代償と希望
少し胸糞かもしれません、人によっては。
ちょっとした恐怖体験をした次の日からは宿屋を変え引きこもった、1週間くらい
今日もトイレ以外この部屋から出ていない 食事?特に動かなければ日に1食で足りるだろう 風呂?女ならともかくこのご時世野郎なら3~4日に一回くらいだぞ、汗もかいてないしカーテンは閉じ暗い部屋に1人もう1日中暗いから昼なのか夜なのかもわからなくなりかなり不規則な生活態度です。
ベットでゴロゴロ、ずっと動き回るのとずっと動かないのとどっちが苦にならないと言われれば・・どっちかな・・・動かない方かな?・・・ムニュ・・・・
手を横にずらし毛布を掴もうとしたら変な物掴んでしまった・・・枕じゃないな、バッと体を起こし窓を開ける、差し込む光が目を眩ませる
「まぶ・・・し」
と、眩んでる場合ではないすぐに部屋の中に視線を戻し変な物の正体を・・・・。
「眩しいです閉めてくださいませんか?」
おい、なんで、どこから入った? 食い逃げ女の御付きが一部素肌を出し毛布に包まって目を細めている
「おい、どこから」入った?と言おうといたら毛布を舞い上がらせ一瞬で目の前に飛び掛かってきナイフを俺の首筋に当てながら「この1週間ずっと監視しておりました、そして貴方の怯えようは尋常ではありません。お嬢様の探していた調理士は貴方なのですね?さあ一緒に来て貰いましょうか、抵抗はしない方がいいですちょっと手荒でも連れてこいとのご命令なので」
整った顔でろくでもないこと言ってるな、俺に手荒な真似は許されてるみたいだが・・・お前にはどうなんだろうな
首に押し付けられたナイフをそのまま前に1歩踏み出す、一瞬ナイフの力が弱まるがすぐに力が込まれ液体が滴がしたたるが、そのまま何も考えないようにしその御付きの・・・いや少女の無防備な細い首に手を伸ばす、ビクっと震えたみたいだが構わず両手でゆっくり絞める。
危険だと感じたのか俺の首に押し付けていたナイフをそのまま横に裂こうとしたようだが首を強化していたので薄皮も切れなかった、そのことに驚いた少女は俺の体の至る所にナイフを突き刺そうと突き立てるが何回かやってる間に根元から折れ床に刺さった。
そこでふと笑みが漏れてしまった、だがどこからか取り出したのか知らないが同じ形のナイフを両手に持っていた、ウザったいから首から右手を離し手を握り潰す、そのまま床に叩きつけ起き上がれない様に上に乗る
今気づいたのだがこいつほぼ裸で、動きやすいようにか下着みたいなのしか着てなかった、そこで邪なま考えが浮かぶ。
視点を体に落とす・・白く触り心地のいい肌に華奢な体で体格は平均顔も悪くない、日本だとこんな状況にもならなかっただろう、このまま殺してしまうのも勿体ない、もうほぼ無抵抗な少女、誰かの命令は失敗に終わりこれからどうなるか分かってるような表情
こういう時ってされるくらいなら殺せって言うのかと思ってたけど案外大人しいな、まあ生きていてもらっても困るので殺してから使わせてもらおうかな。
床に刺さっていたナイフの刀身を持ち首に突き刺そうとしたとき部屋の扉がこじ開けられ、そこには高級な服装を着た今一番会いたくない女が立っていた。
「大丈夫!リイ!助けに来・・た・・わ」
誰かの名前を呼びながら騒音と共に入ってきた女意気揚々と助けに来たとか言ったがそのまま動かなかった、どうやって扉を壊したのだろうかなんか手に持っている訳でも無いのに・・・。
「死になくなければそこで見ていろ自分の愚かさが招いた結果を」
「お嬢様!お逃げ下さいこいつは危険です、何の妖気を纏って・・アガ゛」
女に咆哮を当て、余計なことを喋られない様少女の首に力を籠める、急に息が出来なくなり泡吹きもがく少女を見て気分が高揚してきた俺はオカシイカ?
女のくせに俺に盾突いた愚か者なのだがこんな反応見せるなら生かしておいてもいいか?「もっと苦しめ!!もがけ!」楽しげに緩めたり閉めたりを繰り返したが次第に反応しなくなった、生きてはいるようだがこれじゃ面白くない首から手を放し無防備な腹を踏みにじる、体をくの字にし嗚咽を上げるもまだ生気は失ってないのか「お嬢様・・・はや・・く逃げて」と視線だけ女の方に向け必死に言葉を紡ぐ
「お前ら2人ともここで・・・し・・・。」死ぬんだよと言おうとしたが急に気分が冷め理性を戻した
そしてもがく少女を見て、頭の中で声が聞こえた
・・・自分はいったい何をやった? 何ってこ・・・俺は悪くない!
