王宮へ2
料理をせがむ女に簡単手抜き品を振る舞おうとしたが、この部屋には釜戸が無いので火は使えない火が使えないとなると出せる品数も質も落ちてしまう、それでもいいかと聞いたが「さっさと作れ!」だとホント我儘だ
鞄から野草と干し肉を取り出し鍋に切って放り込み気水を入れ沸騰させる、そして味噌を溶かし入れトン汁モドキを作り、冷めたご飯に手をかざし湯気が立つまで気を籠め器に移す、大きめに切った干し肉を気水で膨らませ元大きさまで戻し小さい鉄板の上に乗せ気を通し、しっかり焼くそして漬物を切り小皿に盛りそれぞれをテーブルに置く
火は使ってねえよ、気は使ったがな気水を水代わりに使うことで素材のうまみを引き出し尚且つ熱伝導のように気を通した時熱を発生させることが出来て・・・電子レンジの代わりになる。
ただ加減が難しく下手なことしたら爆発する、なので現状俺は料理よりも鍛冶と調合の方が楽で楽しいと感じている
まあんなことはいいか・・・。
目を輝かせる我儘女とそれを見守る少女・・・おい涎拭け、そんなに美味そうに見えるのだろうか?気分的には悪くないが一流シェフとかじゃないただの素人が作ってこんな反応されると気まずい
一瞬俺を見て食べていい?みたいな顔をした後フォークを使いがっつき始めた・・・。
それはもうどっかのアニメの主人公ように見てて唖然となるような食べっぷり、こいつ何日飯食ってなかったんだろうか?ナイフ使えよ・・・。
良いとこのお嬢様がこんなはしたないことしてもいいのだろうか・・・・。
そうこうしている中に米一粒残さず食べ終わっていた、その時間わずか1分ちょっと・・・。
成人男性でももう少し掛かるわ!!その後ご飯2杯トン汁鍋ごと食べつくし「ふう~まだ足りないけど今はこれでいいわ」との感想、どんだけ喰うねん!女ってこんな食べるのか?大食いとかじゃあるまいしと心境呆れ果て可愛らしい笑顔に苦笑いで返した
道具を片付け「俺はどうすればいい」とお腹をさすってる女に聞く「兵士が呼びに来たら私と一緒に大調理部屋に来てくれればいいわ、一人くらい多くても問題ないでしょうから」その答えを聞いてすぐに兵士の声が廊下から聞こえた、扉をノックした音が聞こえた後「カリン料理長様お時間です、別室にご案内いたしますので速やかに御出で下さい」と澄んだ声で呼ばれ「分かりましたすぐ出ます」と答え俺の袖を掴み引っ張った。廊下で待っていた兵士は中から奇妙な服装と仮面を被った男が出てたことにギョっとしたようだがそれもすぐ消え職務を遂行する男の顔に戻った
「それではご案内いたしますが、くれぐれも変な真似はなさらぬようお願いしたします」と頭を下げ先導した
しばらく歩き階を2つ上ったところで大扉の部屋に通され俺は珍しく目を見開き立ち止まった。
体育館よりまだ広い部屋で何十人もの料理人が忙しなく作業をしており、その目は真剣であり料理に人生を捧げた異世界の匠たちが作り上げた作品に目を奪われたのだ。
さっき料理は好きじゃないみたいなこと言った気がするがそんなことは無い、鍛冶と調合に比べれば面白みがないと思っていただけだ、剣ならばその時の感情打った時の力加減一つで同じものを作った気でいても切れ味が全く違ったことがあった。
さらに気を通しならが打った時も同じく100作ったら同じものは出来ず剣に個性というものがあるのならば、次打った時はどんな奴になるのか1つ1つ楽しみにしながら集中することができ失敗した時ですら次はこうしよう!今のでダメならこっちはどうだろう?と大して落ち込まず続けることが出来た
調合は楽しいとかいうよりも簡単だったの一言来尽きる、1つ出来ないことがあっても遠回りし原因を突き止めれば割とすぐに出来た、だが料理だけは好きになれなかったし、得意でもなかった。
その理由が今やっとわかった、心を込めていなかった目の前に居る料理人たちは己の技術を全力で1つの作品に魂を込め死力を尽くしているそう食べる人間のために、さっき我儘女の料理を作った時初めて本気で作りたいと思ったのではないだろうか、俺には誰かに美味い物を食べさせてやるという気持ちが足りなかった、そんな面倒なことしなくても出来ていたのだから・・・。
前後の兵士が急に止まった俺に訝しげな視線を送っているのが分かったが、無視してその人達を見ていた
でも前から「何見てるの?早くいくよ」という声が聞こえ指さしている方向に顔を移したが、げェ、あんな目立つとこでやんなきゃいけねえのかよ・・・。
周りより1段上がったところに大きなテーブルがありその上に見たこともない多分高級な食材が置いてあった、温度管理大丈夫なのか?
