やっぱ弱い
司会者が何やら紹介をしていたのを壁際で聞き流す・・・上級調理士ねぇ、天才って言われてるところからするに凄いんだろうけど、うーん人の基準は分からない
数人のメイドがさっき我儘女が作ったフルコースを少しずつ皿に取って配っていく。
評判はまあまあみたいだ、最後だから貴族共の胃袋も一杯になっているだろうから箸はあまり進んでいがな
王族やつらも2口くらい摘み皿を下げさせているそれを見て眉を顰める、残すなや・・・勿体無いフルコースが半分くらい残された状態で司会者が再び
「素晴らしい見た目とそれに違わぬ美味さが感じられましたね、それでは審査員の方の感想と陛下より次期の王宮料理長のご指名を承りたいと思います」
何人かの評論家のような奴が感想を述べ壁際で頭を垂れている料理人達は自分に王のご指名を祈っている、そろそろか
「この度のガルイ・リントの後見人を指名いたす、見た目味共にカリン・リント嬢と互角を競った現王宮料理副長フンドル殿に後を任せようと思うが誰か異論のある者は居るか?」
誰も口を挟まない、司会が「それでは・・・」と締めくくろうとした時、腕組みを解き声を上げる一斉に視線が集まる
「そのご指名ちょっと待った、出来ればそれを言い終わる前に俺の料理を食べて貰いたいんだが?ダメか?」
国王に話しかける態度ではないが別にお前の部下でも何でもないんだ別にいいだろう
白い鎧の奴から「無礼者が陛下に何たる口の利き方を・・・今すぐそいつを捕らえろ!!」どこに隠れていたか知らないが10人を超える白騎士に囲まれる、「ただ飯食わせるだけだろうが、そんなにカッカすんじゃねぇよ。別にアンタラの王に食わせる訳では無いしな」と美女に囲まれている勇者の方を向き指さし、指でこっち来いとジェスチャーした
「貴様!勇者殿に何をする気だ!!構わんその仮面の男を斬れ!」と周囲を下がらせ長剣を抜き今にも斬りかからんとしているところに勇者の声が聞こえ、取り巻きをかき分け白騎士のもとに駆け寄ってきた
金ピカで守備力よりも見た目の派手さを重視している衣装と軽鎧を着て腰には聖剣?を下げている、白騎士が立ち塞がり「我らにお任せを」とか「貴方様に何かあったら困ります」とか「お下がりください」とか言われるているが
「大丈夫自分の身くらいは守れるようになったつもりです、でもそれではダメなんですこの世界を救うためには貴方達にいつまでも甘えている訳にはいかないんです、それに僕も興味があります、どうして僕が勇者だって知ってるのか、なぜわざわざ指名してきたのか理由を知りたい、ですからしばらく話をさせてくださいお願いします」
と白騎士に頭を下げ「危険だと思ったらすぐ離れてください我等がすぐお助け致しますので」と敬礼し数歩下がったとこで臨戦体制で見守っている
それを見て笑いを吹き出してしまった、白騎士がこっちを睨む、おっと怖い怖い怒らせないようにしないとなぁ
勇者・・・イケメンがこちらに向き直り「さて僕を呼んだのはどういったご用件ですかね?」腰に下げてある剣の柄に手をかけいつでも抜ける態勢で訪ねてきた、「ああちょっと飯食ってみないか?結構いい出来になったんだ」と手押し車に乗っけていた銀で出来た半球状の蓋を持ち上げ茶色の球を見せる、食べたことない者にとっては泥団子にも見えるようで後ろの・・・俺から見て正面の取り巻きの女共が「そんなもの勇者様に食べさすおつもり!?下郎が!誰か!あの者を今すぐ斬り殺しなさい!!」などと喚き散らしているが目の前の青年はその球体から目を離さずずっと見つめている
「ほらよ」と騎士には見えないであろうスピードでその物体を投げ、受け取った手から湯気が上がり食欲を掻き立てる味噌の香りが薄く広がる、その”焼きおにぎり”に似せた物を勇者は仮面の言葉を信じ毒などが入っていないと確信し一口かじる、すると懐かしい故郷の味が思い出され自然に涙が落ちる、周りで見ている者にはなぜ勇者が涙を流しているのか分からない、ゆっくり顎を動かし味わうがすでに満腹であるはずなのに大人の握り拳1つ分のおにぎりを周りの目を気にせず頬張り片膝をついたそのまま
