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神代勇人は懇爛常態!  作者: 忍龍
腹の奥底(仮題)
90/144

11 (■性的虐待系胸糞注意! 飛ばし読み不可)

ものすごく胸糞の悪い話しです、ごめんなさい。

「……ゆーでぃ……ゆーでぃっ」



 よろよろと夫の腕から降ろしてもらい、夫人はまるで触れれば消えてしまうのでは、と恐れるような仕草で歩み寄る



「おかあさまよ、おとうさまとおかあさまよ ゆーでぃ」



 ユーディレンフは首を傾げて夫人をじっと見る

 彼女とその夫が気にはなるようだが、ユーディレンフには二人が両親だとは、わからない


 ユーディレンフがシリウスを慕い、懐き、絶対の信頼を寄せ、勇人が泣き叫びたくなるような笑顔を向けていたのは、色彩が異なり額に第三の眼があろうともシリウスが父親に瓜二つだったからだ、父親だと思い込むのも無理は無い


 今、彼の眼の前にいる両親は、無常にも隔たれた時によって、夫人の赤毛は殆ど白と見紛う程の淡い桃色になり、翡翠の瞳も加齢によって暗く変化している

 顔も相応に老いており、夫婦は彼の知る姿を保っていない


 幼いユーディレンフに判る筈も無かった


 夫人がそっと触れようと差し出した手の指先は、……その薔薇色の頬に触れることもできない


 今、シリウスに触れていない者たちの眼にその姿が見えているのは、室内の壁を覆い尽くした蔦葉がシリウスから血液を吸い上げ、その末端まで血を含んでいる所為だ

 レプスがシリウスの毛髪の編み込まれたミサンガを着けて霊である母親を見ることができるのと、同じ原理になる

 だが効果はそこまでだ、シリウスに触れていない夫人では、息子に触れることはできない



「ゆーでぃ……こんな、こんなちいさなこが……ぁぁ……」



 母親は涙で顔を濡らし、父親は歯を食い縛っているのか ごり と軋む音がシリウスの耳を通して勇人に届く



「息子は……最後は、安らかだったのか」



 妻を支えるように腰を抱く大元帥が、呻くように口を開いた

 だが、せめて苦しまずに、そう願う父親の疑問に与えられた答えは、望みのものとは程遠い



「いいえ」



 答えたのはシリウスだ

 詳細を問う視線に、シリウスは応えない

 大元帥が勇人へと視線を向けた



「……聞いていて冷静でいられる話ではないでしょう、夫人も弱っておられる」


「……いいの、いいの、おしえて……このこのこと、しりたいのです」


「惨い話しになります」


「それでも、いいのです」



 静まり返る中、わたくしではない、わるいのはみんなあのおんな、と王太后がぶつぶつと呟く繰り言だけが不気味に響く



「彼は……ご子息は、つい、数年前までご存命でした」


「……ぇ」



 数年前、という言葉に夫婦は眼を見開く、眼の前にいるのはいなくなった当時の姿だ

 勇人とシリウス以外のこの場にいる誰もがユーディレンフは幼くしてこの世を去ったと思っている

 それなのに、死んだのが数年前とは、一体どういうことなのか……


 明かされたのは、シリウスの口からだった



「彼は、二十年ほど前、打ち捨てられていたところを保護されました」


「すてられ……て……?」


「薬漬けにされ、理性は既に無かったそうです」


「……くすり?」


「手当てにあたった当時の記録では、長年、男娼として酷使されていたようだとの記録がありました」


「だ、ん、」


「精神は破壊され、獣のようになり、時に発狂し暴れるので、命尽きるまで、寝台に繋がれて過ごしました」


「なんて……こと……っ」


「この姿が、幼いのは……」



 流石にシリウスの口は重くなる

 言わないのが最善だとは判っているが、夫婦はそれを良しとはしないだろう



「この年頃の時、心が、死んだからです」


「ひ……ぃ……」



 その後は、もう、言葉にしなくとも、夫婦は察してしまった


 ……そう


 つまり、ユーディレンフは浚われて直ぐに、その愛らしい容姿から慰み者にされたのだ

 本来ならば、善も悪も判らない、あどけなく、いとけない、まだ親の絶対的な庇護の元で慈しまれていた筈の幼い身の上で


 下卑た大人に寄って集って囲まれて、自分が一体何をされているのかも分からない

 ただただ、痛く、苦しく、恐ろしい、そんな眼に合わされた幼い子供の心は、その時、……死んでしまったのだ


 薬漬けにされたのは、その後間も無くからだろう


 恐らくそれ以降、反応の無くなった幼子は続けられる狂宴の為に面白くないということで薬を盛られ、ずっと、それは彼が捨てられるまで続いた



「……ぁ……ぁぁ……ゆーでぃ……ゆーでぃっゆーでぃっ!!」



 夫人の絶叫の中、謁見の間を駆け抜ける影があった

 大臣達も、護衛の為の近衛達も反応できず、国王だけが、それに対峙した


 ぞぶり、と深々と貫いた剣身が、鮮やかな赤を滴らせる


 王太后を背に立ちはだかる王の、腹を、大元帥の、息子を失った父親の、兇刃が、貫いていた



「ひっ、ひぃっ、だ、だれか、そ、そのものをちかづけないでっ、ころしてっころしておしまい!」



 出入り口はシリウスが張り巡らせた蔦葉に封じられ、誰も外へは出られない

 王太后が恐怖に引き攣り、豪奢な椅子を蹴倒し、床を這いながら取り乱し、大臣達が逃げ惑う中、王は静かに口を開く



「……堪えてくれ、アーディグレフ」



 ぼたぼたと血は滴り、近衛が一斉に大元帥に斬り掛かろうとしたが、国王はそれを片手で制す



「酷なことを言っているのは、充分、承知……している、だが、こらえてくれ、……本懐を遂げれば……多少は、溜飲が、下るかも……しれん、だ……が、その瞬間、お前は、叔父上は、反逆者となり、処刑、される」



 大元帥はぴくりとも動かない



「今、此処で、お前を逆賊に……して、しまえば、……お前の妻は、どうなる、息子を失い、夫を失い、逆賊の……妻として、独り、残される、お前の妻は、……叔母上はどうなる!」



 王が叫ぶように懇願する中、夫人がそっと大元帥に歩み寄る



「たのむ、こんな、ことを、頼むのは、おかし……いと、分かって、いる、……だが、堪えてくれ、彼女の為に、堪えてくれ、たのむ、たのむ、叔父上っ」


「あなた……」



 抱き合って蹲る夫婦に釣られるように、国王は半ば崩れ落ちるように床に蹲った

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