走ってそのテーブルの前でジャンプしている我儘女を見て頭を抱えたくなる衝動に駆られた、というか抱えた
一段って階段の高さじゃないからな!体育館にある壇上・・・まではいかないが俺の腰までの高さで段が出来ていて端っこに3段ほどの階段があり、作業台の前でチビが飛び跳ねている
別にこんないい施設は要らないのだが・・・。
ひとまず下ごしらえだけすることにした、鞄を下ろし野草と魔獣の肉・醤油味噌を出すその他の調味料や添え物は使わせてもらおう、さて何を作ろうか・・・普通に野草炒めでもいいのだが、何品作ろうか・・
ご飯と味噌汁と漬物は固定でどうしよう。
俺が今一番食べたいものは・・・かつ丼か、かつ丼でも作るか
肉のことはあるし、醤油を使う場面が無いが・・・刺身でも作ればいいか
さっき心を込めてとか言ったが野郎が食べるものに心も何も込めたくねぇ・・・。
肉を厚く切り衣をつけ上げる始めは高温で衣がカラッと揚がったら低温の油でゆっくり火を通す、刺身は鮮度が命なので後でしようかとも思ったが、そういえばこの世界の魚など見たこともなかったので生で食えるのはどれだ?と我儘に聞くと「そんなこと知らないわよ!生で食べるなんて野蛮な種族がする方法よ!!」と返してきた、一応食えるんだな?ならば全部捌き身を一口大に切り小瓶に醤油と薬味草も入れ漬ける。横で何か騒いでいるが無視し冷蔵庫・・・ってあるのだろうか?と聞いたら冷法庫なるものがあると言われそこに入れた、カツが揚がったのでそのまま切らずに野草をちぎって敷いた皿に盛り、肉汁と醤油味噌を適当に混ぜ合わせたタレを小鉢に入れて添え銀の蓋を被せる、時間になったら冷法庫の漬けを小鉢に入れて合わせて出せばいい。
それを2人前準備した、材料は残っているが面倒だ、味で満足させればいいだろ?なら1食ずつで十分だろ
作業が終わり近くにあった椅子に座る、すると肩を叩かれたその方向に顔を向けると膨れ面した我儘女が立っていた、ああこれは食わせろと・・・言うのかと思ったが「王族のパーティーではに生魚は禁止されてるの貴方捕まっちやうの!!他のにして!生魚はダメ!!」強い口調で言って来るが王に食わせる気など毛頭ない日本と言ったら寿司だろ?残念ながら酢が探してもなく作ろうとしたがよくわからない液体が出来てしまったので諦めたんだ、刺身が嫌いな奴なんてそうは居ない、何ならカツを先食べて海鮮丼にもできる、鮮度は良いんだ腹は壊さんだろう。
ふと他の料理人の姿が見えないこと気が付いた、見えないというより出入りしている者が多くそう思っただけか?
「そういえば今日は何のパーティーなんだ?」今更頭に浮かんだ疑問を隣の膨れ面に聞いた、キョトンとした表情になり「今日は・・・私の父ガルイが王宮料理長の座を退くにあたり新しい料理長を決めるため陛下が国中の一流料理人達を集め開かれた・・大会みたいなものよ。父上はこの国一番の料理人誰が相手でも負けない、けど・・・」だんだんと表情が暗くなり最後の方は力なく俯くだけだった
「勇者の食いたい料理は作れず投獄されたんだったな」発した言葉によって勢いよく顔が上げられ「なんでそれを知ってるの?」って顔を近づけ聞いてきたが適当に返しておいた、腑に落ちないって顔のままだったが彼女も調理を始めていた。
・・・あぁ忘れてた、こいつただの我儘お嬢様じゃなく一応料理人だったな親の役職の代行が出来る腕前の
何を作っているのか覗いてみたが少なくても俺の知ってる料理じゃなくこの世界の調理法のようだ、やっぱ本職には勝てねぇは目にも止まらない速さで捌き盛り付けも、俺みたいにただ乗せただけの見た目じゃなく芸術作品を見ているようで・・・とても綺麗だった。
ふぅ~とため息を吐き王族用の豪勢なフルコースが完成した様だ、それと同時に兵士が呼びに来て謁見の間に台車に料理を乗せ運んで行った。俺は自分で運ぶ
居る居る男女問わず煌びやかな衣装を身に纏い高い笑い声を上げている貴族共が、さてと勇者は・・・
八方美人とはこのことか美女に囲まれ楽しそうに世間話でもしているのだろか?ドラゴンさんに喧嘩を売り人を置き去りにして逃げた腰抜けが!
ん?あいつは・・・確かライバンだったか?そういえば近衛隊長とか言ってたよな、黒騎士団はアイツの管轄なのか?もしそうだとしたらその首刎ね飛ばしてくれる
奥の王座に王と王妃らしき人物が座っておりその周りには白き鎧を着た騎士が数名配置されている
司会役であろうおっさんが立ち上がり
「では、この度の最後の出場者である前料理長ガルイ・リント様の娘であるカリン・リント様です、弱冠16という若さで上級調理士に成った大天才、父の不名誉を払拭するためこの度ご参加なされました、では皆さまどうぞご賞味ください」