「リュウヤちょっと来てくれ!!!」と大声でもう一人の勇者に向け呼びかけた、その呼びかけに応じ髪が赤く染まったラフな格好のヤンキーが席に取り巻きを残しイケメンの後ろに姿を見せた
「なんだ?ユウマ・・・おいどうした!この野郎に何された!?」蹲っているイケメンを見るや否や殺気をダダ漏れにして叫び俺を睨み庇う様に間に入る、チラチラと後ろを伺い声を掛ける。周りには緊張が走る「おいテメェこいつに何しやがった?返答次第でその面叩き割るぞコラァ!!」怒鳴り声をあげ肩を回す、蹲っていたイケメンが立ち上げりヤンキーの肩を叩く「リュウヤ落ち着け、僕は大丈夫だ」
やっと揃ったか「いやねお前に食べてほしい料理があってな試しに、やきにぎりをやったら涙流して食ってくれたのでもう冷めたが2人分作ったから食ってみ」と後ろを向き両手で銀の蓋を開け丼を見せる
2人共大きく目を見開き「え、、マジ?」と言葉を溢すと同時に腹の虫がなった、近くのテーブルから椅子を持って来てその手押し車の横に並べ座り微妙に暖かい味噌汁を一気に仰ぎフォークでかつ丼を息をするのも忘れる勢いで食べ始めた、ホントこいつ等何日振りの飯だよ?と思うくらい・・・あの我儘女と大して変わらないスピードで食べ進め、飾りで添えられた野草まできれいに食べたそして
「お代わり!」「もう一杯寄こせ!」と同時に器を置き叫ぶそれを見てニヤリと笑う「残念ながら1杯分しか用意してないんだ、すまんな」と謝罪した、全くそんなことは思ってないがポカンとしてるやつらをほっとき食器を片づけるがイケメン君が「いやもう一杯だけ・・!多少時間が掛かっても構わない頼む!!」と言われるが「すまんな」とだけ返す。
やっと故郷の味に近い料理を味わうがもう出来ないと言われた奴の次取る方法はなんだろうか?
今俺はこいつ等に背を向けている状態だ何をしてくるかな
「リュウヤやめろ聖剣をそんなことのために使うな!!」後ろでイケメンがヤンキーを制止させるような叫び声を上げると同時に首元にヒンヤリした鋭利な物が突き付けられた、ドスの利いた声で「さっさと作らねぇとテメェの首刎ね飛ばすぞコラァ!!」との脅迫、テーブル席の方で騒めきとヒステリックな声が上がったがこいつは気にしていないようだ
聖剣か・・・いいよなお前らは勇者出来てて、首に当てられた刀身を素手で掴む一応強化はしてあるのだがちょっと滑らすだけで皮が切れて血が滴る、「これが聖剣か・・確かにその名に見合うだけの名器ではあるようだが使い手が未熟だな」ヤンキーの手からするりと抜き取り根元の方を持ち掲げ数歩、下がり刀身の部分を光で照らし微笑む所々細かいが刃こぼれしている力任せに振っている証拠だ、最初から最強武器だと自分に斬れないモノは無いとか思ってしまい、相性が悪い敵でもそのまま力任せに叩き切り結果このように細かいながらも刃こぼれが出来る、それでも何百年と形を保っていられるのは自己修復機能でも付いているのだろうか?
一通り見終わり血で汚れた刀身を近くにあったテーブルクロスで拭い持ち主に投げた、ヤンキーは慌てて柄を掴みホッとしている、そういえば聖剣とかって認められた者にしか触ることが出来ないとかいう設定無いのか?拭く時に柄を持ってしまったが特に何ともないな・・・。左手を見てもいつもと変わりない
「ああ 飯食わしてやってもいいが条件がある」その言葉で視線をずらしていた2人が振り向き顔を引きつらせるヤンキーが「ああん?いくら何でもこれは渡せねえぞ!」と聖剣を後ろに隠したイケメンの方も取られまいと柄と鞘をガッシリ掴んでいるそれを見て苦笑し「頼まれたって要らねえよ」と返し
目を覆ってる我儘女に声を掛け傍に来させる「え、こんな格好で勇者様のお目を汚す訳には・・」とかなんとか言ってるが気にせず引っ張る
「こいつの父親がお前ら勇者の身勝手で投獄されてるんだ、でそれの開放と再度料理長に任命、これが条件だ。無理なら死ぬまで我慢するんだなァ!!フゥファハハハハハハァ!ゲッホ!」
