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3人での依頼

今日は2話投稿です。1話目です。


「神の悪戯に翻弄される冒険者」という連載作品を始めました。よければこちらもよろしくお願いします。

 あれから一週間、午前中は素振り、午後はモンスター討伐の日々が続いた。素振りは相変わらずであったが、討伐したモンスターは暴れイノシシ、キラーフィッシュ、ジャイアントバットなどいろいろな種類のモンスターであった。どれもランクFのモンスターだそうだ。今日もキングコブラという大型の蛇を倒してきたところだ。


「お疲れ様です。それにしてもサクラ君、強くなりましたね。」

「ああ、もうランクFのモンスターはほとんど大丈夫だな。」

「・・・武器、いまだに木剣ですよね。替えなくて良かったんですか?」

「木剣には木剣の良さがあるからな。」

「そうなんですか?」

「『木剣は切れる鈍器』だそうだ。100年程前の転移者で最強と呼ばれた剣士の言葉だ。」

 レイラさんはベルクさんとしゃべりながら依頼完了の手続きをしている。しゃべりながらであるがその手元はすごいスピードで動いている。

「そうだ。サクラ君、おめでとう。ランクFに昇格よ。」

 いきなりレイラさんに昇格を告げられる。

「俺がですか。」

「そうよ。今日の討伐依頼完了で昇格基準を満たしたわ。」

 俺は帰って来た身分証でステータスを確認する。



 相川桜(あいかわさくら) 

 ランクF

 パーティー なし

 称号 転移者 狐族の友

 その他 なし



 確かにランクFになっていた。

「お兄さんおめでとうございます。これでかけだし卒業ですね。」

 フランは自分のことのように喜んでいる。

 冒険者の中ではランクGはかけだし、ランクFとEは初級、ランクDとCは中堅、ランクB以上でベテランとなっているそうだ。

「まだ、Fだろ。俺とフランはEだぜ。精進しろよ。」

 シークは相変わらずだ。

「ほう、もうFになったか。それなら、明日は採取依頼にしよう。」

「採取依頼ですか。」

「ああ、いろんな種類の依頼を受けていた方が応用が利く冒険者になれる。レイラ、3人でするのにいいのがあるか?ちょっと厳しめのやつだ。」

「そうですね。厳しめとなると西の鉱山でのミスリル採取、北の国境近くのローラ湖での月夜草の採取かしら。」

「ミスリルと月夜草か。それなら、月夜草だ。」

「わかりました。今すぐ受付をしますか?」

「ああ、説明を頼む。」

「わかりました。北のローラ湖に咲く月夜草の採取をお願いします。ローラ湖は北に歩いて2日ほどの場所にあります。これが依頼書です。」


 採取依頼

 ランクE

 月夜草10本で10000ゴールド

 特殊素材につき、注意



 特殊素材?

 知らない言葉が出てきた。シークとフランは何も聞かないところを見ると知っているのだろう。


「よし。それではシーク、フラン、サクラ、お前たち3人でこの依頼をやってもらう。明日の昼にここに集合だ。それまでに各自準備をするように。」

 そう言うと、ベルクさんは帰っていく。慌ててフランとシークがついて行く。俺は一人取り残された形だった。

「えっと、サクラ君。何か質問とかあります?」

 レイラさんが遠慮がちに聞いてくる。

「あの、・・・・・・」

 俺は気になっていたことをいくつか質問してギルドを後にした。



 次の日、俺は宿の人にしばらく旅に出ることを告げると、旅の準備を始めた。歩いて2日ということは、最低でも4日はかかるということだ。1週間は見た方がいいだろう。急いで旅に必要なものをそろえる。その後、サポート協会のハヤトさんにも旅に出ることを告げ、ギルドに向かった。時刻はもうすぐ昼になるころだ。


