料理
不愉快なことがあってから1週間経ち、本に書かれた剣技や魔物の攻撃パターンを一通り覚え森で実践を何回かした。
そして今日から料理だ・・・一番不得意であろう料理、大体1人の時はレトルト・インスタント食品しか食べてこなかったのであまりしたことない。
ひとまず本を熟読する・・・あれ思ったよりも面白そうだな。
焼く・炒める・蒸す・揚げる・炊く・煮込むなどなどほかにもあるが日本で体験したのはこれくらいだろう材料は聞いたこともない物ばかりだが料理名は聞いたことのあるものばかりだ。
さっそく商店で器具と簡単な炒め物の材料を買い裏路地で作る
肉野菜炒めか?肉と野菜をざっくり切って火にくべた鍋に入れ適当に味付けする、肉を先に入れた方がいいのだろうが薪を増やして火力を上げる
肉が焼けたところで火から下ろし皿が・・・無いので蓋に乗せて食べる・・・意外といけるモグモグご飯が欲しい
これからは自炊しようか・・・でもなあ米が無いしパンやナンに似たものはあるんだが米が無い・・
どっかに自生してないかな・・・。
それから毎日市場に行き本に載っていた材料を買い作る勿論自分用だけ、八百屋のおっさんに若いのに自炊とは偉いなと言われたが世事であることくらいは分かる。
誰かにやる訳ではなく自分が食べる分だけ買い作る
最初は面白いと思ったがやっていくうちにめんどくさくなってきた、多少まずくても人が作ったものと食べたほうが楽だな。
次の日自炊をやめ宿屋の定職を食べるがやっぱり味が落ちる・・・。
そういえば調味料の種類が少ないな、塩コショウ・香辛料・ソース?・白い粉・・・安く手に入るものはこれだけで砂糖やコンソメに似た粉末は庶民には手が出せない価格で販売されている、それに醤油や味噌日本人の食生活には欠かせなかったこの2つが無い、作り方は知っているがこの世界では何年もかかるだろう小麦・大豆は探せば似たようなものがあるだろう、だが麹はどうやって作ればいいんだろう?本に載っているかと探しては見たが調味料として使用されている料理はあっても作り方は載っていなかった。
気温は低いところが良いんだったっけ?樽かなんか用意しないと・・・。
もっと簡単に出来ないのか?気分が上がらない、今の国民はこれが普通の食事なんだが日本人としてもっとうまい物を食ってもらいたい・・・自分の手を見つめる、気水が作れたんだ応用できないだろうか?
気で発酵を促進させることが出来れば・・・やってみるか。
味噌と醤油作りに要りそうな道具を探し材料も買う、高校と時の記憶を呼び起こし試行錯誤しながら日々が経っていった
1か月準備し宿屋の主人に頼み隣の路地に小さい屋台を作らせてもらって屋台を設置した。
一食2銀で大体材料費を一食で割ったらそれくらいになった、値段はまあどうでもいいんだがあんまり安もの扱いされるのもムカつくので隣の大きい食堂の倍の値段設定で初日は開店した
まあ初心者がやればみんなそうだと思うが全く売れない、一応立ち食いではなく椅子用意してあるんだが訳の分からない料理名に相場の倍もする値段だと一般人や冒険者には受けが悪いか
そこに身なりのいい女性が入店した「いらっしゃいま・・・せ」声をかけるが呻りながら椅子に座り俯いている冷やかしか、文句か、食い逃げか、営業妨害か、注文をしようともない客にそう思った。
水だけは出しとくが顔を上げようともしない。
昼時になり通行人が増える四方の飲食店は賑わいを増し気温が上がっていき蒸し暑い日になった。
相変わらず不審な客が1名居るだけで何を考えているのか分からん、もう1時間は座っているはずなのに水も飲まず顔も上げず注文もせず、自分の世界に入り込んでいるようだった
「すみません、ご注文されないのでしたら出て行ってくれませんかねェ!?」
出来るだけ穏やかに言おうとしたが後半やっぱりキレ気味に怒鳴ってしまった。
ビクっと肩を振るわせ恐る恐るといった表情でこちらを見上げる女性・・・ある意味スゲーは人目を気にせずそういうこと出来るんだから。
キョロキョロ周りに誰も居ないことを確認した女性がやっと自分に言われてるというのを理解したようで、ペコペコ頭を下げブツブツ喋っているが聞こえない。
