farewell
☆リセイ☆
飛翔体ファングに乗って夜空を飛ぶ。
わたしは蒲生リセイ。
飛翔軍第7隊の隊長をやっている。
わたしたちの第7隊は臨時夜間哨戒飛翔をしている。
このエリアに軍のトップであるカキザキ総司令がおいでになっているからだ。
表向きはプライベートでおいでのカキザキ提督の秘密裏の護衛だ。
しかし、本当はクローバー前首席の旅立ちの護衛。
全長1,681m、最大全幅521m、最大全高335m、全備乾燥重量17,550,000tの巨艦ナウティルスをわずかな時間だけ護衛する。
ついて行きたい。
クローバー前首席についていって脅威をはね除けたい。
表向きは引退した老人の無謀なチャレンジトラベルとなっている。
所有する分子融合パルスエンジン搭載の巨船ナウティルスで。
向かう先は月という事になっている。
ならばせめて衛星軌道まではついて行きたい。
時間だ。
雲を割り白い巨漢があらわれた。今ナウティルスは、その太陽発電シートで包まれた巨体を、純白に見える透光性特殊耐熱塗料で覆われている。
予測点でナウティルスとランデブーできたのだ。
隊員たちとナウティルスと並んで飛翔する。
星が瞬かなくなった。
そして地球の強い重力の軛から純白の巨体が解き放たれた。
ここまでが、わたしの仕事場だ。
か、もう少し、もう少しだけ。
ふと、外部ブリッジに人影が現れたのが見える。
近づく。
画像を拡大する、拡大する、拡大する。
クローバー前首席と、わたしの部下がいるのが見えた。
部下は軍からの出向扱いにしてある。
わずか八年の出向だ。
必ず帰るのだから。
部下と同世代の同胞もいる。
飛翔体ファングを作業体に変形させ、敬礼で見送る。
部下も次々と作業体に変形し敬礼する。
艦体を陽光に白銀に輝かせナウティルスは、涙で霞むわたしの視界の中で小さくなっていった。