1 気がつくと異世界に来ていた
1作目がまだ終わっていませんが、2作目を執筆してしまいました。がんばって最後まで書き上げようと思います。
俺の名前は相川桜。21歳。地方の国立大学で民俗学を専攻している。今日、俺は廃村の調査に来ていた。この村は30年ほど前に廃村になっている。日本狼を信仰していた村で、狼に関する伝説がいくつか残っている。今回は、狼を祭っていたという神社を調べにやってきていた。ゼミの教授が神社の元宮司を見つけ、神社の調査の許可を得られたからだった。俺の担当は神社の敷地のはずれにある小さな祠だ。俺は祠の前で手を合わせるとお祈りをする。そして、祠の調査を始める。その時、空から白い光が降ってきた。
白い光が辺りを包み込む。暖かく心地よい光だ。この状況を冷静に判断すると異常事態なのだが、なぜか俺は慌てることなく安心している。「この光は自分に危害を加えない」と本能が理解したのだろうか。まるで母親に抱かれている乳飲み子のように安心している。俺は全身の力が徐々に抜けていくのを感じる。立っていられなくなり横たわる。段々眠くなってくる。眠気に抵抗することができない。いや、俺は抵抗しようとさえしてない。俺の意識はだんだんと遠のいていく。そして深い眠りに落ちた。
目が覚めると俺は草原に横たわっていた。辺りは薄暗い。夜だろうか。空には星が煌いている。こんなきれいな星空は見たことがない。
・・・そういえば、俺はなぜここで寝ている?そうだ。急に白い光に包まれて、気を失ったんだ。確かあの時は祠の前にいたよな?記憶が上手く思い出せない。頭の中に靄がかかっているかのようだ。ここはどこだろう。俺は周囲の状況を確認するため辺りを見渡した。辺りを一面草原である。その時、後から何かの気配を感じた。後を振り向くと、そこには巨大な2匹の獣が相対していた。
一匹は巨大な狐である。大型トラックよりさらに大きな巨体である。金色の毛皮を身にまとい、ほのかに光を発している。神々しさすら感じる。普通の狐と違い、尾が9つある。これが噂に名高い九尾の狐という奴だろうか。
もう一匹は狼である。こちらも同じくらいの大きさだ。銀色の毛皮に包まれている。周囲には白いものが舞っている。雪だろうか。こちらも神々しくみえる。よく見ると、狼の向こうに小さな狼も数匹見える。小さいといっても軽自動車ぐらいの大きさはある。普通に考えれば十分大きい。
巨大な2匹の獣は向かい合って牽制し合っているようだ。今にも戦い始めそうだ。この2匹が戦いを始めれば、俺は無事ではすまないだろう。これは夢なのだろうか?いや、夢にしてはリアルすぎる。手に感じる土の感触。鼻に匂う草の香。肌に感じる夜風の冷たさ。これらはここが現実であると俺に示してくる。「逃げなければ」と思うのだが、足が動かない。恐怖で足がすくんでいるのだろう。
「おい、フェンリル。なぜここにいる?ここは我のテリトリーぞ。」
「五月蠅い、この狐野郎。誰が好き好んでこんな場所にくるか。我が眷属がここに召喚されたから迎えに来ただけだ。」
「ああ、そこの犬っころか。さっさと連れて去れ。」
「喧嘩を売ってんのか?我ら誇り高き狼一族を犬と呼ぶとは。」
「なぜ、我が下等なものに喧嘩を売らねばならん。」
「死ね」
こうして俺の目の前で二匹の獣の戦いが始まった。大狐が炎を身にまとい、大狼が氷のブレスを放っている。どう見ても現実の世界とは思えない。戦いの余波が俺を襲ってきた。衝撃で数メートル吹っ飛ばされた。全身に痛みが走る。やっぱり夢ではない。俺は恐怖に震えていた。このままでは俺はこの2匹の争いに巻き込まれて死んでしまう。
俺は訳がわからぬまま、変な世界にいた。異世界転移というやつだろうか。普通、もっと安全な場所に連れてこられるのではないのか。いきなり巨大な獣の争いに巻き込まれるとはどういうことだ。神がいるなら、文句を言いたい。恐怖のあまり理性がとんでいるのだろう。俺は神にまで文句を言い始めた。普段俺は神を信じてはいないのだが。
俺が神に文句を言っていると、大狐が俺の存在に気がついた。俺は大狐と目が合ったのだ。「気づかれた。殺される。」瞬間、俺は死を覚悟した。しかし、大狐は俺に攻撃を加えてこない。俺に攻撃するまでもない、ということだろうか。再び、大狐と目が合う。大狐は笑みを返してきた。これはどういう意味だ?しかし、それを考えている暇などなかった。戦いはどんどん激しさを増していった。大狼の放った氷のブレスが大きく逸れて、こちらに向かってきた。「ああ、これは死んだな」ところが、ブレスは俺の目の前の無色透明な壁により防がれた。大狐が守ってくれたのだろうか。「助かった。」俺は安堵すると同時に緊張の糸が切れた。一気に疲労が襲ってきた。そしてそのまま俺は気を失ってしまった。
作品タイトルがなかなか決まらずに悩みました。後で変更するかもしれません。
しばらくは、ゆっくり書いていこうと思います。