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セカイ ノ コトワリ  作者: 冬ノゆうき
1/35

title = '序章';

 1945年8月。

 日本の降伏を最後に、世界の様々な国や勢力を巻き込んだ2度目の世界大戦が終結した。


 しかし、残念ながらそれを最後にして争いの無い世界が生まれることはなかった。

 それ以降も世界のいたる場所では相も変わらず大小様々な戦争を人類は続けた。

 戦争を糧にして利潤を蓄える武器商人も消えることはなかった。

 民衆に圧政を強いて、独裁を続ける権力者がいなくなることもなかった。

 僅かな食料も確保できず、物理的に貧しい生活を営まざるおえない人々がいつづけた。

 それでも何千万人もの人が死ぬような世界大戦は起こらず、世界経済全体の規模は成長を続け、世界はそれなりに平和で、それなりのスピードで技術革新の歩みを進めていった。

 もしかしたら長く平和を享受し、発展し続けていた国や地域の方が世界全体からみて少ないのかも知れない。

 それでも世界はそれなりに穏やかに回り続けていた。


――だが、人類は現在、有史以来もっとも大きな問題を抱えていた。


 世界中のいくつもの名だたる大都市に――


   穴   


――が開いたのだ。


 『穴』と言っても、物理的な落とし穴のようなものではない。

 地面ではなく空間に立体的にポッカリと真っ黒な球体が浮かび上がったのだ。

 それは光を一切反射しない真の黒色をしていた。

 それはあまりに黒すぎて近くでは球体なのか平らな円盤上のものなのかの区別もつかない。

 それは並の大きさの球体ではない。

 それは一つの大都市がすっぽり隠れてしまうぐらいに巨大な球体だった。


 そしてその『穴』から飛び出してきたのは――――様々な異形の化け物だった。


 あるものはライオンとクマを掛け合わしたような姿をしていた。

 またあるものは鳥と猫という風に大きく異なる種同士が混ざった姿をしていた。

 またまたあるものは掛け合わせではないが、複数の頭を持つ大蛇であったりした。

 それらはこれまでの地上に存在しないような、それでいて完全に地球外生命体というわけでもない。 言うなれば、地球の生態系という枠組み内に存在する生物同士を色々掛け合わせて、創造できそうな姿をした怪物ばかりだった。

 その組み合わせは千差万別であり、2種類の生物の掛け合わせだけでなく、3種、4種と、様々な動物の特徴が見られる怪物も存在した。

 この多種多様な生命体たちだが、ただ1つ、すべての個体が共通して持っている特徴があった。


それは――

人を、特に人がたくさん住んでいるところを襲う。

――という習性だ。


 その生き物たちは手始めに『穴』の周りに広がる大都会の住人たちに襲いかかった。

 人々はその生き物たちの凶暴さと並の銃火器を寄せ付けない頑強さに恐れおののき、その生き物たちのことを『世界人類の共通の敵』

――略して『世界敵』と呼ぶようになった。


 そしてその化け物を吐き出す『穴』を、異界との境界を表す門を『境界門』と呼んだ。


 世界の10カ所に開いた『境界門』から漏れ出した『世界敵』はあっという間に周辺の大都市を破壊してまわった。

 人類は『世界敵』に戦々恐々とした。


 さらに『世界敵』の出現後しばらくして、世界中の海中・海面・海上が異常に強力な重力のような力を発生し始めた。

 この怪現象を『重海水』と呼んだ。

 『重海水』の原因は未だにまったく解明されていない。

 異常重力によって波一つたたなくなった鏡のような海は、船舶はおろかあらゆる電波も通ることが出来なくなった。これによって大陸間の交流が途絶えた人類は各地で『世界敵』によって各個駆逐されていくのだった。

 一部の地域では『世界敵』に対して核兵器も使用されたらしいが、『世界敵』の侵略が止まっていないところを勘ぐるに、駆逐するには至らなかったようだ。


 そして『世界敵』が出現してから16年余り。

 『境界門』出現前は190以上あった人が統治する国や地域が、現在では3分の1以下にまで減ってしまっている。

 それでも人類はまだ『世界敵』と戦い続けていた。

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