緊急クエスト
緊急クエスト
オーガーを手下にしてから1か月が過ぎた。
今のところなんもなく生活している。
この世界に来て1年と数か月・・・俺も22か。
薬草だけの仕事で1日食っていけることで、向こうよりもこっちの方が住みやすいと思うようになってきた。
多少物騒なこともあり1回死にかけたが、普通に生活していても病気で生死を彷徨うことがあるかもしれないからそこまで珍しい訳でないんだろう。
あの日助けた?冒険者パーティの奴等の顔は見ていない、ここ出身じゃなかったんだろうか?
でもここ何日か冒険者の出入りが多い気がする、討伐依頼も増えてきているようだ。
まあ俺には関係ない、まだFランクだし。
今日もいつものように依頼を受けて混雑する時間に帰り、昼食を食べようとしたら乱暴に開かれた扉から男性職員が頭から血を流し崩れるように中に入ってきた。
それを見た別の職員は倒れた奴の手に握られていた紙に目を通し叫んだ
「緊急!!魔物が南西方向から約5千!東方向から約1万!到着するのは今から90分後!至急Dランク以上の冒険者は装備を整え直ちに西門に集合してください!東門には軍と勇者様が向かわれる手はずになっているようです!それ未満の冒険者は住民の避難誘導及び物資の運搬にご協力お願いします!」
言い終わると同時にたむろっていた野郎どもが武器を持ち外へ飛び出して行った。
こういう時はちゃんと動くんだな職員も慌ただしく駆け回りランクが低い冒険者も職員と一緒に走り去っていった。
それにしても勇者か・・・多いほうは軍が担当するようだが大丈夫なのか?軍って言っても日本の自衛隊みたいなものだろ?一時的に一般人が訓練されて戦場に駆り出される。
今のというより戦時中のか?何年で任期が終わるのか知らないが新兵が出ることは無いだろう、数も多くて2000人程か冒険者も寄せ集めても500人程だろうし、ランク制限してることからそれなりに強い魔物もいるんだろう。
どれくらいの被害が出るか見ものだな、どうせ勇者頼りな王族のことだからこの程度楽勝!とか思ってるんだろうな。
アイツらがどれくらい強くなったのか見てもいいんだが間違えて矢でも飛んで来たら敵わん。
ん?上から目線だって?・・・そんなことないと思うのだが、あ、俺以外誰も居なくなった、一人で飲んでてもつまらないから外で観戦しながらお茶を飲もう
西門周辺
まだ魔物の姿は見えないが門前には大勢の冒険者が臨戦態勢で陣を組んでいる。
もちろん俺は物資の陰に隠れお茶を・・・飲める雰囲気じゃなくなった。
あ、ちなみに医療班に割り振られてしまったのでけが人が来れば来るほど忙しくなりますが、ポーション掛けるだけの簡単な作業なんで馬鹿でも出来る。
重症者は回復魔法が使える奴のとこに運ばれるだろうから安心?して観戦できる。
水平線上に黒い靄が現れ警鐘が鳴り響いた
それぞれが気合を詠唱やらの準備を済ませ、「全員突撃ー!!」と野郎が雄たけびを上げ前衛は走り出した。
おい!さっき円陣組んでたのはただ気合入れるだけかよ!隊列組めよバラバラじゃねえか!!そんなん一人一人が強くないと間隔開けても意味ないぞ!
