本業と副業
鉱夫の仕事はさすがにきつく体力をゴリゴリと持っていかれる3時間ほどで倒れてしまった。
外の枯草の上で目を覚ました時はシクッたと思ってどう謝ろうか頭を抱えたが戻ってきた親方は「気にすんな」と「他の仲間にも礼を言っとけ」と少し申し訳なさそうな顔でそう言った。
気分がよくなり謝罪とお礼をして回ったが「気にするな」「俺も倒れたから気にすんなw」「恒例事みたいなもんだ」などと言ってもらって安堵した
後で教えてもらったのだが、洞窟内は外より空気が薄く松明を焚いて箇所もあるので、慣れてない者が洞窟に入ると酸欠みたいになりぶっ倒れることがよくあるらしい、俺も例に漏れずだったようでそういう時は数人で外に運び出して風通しのいい場所に寝かせとくのが良いようで雨の日以外そうすることに決まってるようだ。
目を覚ました時にはもう日暮れだったのでいつもより少し早く切り上げて各自町へと帰った
帰り道に親方から寝床は決まってるのかと聞かれた、野宿だと答えたら家に来ないか?と言われたのでしばらく居候させてもらうことになった
親方の家は武器屋だった。
表通りから2本ほど中に入ったとこに建っていた。そういえば力比べのあと鍛冶がどうしたとか言ってたな?
結構でかく1人で住むにしては広すぎる位だと思うが・・・。まあ適当に座れと言われたので近くにあった椅子に腰かけた
リビング?を見回してみると剣・大剣・槍・斧・弓・2本セットの剣・大槌などが飾られていた。
よく見ると1つ1つに銘が彫られているのが分かった
「なぁ坊主鍛冶をやってみる気はないか?わしはこれでもこの国一番の鍛冶士だった、30年は前の話になってしまうがな。あの頃はわしに作れない武器は無いと思っていた、依頼があれば何百本でも作ることが出来た。だが自分の武器が何のために使われているのかを知らなかった。いや関心が無かったこの国で1番の鍛冶士になること以外何の興味も湧かなかった。数年たったある日、妻と子には母国に帰られ信頼していたはずの仲買には途中で契約を破棄され周りがわしに敵意を向けた」
急に親方が剣を手に取ってそれを見つめ独り言のように話し出した
「一体どうしたのかわしには分からなかった敵陣に放り出された方がマシなほどの殺気を向けられていたのだから」
剣を鞘に片づけ元の位置に戻し大剣を手に取った。
「周囲に敵意を向けられる中、王宮の兵士がわしを捕らえに来た、本当に何の心当たりがなかっただが初めて王の前に連れ出された時見てしまった。横たわっていた兵士の体に刺さっていた武器を・・・わしが作った武器が我が国の兵士に突き刺さっていた光景を。その後わしに武器を発注してきた依頼人が敵国の人間でありそれを用いて王の命を脅かそうとしたこと、頭の中が真っ白になり・・どんな罰でも甘んじて受けようと目を瞑った」
大剣を振り重さを確かめてから双剣をすり合わせ話をつづけた
「言い渡された刑バツは今後一切の武具装飾の製造を禁止しもしそれが表立って見られた際は死刑を言い渡すということだった。生きがいだった鍛冶が出来なくなりに目標も何もなく面白くなくなり王都を出た。そうしてこのテッカ国の端に鉱夫として暮らしていたがお前を見たとき鍛冶士の血が再び騒ぎ出した。こやつにわしのすべてを叩き込みたいとな」
持っていた武器を壁に戻しまっすぐ向かい合った。カッと開いた瞳が俺を射るそしてこう言った
「わしのもとで鍛冶を学んでみてはくれないか?もう打つことは出来ない身ではあるが教えるくらいは問題なかろう、どうだ?頼むこのおいぼれの願いを叶えてくれぬか・・・?」
そうして膝を折り曲げ座り手を床に付き頭を下げる、が床に着く前に止めた。
自分の何倍も生きているであろうこの人にこれ以上させてはならない。
こんな人間の若造に頭を下げる。どれだけの決意と希望を俺に賭けてるのかあまり考えたくないが。
鍛冶屋の弟子となった