「遅いぞ。何してたんだ。」

 シークは相変わらずである。

「やはり、気づいたのはサクラだけか。」

 ベルクは俺の荷物を見るとそうつぶやいた。そして、シークとフランの方を向いて、ため息をつく。

「こいつらは腕っぷしは強くなったが、まだまだだな。」

 二人はまだ分かってないようだ。不思議そうな顔をしている。


「お兄さん。その荷物は?」

 フランが俺に聞いてくる。

「食料とかだよ。片道2日って言っていたろ。とりあえず、1週間分の用意した。」

「あっ。そうですよね。うっかりしてました。」

 フランは「しまった」という顔になる。一方、シークは

「そんなのいつも師匠が用意してくれてるよ。」

 得意気にそう言う。その言葉を聞いてベルクさんは頭に手を当てている。

 うん、こいつは全くわかっていない。

「シーク。昨日ベルクさんが言ってたろ。『お前たち3人で』って言ってたろ。ベルクさんはこの依頼についてこないと思うぞ。」

 俺がそう言うとシークは驚いて、ベルクさんの方を見る。

「ああ、サクラの言う通りだ。お前たち3人で行くんだ。」

「師匠。いいんですか。今までは『師匠抜きで依頼を受けたい』って言ったら、いつも『ダメだ』って言ってたのに。」

「それはお前たち2人だと心配だったからだ。今回はサクラがいるから問題ないはずだ。すまんが2人を頼んだぞ。」

「わかりました。」

「師匠、なんで弱いこいつに頼むんだ。俺の方が強いのに。」

「単純な戦闘の話ではない。お前は戦闘以外での注意力、状況判断が足りない。だからだ。」

 シークは不貞腐れている。ベルクさんはそれを無視して話を進める。

「ということで、今回の依頼はサクラがリーダーで頼む。」

「わかりました。」

「お兄さん、よろしくお願いします。」

 と話は進んだ。シークは完全に蚊帳の外だった。


「フラン、何を用意してきた?」

 俺が尋ねるとフランは恥ずかしそうに尋ねる。

「すみません。いつもと同じで武器と簡単な治療用のポーションと毒消しぐらいです。」

 たぶん、シークも同じだろう。

「それじゃ、食料は念のために1週間分用意しようか。あと、服の予備と防寒具も持って行った方がいいかもしれない。ここよりも気温がかなり低いらしい。」

 ローラ湖は国境の近くにある。国境の先は氷の国と呼ばれる極寒の国で、ローラ湖も気温が低い。

「わかりました。すぐに用意します。シーク行くわよ。」

 こうして、二人は用意のためにギルドを出て行った。

「サクラ君。大変そうだけど、がんばってね。」

 これを見たレイラさんに励まされるのであった。



 2時間後、二人が戻ってくるとローラ湖に向かって出発した。シークは帰ってくると大人しく俺に「よろしくお願いします」とだけ言った。おそらくフランが説得したのだろうが・・・。

 1日目の旅は順調だった。道なりに進んだだけだった。

「ローラ湖←」と書かれた看板のところで、今日は野営をすることにした。何しろ、この先は道がない。森の中を突っ切ることになる。

「今日はここで休んで、明日森を突っ切るぞ。」

 俺はそう指示すると、持ってきたテントを荷物から出す。

「お兄さん。そんなものまで持ってきたんですか。」

 フランがびっくりしていた。

 大学のゼミでフィールドワークをしていた俺はよく教授に連れられて、山奥まで行っていた。実は野営とかは得意だった。シークも呆れて見ていたが、すぐに手伝ってくれた。

 晩御飯は干し肉と堅パンにした。どうもこの世界では旅の時はこれが普通らしい。味は・・・お世辞にも美味しくない。

「兄ちゃん、先に寝ろよ。フラン、俺、兄ちゃんの順番で火の番と警戒な。」

 シークがそう言うと、テントに入って寝てしまう。フランを見ると彼女は笑って頷く。シークは自分から一番きつい二番目をやると言ったのだ。



 次の日の朝、テントをたたむと、シークがテントを運ぶと言ってきた。

「体力のない兄ちゃんが運ぶと途中でばてたら大変だろ。」

 口は悪いが心配してくれているようだった。どうやら、少しは認めてくれたのだろうか。

「じゃあ、よろしく頼む。きつくなったらいってくれよ」

 と言ってテントを任せることにした。もちろん、「兄ちゃんじゃあるまいし、そんなことにはならないよ。」と憎まれ口を叩かれた。


 モンスターを倒しながら、山道を進んでいく。シークはちょっときつそうだ。「テントを持とうか」と言ったが、意地を張っていた。

 まあ、シークががんばると言っているし、いいか。

 日が暮れたため、夕飯を取ることにした。ローラ湖まではあと少しである。

「はあ、疲れた。今日はここで野営だよな。」

 シークはくたくたの様だ。

「そうですね。夜に山道を歩くのは危険ですし。」

 フランも賛成する。


「なあ、お前たち。依頼内容覚えているか?」

 俺が聞くと二人は不思議そうな顔をしている。

「サクラお兄さんどうしたんですか。月夜草の採取ですよね。」

「ああ。依頼書に特殊素材って書いてあったの覚えてるか?」

 二人の目が点になる。うん、見てなかったな。

「レイラさんによると、月夜草は夜に咲いて朝に枯れるらしい。採取できるのは夜の間だけだ。」

「ということは・・・」

 シークの顔が青くなっていく。

「ああ、飯を食べたら出発だ。あとちょっとで着くから、今日中について採取するぞ。」

 その言葉を聞いたシークは崩れ落ちた。その後、小声で俺に「テントを持ってくれ」と頼んできた。



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