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神代勇人は懇爛常態!  作者: 忍龍
腹の奥底(仮題)
85/144

06

 なんだかんだありつつも、結局夕食は大した騒ぎにもならずに済ませることができた

 ざっと掻い摘んで説明すると、勇人が痴女であると判断した男共が是非お相手願いたいと一斉に沸き上がり、口から欲望そのままに露骨な言葉をぶちまけて勇人に浴びせようとした まさにその瞬間、シリウスが周囲を威圧し、恐怖のあまり呼吸すら困難になったからである


 公共の場、それも選りにも選ってこれからまさに食事時という場で飛び交って良い言葉ではないので封じられても当たり前の結果だろう



「やりすぎだろ」


「わたしがやったという証拠でも?」


「無いな」


「そうでしょう」



 勇人は店側から苦情が来るかとも思ったがそれも無かった

 店では乱闘騒ぎも珍しくは無く、器物破損など珍しくもないからである

 寧ろ一部のアレな粗相程度で済み吐瀉物の処理に慣れていた(慣れたくなどなかっただろうに……)店員に感謝された程だ

 店員は、手馴れた様子で気絶した男共の財布からしっかりと金を抜き取って彼らを外に放り出す


 今日の酒代と、以前に破壊された備品の代金だ、流石に全財産持ち歩いて呑んだくれているヤツはそうそういないが、驚くべきことに客との遣り取りがコレで成り立っているという有様である

 あまりにも酷い場合には男共の雇い主に請求書が送りつけられ洒落にならない強烈な減俸を喰らうことになるので温和しく財布の中身を抜かれるがままというワケだ


 耳が塞がれ威圧もされていないレプスは状況がわからず、堂々と財布を漁る店員をぽかんと見ながら料理を持ったまま突っ立っていたが、勇人が配膳を始めたことに気付くとあわあわと彼女もそれに続き、こうして夕食は特にこれといった問題も無く済んだ









*** *** ***









「恐らく、到着後 二日と経たないうちに陛下と謁見することになるだろうが、ひとまずは我が家に来てもらい、謁見に備えて事前に打ち合わせなどがしたい」



 ……と、ラドゥは言っていたのだ、が



「お待ちしておりました、到着したばかりでお疲れとは存じますが、陛下がお待ちしております、このまま登城していただきたく、お迎えに上がりました」


「……そうか、謁見にあたり身形を整えたいのだが」


「陛下は構わないと仰っています、レンディオム上級大将閣下」


「しかし、高貴なるご婦人もおられるのだろう? このような格好では無礼極まる、とてもお目に掛かることはできない」



 暗に王太后の存在をにおわすラドゥに、出迎えの使者はぴくりとも表情を動かさない



「陛下は構わないと仰っています、レンディオム上級大将閣下」


「……分かった、案内を任せよう」


「お任せ下さい」



 もう一度同じ言葉を告げる使者に、ラドゥはわざとらしく溜め息を吐き出して応じた



「……よく訓練されてるもんだな」


「何がだすか?」



 馬車に乗るなり勇人が呟いた言葉にレプスが反応を返す



「俺がずっと抱えられたままだったのに、ついぞ表情が動かなかった」


「そうだな、普通なら不快感を示しているだろうな」



 ラドゥが魔具を起動しながら勇人の言葉を肯定する、勿論、不測の事態について"一応"父親に連絡するためだ……が



「……ふむ、やはりな」


「向こうさんも俺らのように呼び出しを食ってるってことだろう、相手は誰だ?」


「私の父上だ、君たちには父上を通して伯父上に会ってもらい、伯父上からの推薦ということで陛下に謁見していただこうと思っていたのだが……」


「事前の打ち合わせってのは、そういうことか」


「そうだ」


「前もって打ち合わせでもされっと何か都合の悪ぃことでもあんのかね」


「だろうな」



 陛下……と言っても、ラドゥの予想では恐らく王太后陛下だろう

 彼の知る国王陛下は緊急事態でもない限りそういったことはしない、だが王太后はそんなことは関係ないとばかりの態度を陛下以外には隠すことも無い

 国王はソレに気付いていながらも、王太后を諌めることができないでいる

 彼女の生家である大公家の影響は、それほどまでに大きいのだ


 三つの大公家が王家を支え、血を保ち、互いを監視し合い、汚濁を防ぐ……筈なのだが、今、そのバランスは狂い、倒れる寸前にまでなっている



「……で、一応念の為聞いとくけど、盗聴の心配は?」


「無用だ、大枚を叩いただけあって、コレがしっかりと機能してくれている」


「そりゃ安心だ(覗けなかったのはこれのお陰か)」



 今現在起動している魔具の能力でこの場の会話が盗み聞きされることはないが、城についたとしてもラドゥの父親とも伯父とも謁見前に話しをすることは一切できないだろうと推測する



「……さて、では城に着くまでの三十分、可能な限り予習をしておこうか」


「……さんじゅっぷんって……そんな近いのかよ」


「通常の馬車なら六時間といったところだが、この馬車は魔具だからな、道も専用になっている」


「あ、空さ飛んでるべ!」



 レプスが車窓から外を眺めて言う



「空路かよ、馬車のカッコしてる必要性あんのかコレ」


「優雅だろう? なんと特別仕様だという話しだそうだ」


「無駄金だな」


「国威発揚ということらしい」


「アホくさ」


「私も同意見だ」



 そんなわけで三十分間、みっちりとお勉強の時間だ

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