・・・・・この少女に何をした? だから俺は・・・悪くない
・・・・・・・・そして今どうしようとした? ・・・・・・・・・・・・・・・。
何度も何度も木霊される誰かの声 頭を抱え子供のように言い訳をする自分 それでも繰り返される声
自分がした行為は分かっているだが、俺が悪いんじゃないと思いただけで両手をぶらりと下ろす
そして視線を床に戻し強き眼でこちらを睨み付ける少女と床に頭を擦りつけ許しを請う女
そうか・・・まだ成人していないであろう少女を快楽を得るためだけに暴行し、終いには殺して犯そうとしたんだ・・・俺は。
「フフフッハァハハハ・・・」
力なく笑った気が狂ってるって思われるだろう、こんなことするなんてこの世界に来てからいつかは気が狂うと思ったがもうガタが来てたか・・だが、まだその時ではない。
御付きの少女に近づきしゃがみ込むそして首の付け根?に手を置き気を集中させる。
後ろから「やめてリイを殺さないで・・・」と悲鳴に似た声で懇願されたが、さっきまでの状況考えればそういう反応になるよな。
俺の気を体内にゆっくり流し自己治癒力を限界高め握り潰した手や喉ぼとけを整体し修復する、蒼痣になっている腹部にも力を巡らせ回復させていく、うめき声上げ痛みを訴えているが、すまんが我慢してくれと頼みながら数分かけて完治させた。
女の方に近づき「・・・すまなかった」と謝罪するが震えているだけで何も答えない肩に手を置こうとした時、後ろから「お嬢様に触るなー!!」と叫び声が聞こえ背中に衝撃と痛みが走った、貫通はしていないが何か刺さってるな背中それと同時に「死ね死ね死ね死ね死ね死ね」と何度も痛みが走るが・・・大したこと無いので目を瞑る
グチャグチャと背中から音がし血の臭いもきつくなっている、滅茶苦茶になってるであろう背中
「リイ止めて・・・気持ちは分かるけどそれ以上はダメ・・・」まだ恐怖が抜けきってないようだが女が御付きの手を掴み止めに入る、渋々血みどろのナイフから手を放しまだ「殺す殺す殺す殺す殺す」と呟いている
俺はそのまま立ち上がり壁際で腰を下ろした、女を守るように手前に出ていつでも俺に攻撃出来る態勢で向かい合っている、向こうから見えないので気で背中を回復させるが傷は浅いが面が広いので時間が掛かりそうだ
「それじゃ用件を聞こうか・・・」と話を切り出すが警戒を解かず睨んでいるので話が進まない、ため息を吐き立ち上がるそして鞄に入っている鉄剣+7を鞘ごと投げ「やるよ」と言い壁際に戻る、床に当たり鞘から刀身が見える、すると御付きがそれを引き抜き光を反射させ見定める一通り見終わったんだろう手に持ったまま臨戦状態で睨み付けられているが女が落ち着かせ話し出した
「私はカリン・リントと申します、単刀直入に申し上げますと先日貴方の屋台で食べさせていただきました料理を私に教えて下さらないでしょうか?・・勿論報酬は希望の金額をお支払いたします、もしそれでお気に召されないのでしたら・・・私をお使いになって下さっても構いません、どうかお願いします私にその料理の伝授をお願い出来ないでしょうか?」
御付きを押しのけ俺の前まですり寄り正座の状態で頭を床にコツコツっとぶつける音が響く、自分の体を差し出してでも手に入れたいものではないはず、あれは俺が日本の味が恋しいか・・・あ!
この世界に来たのは俺含めて3人、その内2人は王宮暮らしで料理なんかはお任せで自分でする気も起きないだろう、それに来てしばらくはこちら美味しい料理で満足するだろうから変な時間差で和食の味が恋しくなるが、こっちだと仮に食べたくても麹・味噌・醤油の作り方なんか料理人も知らないだろうし王が勇者の機嫌を損なわせないためにも再現させるように無理言うのも分かるが、こんな俺と大して変わらないような年の女がそんな重要な役目を担ってもいいのだろうかもっと熟練した者がやるべきでは?
と疑問を言う前に話し出す
「半年ほど前までは私の父が王宮料理長を務めていたのですが国王陛下のご要望にお応えすることが出来ずお怒りにふれ投獄されました、そしてその後見人に抜擢された私ですがご客人からお聞きしたご感想だけでは全く模索することも出来ず貴方様の料理に出会うまでは私も諦めて罰を受ける心構えでした、ですがあの自らでは到底到達できない不思議な味を体験してから希望が湧きご客人の食べた感想が頭にスッと入って来ました、あの後無様な姿で王宮に連れ戻されてしまい何度も再現しようと試みましたがどれも決定的な味が足りずもう一度会うためリイに捜索を頼んだのですが・・・」
俺が切れてその御付きを殺しかけた・・・と、話は分かったがたぶんこの女では作り方を教えても作ることは出来ないだろう、なんとなくだが熟練度が足りてないと思われる、こいつの父親でも成功するか怪しい位だからなあ・・・。悩む・・・。
「話は分かったが・・・無理だ、お前に教えたとしても作ることは出来ないだろう・・・諦めろ」首を左右に振りそう告げた。
希望が一気に絶望へと変わった
「そんな・・・そこを何とかお願いします・・・何でもします、父の命が救われるのなら・・死んだっていいですお願いします」
その言葉を聞き御付きが「お嬢様!!そんな薄汚れた獣のような男に御身を差し出してはなりません!!私はこの身に変えましても貴方様をお守りすると今は亡き母に誓ったのです!、この命最後までお嬢様のために使いとうございます」
そして俺の方に向き直り「私にはどのような屈辱的な死に方をしようともそれを受け入れます、が!お嬢様には指一本触れさせません」
・・・なあ別にお前を痛めつけたいなんてもう思ってないしお前らの絆も本物だとわかったよ、だが出来ないものは出来ないんだ、もう最悪俺が行くしかないんだだけど王宮ということは王族や貴族・勇者が居るんだろう・・・顔も見たくない、でもこいつらをあの黒甲冑に犯されるのもな・・・。
こんなんであの罪が消えるだなんて思ってないしこの少女に残した傷は一生消えないだろう、だから・・・・これしかもう選択肢が無い
「・・・分かった俺が行く、作り方はそんな難しくない調味料さえ適当に使えば作れる」
こうして約2年振り位に王宮に出行くことになった