mere bravado
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巨艦ナウティルスの中のトレーニングエリアで、四人は四つ並んだ、短径三メートル長径四メートルほどの銀色の卵形の装置を見上げていた。
「なんだこれ?」
ミキヒコにショウが教える。
「あぁ、可変機動装甲コロンのバーチャルシュミレーションシステムだこれ。シュミレーター」
「へぇ、ゲームみてぇ」
「ゲームだよ」
「僕にも出来るかな」
リヒロが目の前のシュミレーターを撫でる。
「リヒロでも、アキヨシでもできるよぜってぇ。まあ、一番はオレかな。なんたって機械に精通してる」
ミキヒコの言葉にリヒロとアキヨシが顔を見合わせて吹き出した。
「一番はショウだろう」
「慣れがちがうよね。きっと」
「まあ、そうだな」
ショウがまんざらでも無さそうに言う。
「いっちょ、やってみるか」
ショウがシュミレーターの脇の梯子を登った。
「え、いいの」
隣のシュミレーターにミキヒコが登る。
顔を見合わせてからリヒロとアキヨシも梯子を登った。
シュミレーターの上には一メートルほどの円形ハッチと箱形の窪みが有り窪みに附属品が入っていた。
「やりかた。簡易版だけどな。スイッチ確認。ランプ黄色。ハッチ開ける。中、溶液確認」
ショウが開けたハッチの中に手をいれる。
水音がした。
「冷たくなければ良し。服脱ぐ。パンツもな。んで、これ着ける」窪みにあった鼻から口を覆う透明なマスク状のものをショウは着けた。
「後は中に入って蓋を閉める。ゴリ・ラリアン式なら思えばいいんだ。やりかたはガイダンスが流れる」
ショウはまた溶液に手をいれかきまぜた。
「この溶液呼吸できるからな。徐々に吸い込んでけば平気だ。で、音も志向性で聴こえる。耳も目も平気だからな。出たら凄いけど」
ミキヒコは、ショウの説明の最中に服脱いでマスクを着けてしまっていた。
ミキヒコが透明な溶液に足を付けると表面に立ててしまった。
「ん?入れん」
「足肩幅にしてて。ゆっくり床が沈むから待ってろ」
ショウも服を脱いでマスク姿で水面にたった。
顔を見合わせてからアキヨシとリヒロも同じようにした。
ゆっくりミキヒコが足元から沈んで行く。
その後を三人が続く。
生暖かい水中に四人はいた。
【ガイダンスにしたがってください。ハッチ閉じます】
音が届いた。
出入口の扉が閉じコクピットを青白い光が充たした。
【直接投影を行います。拒否なさる場合には《拒否》と思考して下さい】
【直接投影開始。直接通信を行いますます。拒否なさる場合《拒否》と思考して下さい】
【直接投影はシュミレーションヴィジョンです。直接通信は音声通信です。発声して下さい】
四人は暗い宇宙空間にいた。
見回すと他の三人の場所には飛翔体がそれぞれ浮かんでいる。
「今回前処理してないから下から上がってくるパット股に挟めよ」ショウの声が聴こえた。
「オムツみてぇ」
「オムツだよ。今回簡易版設定だから、腸内洗浄とかしてないから」
ミキヒコの軽口に、ショウが答えて続けた。
「挟んだら、次いく。目の前の大きい恒星を目印な。恒星に向いて真上に極星。極星に向かってx軸、恒星に向かうのがy軸、左右に向かうのがz軸。座標いいか?」
「ショウのコロンが0点でいいんだよね?」
リヒロが聞いた。
「そうだ」
ショウにアキヨシも聞く。
「リヒロと俺がzのマイナス点だな」
「多分、僕がマイナス1、アキヨシがマイナス2だね」
「オレのコロンはzのプラス1な」
ミキヒコの声の後にショウが言った。
「そこ基準点で恒星に向けて発進。ファングと違って、コロンは基本ゴリ・ラリアンとの併用のだから、動けって思えば動くし停まれって思えば停まる。曲がるのも上下右左て思え。バックは飛翔体じゃできない。作業体ならできるけどまだなるんじゃないぞ。慣性に気をつけてな。うつ伏せで滑るイメージでだ」
「やってみるかぁ」
ミキヒコの飛翔体・コロンが猛然と飛び出した。
「ついてこいよ」
ショウのコロンが続く。
「リヒロが先のほうが形が良さそうだから先に行ってくれ」
「あ、z軸の大きい順ね。じゃお先」
リヒロのコロン、アキヨシのコロンと動き始めた。
「気持ちいい」
今回は風を感じるような気がショウにはした。
軍で何度もこのタイプのコロンシュミレーターは使ったはずなのに。
仮想宇宙を縦横無尽に四人は飛び回りシュミレーションは終了。
溶液から出た四人は、体内にある溶液のために咳き込みえずき、涙、鼻水、涎でどろどろになりながら床で悶え苦しんだ。
その時ショウが言った。
「ゲホッゲホッガボッ……な……ゴホッゴホッゲボッ……凄いってコンッコンッコンッ……言ったろ……ゴホッゴホッゴホッ」