラゴンさんの言葉


俺は”魔法は使えないが魔力を使うことは出来る”気力は白に近い黄色対して魔力は黒に近い紫のイメージで自分の体に巡っているモノを探す・・・あった!右手をそのままに左手で左横腹を刺し血が噴き出すのも構わず黒い紐を取り出すイメージで前にかざし同量を注ぎ込む

・・・・意識が遠くなるが女が目を開けるのを見て中断しカウンターに寄りかかり横腹を抑え気を巡らせるが、まぁそう簡単には治らない今まで魔力を引き出すなんてほとんどしてこなかったんだから、片目で上半身を起こし自分の体をボーっと見ている女とずっと黙ってこの光景を見ていた男が女に抱きつく、悲鳴を上げられ引っ叩かれる・・・彼氏かなんかだと思っていたのだが違ったのか?

引っ叩かれた男は涙を浮かべ子供の様に泣いた






宿屋に帰ろうと立ち上がり歩こうとしたが片腹が終わってるのでまともに歩けない、するとさっきまで泣きべそかいていた男が横に並び肩を貸してくれた。

そのまま宿屋まで付き添ってもらい、前まで着いたら礼を言われまた来た道を走って戻って行った




片足を引きずりながら扉を開け中には居るとそこそこの装備を着た冒険者数名と商人1名がロビーの席に付いていたが俺が入ってきた時に一度視線が集まり商人の方は階段を上がり部屋に入って行った。

冒険者の方は数秒見た後また仲間の方に視線を向け主人と話の続きをしようと向き直ったのだが


「すいませんお客様ちょっとお待ちを・・・ユウさん!どうしたんですかその傷は!?」」

「俺の部屋にある緑のガラス瓶を持って来てくれ」


と断りを入れてからこっちに走ってきた、わき腹から血を流しているのを見てアタフタするが、言葉を聞いて2階へ走って行き慌ただしく足音を立てて降りて来た。

その持ってきたビーカーの様な瓶の液体を半分飲みもう半分を傷口に掛ける・・・イッテェ!滲みる!その上苦い!が効果は絶大だ、脇腹傷跡は消え気も魔力も回復してきた・・・まぁ万能薬モドキみたいなものだ実際不治の病とかに使っていないからどうとも言えんが、前に主人の奥さんに飲ませた物と同じ濃度なはず・・・まあんなことはどうでもいいか。



10分もしないうちに血が止まり裂けた肉がくっ付き貧血も治る・・・万が一のために作ってあったが役立ってよかった。

ん?上級以上は作れないんじゃなかったっけ?だと?ああ・・・本の通りには作れないな何故か知らんがだが、自己流なら普通に作れるぞ?

ただ上級以上しか作れないし量が少ないのであまりやる気が起きなかっただけだ、さてと立ち上がり傷が塞がったのを確認し1度冒険者の方を見ると俺の方を見て呆然としていた、1人が商人の入って行った部屋の扉を叩き呼び出しているし残りはこっちに近づいてきている。

主人は客を待たせたことに対する文句だろうと思ったのか


「申し訳ありません!ただいまご注文をおき・き・・いたし・・?」


とカウンターに戻り接客を再開させるがそのまま冒険者たちは俺の前まで来て椅子に腰かけた、そのすぐ後扉を何度もたたいていた男と商人が降りて来て気持ちの悪い笑みを浮かばせながら正面の席に腰かけすぐ話しかけて来た


「すいませんがこの村の調合士様でいらっしゃいますでしょうか?私はアルキメス商人連合のドル・ユーロと申します、よろしければお名前のお伺いししたいのですがよろしいでしょうか?」

「ユウと言いますが、この村の調合士ではなただく一時的に滞在しているだけの旅人です」


とどうでもいい肩書を翳し名前を聞いて来た、一応とこの村ともう関係は無いことを主張する、まぁ意味無いだろうけど


「フム・・・聞いていた話と少し違いますね、それと先ほどユウ様は酷いお怪我をされていた風に見えましたが部下から聞きましたところ不思議な液体を飲んだとこ瞬く間に傷が治ったと言ってたのですが本当ですかな?」


いかにも不思議がってますよ~って顔で聞いてくるから嘘付いても無駄だろうな


「はい、そうですが何か?」

「いえ、噂でとても安く高品質なポーションを取り扱っている雑貨屋がありそれが毎月1度だけしか取り扱っていないということでしたので勿体無いと思いまして、もしユウ様が噂の調合士であるならば私と一儲け出来ないかとこうしてご相談に伺った次第でございます」


と相手が言うまで待つ・・・気持ち悪い度が上がり下賤の様な笑みに見えた


「申し訳ないですが別に商売をしたい訳では無いのでせっかくですがお断りさせていただきます」

「そうですか・・残念ですね貴方とならいい商売相手になったでしょうに」


と席を立ち階段を上がろうするがと呟き周りに居た冒険者が立ち上がり取り囲まれる・・・ワンパターンだないつも


「こっちも商売ですので金の成る木を見過ごす訳にも往かないんです、少々手荒になりますが儲けを出すためには仕方ない手段ですよ!やれ!!」



狭い店内で野郎に囲まれるがこれが女でもイラつきは変わんないだろうな・・・傷を負わせない様に刃物は持ってないようだが、その程度で俺を倒せるとでも?


「あ!・・・お客さんやめた方がいいですよ?」


と主人が忠告するそれを聞くか聞かないか位で1人が鈍器を振り下ろしてきたがそれを頭突きで砕き、他の奴が持っている武器も両手でひん曲げ5人とも丸腰になる。

鋼鉄製の武器をひん曲げられその表情は「え?」って感じになり1歩近づくと後ずさり、また近づくと後ずさりの繰り返しで全く骨が無い


「おい?俺を捕まえるんだろ、ならさっさと死ぬ気で来いよ?」


下に落ちている武器の柄を纏め雑巾を絞るように握り捻じ切り床にばらす「お前らの首とこの鋼鉄の棒どっちが硬いかな?」と脅しをかけると蟻の子散らすように商人を置いて出て行く、1人残された商人も死神にでも睨み付けられたかのように青ざめ硬直して滝の様に汗を流し手居たが1歩踏み出すと悲鳴を上げながら走り去って行った




それからまたしばらく静かに過ごすことが出来たが・・・。



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