何も注文しないなら出ていけと伝え「お、オススメを・・・」と答えられたが品目が3つしか再現できなかったのでその中で一番手軽だった肉野菜炒め定食を出す。
昨日山で倒した飛竜みたいなやつの肉と食べられる野草と炒め味噌と焦がし醤油で味付けした野菜味噌炒め味濃いめと、偶然見つけたコメに似た植物を沼地で気力栽培し炊いたちょっと茶飯にも似たご飯、野菜炒めにも入れた野草を一緒に茹でた?味噌汁
野生の米を発見した近くに生えていた蕪を味噌漬けで漬物を添えた、水は気水飲み放題。
木の板に乗せ「はい 野菜炒め定食です」と女性の前に置いた、何秒か眺めた後フォークで野菜炒めを刺し口に運んだ、シャキシャキと心地よい音を弾ませ呑み込みさっきまで目を開けてるのか瞑ってるのか分からなかったのがこれ以上ないほどに開けられ俺を見るがそれは一瞬だった、再び定食に目を落としがっつく様に食べ始めカチカチとフォークが皿に当たり不愉快な音を鳴らしながら5分もしない間に完食した。
が「もっど!!」と口から米粒飛ばしながら催促してくる、軽く頬が引き攣る・・・金持ってのかな?身なりが良いだけでただ食い狙ってるんじゃ・・と躊躇してると子供のように机をたたき「もっと寄こせェ!」と叫び声を上げる。
アンタ俺より年は上だろ・・と呆れご飯と味噌汁だけ出して追加分を調理し始めるが街路地が慌ただしくなり通行人が隅に寄りひれ伏しているのが見える、貴族王族には腹が立つ記憶しかないので堂々と調理しながら通り過ぎるのを待っていたのだが、豪華な馬車が2台目の前で止まり中から貴族とコックの格好をした男が降りてきた。
「おお!カリン様屋敷にお戻りになられないので兵士総出でお探ししました、こんな下民共の町に何の御用が御有なのでしょうか?・・・カリン様何をなさっているのですか?」
貴族の男が探しに来たということはこの女は貴族か、男の方には向かず野菜炒めを皿ごと口に付けフォークで口にかき込みご飯と味噌汁を交互に器を傾け口に放り込んでいる。
その光景に唖然としているコックと貴族だが「カリン様そのような下民が食するものを口に入れてはなりませぬ、ええぃ、誰でもいい主任を馬車にお連れして治療士ににお目通りを請うのだ!!」
と叫び兵士がカリンと呼ばれた女性を担ぎ上げ馬車に入れようと奮闘しているが運ばれた本人は
「いやーだ!まだ残ってる!下ろせ触るな下ろせェ!!!」手足をバタつかせながら抵抗しているが御付きの一人に鳩尾を入れられ静かになり馬車は走り去った。
「さて、貴様!お嬢に何を食べさせた!!あの方には大切なお役目があるのだ!それをこんなゴミ共が住み着いている町に連れ込み、あまつさえ正体の分からない食材を食させるなど万死に値する、兵士どもこの不届き物を斬り捨ててしまえ」
好き勝手に言いたいこと言ってなんだ?結局あの女と文句つけに来ただけかよ、なんだ期待して損した。
兵士が剣を抜き人が作った屋台を壊しながら押し入って来る、そこに座ったから飯出しただけなのにこの仕打ちは何だ!!食器や調理器具食材が地面に散らばる
またやる気を無くした、何だよせっかく人のためになんかしようとしたのに食い物食わせただけで刑になるなんてやってらんねえ。やめだ、料理はやめだ。
完全に破壊された木の小屋を見て貴族を見て、目の前に迫っていた兵士をぶち殴る路地になっているのでその後ろから来た兵士にもあたりドミノのように押し戻され表通りに散らばる、そいつらを蹴りながら貴族が見える位置まで歩き尋ねる
「アンタの上司にライバン・ウィルってやつは居るか?」
「なぜ貴様などがライバン様の名前知っている!?」
「そうか知ってるなら伝えとけ」
「何を・・・下民の言うことなど信用ならんわ!!」などとほざくが続ける
「次貴様らが俺の機嫌を損ねるようなことをした場合・・・」
右手を頭上に上げ気弾を打ち上げ空で爆発させる、花火を真下で聞いたとき位の爆音と壁を焦がす爆風が襲いまともに立っているものは居ないそして
「てめぇらの体が木っ端微塵になるとな」
背筋が凍る声音でそこで転がっている者は全員死神の鎌で首を突き付けられているような感覚を味わい、誰一人声を出すことは出来なかった
ため息を吐き調味料を回収し残りは気で消し飛ばす。
そして半日で食堂は閉店した