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セカイ ノ コトワリ  作者: 冬ノゆうき
6/35

to_date('2028/05/02 17:06:16') location = '兵庫県 姫路要塞 三の丸司令室';

「失礼しました」

 敬礼して部屋を出る。

 オレと一緒に出てくる女の子が3人。もちろん九尾ノ小隊の隊員の3名だ。

「あぁ~撤退支援なんて面倒くさぁ~い」

 姫路に到着するまでにはすっかり二日酔いが収まり、いつもの調子を取り戻したミライが部屋を出るなり大きな声を出す。

 その内容は、先ほど司令室で着任の挨拶が渇かぬうちから下された研究所撤退支援の任務に対する愚痴だった。

「おい、ミライ。あんま大きな声で言うなって……中に聞こえるぞ」

「べつにいいんじゃんか。任務はちゃんとこなしてるんだから。たださぁ~支援任務ってさ、基本的に『世界敵』を狩れないじゃん?ひっまなのよねぇ~」

 ミライは口をぶぅぶぅ尖らせながら文句を言い続ける。

「それにこういう堅っ苦しいカッコ。嫌いなんだけどなぁ」

 戦闘中に着る迷彩服や行動服とは異なり、統合自衛隊の制服に身を包んでいる。さすがに後方にある司令部へ戦場での服装のまま伺うのは少し場違いになってしまう。なので、身なりだけはいつもよりも幾分落ち着いたものとなっている。

 ミライは頭の隊帽を取ると、それでパタパタ顔を扇ぎ始めた。

 帽子を取った彼女の頭には、普通の人間には無い2つの突起物が髪を間からちょこんと出ていた。もちろん何処かにぶつけてできた『たんこぶ』とかではない。

 それは角。鬼族の証だ。

「そうか?その制服姿、オレは結構似合ってるといつも思ってるけど?」

「ぇ………そ、そお?」

 褒められて照れたのか、急に大人しくなるミライ。

 こういうところは女の子らしいというか、可愛げがあるよな。昔から褒められるのが苦手だったりもしたな。結構照れ屋さんというか。

「………なによぉ?」

「いや、ミライもあと3割ぐらい静かになってくれればかなり可愛いのにな――って思ってさ」

「はっ!?はぁぁぁぁ!?ばっ――」

「はっはっは。九尾ノ小隊は相変わらず元気が良いねぇ」

 ミライが何か叫ぼうと口を開いたところを、珍しくもオレたちに声をかけてくる人がいた。今までも周りに誰もいなかったわけじゃない。ミライと会話している間も何人か廊下をすれ違っていったが、みんなオレたちを避けて通っていた………理由は色々あるだろうけど、その気持ちは分からなくもない。

 そして他の人たちとは異なり、オレたちに声をかけてきた人の良さそうな笑みを浮かべた少し白髪が交ざってきている初老の男性こそが、山本中将閣下。この姫路方面に展開する統合自衛隊の中でも2番目に偉い人だ。

 階級はかなり上なのだけど、民間出身――もともと大学の教授さんだったということもあってか、あまり格式張った態度を取らず、纏ってる雰囲気からも温和な人だ。

「閣下、お久しぶりです」

「ええ、久しぶり。無事着任できたようですね?お疲れ様」

「はい。つい先ほど姫路に到着しました」

「そうですか。ところで鬼瓦曹長は何故不満そうなんですか?もしかして姫路と須磨を行ったり来たりで嫌でしたか?」

 中将がオレの隣のチビ鬼に微笑みかける。

 偉い人なんだけど、変にフランクなんだよなぁ~この人。

「むぅ~違います。中将に言ってもわかるかなぁ?ホント!撤退支援任務ってつまらないんですよ~。世界敵に会う事があんまりないから戦闘することないしぃ。かといって、突然襲われたら困るから油断はできないし。大体、ボクは世界敵を倒すために入隊してやってるっていうのに」

 さらにフランクな奴がここにいた。

「こ、こら鬼瓦曹長。言葉遣いを少しは気をつけろよ」

「ぶぅー」

 ぶぅー、じゃねぇよ。

「申し訳ありません。閣下」

「はっはっは、全然構わないよ。逆に『世界敵と闘いたい』だなんて頼もしい言葉じゃないか。それに傍若無人な九尾ノ小隊というのは有名だからね。話しかける時にこれぐらいは覚悟はしているよ」

 ちょ、覚悟って!?……というか、ミライだけじゃなくて小隊一括りなわけ!?

「はぁ……」

「はっはっは、とりあえず4人ともご苦労だったね。次の任務までしっかりと休息を取るようにね」

「あ、はい。失礼します」

 これ以上ミライが()(そう)する前に連れ去ろう。

「あーそうそう大尉。あともう一つ」

 敬礼をして下がろうとするオレを呼び止める。

「何でしょうか?」

「今日は司令も時間に余裕があるので、先に帰宅して待っているそうだ」

「……何でたま……司令の話が出るんですか?」

「上官の伝言を伝えたまでだ」

 閣下はそれだけ言うと、柔和な笑みを絶やさずに司令室へと入っていった。

 山本中将がいなくなったのを見計らって、ミライがオレに寄ってくる。

「ほぉほぉ~。にひひひ。未知斗は愛されてますねぇ~やけるわぁ~」

 ミライが顔だけでなく、わざわざ言葉で『にひにひ』言いながら茶化してくる。

 はぁ……この手を冷やかしはもう飽きるほど受けている。

「恋人同士なら愛されるのもいいけど」

「ほぉほぉ」

「所詮、親子だからな」

 オレはこの話が続く前にさっさとその場を離れることにした。今度はオレの照れ隠しがバレないように。そんなオレの後を3人が慌ててついてくる。

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