まあ・・・なんか作戦あるんだろう。あることを願おう。
戦闘音に怒声悲鳴歓声絶叫いろんな声が入り混じって聞こえる、それなりには戦えてるようだがかなり押されている。
人の顔までは判別できない距離でぶつかったと思っていたが、敵の顔まで見える距離まで攻め込まれていた。
おい・・・まだ30分位しか経ってないのに次々と重軽傷者が運ばれてくる、布に寝かされた軽傷者にポーションを振り掛け包帯を巻きそれが終わったらほかの奴に移る、ってのを開始早々やる羽目になった。
簡易テントが怪我人で埋まった、重症者も多く出ているようで戦場に再び参戦する数も少なくなってもう目の前まで敵が迫ってきた。
門の方に位の高そうな軍兵が数人見えた。
こちらの司令官が出向き状況が悪いことを伝えたが軍兵が喚き無理な命令を下す。
「お前らが不甲斐無いせいで私がこんなところまで出向かなければならなくなったのだ!!さっさと魔物を片づけ我らに加勢しろ!!役立たず共が!」
「無理です戦況は最悪です今彼らを向かわせる余裕はありません!!それに先ほどから援軍要請を送っているのですがなぜ何の応対も見せないのですか!?こちらは持ちこたえるだけで手一杯なんです貴方達には国民から多額の税が支払われているはずでしょう!なぜこういう時のための対策を講じなかったのですか!!」
どちらも戦況は悪いらしい
負傷者の手当てをしながらチラチラ見ていた。
軍兵達がテントに近づいて来て慌てて視線を戻したが、どうやら俺の視線が気になったとかそういうことではなかったらしい、そいつがテントの中を覗き手当てしている俺たち数人の非戦闘員を見て
「やはりまだ戦えるものが居るではないか!!おい貴様ら!そんなことやっている場合ではない!さっさと敵の1体でも殺して来い!臆病どもめが!!」
っと罵声を浴びせた。
まさか自分らに声がかかるとは思っていなっかった数人はビックっと肩を震わせ目を合わせないようにしていたのだが、残りの軍兵たちにより目前に敵が迫っている中放り出された。
司令官が「彼らのランクは低く戦闘に参加させるわけには・・・」と抗議するも
「この状況下でランクがどうこうの言い訳にしてもなにもならんだろう?それともなにか最高司令官の代理でここに来ている私に歯向かうか?貴様の戯言は我々の勝利を邪魔立てすることと同意味であり今すぐにでも首刎ねることが出来るがどうするかね?」
と脅しをかける。非戦闘員だった者達は司令官に助けを求めるが目を逸らされてしまう。
それを見た代理が
「よろしい、さぁ貴様らその身で我らの為に敵を殺しこの国に平穏をもたらせ!!奴らを殺せ」
やっぱり勇者任せの国はダメだった。
他の部署からも20人ほど連れてこられ、それぞれに質の悪い剣が渡された。
こんなもん斬るというより刺すか叩くか位にしか使えんぞ!?
駆け出し、又は採取しかやったことない者にとっては「死んで来い」と言われているようなものだ。
集められた20数名は剣を抱えたまま座り込んだまま、びれを切らせた軍兵が1人1人の首に剣先を突き付け
「戦う気が無いのなら今ここで死ぬことになるぞ?」と催促し力なき足取りで死へと戦地へ歩き出した。
満足げな顔をしているが”たった20人追加したところでなんとかなるわけないだろうが!”
自己中にも若者を戦地へ送る馬鹿に血が上り、つもなら絶対にしないことを言ってしまった
「おい、お前ら待てこんなとこで死んでもいいのか?俺に付いて来いそうすれば生きて家族に会わしてやる!」
その言葉に振り返った者少数、戯言だと苦し紛れの愚か者だとそのまま進んでいった者多数。
構わず進んで逝った者はどうしょうもない勝手に死んでくれ
代わりに足を止めた者こいつらは出来れば助ける・・・骨の2・3本は覚悟だが。
「おい!貴様ら何をボサッと突っ立て居るさっさと敵を!・」
「ウゼェ腰抜け共は黙っとれぇや!」
最前線で戦ってるわけでもないのにごちゃごちゃうるさい奴だなぁ!!
数人残った・・・7人か俺入れて8人・・・キツイな。
まず支給された武器を捨てさせ代わりに俺の大鞄から7本武器を取り出す。
鉄剣+7・炎の大剣+4・鉄斧+5・ミスリル槍+2・短剣+6・黒曜石の双剣+6・大槌+5、どれも俺が打った中では最高のできの武器だ。
特殊効果がついている物もある
周りの軍兵が何か言ってるが無視
7人のうち2人が女で残りが野郎かまず2人に槍と短剣を渡す、「使ったことない!」とか言われても知らんがんばれ、野郎の方を向き体がでかい奴に大槌を、3人で抱き合っている痩せ男どもに剣・斧・双剣を渡す「どれ使うかはお前らで決めろ」と言って残りの・・・・片足の引きずった片目に傷のある厳つい野郎に大剣を用心して渡す「ほう・・」と呟くだけで使い方は分かるだろう。
一通り渡し終え最後に1人1人に気を分けた、分けたが気弾とかを打ちだせる濃度ではなくあくまでも一時的に鋼鉄の鎧を着こんだ時と同じ位の守備力を発揮できるようにするためだったのだが大男と片目に傷があるやつには断られた。
痩せ男と女には掛けて置いた。
戦闘経験があるのは2人だけか・・・。
班を作り女2人と片目傷・痩せ男1人、痩せ男2人と大男に分けたが片目に「アンタはどうするんだ?」と聞かれ「頭をつぶす」とだけ答えた。
言いたいことは分かったようで頷き、ついでに最低限の戦闘の心得を残り5人に教えるようにと言っておいた
。
片目は苦笑し「教えるのは苦手なんだが・・分かったぶっつけ本番の戦闘訓練だw」大男にも聞こえる声で言ったからなにするかは分かったようだ