言い終わった後ふざけた笑い方をし止められなくなり腹を抱え咳き込みようやく止まった
2人を見ると小声で話し合いをしているようで話の内容は聞こえてこない、周囲の白騎士が固唾をのみ見守っている中2人共頷き王の方を見たそしてイケメンの方が近づいて来て「僕らだけでは決めかねれない、陛下にお伺いを立ててくる、君には済まないことをした許してくれ」
王に相談してくる事を俺に言い、横のカリンに頭を下げるが言われた方はオドオドして何も言い返せないでいる。
マントを翻し玉座の方に歩いて行き一段下がったところで跪き恭しく料理長の件を話そうとした時
「お待ちください陛下、今勇者様の声に耳を傾けてはなりませぬ。この者は王宮で禁止されている生魚を勇者様の食事に混入させたことを今日、調理場に出入りしていた料理人たちが証言しておりますそれに加えあの御二方はその仮面の者に洗脳術を受けていると考えられます。ですから勇者様を惑わせている罪人の処罰を私くしめにお任せいただきとう存じます」
重鎮席からガッリツが出て来て洗脳だの罪人だの勝手なことを抜かし、その意見に反論したヤンキー達も王の命令で白騎士に取り押さえられ床に伏している
「うむ、そちに任せよう ここに命ずるあの仮面の者を処分せよ」 「は!ご命令承りました!者どもその罪人を殺せ」王がガッリツに指示しそのガッリツがどこに隠れていたのか黒騎士と黒マントを呼び
「ご来席中の高貴な方々様、申し訳ございません、ふと届き者処罰いたしますので我等黒騎士の後ろまでお下がりくださるよう申し上げます、障壁を展開させますのでご安心くださいすぐ片づけます」
騒めきが大きくなり最後の言葉を聞いてか静まる、障壁が貼られ外側からの声はほぼ聞こえなくなり真ん中に広い空間ができ1人1人がBランクランカー相当の実力を持った黒騎士と黒マントが円を組む様に周りを囲みこないだと同じように重音で詠唱が聞こえる「キャーー離して!」悲鳴が聞こえ横にカリンが居ないことに気付き狭い視界で懸命に探すがその隙にあの光の蔦によって体の自由が利かなくなってしまう
「この女も同罪だ!、さっさと従っておれば死ななくても済んだものを、これも殺せ!!」
聞き障りな叫び声が聞こえ、目を向けるが頭が一瞬で真っ白になり意識が飛びかける
「お嬢様ーー!!」リイが声も聞こえる
物の様に床に叩きつけられ剣がカリンの腹に血しぶきと共に突き立てられ、その顔は痛みと絶望に染まっていた
・・・俺は女の一人も守れないのか?なあ・・・そんなに弱っちのか、ざけんなよ・・んな訳無いだろうが!!怒りに任せ気を全開で放出させる・・・吸収出来るもんならやってみろ!!
気の黄と血の赤が混ざった色のオーラが波打って立ち上がり光の蔦がその色に染まり亀裂が入り消滅した
俺を誰だと思っていやがる!ドラゴンさんと親方の弟子にして勇者だぞ!成り損ないだろうが関係ない!
ここで何も出来なかったらホントに成り損ないになっちまうんだよ!!
「貴様等ァ許ネエゾ!!ゴミ共ガァァァァ!!!」理性を吹っ飛ばし雄叫びを上げ咆哮し
二度目の剣を突き立てようと薄汚い笑みを浮かべる騎士を纏めて障壁まで吹っ飛ばし、ゴシャっと鈍い音を上げそいつらがまた立ち上げることは無かった、すぐに血だまりを作ってるカリンに近づき治療しようとしたが理性を吹っ飛ばしたせいで気の制御が安定せず、・・・殺してしまうと自分の手を見てすぐにリイの姿を探す。
黒マント共に取り押さえられているのを睨み「リイ左に避けろ!!」と怒声を上げ左手に力を集中させ瞬時にマント共を転ばせて左に飛んだのを確認しその手を前に押し出す様に気功波を放つ、突然の閃光にマント共は障壁を展開させるがそれもろとも消し飛ばす
リイにカリンを預け、ガッリツとまだ剣を向けている黒騎士に向け不気味な笑い声を上げながらゆっくり歩く飛び掛かって来る騎士どもはオーラに触れるだけでもがき苦しみ息絶えて逝った。次第に多重障壁外部のガッリツの顔が恐怖に染まっているのが分かる位置まで近づいた、中に居た騎士は全員死んだんだから当然か?
