パーティー結成
本日2話目です。
「神の悪戯に翻弄される冒険者」という連載作品を始めました。よければこちらもよろしくお願いします。
夕飯から1時間後、俺たちはローラ湖の到着した。幻想的な風景が広がる。月の光が湖面に反射して蒼く光っている。湖の周りは小さな広場のようになっており、そこに草花が大量に咲いている。
「綺麗」
フランの口から感嘆の言葉が漏れる。シークも俺も同じ気持ちだ。表現する言葉がでない。
「サクラお兄さん。月夜草の採取をしましょう。あの、・・・えっと・・・。」
フランが口ごもる。おそらく月夜草の形がわからないのだろう。俺はレイラさんに貰っておいた月夜草の絵を二人に渡す。
「いいかい、二人とも。月夜草は光に弱いらしい。灯りをともしたら、ダメだよ。」
俺は二人に注意する。俺もレイラさんから聞いてきたことだ。
月夜草は湖の周辺に大量に咲いていた。とりあえず、3人で30本採取した。俺はそれを受け取ると密封できるビンに入れ蓋をする。
「何をされてるんですか。」
「月夜草に光が当たらない様にビンに入れて日中でも日が当たらない様にするんだよ。」
「そんなことも必要だったんですね。シークと二人なら絶対に達成できてなかったですね。ありがとうございます。」
フランはそう言って俺に感謝していたが、どうやらシークに聞こえていたらしい。暗い顔をしている。まあ、真実だし仕方ないか。
「兄ちゃん、モンスターだ。」
突然、シークが警告を発する。この辺のスキルはシークに一日の長がある。俺にはまだできない分野だ。シークが警戒するほうを見ると、湖のほとりを一匹の馬が歩いていた。その頭には一本のツノがあり、体からは強力な魔力を発している。ユニコーンだ。
「すごい。きれい。」
フランは湖のほとりに佇まうユニコーンを見て言葉を漏らす。
「兄ちゃん。攻撃される前にこっちから攻撃しようぜ。」
シークはいやに好戦的だ。
「シーク、攻撃は絶対するなよ。」
俺はシークに厳命する。ユニコーンはモンスターだが、聖獣に分類されるらしく「襲われない限り、攻撃してはならない」とサポート協会がくれた「この世界の常識」という本に書いてあった。
シーク、お前は常識がないのか?
しばらくすると、ユニコーンはいなくなった。どうやら、ユニコーンは俺たちを敵と認識しなかったようだ。良かった。俺たちは野営のためテントを張り始めた。テントを張り終わった後、シークはフランに説教されていた。
こうして二人と旅をしていると、二人のことがいろいろ見えてきた。
シークの戦闘力はなかなかのものである。ランクDのモンスターでも楽勝で倒せそうだ。シークがランクDになっていないのは、ベルクさんが言っていたように戦闘以外の知識が全く足りていない、ということだろう。性格はちょっとひねくれているが、根は素直である。たぶん、フランにいい恰好をしようとして空ぶっている感じもある。たぶん、フランが好きなんだろう。そして、フランが俺に丁寧に接するので焼いているように見える。
フランは戦闘力はシークに劣るが、かなりのものである。彼女はおそらく父親のベルクにかなり甘やかされて育ったようだ。性格は天然が入っている気がする。シークの好意にはたぶん気づいてないだろう。・・・シーク、かわいそうに。
ベルクさんが俺たち3人だけで依頼に行かせたのもわかる気がする。二人に人間として成長してほしかったんだろう。俺も実力の近い二人との戦闘はいい経験になりそうだ。少なくとも、以前一度だけ見たベルクさんの戦闘は見ても参考にならなかった。
次の日の朝、俺たちは片付けをすると湖を後にした。後は街に戻るだけだ。街までの道のりは行きと同じで平和なものだった。襲ってくるモンスターを撃退しつつ街に戻る。ただ、それだけだった。そして、街にたどり着くと、事件が起こっていた。ベルクさんがいなかったのである。
ギルドに行くとレイラさんが神妙な面持ちで話しかけてきた。
「フランちゃん、シーク君、サクラ君。大事件が起こってね。ベルクさんが緊急指名依頼で向かったの。」
「いつ帰ってくるんですか。」
「わからないわ。少なくても半年はかかると思うわ。」
「「半年!」」
フランもシークもびっくりしている。
「あの、レイラさん。父さんは私たちの事、何か言っていましたか?」
「ええ、手紙を預かっているわ。」
そう言うと、レイラさんは俺たち3人に手紙を渡す。ん?俺にも。
サクラへ。修業途中で居なくなって申し訳ない。しばらくの間、帰れそうにないので良ければ、二人の世話を頼む。育ち方を間違ったせいか、二人とも少し世間知らずなところがあるので、二人だけにすると心配だ。君との付き合いはまだ短いが、訓練を通じて君の人となりは分かったつもりだ。君になら任せられる。よろしく頼む。 ベルク
どうやらベルクさんも二人の非常識を分かっていたようだ。フランとシークの方を見ると二人とも呆然としている。かなりショックを受けているようだ。無理もない。二人ともかなりベルクさんに依存していた。
「あの、しばらくの間、『サクラ兄さんにお世話になれ』と手紙に書いてあったんですが。」
フランが遠慮がちに話しかけてくる。シークも一緒に横に立っている。
「ああ、俺の手紙にも書いてあった。『よろしく頼む』って。でも二人ともいいのか」
「はい、今回の依頼で自分たちの未熟さを実感しましたので、良ければ、」
「俺からもよろしくお願いします。」
そういうと、二人は頭を下げてきた。
「二人ともそこまでしなくてもいいよ。こちらこそよろしく。」
俺たちはギルドで3人パーティーを結成した。クリンが「自分も入れてくれ」と言っていたが、「お前は従魔だろ。」というと落ち込んでいた。俺はパーティーを組んだことで、一人前になったとしてサポート協会からの援助が打ち切りとなった。ハヤトさんが「思ったよりも早かった。」とびっくりしていた。
「なあ、これからどうする。何か目標とかあるか?」
「俺は強くなりたい。師匠と肩を並べられるくらい強くなりたい。」
「私は、特にないです。サクラお兄さんは?」
「俺は・・・できればこの世界を旅して、いろいろなところを見てみたいけど、まずはお金を貯めることかな。お金が心許ない。」
「兄ちゃん、ものすごく現実的だな。」
「サクラお兄さんらしいですけど・・・。」
「とりあえず、しばらくはこの街を拠点にして依頼をこなしていくか。」
「そうですね。」
「ところで、パーティーの名前はどうする。レイラさんに明日の朝までに決めてくれっていわれただろ?」
「そういえば、言われてましたわね。私はお兄さんに一任します。」
「俺も面倒だから兄ちゃん決めてくれ。」
二人に面倒ごとを押し付けられた俺は布団のなかで考える。
「パーティーの名前か・・・。さすがにウケ狙いの名前はまずいよな。」
・ ・ ・
「パーティーのリーダーか。責任重大だな。」
・ ・ ・ ・ ・ ・
「まあ、なんとかなるか。」
次の日の朝、俺たち3人はギルドに向かった。
「おはようございます。」
相変わらずレイラさんの声は元気をくれる。
「それで、パーティー名は決まりましたか」
「はい、俺たちのパーティーの名前は・・・。」
こうして俺たちの冒険は始まった。
いろいろと構想は練っていたのですが、なかなか話が上手くまとまらないため、この話は一度終わらせることにしました。読者の皆様には申し訳ありません。
新作「神の悪戯に翻弄される冒険者」をよろしくお願いします。