閑話1.4 見習い兵士ライガイ 1.4 アルキメス編 5.5
「彼は異世界人だ」
教官殿は確かによう発言した
だが
「は?」
私の口からは間抜けな、本当に間抜けな音が漏れただげだった。
とても真剣な眼差しで・・って教官殿の顔は後ろにあるんだった。
だが、そんなこと・・・
「信用できないか?」
またこの声だ、生物としても本能が警鐘を鳴らしている。
確かに彼は勇者召喚が行われた翌日修練場にやってきた、黒髪黒目はかなり珍しいが髪色は基本黒をベースにして取得している基本属性によって毛先にその色が出る。
火なら赤・橙色、風なら白・水色、土なら茶・紺、雷なら黄色と言った風にだが、元々魔力の少ない者や魔法が不得意な者はその限りでなく、一部の心無い者から”出来損ない”などと差別されることがある。
特殊属性の持ち主には生憎関わりが無いので良く知らないが、おそらくあそこで見たような髪色なのだろう。
で、なんだ?ユータは勇者召喚という儀式でこの世界に来たが他の2人とは違い、魔法が使えないことを知ったお偉いさんは私達のように彼を鍛え兵士としてどこかに派遣するつもりだったのか?
そしてユータはその勇者というモノにトラウマを抱えるようになり今の様な事態になったと?
・・・私はまだ彼のことを良く知った訳では無いが、
「ふざけんじゃねぇぞ!貴族は・・あいつらは、自分たちが良ければ他人の人生なんて棒に振っていいと思ってるかぁ!?」
偽っていた言葉遣いを全部取払い、教官に掴みかかる
"努努忘れてはならぬ、彼らも我々と同じ人の身であることを"
頭にふっと浮かんできた伝承の1文、強く掴んでいたせいで皺になった襟を放し呟く。
勇者も所詮はの子であり心がある、人として同じ形をしているという意味かと思っていたがそっちか・・・。ベットの方に歩き「気付いてやれなくて・・・済まない」瞼を閉じる。
「気は済んだかね?」
胸元が乱れた服を直し普通の声で背中に声を掛けられる。
カッとなってとんでもない非礼を働いてしまった。
「誠に申し訳ありません教官様、数々の非礼このうえないこと弁解の余地もございません」
足元で土下座し許しを請おうとするが
「気にすることでもない、私が何のために障壁を張ったのかを思えば・・・な?」
その声が耳に入ってくると顔が上がり再び床に擦る様に下げ感謝の言葉を口にする。
「これからも仲良くしてやってくれよ?」
それは魔女の願いだったか聖女の声だったか頭を下げている私には分からなかった。
彼は翌日の朝に目が覚め、昨日の記憶が無いと言っていたので食い過ぎでうなされていたと言っておいた。