口を大きく開け喚いているがこの壁のせいで何言ってるかは聞こえない透明な壁障壁に渾身の力で殴るが少しひびが入っただけですぐ修復されるそれを見て嘲笑う顔が1つ、少し離れ両手を肩の位置に伸ばしたまま上げ腰を落とし右足を半歩下げると今度は右脇腹に両手でボールを抱えるような構えに移し、さっきマント共を消し去った時この壁には傷一つ付かなかったのを思い出し抑えていたオーラを再び全開にし両手に気を集中させ光が強くなってき目の前の障壁を睨み付ける
最大に気が溜まったところで腰は下ろした状態で手の平の付け根と付け根を付けたまま前に押し出す「ダリャァ!!」と叫び声を上げ全力の気功波を放つ、多重障壁と眩い閃光がぶつかり壁の方に亀裂が入っていく数秒後その亀裂は障壁全体に広がり砕け散った
ガッリツの顔はもう恐怖に染まっており「奴らを呼べ!!早く!!」と近くの黒マントに命令しそいつは近い方の扉に走っていき開けようとしたら爆音と共に扉が破壊されマントは瓦礫に押し潰されていた即死していた
粉塵が舞う中 大剣と大槌を持った黒騎士が2人それに続き双剣・槍・斧を持った1名性別の分からない奴が姿を現し大剣を肩に担いでいる野郎が「呼びましたい?ガッリツの旦那、おやこいつはスゲーな」と倒れている黒騎士を見た後目が合った気がした
あの武器には見覚えがあるな・・・というか7本中5本向こうに渡っていたなと現状どうでもいいことだったので気にも留めていなかったがこういう状況になるとため息が出るな、苦労して障壁ぶち壊したのに新手とは・・・。
ガッリツが安心した表情でその数人に命令を出そうとしたが動こうとしない「おい!遅いではないさっさとこの者を始末しろ見合った額は出す」双剣の女が「もうあたし等アンタの命令など聞かないことにしたからもうお前は用済みだ」と目にも止まらないスピードでガッリツの懐に潜りこみ瞬きをする間もなく細切れになった
「あーあフルの奴もっと搾り取ってからも良かっただろうに惜しいことしたな?まあ俺達もアイツの態度は気に食わなかったからスッキリしたのも事実だけどな」斧を担ぐ男とその言葉に細身で長身のやつが槍を片手に頷く
「なんだいあの仮面男一人にこのザマだとは黒騎士団も聞いて呆れるね」人間だった肉片をグチャグチャと踏みつけながらフルと言われた双剣の女が俺の方を見たがその姿が霞み、反射で後ろに飛んだが服の腹部分と仮面が斬り飛ばされ軽い脳震盪が起きた
「へぇ~今の避けれるんだ!アンタ凄いよ今までみんなこれで細切れになったのに!!」見破られたのがそんなに嬉しいのかピョンピョン跳ねながら仲間に向かって「凄い!すごーい!」言いふらしている
あぶねぇ・・・さっきの気功波でほぼ力使い果たしたから回復にはしばらく掛かる、にしても何だこいつ等?俺の武器を無駄なく使いこなしているのか?さっきの女がそうだ、俺でさえ反応できるか出来ないかのスピードをまだ余裕ありありで繰り出してきた、確かに双剣には俊敏上昇の特殊能力を付けたが・・。
だがあの調子だとまだスキルは使ってない素の状態の可能性が高い。
他の奴もあれに準する能力だとしても状況は悪すぎる・・・ほぼ死ぬことは確定する、幸いこいつらが入ってきた時に別の扉からほとんど貴族やらは出て行ったしリイが出て行ったのも確認した、今ここに居るのは数名の黒騎士と勇者を守っている白騎士の3人、この強い奴等5人と俺だけ。
仮に勇者と白黒騎士をこっちに入れてもほぼ役に立たない、力の差がありすぎるかと言って1人で5人は絶望しかない、弱いそうな奴から叩くしか・・・。
弱い非戦闘員に持たせて一騎当千になるのに手練れに使いこなされたら一騎当万かそれ以上だ、逃げようか?だがあっちは完全に戦闘モードだ・・・無理だな、必死に無い頭をひねりいい案を出そうとしてるのだが、ジャンプに飽きた奴が「で、どうやって遊ぼう結構アイツ強いと思うよ?でもみんなでやったらすぐ壊れちゃいそうだねwwえー1人ずつ?また私の番回って来ないじゃんズルイズルイ私も殺したいーー」
・・・おい、聞こえとるんだが?みんなでやったら壊れる?上等だ!代わりにぶっ潰してやる!!
壁際に俺の押し車が倒れているのが見えた、ポットに気水を入れていたはず漏れていなければいいが・・・と歩き出す向こうではまだどうやって勝負するか言い争っている声が聞こえる机を立てて棚の戸を開け確認する、倒れてはいるがまだ中身が入ってるポットを出し中身を一気飲みし体に力が戻っていく、トンと音を鳴らしポットを台に置き奴らの方を向く
「あ、もうちょっと待っててね今戦う順番決めて・・「全員で掛かって来いよ!まとめて叩き潰してやる!!」
全部言い終わる前にこっちの言いたいこと言い両肩を回し柔軟をし始めるそして一通り終わって「さあやろうか?」とモドキ4を使い体が悲鳴を上げるのも気に留めず構えた
「そっちの方が速そうだな、気抜くなよお前らこいつ俺達並みの化け物だぞ!」
大剣担いだ野郎が臨戦態勢に入り大剣を構える、他のメンツは文句を言いながらも大剣使いの楽しそうな顔を見て諦めそれぞれ構えだし決戦の火ぶたが切って落とされた